ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

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100!100よ100!
今回で投稿した話数が100個目に到達しました!正直なところ最初は対策委員会編だけやって『俺たちの冒険はここからだ!』するつもりだったんですが今まで無いくらいたくさんの感想や評価をいただき、そのおかげでここまで書けました!超絶雑ではありますが最終章までのプロットはふんわり作ったので必ず完結まで持っていきますよぉ…!
・・・記念すべき100話目に肝心のギュメイ将軍が居ないってどうなの???

とりあえず総力戦編 第7話です、お楽しみください


クジラ

『──罪、存在そのものが罪なのです』

 

【最高位の天使は語る】

【この世界の悪について】

 

 

 

『人間だけではありません、主が創造したこの世界はありとあらゆる罪で塗れています』

 

【ならばその悪を断つには?】

【世界を正しく導く方法とは?】

 

 

 

『全ての罪に裁きを下すというのなら、もはや世界を滅ぼすほかないのです』

 

【それは破壊である】

【天の聖服を着こなした天使が放った言葉に濁りは無い。故に──】

【・・・ピョ、これなんてよむんだったかしら…あ、そうそう!だてんね!】

【──故に堕天もしない】

【彼女の心が、それを善と決めたのだから】

 

 

 

『では手始めに…この会場に来た方々から…』ニコ…

 

【天使が迫る】

【正しいことを成す、ただそれだけのために】

 

 

 

「ヒッ…!?ひいいいっ!?やだ、やだっ!誰か助けて!いやだ、死にたくない!」

『いや、あの…お芝居ですから…だからその…』

「ねぇ!助けて!?ね、私たち友達だよね!?」

 

 

 

どんっ!

「あ…!」

 

 

 

大天使──要するにこの芝居のヴィラン役であるサクラコが舞台を降りて最前列にいたトリニティ生徒を連れて行こうとした時、突き飛ばされるようにその生徒が前へと弾き出された

 

否、突き飛ばされたのだ。彼女が『友達』と呼んでいたもう1人のトリニティ生徒によって。

 

 

 

「ご、ごめん、ごめんね?ごめんなさい…」

 

 

 

謝りながらも一歩一歩、距離をとっていく『友達』。他の観客たちも見えない壁に押されるように離れていく

 

 

 

「そんな、うそ…!イヤ…!みすてないで!こんなのいやぁ!」

 

 

 

もはや観客の9割9分、これがヒーローショーであることを忘れかけ、恐ろしいヴィランから目が離せない

離そうと思っても恐怖で身体が上手く動かないのだ

 

 

 

『待ってください』

「!!!」

 

 

 

ヴィランの一声が逃げ出そうと足掻く『友達』を止める

まぁこの瞬間サクラコはヴィラン役としてではなく自分の気持ちを述べていただけなのだが…だからこそだろうか?

 

 

 

『【友達】、なんでしょう?置いていくなんて【かわいそう】ですよ』

「ひっ…!!」

 

『【友達】なら…【最初から】、【最後まで】、一緒であるべきです

これが終わったら【次はお友達】です。2人とも同じ場所に【送って】差し上げますから…』

「──そっか…あは、なによ意味ないじゃない…遅かれ早かれみんなここで…」

 

 

 

誤解が!加速する!

 

 

 

ちなみにだがサクラコ視点、この友達同士の2人がケンカでもした程度にしか捉えておらず、必要なら仲直りの機会をとりもちますよ!というつもりで言っているのだが当然誰にも伝わっていない

 

 

 

『まずは【責務】を全うしましょう。さぁ…【こちら】へ』

※訳 引き受けた以上、ヴィラン役はやり遂げます。台本通りこの生徒に人質役になってもらって舞台に連れていきましょう

 

 

 

『………最初に裁かれる者は決まりました。

懺悔はありますか?』

「ひぃ、はひ、はっ、あっ…!」

 

『あ、あの、大丈夫ですか…?体調が悪いなら「そんなこと、させないわっ!」

 

その時ヴィランを遮り、派手な爆発と共に何者かが舞台を駆け抜ける!

 

 

 

がしっ!

「ひゃっ!?わ、わっ!?」

 

駆け抜けざまにヴィランに捕まっていた生徒を連れ去り、観客席へ。

『アルs…コホン、だれでしょう?』

 

危うく名前を呼びそうになったのを押し留め、観客席に視線を落とす

そこには、ヒロインがいた。

 

 

 

「会場のみんな!私が来たからにはもう大丈夫よ!世界滅亡なんてさせないわ!」

杖に羽衣、そして鏡のような盾を身につけたヒロイン──役の陸八魔アルが颯爽とかけつけたのだ!

 

 

 

とまあ、見かけは確かにカッコいい。だがその内心は

 

(うう、まさかヒロイン役でのスカウトなんて…!)

 

ビビりまくっていた。台本を丁寧に何度も読み直してなおアルとサクラコ、それぞれ自分が思っていた役割と真逆だったことに最後まで納得できなかったのだ

 

 

 

しかし引き受けた以上、投げ出すことはしない

 

 

 

(落ち着きなさい陸八魔アル!ここで失敗したらそれこそみんなに顔向けできないわ!

なによりアウトローでもなんでもない【普通の生徒】であるサクラコさんがあんなに頑張って演じているのに、私が逃げ出したらいい笑いものよ!)

 

 

 

『魔王を倒した賢者ですか

あなたを滅ぼすつもりはありませんでしたが…なぜ私に武器を向けるのです?』

「世界を、みんなを守るためよ!たとえ大天使であろうと世界を滅ぼすというのなら私がやっつけてあげるわ!」

 

『理解できませんね、あなたが魔王を倒したことで世界はいったん平和になりました

ですが共通の敵がいなくなった人間たちは再び争い始めた、それこそかつての魔族と人間のように…』

「それは…」

 

『殺し、汚し、侵し…人間は一度やり直すべきなのです。私やあなたのような…【生きるべき生命】しかいない世界をつくるために。

言葉の意味が分からないあなたではないでしょう?

それでもなお…この世界と人間に守る価値があると、そう言うのですか?』

「……………」

 

 

 

いやこれヒーローショーよね!?台本を読んだ時も思ったけど子供が観にくるショーにこの内容は重すぎじゃないかしら!?

 

大人でもすぐに結論は出ないような問いである。一応台本通りに喋ればいい劇とはいえ真面目に答えようとすれば正直言葉にできない

 

 

 

『…アルさん、次は【そうよ、だからここまで来た】ですよ…!』

「! …っ、そうよ!だからここまで来た!」

 

 

 

いけないいけない、さっきからフォローされてばかりだ。

これはあくまで仕事。仕事を終わらせることだけを考えなければ!

 

 

 

「確かに世界には『自分さえ良ければ』と考える人間は少なからずいる、それによって多くの生き物が虐げられていることも…

でも全ての人間がそうじゃないことを知っているわ!」

 

『戯言です、それはあくまであなたたち人間の主張でしかない』

 

「いいえ違う!人間以外の生命も、理解を示すものはいるの!…それを今からあなたに見せてあげる!」

 

 

 

大きく杖を振りかぶり、会場のすぐ外にある海に向かって叫ぶ

「海よ!全ての生命の源よ!世界を守るため、今一度その力を貸したまえ!」

 

たしか台本によればここで──

 

 

 

「うわ!見ろ!なんだあれは!?」

海面下で爆弾が爆発したような水飛沫と共に、鯨のような巨大魚が姿を現した!

 

すごい…まるで本物みたいな迫力ね!

 

観客もみんなあの巨大魚のセットに釘付け、あとはアルが最後のセリフを読み上げるだけである

 

 

 

『グルルル…!』

『ば、ばかな…』

 

スピーカーからとはとても思えない重低音の唸り声。私はそれに対し、叫ぶ。

 

 

 

「海のヌシよ!その力を、今ここに!」

『グルルァアアア!!!』

『えっ、きゃあああー!』

 

水鉄砲、と呼ぶにはかなり強い水流がヌシの口から発射され、サクラコを舞台の外まで吹き飛ばした!

ちょ、ちょっと強すぎるわよ!?サクラコさんが…!

 

「中止!止め!やりすぎよ!」

『んや?それはすまんのう』

 

 

 

多分中にスタッフが入っているのかあっさりと止めてくれたが今のはやりすぎだ!

「サクラコさんっ」

『か、構いません…ともかく今は劇を、最後までやりきってください…!』

「!」

 

 

 

駆け寄る私を制止し、あくまで劇を中止しないでと訴えるサクラコ

…分かったわサクラコさん。でもさっきのことは一言言ってやらないと気が済まないわ!

 

「た、倒した…!やったー!ヒーローが勝った!」

「よかった、よかった…!」

「コホン…ええそうよ!世界はこれで守られたわ!」

 

 

 

憤りを胸に押し留め、なんとか最後まで演じ切る

これにてヒーローショーは無事終了。観客たちも安堵の声や表情を浮かべてみな帰っていった

 

 

 

「サクラコさん!サクラコさん!大丈夫!?」

「え、ええ。ちょっとびっくりしただけですから、どこも怪我はないので安心してください」

「そうなの?はぁ、よかった…」

『うん?なんじゃ遊戯だったのか、わしゃてっきり…』

「てっきり、って…!」

 

 

 

もう演技の必要も無くなったことで抑え込んでいた怒りが爆発した!

 

 

 

「今回は良かったけど一歩間違えればサクラコさんが大怪我するところだったのよ!いったい何を考えてるの!?」

『のわわ、なんじゃなんじゃ!話が見えてこん!そんなうっとりするような格好をしてわしを呼んだのはムスメっこじゃろう?』

 

──なんて流暢に喋る巨大魚のお腹をぺちぺち叩く

? 作り物にしてはやけに…

 

 

 

「あ、あわ、わわわ…」

と、ふとその時舞台裏、震えながらこちらを覗き込んでいる会長と目が合った

 

「ちょっと会長!この鯨のセット、ちゃんと調整した…の?」

間髪入れずすぐ後、会長の背後には一目で作り物だと分かる大きな鯨のセットが置いてあって──

 

 

 

「「・・・え?」」

『??? なんじゃ、そんなにジッとわしを見て…』

 

 

 

 

 

◆ 報告

トリニティ自治区シーサイドアリーナにて詳細不明の巨大魚が出現。

緊急措置として剣先ツルギ及び仲正イチカ、ほか正義実現委員20名が出動し対応に。

シャーレ出張中のティーパーティホスト、桐藤ナギサ様へ指示を仰ぐまで放置、排除、捕獲等の判断は保留とする。




記念すべき100話目で主人公が不在という状況にこれでいいのかと思っている作者のルルザムートです、ハイ。
アルに懐く人外概念はこのシリーズが始まるずっと前から考えていたのでそれを落とし込んだ結果こうなりました、かわいい
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