ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

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カジノの最期については総力戦編最後で描写します
総力戦編 第11話です、お楽しみください


日向に照らされた夢の跡

『ん、クライアントからの次の指令がやっと来た。裏カジノを襲う』

 

 

 

シロコちゃんがそう言って1週間。いよいよその時が来た

カイザー残党がアビドスに建てた裏カジノ『宿屋の地下室』… それを今日、文字通り叩き潰すために

 

 

 

「ん、みんな乗って。詳しい計画は車の中で話す。」

銃に覆面にドリル、見取り図、煙幕…色々詰め込んだバンに全員乗り込み、いざカジノへ

強盗という手段に最初はみんな乗り気では無かったが今回の目的はお金じゃない

 

 

 

「アウルさん曰く、あのカジノの地下にはカイザー元理事が最後の意地でかき集めたPMCの資産があるらしい」

「資産?武器や兵器とか?」

 

「それもあると思う。他に聞いたのは現金や金塊、美術品も──いや、美術品はもう無いんだった。ともかく今回の目的はそれを可能な限り奪う事、奪うのが難しければ破壊でもいい」

 

 

 

この強盗の目的…それは壊滅し、今まさに息の根が止まりかかっているカイザーPMCに完全なトドメを刺すこと。

 

カイザー元理事はカジノの利益を利用してなんとかPMC再起を図ろうとしているらしいがここまで追い詰めておいて復活なんてされたらたまったものではない

 

 

 

「で、でもそれ大丈夫なんですか…?もしやったのが私たちって気付かれたら…」

「大丈夫。監視カメラやセンサーの位置、性能、全部アウルさんから資料で貰ってる

下見したから資料の裏付けも終わってる」

 

 

 

あとはルート通りに進んで金庫に行くだけ。と得意げに資料を配っていくシロコ

運転しているノノミを除いてみなが資料に目を通す中、ホシノだけは心ここにあらずといった様子で窓の外を眺めていた

思案の先は当然、ここにいないもう1人の仲間のこと──

 

 

 

「………ユメ先輩」

 

 

 

1週間前にユメ先輩はギュメイ先生と一緒にレッドウィンターに向かった。

あのおっちょこちょいな先輩のことだ、またドジをしてギュメイ先生を困らせているかもしれない

ただ、もし、そうでないとしたら

 

 

 

思い起こされるのは、あの日の墓参り

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ただいま、ホシノちゃん』

『ユメ、せんぱい…?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──あの日私は黄金の果実を拾っていた

ギュメイ先生の教えてくれた、願いを叶える女神の果実…

 

でも結局私は食べなかった

なんとなく、なんでもできそうな、そんな途方もない力は分かっていたけど、私は食べなかった

 

 

 

だって仮にそれでユメ先輩が戻ったとして、私はなんて言えばいい?

私のせいで苦しみ抜いて死んでしまったであろう先輩に、なんと言葉をかければいい?

そして私は、ユメ先輩になんと言葉をかけられるのだろうか

 

 

 

聞くのが怖い、聞きたくない、そう躊躇った瞬間私は果実を投げ捨てていた

ユメ先輩が戻る幸せより、自分にとって都合が良いだけのユメ先輩が得体の知れない力によって創られるのが怖かった

 

だから彼女が、梔子ユメが生き返ることなんて絶対にありえない、私はそんなの望んでいない

なのに──

 

 

 

「………」

 

 

 

あの日のことを思い出そうとすると果実とユメ先輩以外の記憶にもやがかかったみたいになって、余計に強調された記憶が何度も頭を巡る

 

 

 

『違う、だって』

 

 

 

お墓に背を向けた帰り道。降り注ぐ陽光の中、背後から聞こえた知らない声。

 

 

 

見ないフリをしている記憶の底。今日こそと思いながらいつまでも拾い上げることのできないそれに、

私は──「ホシノ先輩?」

 

 

 

「──うへ?ああごめん聞いてなかったよー、それでなぁに?」

「もう!しっかりしてよ、今から強盗に入るんだから!」

 

 

 

車が止まる。前方には砂漠に似合わない建造物と人だかり

後輩達に習って自身も覆面を被って外へ

 

「ホシノ先輩、計画書はちゃんと読んだ?」

「読んだよぉ、特に穴は無かったけど…これシロコちゃんが考えたの?」

 

「ん、そう」

「完璧すぎて…これはこれでおじさん別方向で心配になっちゃうな〜」

 

 

 

 

 

『2度と失うまいとするその心は立派だ、だが失ったものに囚われ続ければいずれ必ず酷い結末を迎える』

 

 

 

 

 

分かってるよ先生。でも私は弱いから勇気が出ないんだ

仲間を殺しておいて幸せになっていいなんて思ってないけど、それでも私は飛び込む勇気が無いんだ

 

 

 

「みんな、準備はいい?…いくよ」

 

 

 

シロコの号令がかかり、カジノ強盗作戦が始まった

セリカちゃんが客と警備を制圧し、ノノミちゃんが監視カメラを破壊、外のアヤネちゃんがドローンで外を監視し、私とシロコちゃんが金庫へ向かう

 

道中それなりに警備も居たが誰よりも早く反応して薙ぎ倒し、ひたすら前へ

頭の中の霞を吹き飛ばすように気を吐き、あっという間に金庫へついた

 

 

 

「ん、流石先輩。計画よりかなり余裕ができた」

あとは任せて、とサムズアップをするシロコちゃん

 

………うん

 

今は忘れよう。もう何度目か分からない考えを胸に今一度深呼吸。

 

 

 

「・・・開いた、いこう!」

重い音を立てて開いてゆく鋼鉄の扉。待ちきれないとわずかな隙間から飛び込む後輩に続いて私も中へ

 

 

 

「? なんの匂、い…」

「…っ!?この匂い、は」

 

 

 

おおむね情報通り。金塊、現金、武器に兵器…カイザー元理事最後の蓄えが所狭しと並んでいた

唯一情報通りでは無かったのは──

 

 

 

「──うそ、ギュメイ…先生?」

 

 

 

生きているのか?死んでいるのか?見ただけでは分からないほど凄惨な姿になって立ち尽くす恩人と、その足元に広がってゆく大きな血溜まりだった




ホシノのアホ毛を引っ掴んでみたい作者のルルザムートです、ハイ。
今章の総力戦編を持ってカジノにもケリをつけます、といってもただブッ潰すだけですが…さてそう簡単に潰せるかどうか

それではまた明日…
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