総力戦編 第19話です、お楽しみください
「これでいい」
でっぷりとした髭と野望を孕んだ瞳、今はなき帝国の王服に身を包んだ男はバルボロスにまたがる小さな竜戦士を撃ち落としてそう呟いた
「あとはこの果実の力を試せば…「やはりあなたですか、皇帝陛下」
見れば自分の小間使い──不知火カヤが呆れた様子で背後に立っていた。
こやつはエリドゥにいたはずだが…キメラのつばさを使ったか
…連邦生徒会防衛室長、不知火カヤ。ガナンの皇帝たる余を前にしても物怖じしないこの小娘は存外役に立っている
余に比べればゴミには違いないが利用価値のあるゴミだ、彼女がいなければここまで容易くキヴォトスを歩き回れなかった。その点については評価してやろう
「なんだその態度は?余の決定に文句があるとでも?」
「ありませんよ、ただ何かやるつもりなら一声掛けて欲しかっただけです
臣下なりに頑張ってますけど陛下の心境を残らず把握できるほど仕えていませんので」
「ク、言いよるわ小娘が」
…遠方では大慌てで天童アリスを助けに行こうとするバルボロスが見える
多少ゴミが間引かれるかもしれんが…バルボロスがついているのなら少なくとも竜戦士は死なんだろう
さて、エリドゥに向かうとしよう
【ガナサダイはキメラのつばさを放り投げた!】
▽▲▽▲▽
『バカな…!こんなバカな!?アリスッ!!』
火球が直撃した彼女はなすがまま地上へと落ちていく
このままでは地面と激突して──いやそれより早くペロロジラがトドメを刺そうとビームを撃とうとしている!
『させるかァァァア!!!』
急降下と同時に放たれるビーム、それに当たるのも構わず意識は下へ──
『ギッ…!』
グレイナルのものとはまた別種の灼熱が鱗越しに身体を焼いてくる
ク、ふざけた見かけのくせしてなんという…!?こんなもの人間が受けたらただでは済まない!
『アリスっ』
なんとか地上スレスレでアリスを受け止め、この瞬間はビームと落下から守ることができたが事態は全く改善していない!
くそ、ペロロジラが近すぎる…!
ズシン
『あぐぅっ…!?』
巨体の足がアリスごと踏み潰そうと身体にのしかかってきた!
いや、それだけではない!なんだ、これは…!?
『そんな!?リオ先輩、2人が!』
『なんなのこの力は…!?解析できない!』
闇や天使の力とも違う何かが踏み付けられた場所から流れ込んでくる!何か…何か分からないがこれは危険だ!
今すぐ逃げなければ取り返しのつかないことになると直感するがこうものしかかられては全く動けない、自爆覚悟でドルマドンを放てば押し返せるかもしれないがそうなっては身体の下のアリスも一緒に粉々になってしまう
『こ、この怪物が…!』
なにも、できない!
▽▲▽▲▽
「ふ、2人から離れろっ!!」
『ユズ!?やめなさい!サージタウスは力押しできるような兵器じゃないわ!それにペロロジラにはまだ何か得体の知れない力が──』
我を忘れる怒りとはまさにこのことだろうか、自分でも信じられないほど大きな怒鳴り声が喉の奥から湧き上がり、激情のままペロロジラに飛び掛かる
サージタウスの体当たりでぐらりと揺らぐペロロジラ。
バルボロスが離脱したのを確認し、自分も一旦距離を取ろうと ガシィッ
「っ!?」
『何か』に機体を掴まれて距離が取れない…!
でもペロロジラに腕なんて無いはず──うっ!?
カメラの角度を変えたことでそれが見えた、見えてしまった
なん、なの…これ…?
黒い肉を裂き、ペロロジラの体内から飛び出した無数の金のツタがサージタウスを絡め取っており、全く動けない!
ミシッ…
「ひっ…!?」
それまで自分だけの絶対的スペースであるパイロットコアの内壁がイヤな音を立てて変色してゆく
ミシミシミシ…
ひたすら黒に近い紫色の染みみたいなものが凄いスピードで内側に広がって──
「────あぐ、あ"…!?」
直後襲ってくる凄まじい不快感。例えるなら痛覚だけを奪われたまま頭に穴を開けられ、粘度の高い液体を無理やり詰め込まれているような感覚。
「うぐ、ぐぇっ…!これ、は…」
ヒビ割れ、黒ずむヘイロー。
変色する髪色。
霞む視界に映る黒い穴。
──ユズの神秘が【反転】しようとしていた
世界を恐怖の底に叩き落としたガナン帝国ですが実際に【悪】であったのはゲルニックとガナサダイ、サンドネラの3人だけだったんじゃないかなと思っている作者のルルザムートです、ハイ。
横槍のせいでユズ大ピンチ、さて…
次に書くカルバノグを初登場にしようかと思いましたがカジノ編の偽チェリノ、ゴレオンみたいな感じで一足早く出すことに。
またドラクエからのキャラは基本的に善性として出すことが多いですがガナサダイとゲルニックだけは純粋悪として書きたいなとも思っています
・・・ゲルニックは、まだ確定してませんが。
それではまた明日…