総力戦編 第24話です、お楽しみください
果実の力を光の剣が使用可能なエネルギーに変換するべく煩く光る祭壇、その隣。
開け放たれたアビ・エシェフ出撃用のシャッターから外を眺める竜戦士の表情は──お世辞にも明るいとは言えなかった
「……………」
──みんな戦っている
ペロロジラ…いや色彩の姿はエリドゥの外壁に遮られて見えないがそう遠くない場所でみんなが戦っている
あれを倒せる唯一の手段、究極魔法剣『ギガスラッシュ』…それを天童アリスが放つことができると信じて戦っている
反対していたアウルでさえ戦いに行ったと聞いた時は、それまで考えないようにしていた不安と緊張が抑えきれなくなっていた
「……………」
『アリスよ、大丈夫か?』
隣に佇むバルボロスが心配そうに聞いてくるが言葉を返す余裕もない
別にこの選択を後悔しているわけじゃない、仲間であるユズを見捨てるなんてそんなことできるわけがない
──でも怖い
思い起こされるのは先の格納庫で鳥山アウルが言い放った『絶対条件』…
▽▲▽▲▽
『──いいでしょう、もう好きになさい
ですがシャーレとしてこれだけは口出しさせてもらいます
アリスさんの失敗が確定したその時はワタクシとトリニティの全火力を持って色彩をエリドゥごと爆撃します
当然エリドゥ内の人間はもちろん、周辺の生物や建築物は甚大な被害を被るでしょう
ですが目標を足止めはできます、その時間を使ってワタクシらはあなた方の尻拭いをする…そういうプランで行かせてもらいます
…爆撃が始まった時にエリドゥ近辺にいれば間違いなく助かりません。
ですがこれも世界を守るためです、果実を使った作戦を強行すると言うのならこのフォローを断ることは許しません、いいですね?』
▽▲▽▲▽
「………みんな」
みんな死ぬかもしれない。いや死んでしまう。もし自分が失敗したら、モモイもミドリもユズも、リオもユウカもネル先輩も、エンジニア部とヴェリタス、ゲヘナの人たちも、みんなみんな、自分のせいで死ぬかもしれない
アリスはユズを助けたいです、でももし失敗したらユズだけではなくみんなを危険に晒してしまいます
そう思ってしまったら、手が…
『アリス…』
「こ、怖い、怖いです…もし失敗したら…?
もしギガスラッシュが撃てなかったら?
もしまたさっきの火球が飛んできたら?
そもそもギガスラッシュで色彩が倒せなかったら、そうなったらアリスは、みんなは──」
身体の震えが止まらない小さな竜戦士、付き従う闇竜もどう声を掛けていいか分からぬ気まずい沈黙の中で
「大丈夫だよ!」
「え?」
『む…』
底抜けに明るい仲間の声が聞こえた
「やっほアリス!調子どう?」
「モモイ?それにミドリも…どうしたんですか?」
2人の持ち場はここじゃないハズですが…
「ゲームするよゲーム!」
「『──え?』」
そう言ってモモイはやたら大きなバッグから人数分の携帯ゲーム機を取り出し、電源を入れながら配っていく
「あの、これはいったい…」
「バルボロスも!杖持ってるでしょ?こっちきて!【スマシス】やるよ!」
『??? いや、今は「いいからほら!」
流されるままアリスはゲーム機を受け取り、バルボロスも杖の力で人の姿へ
訳もわからず始まった【スマシス】は…モモイの圧勝だった
といってもマトモに戦えばそこそこいい勝負はできるのだが変則ルールを使いまくったモモイにアリス達は太刀打ち出来ず、結果インチキ同然の方法でモモイはアリスとバルボロスをボコボコにやっつけ、ゲラゲラ笑っていた
『お、おい待て!操作はどうやるんだ?そもそもこれは何をしたら勝ちなんだ!?』
「真剣勝負に待ったナシ!これでも食らえ!」
「ああっ!?ず、ずるいです!体力制でそのタコの必殺技を使うなんて!?」
「お姉ちゃん、いくらなんでも汚すぎるよ…」
「ゲェっへっへっへ!勝てばいいのだよ勝てば!
もっとボコってもいいけど…今は非常事態だからね、終わった後でもう一回やろう!
今度はユズも入れて5人でさ!」
…!
『………そうかモモイ、お前は…』
「──最近さ、新しいシナリオ書いてたんだ。初心に戻って書いた王道RPGのね
それが今のアリスにまさにピッタリだったから伝えるよ?」
「…『どんな世界でもね、ゼッタイ勝てると安心して戦う勇者なんて1人もいないんだよ
むしろ負けるかもしれないって思いながら戦っている勇者は結構多いと思う
ただこれだけは分かる。どの勇者も勝てるとは思っていなくとも、負けられない!って思いながら戦ってたと思うんだ』」
「…!」
「『動機は色々あったけど、どの勇者も自分より強い敵に立ち向かっていた
普通に戦っても負けるだけだと思えるくらい強い相手に。
私が思うに、勇者っていうのは世界を救うから勇者なんじゃなくて…勇気を出して立ち向かったから勇者になれたんだと思う
それで世界が救われたのはあくまで結果…オマケだ。
大切なのは怖い気持ちを抱えながらでも立ち向かうその心…それさえあればどんな人だって勇者になれる。そう、私は思っている』」
そう言ってモモイは背中に背負っていたアサルトライフルをこちらに差し出した
「私のと…あとこれユズの銃ね!サージタウス搭乗前に預かってたんだ!
…バルボロスが力を発揮するには竜戦士以外の人は乗らない方がいいって聞いたから、これを私たちの代わりに連れて行ってよ!」
「いやお姉ちゃん、流石にこんなにたくさん持ちまくったら邪魔になるんじゃ…」
──そんなことない
「邪魔なんて、そんなことありません!モモイ、是非貸してください!ミドリの銃もお願いします!」
「いえーい、そうこなくっちゃ!ほらほらミドリも!」ぺいっ
「ちょっとお姉ちゃん──あ。」ぺいっ
モモイとミドリ、そしてユズの銃も受け取った時、アリスは不思議な気分になった
まだ怖い、失敗するかもしれないという恐れはある。でも妙に気分は落ち着いていた、身体の震えもいつの間にか消えている。
『ザザッ…色彩ペロロジラの足止めは限界です!果実の変換は!?』
『解析率48%…ようやく半分といったところだけどこれ以上変換している時間は無いわね
アリス聞こえる?もう色彩ペロロジラがエリドゥ内に侵入するわ、あなたにはこの48%分のエネルギーでギガスラッシュを撃ってもらうことになる。分の悪い賭けだけど…』
「いいえ、アリスは大丈夫です!今パーティメンバーから強い力を貰いました!
アリスは絶対に負けません!ユズとみんなを守ります!」
あのリオが不安げな声を出す中で、反対にアリスは高らかに声を上げた
勝てるかどうかは分からない、だが絶対に負けはしないと自信たっぷりに。
『エリドゥの防壁が破られます!充填急いでください!』
『…さっきと同じよ、機械──いえ祭壇にあなたの剣を。』
「はい!」
光の剣、スーパーノヴァ…勇者の剣が祭壇へと添えられた
最後の希望。
世界を救える【かもしれない】力。
竜戦士アリスはこの力を世界ではなく、仲間を救うために求める。
またみんなで一緒に過ごす…他の何物にも変え難いキラキラした願いのために。
ガコンッ
『刀身、固定位置。』
『果実エネルギー装填開始。』
『光の剣以外にエネルギーを回す余裕は無いわ!
アビ・エシェフ破棄!軌道誘導をマニュアルに切り替え!!』
『エリドゥ防壁が攻撃を受けています!色彩ペロロジラが突破するまでの予測残り時間…12秒!』
『地上戦闘員はギリギリまで攻撃を続けろ!装填時間を稼ぐんだ!』
「………アリスは、負けません」
闇竜から授かった鎧が竜戦士の強い闘志によって呼び起こされ、三たび彼女の身体を纏う
そしてその上に、仲間から預かった3つの武器を背負い、いざ──
ズズン…
「うわ、来た!」
アビ・エシェフ出撃用出口から見えたのは、鉄塊みたいなゲートを破壊してエリドゥ内へと足を踏み入れた色彩ペロロジラ。
…もう後戻りはできない!
『ッ…!正面の防壁が突破されました!色彩ペロロジラ、エリドゥ敷地内に侵入!』
『装填は!』
『エネルギー装填完了!果実と光の剣を祭壇からパージ!』
『軌道予測、最終入力完了…!
以降の軌道修正は天童アリス当人の手動調整に任せます!』
『地上戦闘員退避完了!』
──行こう
見えていないだろうがペロロジラはしっかりこっちに向かって歩いてきている
あとは叩き込むだけ。
「──足りない」
「アリス?」
意識はしていなかった。その一言も口をついで出ただけ。
ただなんとなく、光の剣と一緒に祭壇から弾き出された女神の果実を拾い上げてそう思った
きっと半分では足りない。ならアリスは、勇者アリスは、
勇者とは世界を救う存在ではない、勇気を出した者だ。それなら勇者である自分は更にもう一歩、勇気を出すんです!
「────あむっ」
『アリス…!?何を──』
アウルから制御できないと言われていた女神の果実。解析も変換もできなかった残り半分の果実を、アリスは迷いなく食べた!
「う、うわっ…!?光が…!」
「──ぐ…!」
果実と同じように光り輝く身体。煌びやかな見かけとは別に制御の効かない暴れ馬のような力が少女の身体を駆け巡る
すごいチカラです…!まるで自分が自分で無くなるみたいな…!でも、アリスは!
『…!?色彩ペロロジラから超高熱反応!ビームが来ます!』
『なぜ急に…!まさか果実に反応して…!?
バルボロス!アリス!すぐに移動して!薙ぎ払われるわ!』
ホログラムのリオがそう叫ぶが間に合わない
既に色彩はギガスラッシュを放つ勇者の存在に対し学習を終えており、更にそこへ女神の果実という未知のエネルギーを感知していた
思考も目的も持たぬはずの色彩は、その2つが【自分の存在を脅かすもの】として認識し、何よりも真っ先に消しにかかってきたのだ
アリス達に逃れる術はない
『は、発射まであと2秒──』
『みんな逃げ──…っ!?え、なに、なんですかこれ…誰もいないのに、動くはずが──』
色彩ペロロジラから放たれた灼熱の光線、アリス達をエリドゥタワーごと消し去ろうとしたビーム。…それが割って入った巨大な何かに遮られた
動くはずがない。リオやヒマリはもちろん、主に開発で携わったエンジニア部達でさえ理解ができなかった
「うわわっ…!…え、ウソ!サージタウス!?なんで!?」
「ウタハ先輩!これは…!?」
『バカな…!動くはずがない!ハッキング対策で内部にパイロットが居なければ動かないし搭乗には各部長の許可が必要なはず!コトリ!あれは誰が動かしている!?』
『無人です!パイロットコアには誰もいません!命令の発信源は──っ?姿勢制御、AIから…』
『それは、どういう──』
《指一本、触れさせない…!》
かつて勇者が【王女】であり【魔王】であった時のこと。
今も変わらず彼女を主と称える従者は満身創痍の機体を駆って目前の災害に立ちはだかった
その姿は、さながら忠を尽くす騎士のようにも──
《王女に!近付くなぁっ!》
今話、Angel of Doomを聴きながら書いていたせいでちょっと影響受けちゃったかと心配+反省している作者のルルザムートです、ハイ。
総力戦編、最終決戦にしてケイが駆けつけました。まぁサージタウスの中にずっといたんですがね…
彼女を出した理由ですがこの二次創作は最終章まで書いて終わり、という予定で書いていますのでデカグラマトン編を書く予定が(今のところ)ありません。が、作者がケイというキャラクターが好きなのでどうにかして出せないかなぁと思った結果がこうなりました
元々サージタウスのパイロットも2人の候補(ユズとケイ)がいて迷っている旨を以前書きましたがそこに知人から【パイロットが複数いても別にいいんじゃない?】という天啓をさずかったためこうなりました。うーん、いいね!
それではまた明日…