ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

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前回ラストの人物については喋り方や振る舞い方を何回も書き直して誰なのか簡単には分からないように書いたつもりですがこういう『謎の人物』書くのってすごい難しいですね…

というわけで対策委員会編第9話、いよいよアビドス編終局に突入!
お楽しみください


捨て去る勇気

「これで手続きは終了です、これにてあなた──梔子ユメの身柄は我々ゲマトリアが正式にお預かりすることになりました

契約通り残る借金の半分も我々が負担しましょう」

「………」

 

紙とペンを返し、言われるがまま彼についていく

 

「………」

 

「………あの」

「どうしました?」

 

全身真っ黒で、顔と思しき場所に貼り付けたような白い亀裂と目の男性が振り返る

 

「その、えっと…あなたは…」

「呼びづらいようでしたら『黒服』で構いませんよ、小鳥遊ホシノはそう呼んでいました」

 

 

 

「黒服、さんは…どうしてホシノちゃんが欲しかったんですか?」

 

 

 

私がカイザーPMC基地に来た時、兵士を押し除けて迎えに来た彼はものすごく驚いていた

彼はホシノが提案を受け、自らここにやってきたと私の顔を見るまで確信していたみたいで…

 

 

 

「アビドスの借金を半分肩代わりしてくれるって言いましたけど…ホシノちゃん1人にそれだけのお金を払っても良いと言うあなたの目的はなんですか…?」

「………」

 

「黒服さん、あなたはカイザーコーポレーションの人とは違う気がする

 

ギュメイ先生はホシノちゃんをアビドスから排除するためだって言ってたけど、他に目的があるんじゃないですか?」

 

 

 

ギュメイ先生が教えてくれた、相手を知るには相手の欲望…欲しいものを考えること。

ギュメイ先生は『ホシノちゃんを排除する』ことがカイザーの欲望だと言ったけどそれでは辻褄が合わない

 

──でなければこんなにあっさり、生徒会を解散するだけで私が身代わりになれるはずがないのだから

 

 

 

「…聞いた話と随分違いますね、梔子ユメさん

そこまで頭が回るとは聞いていませんでした」

「私だって、アビドスの生徒会長だから…!」

 

「その生徒会もすでに無くなってしまった以上、虚しい肩書きですね

…概ね正解です、乱雑ではありますがあなたの推測は正しい

我々は小鳥遊ホシノが欲しかった」

「………」

 

 

 

「キヴォトス最高の神秘…替えのきかないその実験体を手に入れ、研究し解明する…我々の目的はその1点であり、カイザーのようなくだらない企業と組んだのもその目的を達成するため…

 

もっとも小鳥遊ホシノより先にあなたが来てしまったため、シナリオを変える必要がありましたが。

小鳥遊ホシノならば生徒会解体の手続きなど要らなかったんですがね…」

 

 

 

「…?どういう──いや、待ってください。それならなんで私を受け入れたんですか?

あなたはホシノちゃんを研究したいと言った、替えがきかないとも…それならなぜ──「梔子ユメさん、あなた昨日のお昼何を食べました?」

 

 

 

っ???

 

 

 

いきなり飛んできた意味不明な質問、いや意味自体は分かるが意図が分からない

とはいえ答えなければ話は進みそうにないのでとりあえず答えることにした

 

 

 

「いきなりなんの話を…昨日はゲヘナの食堂で分けてもらったチャーハンを食べましたけど…」

「ならその前は?」

「カップみそラーメン…あれ?塩ラーメンだっけ?」

 

 

 

「──まぁ食べ物に限った話ではありませんね

では少し時間を飛ばして1ヶ月前はどこに居ましたか?」

「え?ホシノちゃん達と一緒にアビドスに…確かその時期くらいにホシノちゃんにシロコちゃん達を紹介してもらって…」

 

「そのさらに1ヶ月前は?」

「その前?その前は、ええと…」

 

 

 

──あれ?

 

 

 

「歩いた場所、食べたもの、出会った生徒、話した会話…

なんでも構いません、覚えていることを教えてください

()()()()()()()()、ですが」

 

 

 

あれ、なんで…いくら私が忘れんぼだからって…いくら2ヶ月も前のことだからって…

 

記憶を遡っても思い出せない、2年以上前…ホシノちゃんと2人で頑張ったことは鮮明に思い出せるのに。

っ?2年前?あれ…?2年前のホシノちゃんが1年生でその時私の学年は──

 

 

 

「少なくとも1ヶ月前まで我々は小鳥遊ホシノだけに狙いを絞って動いていた

しかしあの日、空から落ちてきた黄金の果実が全てを狂わせた」

「!!」

 

ギュメイ先生の言っていた願いを叶える果実のこと…?

 

 

 

「あなたには見せておきましょう、これは私が個人的に回収した…黄金の果実です」

 

そう言って黒服が差し出したのはギュメイ先生の話にもあった黄金の果実だった

実物を見るのは初めてだが果物とは思えないほど爛々と輝くそれは一目見てもすごい力を秘めていると直観できた

 

 

 

…それに、なんだろう、あの果実を見てると…なんだかどきどきするような…

 

 

 

「これが空から落ちてきたあの日、たまたま落下地点に居合わせたのは幸運でした

神秘以上に不可解な存在なのはすぐに理解しましたし解析しようとしましたが…1ヶ月かけてなお何一つ分からなかった」

「──それが私を狙おうと思ったのとどういう関係が…?」

 

 

 

「正直に言えばこじつけですよ、アビドスにも果実が落ちたことは知っていましたがいくら探しても見つからなかった

…代わりに見つかったのは小鳥遊ホシノがどこからか連れて帰ってきた梔子ユメという生徒…

 

そしてユメさん、あなた今私が見せた果実を見て何か思ったことがあったのではないでしょうか?実物を見た事がないにしても…()()()()()()()()()()()()()()のでは?」

「………」

 

 

 

「私は思ってるんです、あなたの存在がこの果実を知る手がかりになるのではないかとね

クックッ、こう見えて私のカンは結構当たるんですよ?」

 

「研究者がカンを頼っちゃ、おしまいだと思いますけど…」

「クッ、痛いところを…おや?」

 

 

 

ふと黒服の懐からコール音…

電話?

 

 

 

「はい…はい、分かりました

いえ小鳥遊ホシノの回収は見送ります、そちらは予定通りに進めていただければ結構です

はい、では。」

「誰…?」

 

嫌な予感がする

 

「カイザーの理事長です、たった今『元』アビドス自治区への侵攻を開始したと」

「えっ…!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『火炎斬り』っ!…く、数が多すぎる!」

ユメが消えた、その衝撃的な事実を受け止める間も無くカイザーPMCがアビドス自治区へ侵攻を開始、市民諸共破壊し尽くそうとするPMCに対し、ギュメイは残った対策委員会と共に前線で刀を振っていた

 

 

 

「ギュメイ先生!」

「我はいい!それよりシロコ達は市民の避難を優先させろ!」

 

 

 

どういうことだ?ホシノは奴らの誘いを受けてはいない、現に横で戦っている

カイザー側もおいそれと攻撃を仕掛けられるとは思えん、どんなカラクリを…

 

 

 

『!! 4時の方向に大型戦車!ほ、砲撃が

「『マヒャド斬り』!…っ、『魔神斬り』っ!」

飛んできた砲弾を無害化し、そのまま全速で距離を詰めて戦車を両断。だが次から次へと押し寄せるそれら全てを斬る余裕は無く──

 

 

 

『車軸から増援!』

「これは私がやる!ギュメイ先生は反対側を!」

「ホシノっ、頼む!」

 

どこから引っ張り出したか分からないアーマーを身につけてカイザーPMCを屠っていくホシノ

彼女のおかげでほんの少しできた余裕に改めて現状を確認する

 

 

 

まずい、魔神斬りは撃ててあと2.3回…これ以上大型兵器を使われたら撃破するのに時間が…

 

『あ…何か来ます!これは…カイザーの…!』

「!」

 

だがその思案も予期せぬ横槍によって強引に中断せざるを得なかった

あいつは…?

 

 

 

「ごきげんよう対策委員会諸君、それと…そちらの方は初対面かな?」

「…おおよそお前が誰なのか見当はつくがあえて質問する。誰だお前は?」

 

 

 

「名を尋ねるならばまずは自分からではないか?…まぁいい、こちらも見当はつくしな…

私はカイザーコーポレーションの理事長…他にも色々肩書きはあるがそれだけ分かってもらえればいい」

 

「そうはいかん、お前が理事長だというならこの状況について説明してもらおう。カイザーが自治区の土地を買い漁っているという話は聞いているがだからといって無差別攻撃していい道理は無いはずだ

…答えろ、返答によってはアビドス自治区内のカイザーPMCは全滅すると思え」

 

 

 

切先を向け、さらにその切先にも劣らず鋭い眼光がカイザー理事を射抜く

 

「脅し…ではなさそうだな、できるかどうかは別として返答とやらを間違えればキミは死ぬまで戦い続けるだろう

仕方ないな、答えてやろう」

 

 

 

避難誘導をしていたシロコ達が戻ってきた

…どうやら彼はシロコ達が合流するのを待っていたらしい

 

 

 

「今朝のことだ、アビドス生徒会は正式な手続きのもと解散し無くなった

君たちはもう何者でもない」

 

「っ?どういう意味だ…?」

「な、なにを言ってる…!?生徒会は解散なんてしてない!現にこうしてまだ役員が残っている!」

 

 

 

どうも対策委員会とは枠の違う組織がアビドスにはあったらしい

そういえばユメからそんな話を──まさか!

 

 

 

「梔子ユメはどこだ!」

「え?」

「さてなんのことやら、彼女と交わした契約は『借金の半分を肩代わりするかわりに生徒会を解散させる』という契約だけだ、身柄は預かっていない

…もっとも、残った半分のために今新しい契約を結んでいるかもしれんがね」

 

 

 

「っ!!!ユメ先輩を連れ去ったのはお前か!」

「連れ去ったとは人聞きの悪い、彼女は自分からやってきて交渉したのだ

まさか来るとは思ってなかったから驚いたが」

昨日引き返したように見えたのはそれか…

 

 

 

「ともかく公的な部活も委員会も生徒会も、自治区さて無いアビドスは学園都市としての自立、維持が不可能と判断…

 

やむを得ない、ここは自治区の主である我がカイザーコーポレーションがあの学校を引き受けることとしよう」

 

 

 

「待ちなさいよ!アビドスにはまだ対策委員会がある!私たちがまだいるのにそんな言い分通じるわけないでしょ!」

『いえ、セリカちゃん…』

 

「アヤネちゃん?」

『対策委員会は公式に許可を受けている委員会じゃない…対策委員会ができた時は既に生徒会は無かったから…』

「え…!?」

 

 

 

「その通り、対策委員会と銘打ってはいても所詮は非公認の委員会…

正式な書類も無い以上君たちの存在を示すものは何も無いのだよ」

「カイザー…!」

 

 

 

「そう睨んでくれるな。ところで…シャーレ顧問のギュメイだったかな?なぜそこまでアビドスに肩入れするか分からんが私から提案がある

 

シャーレを辞めて私の組織に来ないか?

見たところ銃すら持っていないのにそれを補って余りあるほどの剣技…よく分からん組織で腐らせておくにはあまりに「断る」

 

 

 

あまりに巫山戯た提案に言葉を被せて拒絶。

それは冗談でも済まない提案だ

 

 

 

「悪い提案では無いと思うが…理由は?」

「断る理由は2つ

1つ、我はアビドスを救うと彼女らと約束したから

そして2つ目、我が剣を捧げる相手はガナサダイ皇帝陛下ただ1人。二君に仕えるつもりは無い」

 

 

 

「残念だよ、受けてくれればキミのような素晴らしい兵士をみすみす殺さなくて済んだのに

──カイザー理事長より通達、シャーレ顧問とアビドス残党を「待ってカイザー理事!」

 

 

「? おや《元》アビドス生徒会の小鳥遊ホシノ、どうしたのかな?」

「私の負けだ、カイザー理事。アビドスは…救えなかった」

 

 

 

「ホシノ先輩!?だめよ諦めるなんて!ここまで、ここまでやったのに…!」

『いえ…でも、ホシノ先輩の言う通りです…

確かにホシノ先輩とギュメイ先生、そして私たちが力を合わせて万に一つ、カイザーPMCを倒したとしても借金は無くならない…』

 

 

 

弱音を吐くアヤネにノノミもシロコも言葉を返さない

諦めかけていたところにそれまでアビドスを引っ張っていたホシノの敗北宣言は後輩達にとってあまりに重すぎた

 

 

 

「降伏宣言かね?まぁアビドスを去るというのなら君たちまで排除するつもりはないが…

だがそこの男は別だ、彼はあまりにも我がカイザーPMCに損害を出しすぎた、排除の意向は変わらんよ」

 

「………」

ぬけぬけと…ここでアビドスを見逃すのは行き場の無くなった彼女達を傭兵にするためだろうに…

 

 

 

「分かってる。でも私たちはギュメイ先生に迷惑をかけたし世話にもなった

…これでおしまいなら、最後に3分だけ先生と話をさせて。…お願い」

「ホシノ…」

 

「ふっ、いいだろう。3分と言わず5分でもいいぞ」もっともそれ以上は待たんがね

 

 

 

お通夜モードの後輩達を尻目にホシノが歩いてきて──抱きついた

 

 

 

「ねぇ先生」

「なんだ」

 

「『失ったものに囚われ続ければいずれ必ず酷い結末を迎える』って、前言ってたよね」

「ああ」

 

「あはは、うん、酷い結末だ。アビドスはもう救えないし、ユメ先輩も消えちゃった

言ってた通りの酷い結末まっしぐら、もうここまで来たら笑うしかないよね」

「…そうだな、このままいけば我の言う『酷い結末』までまっしぐらだ」

 

 

 

「そう、まっしぐら。でもさ、終わりに向かってるってのは『まだ終わってない』とも言えるんじゃないかな」

「ああ、その通りだ」

 

「アビドスを守るために踏ん張ったから私はシロコちゃん達と会えたし、会えなかったとしてもこれが間違っていたとは思わないよ

ただ子供だけで立ち向かうにはちょっと相手が悪かったかなって」

 

 

 

「弱いなぁ、私…ここまで来てるのにまだ迷ってる。やっぱりこれまでの頑張りを無駄にしたくないよ」

 

 

 

「『何を失った?』とも聞いたよね、うん。失ったよ、2年前…私が意地を張ったせいでさ

そしてこのままアビドスに執着し続けたら、今度は別のものも失うかもしれない、いやきっと失う」

 

 

 

「だから私は選ぶよ。たとえみんなに非難されようともね

 

──アビドスを捨てて、みんなを守る

シロコちゃんもノノミちゃんも、アヤネちゃんもセリカちゃんも、

そして、ユメ先輩も…!」

 

「ふっ、我のことは守ってくれないのか?」

「先生は私より強いじゃん、むしろおじさんを守って欲しいなぁ〜?」

「随分と信用されたものだ、いいだろう」

 

 

 

かつてベクセリアで剣術指導をねだってきた子供をあやすようにホシノの頭を撫でる

だらしなく笑ってはいたがその目には確かな覚悟と決意が宿っている

もう心配はいらないだろう

 

 

 

「時間だぞ、小鳥遊ホシ「元アビドス生徒会役員兼、対策委員会副委員長の小鳥遊ホシノがアビドス高等学校の生徒に告ぐ!」

 

「「「「!?」」」」

 

「私は負けた!私の力不足で…もうアビドスを救うことはできない!」

「そんな…今まで私たちのやったことは…?」

「ホシノ先輩…!」

 

「でも!まだ失ってないものもある!」

 

 

 

「何かやる気か…?」

「理事長、そろそろ」

「まだ始めずともよい、どうせここから何もできん」

 

 

 

「梔子ユメ!ここにいないもう1人のアビドスの仲間…!今彼女は私たちを助けるために自分を犠牲にしてる!

アビドスは失っても、彼女はまだ失っていない!」

 

「!」

「ん、確かにその通り」

 

 

 

「まさかこいつら…!?」

「玉砕する気か?」

「たかが6人、うち5人は子供だ。何もできは…」

 

 

 

「私とギュメイ先生でカイザーを抑える!

シロコちゃん達はユメ先輩を助けに行って!

場所はGPSで分かる!」

「ん!任された!やろう、みんな」

「ここまで来たらもうやるしかありませんね⭐︎」

「上等よ…!これまでやられた分たっぷり仕返ししてやるわ!」

『せ、セリカちゃん、セリカちゃんの役割はユメ先輩の救助だから…その…』

「えっ、あ、分かってるわよそれくらい!」

 

 

 

「こいつら本気か…!?」

「らしいな、始まるぞ!」

「第2、3部隊戦闘体制、後続も呼べ!」

「理事長、お下がりを!」

 

 

 

「私は負けた!だが私『たち』はまだ負けてない!みんな、力を貸して!!!」

「「「『「おおーーーっ!」』」」」




ドラクエで1番好きなキャラクターはもちろんギュメイ将軍ですが、2番目に好きなのは何を置いてもキラーマジンガ様、な作者のルルザムートです、ハイ。

ブルアカ本編ではホシノ離脱、そこから便利屋参上で希望を取り戻した対策委員会ですがこの二次創作では離脱せず、またギュメイによってちょっとだけ大人に、ちょっとだけ現実に目を向けたホシノに成長したことで便利屋到着前に覚醒しました。

自分の妄想になってしまいますが2年前にユメ先輩が『死亡した』ではなく『死にかけた』だったのならホシノはアビドスに固執せず、ユメを連れて別の場所に流れたんじゃないかなー…なんて思いながら書いてましたし

そして対策委員会編を書くにあたって次回に当たる話は作者の中で2番目に力作でお気に入り!
…というのも各話サブタイトルは基本的に予約投稿するその時まで決まっておらず、その場で考えてつけてましたが次回分のタイトルだけは最初の数行を書いたあたりで決めていました
(その時横で流していたドラクエ戦闘曲が曲名も脳内再生曲もピッタリで書いてる最中常にノリノリ、多分書き切るのに30分もかからず終わってしまったので。)

次回予告などは本来する予定ありませんでしたが今回だけはさせてください。
ということで次回、『-- 血路を開け --』
それではまた明日!
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