サブストーリー編 第11話です、お楽しみください
『──今、なんて言った?』
「聞いての通りだバルボロス」
万が一にもアリス達に聞かれないようにトキとチアキを門番に立たせた部屋の中でギュメイとケイは新たにバルボロスを加え、再び密談をしていた
『グレイナルの竜戦士が現れた…!?』
「うむ。我とゴレオン、七囚人のワカモとアケミ、そしてガンベクセン様率いるレッドウィンター全戦力を持ってギリギリで勝利したが撃退しただけだ、脅威はまだ消えていない」
もはや負傷を隠し通すことはできず、ゲーム開発部に己の状況を説明したギュメイ
もちろん嘘偽りなく話した彼であるが1つだけ事実を捻じ曲げたことがあった
負傷の理由である。ギュメイは竜戦士に刺されたことは元より、竜戦士の存在自体を隠すことにした
例外的にバルボロスとケイには話すことにしたがいずれは部員全員に打ち明ける時が来る
『グレイナルを駆る竜戦士──うん?え、待ちなさい、その話が本当だとすれば…』
「ああ。このままではグレイナル側の竜戦士はいずれバルボロスと──アリスと戦うことになる」
瞬間苛立ちを爆発させるようにキラーマシンのアームが壁へと叩きつけられる
外も中も機械であるはずのそれは、自分の守りたい存在が脅かされるかもしれないという怒りで満ちていた
『冗談じゃありません!貴方が一対一で戦って手酷いダメージを貰うような相手がドラゴンを従えてアリスと戦う!?ふざけないでください!』
「そうさせないためにこうして話をしているのだ。竜戦士は我が相手をする、確実に息の根を止めるまでこれ以上目立つことはするな」
『それは無理だ帝国将、才羽クロイが私…バルボロスであることはミレニアム中に知れ渡っている
敵の竜戦士から逃れるには姿を変えてアリス達から距離をとるしか… ボガッ! ぎょえっ?!ケイ!お、お前まで殴るのか!?』
『そんなことしたら誰がアリスをグレイナルから守るんですか!?ギュメイ先生でさえ1人では太刀打ちできないんですよ!』
『む…そ、そうだな、すまん』
「………」
………やはり活路が見出せぬ、グレイナルを従えた竜戦士と戦うならゲルニック、ゴレオン、ガンベクセン様に力を借りるのは当然として最低でもそこにバルボロスの力が加わらなければ対抗できん
だがあくまで最低条件だ、竜戦士が騎乗したグレイナルにそれだけの戦力で本当に勝てるのかという疑問が残る
ゲルニックに指揮を任せるという手段も残ってはいるが彼女はアリスを巻き込むことになんの躊躇もしないだろう
【これが1番勝率が高いんですよ】とでも言ってな
そして実際にその通りだとも思っている。
モモイから映画だと言われて受け取った例の記録映像(作ったのは大賢者らしい)を少し見た。
──究極魔法剣【ギガブレイク】…
おそらくは伝説の魔法剣【ギガスラッシュ】の更に先を行く完成形…あんな力、我やゲルニックはおろか300年前の戦争でガナンに立ち向かってきた竜戦士すら持っていなかった。
勝つことだけを考えればバルボロスと共にアリスに戦ってもらうしかない
だがそれはすなわち、アリスというただの少女に人殺しを強要することだ
殺さないようにと手を抜いて勝てる相手でないことは敵竜戦士と戦った我が誰よりも分かっている
「…少なくともこの事実をまだ知られるべきではない、特にアリスにはな」
『まだ、ではありません!なんとしてもギュメイ先生が敵竜戦士を倒すんです!
これが知れればアリスは ガコン
──息つく暇くらい欲しいものだ
昨日と同じように室内の照明が落ちる、当然事故ではないだろう
「わわわ、停電ですギュメイ先生!」
「こっちだチアキ。…ケイ、チアキと共にアリス達の元へ行ってくれ。我が出る」
転がり込んできたチアキと入れ替わりで部屋の外へ。
やはり屋敷全体が昨日のように停電している、慈愛の怪盗の仕業と見て間違いない
「ギュメイ先生。」
「分かっている、トキは護衛を頼む」
「はっ」
横にトキを連れて屋敷内を捜索。
全ての明かりは消え、窓も無いため完全な暗闇だったものの、夜目が効くギュメイには関係ない
さて。
ケイとバルボロスがいればアリス達の心配はいらない。楽観視できるわけではないが少なくとも怪盗の戦闘能力はワカモほど高くは無いことが分かっている
ならば我がやることは1つ。
「位置を探る、しばし動くな」
「は…」
「……………」
刀を納め、瞳を閉じ、心を無にする
やっていることとしては【無心攻撃】から【攻撃】の部分を除いたものに近く、思考や動作といった不純物を極限まで削ぎ落とし、敵を捕捉する攻防一体の構え。
ギュメイはこれを普段から無意識下で行っており、故に敵意のある攻撃が通りづらい
もちろん全ての思考を削ぎ落としているわけではなく、それ故にネルやホシノといった実力者相手に無意識下の無心では彼も対処できない
………だが今のこの【完全な無心】状態であればその実力者達であろうとギュメイに攻撃を加えるのはほぼ不可能だろう
「……………」
────
不純物が消え去って空洞のようになった心の内側が知らない気配を捉えた
そこか。
「トキはここで待て」
「…また無茶をするつもりですか?」
「いや、心配せずとも戦闘にはならぬ」
意識と思考を戻し、真っ暗闇の中迷うことなく壁の一点に向けて突進。
身体が壁と激突するまさにその瞬間、1秒前まで壁だったそれを音なく斬り砕き、薄い水の膜を通り抜けるように向こう側へと降り立つ
「──今まで私を捕まえようと様々な方が追ってきましたが一瞬で、それも誰の手も借りず単独でここまで近付いてきたのは貴方が初めてです、ギュメイ先生」
隠し部屋となっていた壁の向こう側で涼しい顔をしてギュメイを出迎える慈愛の怪盗。
肉薄されてなお焦る様子のない怪盗にギュメイは僅かに眉をひそめた
「目的は今更聞くまでもない、それとは別に聞きたいのは敵だ。お前はいったい誰と戦っている?」
「敵…はて、私は慈愛の怪盗で貴方がたは美術品を守る警備員…敵対関係なら既に見えていたのでは?」
「違う。もしお前が我らを敵とみなしていたのなら少なからず敵意や害意は向けていたはずだ」
それらがあれば彼女の居場所を探るのに無心になる必要もなかった
敵だと認識されていない、そもそもあまり関心が無いらしい
「もう一度聞く、お前は何と戦っている」
「………そうですね、お教えしたいところですが私の予告状を読み解いた方にまずお伝えしたい
言伝をお願いできますか?」
「我はシャーレの人間だ、七囚人であるお前の要望を聞くと思うのか?」
「はい。でなければ有無を言わせず壁を砕くと同時に私を無力化していたでしょう
互いに道は違えど志の高さは近しいはずです、現に貴方は私という七囚人を前に刀を納めている」
…やれやれ
「──伝えたいことはなんだ」
「【予告状にはまだ未解明の謎がある、それを読み解けば私たちは自然と巡り合う】…
そうお伝えください」
「…分かった」
「感謝します。それではまたお会いしましょう、ギュメイ先生」
斬り砕いた反対側、壁だと思っていたそれを扉のように開け慈愛の怪盗は再び姿を消した
…やりづらい相手だ
次第次第に電力が戻る中、ギュメイはトキを連れゲーム開発部達の元へと急ぐのだった…
実のところケイちゃんはギュメイよりゴレオンと組ませてみたいと思っている作者のルルザムートです、ハイ。
ちゃんとした人型ボディのケイちゃんの頭をガッハッハと笑いながらワシワシ撫でるゴレオンは結構絵になると思っている…
それではまた明日…