サブストーリー編 第23話です、お楽しみください
「…………」
何故か始まった恋の話を終えたあと、ユメとの入れ替わりでワカモと過ごすことになったギュメイ。
『少々お待ちください』とわざわざ和装束に着替えてきたワカモと共に飲食店や小物類を扱う店を見て回り、その日は解散。
そして次の日──ようすれば今日もワカモと過ごすことになっている。今日は少し遠出したいと言っていたが…
「・・・しかしこれは本当に仕事なのか?」
最近はあまり使っていない自宅で1人考えるギュメイ。
ユメやゴレオンが言うには、凶悪な七囚人を鎮静化させるためには我が近くで監視しておく必要がある…とのことらしいが
………彼女は、狐坂ワカモという少女は周りが思っているほど野蛮な人間はではない、必要ない。…そう何度も言ったが聞き入れてもらえなかった、いったいなぜ…
どすどすどす…
そんなことを考えながら時計を見れば約束の時間まで1時間を切ろうとしていた。待合場所は30分あれば辿り着ける地点ではあるが不測の事態に備えそろそろ出ておくか…
どすどすどすどす
「・・・・・」
この喧しい足音は──
「こ・ん・のっ…!」
鍵がかかったはずの扉が開け放たれて──
バカヤロぉーーーっ!!!
「おいゴレ──っ、【しんくう斬り】!」
ドスドスという地鳴りのような走りを止めぬまま、部屋に突撃してきたゴレオン、速度の落ちぬまま繰り出されたドロップキック、当然食らえばただでは済まないのでしんくう斬りを放ち、小さな竜巻を叩きつける
「ぬっお!?」
空中でしんくう斬りをまともに受けた150kgの巨体が小さな竜巻によって吹き飛ばされる。その先は当然家の中で──
「ぼっけばーっ!!?」
「──あ。」
・・・鉄より硬い筋肉でできたゴレオンの身体が自宅の壁一面分を壊し、というか抉り取った
わ、我の家が…
マヒャド斬りを放つべきだったと内心後悔するが後悔したところで家が元に戻ることはない。渋々刀を納め、吹っ飛んでいったゴレオンを揺り起こす
「・・・・・お前のせいで我の家が壊れたのだが」
「イテテ…てめーがオレ様を吹き飛ばしたんだろうが!」
「お前が飛び蹴りしながら入って来た時点でどこかしら壊れる。それで?今度はなんだ、我はこれから狐坂ワカモと過ごす仕事があるのだが」
「それがバカヤロォっつってんだよ!お前昨日ワカモちゃんが着替えに戻った時何してた!?」
…?
「戻ってくるのを待っていたが…?」
「なんでお前、着替えなかったんだ?ワカモちゃんがお前のために着替えたのに!」
「??? 話が見えん、なぜ我が着替える必要がある?シャーレの制服では何か良くないことでもあるの「大アリだ!!!」
これを見ろ!!とゴレオンが瓦礫の下から引っ張り出したのはやけに頑丈そうなスーツケースだった。
実際に頑丈なのだろう、へこみどころか傷すらついていない。彼がそれを開けると中に入っていたのは──
「…服?」
「おう、昨日オレとアケミの2人で百鬼夜行に行って買ってきたんだぜ
カネはいらねーぞ、事情を話したらガンベクセン様が出してくれたからな」
なっ…!
「ガンベクセン様が…?いったいなぜ…?」
「それを考えるのもお前の仕事、とだけ言っておく。ホラさっさと脱げ、どーせ着方なんか分からねーだろうからオレが手伝ってやるよ」
「……………」
「あ。あとそうだ、今日のお前とワカモちゃんのデートだがな」
「だから仕事だと何度も──」
ひょい
「あ」
「お前今日一日、剣持つの禁止な」
▽▲▽▲▽
そして…
▽▲▽▲▽
「………」
待ち合わせまで残り15分。すっかり着慣れた普段の格好であればとっくに着いているはずだが足袋と履物のせいで足が思うように動かない
無論足だけではない。紺色の袴に黒い羽織、その上からさらに黒い着物を纏い、それらが乱れぬよう角帯によってしっかりと腰元で縛ってある。
和装束、というものらしい。
これらは全てゴレオンが百鬼夜行から持って来たと言う。着替えろ着替えろとしつこく詰め寄るゴレオンは無視するつもりだったがガンベクセン様が代金を出しているとなれば話は別だ。相変わらず、かの方の意図は分からんが贈り物という善意を無碍にはできぬ
とはいえやはり疑問は尽きない。ブラックマーケットならともかく、七囚人とはいえそれが分からないほど装いを変えた生徒1人と行動を共にするのにシャーレの制服では何か不都合があるのか?そしてなによりも──
▽▲▽▲▽
『陛下から賜った刀を!?ゴレオン貴様…!冗談では済まんぞ!今すぐ返せっ!』
『やかましい!普段のお前ならいいがボロボロのお前が持ってたって生徒達は心配なだけなんだよ!スペシャルサービスで今日はオレ様が守ってやるから黙って丸腰になっておけ!いいか?これはオレ様の考えじゃない、ガンベクセン様の考えだ!分かったら準備しろ!!』
▽▲▽▲▽
「……………落ち着かん」
レッドウィンターの時のような対外的な理由でもない限り、睡眠時ですら腰に掛けていた刀がない。
今自分はシッテムの箱も刀もなく、丸腰でキヴォトスの街を歩いている…
どう考えても道理が合わぬ。ガンベクセン様、いったい何を考えておられるのですか…?
「あっ…あなた様!こちらです!」
「…ワカモ」
慣れない足取りと刀が無いことによる僅かな焦燥感を抱えつつ、なんとか待ち合わせ場所にしていた駅前に到着したギュメイ。
ワカモは既に到着しており、昨日と変わらぬ装束に身を包み笑顔でこちらを出迎えてくれた
「装いを変えられたのですね、とてもお似合いです!」
「………そうか。しかし慣れない衣装で足元がおぼつかん、悪いが少し迷惑を掛けてしまうやもしれぬ故に先に謝っておく」
…どこかから『そこは素直にありがとうって言えよバカ…!』というヤジが飛んできた気がしたがイチイチ気にしていたらキリがないと無視。早速ワカモに今日の行動予定を確認することにした…
帝国軍時代のギュメイならドレスコードの席にもフツーに刀持ち込んでたんじゃないかなと思っている作者のルルザムートです、ハイ。…あの時代、あの国にそういう場がそもそもあったのかは分かりませんが。
というわけでここからギュメイには少しワカモと過ごしてもらいます。せっかくワカモが装束に身を包んでいるのだからギュメイもそうなるべきなのです、ハイ。
それではまた明日…