…サブストーリー編 第27話です、お楽しみください
別に、みくびっていたわけでなかった。戦いの腕前に年齢は関係ない、もちろん自分より強いとは微塵も思っていなかったがこれは──
「っ!!!【火炎斬り】!」
「【マジックバリア】」
真上から叩きつけた火炎斬りを王笏で受け止めるガナサダイ。また受け止めると同時にマジックバリアを展開し、炸裂しかけた炎までもを防ぎ切る
「…!」
「【マホキテ】、【メラミ】!」
更には魔法剣のエネルギーを吸収し、そのまま反撃までしてきている。メラミの火の玉はのけ反って避けたものの、少年の反撃は止まらない
「【メラストーム】!」
「【マヒャド斬り】」
体勢を整えるより早く、畳み掛けるように杖の先から放たれる9発のメラ。それらを無理やり放ったマヒャド斬りによって生み出した氷塊を盾に防御し、そのまま氷塊を蹴り砕いて氷の礫を浴びせる
「っ【おいかぜ】!」
「はは!そこから切り返すか!?」
三歩半という至近距離から追い風を巻き起こして礫をやり返してきたガナサダイ。
…あまりに的確すぎる。攻撃、反撃、回避と魔法障壁の使い分け、これが13かそこらの少年が出せる実力か?
最強。ギュメイの脳裏に浮かんだのはその2文字。目の前の王族を自称する少年はこれまで戦ったどんな生物よりも強い。
「【さみだれ斬り】!」
既に慢心や油断の類は完全に消え、ガナサダイの実力を認めたギュメイ。だが彼も負けてはいない。
戻ってきた礫を瞬き未満の一瞬で叩き落とし、反撃の疾風突きを放つ。
命を奪い去る死の一閃はすんでのところで王笏に防がれ、頭部に風穴を空けかけた渾身の突きが耳をかすめて逸れた。
だがまだだ!
一進一退の攻防が続き、互角かと思われた剣術と魔法の応酬、勝利したのはギュメイだった。
突き放そうと再びメラストームが放たれかけたが魔法使いが至近距離まで剣士の接近を許してしまうのは致命的である。
ガギンッ!
下から上へ。力強く斬り上げる一撃によって王笏が宙へと放り出される。
接近戦なら魔法より剣のほうが圧倒的に速い、仮に王笏無しで魔法が使えたとしても次の斬撃を防ぐ手段は無い!
「くっ!」
攻撃から逃れようとマストの裏に逃げ込むガナサダイ、だが無意味だ
「とどめっ!!」
渾身の力を込めた魔神斬り。メタルボディすら斬り裂くこの一刀ならどんな補助呪文を使おうと関係ない、マストごとその細い首を天高く飛ばして
「っ、【天地のかまえ】っ!!」
「!!?」
マストはガナサダイの首と同じ高さから輪切りになった、だがマストの向こうにいた少年は
「馬鹿な…!?」
素手で止められ──
【正拳突き】っ!!!
船のマストごと両断しようとした一刀を受け止め、いや受け流したガナサダイ。大技の直後に発生した隙を逃さず、腰を深く落として放たれた正拳がギュメイの腹部に会心の一撃を喰らわせた!
「がっ…!?」
魔法使いに、いやそもそも子供にあるまじき膂力から放たれた拳を受けたギュメイ。受け身を取ることもままならず壁をぶち破って船室へと突っ込んでいく
「………上手くいった」
落ちてきた王笏をキャッチ、ズタズタになった船室だった場所を見て少年は内心胸を撫で下ろす
天地のかまえが成功するかは賭けだったが魔神斬りの一刀はただの受け流しでは防げなかっただろう
ミシミシ…
「…!」
音のする方を見ればマストが倒れ始めていた。ガナサダイ自身は防いでいたが水平線のように一閃したギュメイの魔神斬りはマストを完全に両断しており、わずかに吹いている海風が少しずつそれを薙ぎ倒し始めている
「ギュメイ!勝負は終わりだ、急いで船から」
まだだ
【しっぷう突き】
「ぬ、おっ…!」
防げないという直感を頼りに足元へバギを展開。結果ほんの僅かに足が鈍ったギュメイの疾風突きが僅かに逸れる
「ギュメイ…!」
まだだ!
「勝負はまだ!着いておらんぞ!!!」
再び王笏を斬り上げにかかるギュメイ、今度はしっかりと王笏を手放さず防御したガナサダイだが。
「【しんくう斬り】!」
王笏と剣の間に発生した風の力がガナサダイを吹き飛ばし、折れかけたマストへと叩きつける
「うっぐ…!?」
身体とマスト、両方から響く何かが軋む音。
いかに高い戦闘能力を持つとはいえ子供であることに変わりはないガナサダイの身体はその1発で致命的なダメージが入っていた
しかし剣士は止まらない。強者との戦いに情けは侮辱なのだから。
倒れるマストの角度が45度に差し掛かり始めると同時にそれを駆け上がり、マストにめり込んで動けないガナサダイへ全力で距離を詰める
「ガナサダァァイ!!!」
生まれてこのかた、出したことのない咆哮。
そこに殺意はあれど憎悪は無い、あるのは人生で初めて出会った好敵手への高揚。
もう船もエルマニオン雪原もどうでもいい、今はただ、これまで積み上げてきた全てをかけて!お前を斬る!!
「ぐっ、くっ…ああっ!」
ガナサダイは木片が突き刺さるのも構わず身を捩って脱出。直後その満身創痍の身体に振り下ろされる隼の如き2連撃。
1撃目を王笏で防ぎ、2撃目を飛び退いて回避。追撃から逃れるために海へ向かって倒れていくマストの先端へ走るガナサダイとそれを高揚のまま追いかけるギュメイ。
「オオオ…!【つるぎのまい】!」
「っ…!!」
呪文を唱える隙を与えず、斬撃の嵐を起こしながら先端へと追い詰めていく
…もし彼が魔法を使うとすればマストから飛び降りた瞬間だ。このまま追いかければおそらくその一撃は回避不能だろう
──だがそれでいい。正面から全てを捩じ伏せて勝利し、命を貰う。彼は子供だが、命を奪うに値する戦士だ…!
そしてギュメイはガナサダイをマストの先端へと追い詰めた!
「っ!」バッ
「逃がさんぞ!!」バッ
予想通り海へと飛び降りた彼を追い、足場となっていたマストを斬り刻みながらギュメイは落下。
大小の木片をしんくう斬りで飛ばしつつ、最後の魔法に備える
「さぁ…!」
撃ってこい!!
「っ……【メラゾーマ】!!」
真下の彼が放ったのはメラ系の上級呪文。それもただのメラゾーマではなく、小さな家なら簡単に消し飛ばしてしまえるほどの巨大な火球。
それは礫代わりに飛ばした木片全てを焼き尽くしながらギュメイへ迫る
これが切り札か、確かにこれを受けたら間違いなく死ぬ。そして空中では避ける術が無い、向こうもこれで決める気か
──だが、勝つのは我だ
「…………!」
火球までの距離を目測で計算。そして剣の間合い、さらには自身がギリギリ焼かれない瞬間を狙って。
「今度は我がお前の炎を利用する番だ…!」
「【煉獄斬り】!!」
即興でガナサダイのメラゾーマを火炎斬りで吸収し、受け流しと同じ要領で空へと向けて解き放つ
下から向かう炎を鏡のように跳ね返すことはできなかったがそれでも最後の切り札を防ぎ切った、これで勝利は──
ふわり
「っ?」
煉獄斬りとなって空へとかき消えたメラゾーマ、その後を追うかのように1枚の羽がふわりと視界の端を舞った
あの、翼は…
「────幕を引くぞ、ギュメイ」
瞬間、落下中だったはずのガナサダイの身体が羽のようにふわりと浮遊し、さらには重力に逆らって──
「!!!」
キメラの翼に引かれて戻ってくるガナサダイ、彼の持つ王笏が光り輝いて…!
分かっていた!我がメラゾーマを防ぎ切ると分かっていてガナサダイは最初からキメラの翼を…!
「【魔神斬り】!」
「【会心必中】!」
互いが繰り出す最後の攻撃。空中ですれ違いざまに交差したそれぞれの一撃、その行方は。
「く、ははっ…」
まさか、我が、子供との果たし合いに喜びを覚えるなど…
「────見事だ」
王笏に纏った光の一撃に剣ごと身体を叩き斬られ、そのまま海中に落下するギュメイ
海水を己の血で染めながら沈んでいく剣士は笑う。
今度は皮肉もない、心の底から、満足げに。
──この日ギュメイは、初めて敗北した。
なんか総力戦編より長くなりそうで心配になってきた作者のルルザムートです、ハイ。
忘れかけてしまいますがこれはブルアカとドラクエⅨのクロスオーバーであり、なんならこの辺りはワカモの絆ストーリーの最中なハズ…
やっぱり計画は計画通りに変えず、カルバノグの頭にやるべきだったと反省しております…
ちなみにワカモのあとはヒナの絆ストーリーとビナー戦が控えているのでマジで今章が1番長くなる可能性が全然あります…というか確定ですねハイ。
まぁ書きたくても他の章に入れられないのを全部ぶち込んだのが今章なので仕方ないのかも…
それではまた明日…