そしてカイのストーリーが追加されるんだってね?いいぞぉ!
…サブストーリー編 第28話です、お楽しみください
「……………?」
宿屋のベッド、とは違う。薬品の匂いがするこれは──
「おお、目が覚めたな。エルシオン学院長から譲ってもらった世界樹の雫の効力は確かなようだ」
瞼をこすりながらよしよしと頷く少年、ガナサダイ。
いったい…?
「ガナ、サダイ…?これは── ごちん むごっ。」
「こら。主人に向かって呼び捨てとはなんだ」
「主人…?──あ。」
王笏でこづかれてようやく思い出した。
確か我が負けた時は臣下になると…あの時はただの挑発だと思っていたが──
「…まさか本気で我を配下にする気か? ごちん むご。」
「言葉遣いを正せと言うのに。そして本気だぞ?余はまだ王を継いだわけではないが…余の国にはそなたのような強い臣下が必要になる、約束通り今日からそなたは余の臣下だ
長い旅になるがしっかり着いてくるように」
「……………」
「そんな顔をするでない、余に着いてくればそなたももっと強くなれる。なぜなら余は人の強さがなんなのか、知っているからな!」
「人の、強さ…?」
「ああ。ギュメイ、確かにそなたは強いがそれは獣の強さだ。なればこそ人の強さを知れ、そもそも獣の時点でここまで強いのだ。人を知れば間違いなくそなたは世界最強の戦士になれる」
まぁその力は余の統治にたっぷりと使ってもらうがな!と上機嫌な様子の彼を見送り、残されたのはギュメイ1人。
「………強さとは」
いったいなんなのだ…?
その疑問に答える人間はいない。ならば自分で見つけるしかないのだろう。
敗北と引き換えに腰を据える場所を手に入れたギュメイ。こうして彼は【流れ者の獣の剣士】から少しずつ【ガナン王国の武士】へと変わっていくのである
▽▲▽▲▽
1年後…
▽▲▽▲▽
「聞いたかギュメイ、いよいよそなたのガナン王国兵団への入団が認められたぞ!」
当時運び込まれた病室をそのままギュメイの部屋に改装させたガナサダイが年相応の笑顔を見せて部屋にやってきた
・・・こうして見ればただの子供なのだが…
「は…しかし私が仕えているのは王子であって兵団に入る必要はないのでは…?」
「なんだ、まだそんなことを言っているのか。いずれ世界最強の剣士として余に仕えるのだぞ?その時になんの実績も肩書きも無ければ民が納得せん」
「・・・」
やはり分からない、我がガナンに来てからすぐにセントシュタインから我の引き渡しを要求する大使が来ていた
だがガナサダイ王子とその父であるガンベクセンはこれを知らぬ存ぜぬで拒否。結果として1年間我は街どころか部屋から出たことさえ無かったが、なぜ我を庇うのだ…?
「王子、私は…」
「確かにそなたはお尋ね者となっている。だが幸いにも誰も殺しておらん。
流石に人を殺めておれば父も庇わなかっただろうが──いやどうだろうか、あの男は人間のようでいて人間では──」
…そういえば王子と王が会ったり、話しているという話を全くと言っていいほど聞かない。
この部屋には一部の医療関係者とガナサダイ王子、そしてガナサダイ様の母上しか来ていないが『ギュメイが退屈にならないように』と外であった出来事を毎日事細かく話してくれているが本当にガンベクセン王に関する話がないのだ
実の父を話題に出した途端、暗く俯くガナサダイ王子の姿はまるで──
「…まぁよい。それよりさっさと着替えよ、その格好で式典に出すのは余の沽券に関わる」バサッ
「むお。……これは、ガナンの正装ですか?」
「うむ、では1時間後にまた来る。」
まだ全ては理解できてないがひとまず言われた通り正装へと着替える
一応『いつか必ず役に立つ時が来る!』と言われていたおかげで礼儀作法などは学んでいたがその『いつか』はどうやら今日らしい
このような服はルディアノでも突っぱねて無視していたが…うぅむ、分かってはいたが動きづらい…
髪をとき、髭を切り、爪を整え──そうこうしているうちにあっという間に迎えの時間がやってきた…
▽▲▽▲▽
謁見の間。ガナンで最も高い位置に建設された、別名王の間にてガナンの重鎮達が集まっている
当然その中心には王国の頂点──
「ガンベクセン王、ガナサダイ王子がお見えになりました」
「分かった」
「ガナサダイ、ただいま参りました。父上」
「……………あれが」
この国の王、ガンベクセン王…?表情の動きがほとんど見えない以外はガナサダイ王子の生き写しだな…
「ガナン王国国王、ガンベクセンである」
「お初にお目にかかります国王陛下、ガナサダイ王子の臣下、ギュメイ、参上いたしました」
勉強した通り、片膝を着いて玉座の国王陛下に挨拶する
………っ?
「話はガナサダイを始め、複数人から聞いている。1年間の軟禁生活を強要してしまったが幸いあと2年時間がある。
慣れないこともあるだろうがその2年を使い、ゆっくり馴染んでいけばいい。ガナサダイ王子の護衛はお前に任せる」
「はっ…」
なんだ…?この違和感…
「────」
「……………」
何かを隠している気配は無い、ガンベクセン国王陛下は真っ直ぐにこちらの目を見ている。しかし──
──何も感じない…
普通どれだけ相手に関心が無かったとしても目を見ればその相手を意識するものだ。
好意、嫌悪、関係なくほんの一瞬でも相手を『見た』のならばそれに対する思考が巡る。それが人間である。
…だが目の前の王はまっすぐこちらを見ているのに何も伝わってこない
そんなバカな…
我がガナサダイ王子を殺しにかかったのは知っているはず。事実周りの大臣の視線からは怯えや敵意がひしひしと伝わってくる、複数人の大臣が知っていて国王が知らぬなどあり得ない。
だがそれでも国王からは何も伝わってこないのだ。
仮にも自分の子供を殺しかけた人間を前にしているのに──
「──まだ何か言いたいことがあるのか?」
「! いえ、ございません」
「そうか、では……大臣、式典の用意を。」
「ほ、本当に行うと言うのですか国王陛下!その男は王子を、ご子息を殺そうとしたのですぞ!」
やはり3人いる大臣たちは全員知っているらしく、1人を皮切りに次々と反対の声をあげていく
別におかしなことは言っていない、そもそもたった王族を殺しかけた流れ者の剣士を1年軟禁しただけでこんな──
「それがどうした」
「えっ…!」
「…っ!?」
今、なんて…
「一度は剣を向けられたのだろうがガナサダイは生きており、この剣士も敗北を認め付き従っている。ならば彼を迎え入れることになんの反対も無い。」
「国王陛下!実際にその男は一年前南部の関所を壊滅させています!あまりに危険です、それにご子息を殺されかけておいてそんなあっさりと──」
「そんなことを気にしている場合では無いと言っている。」
「…………!?」
実の息子が同じ部屋にいるというのにあまりに冷たすぎる言葉にギュメイも、大臣たちも全員が絶句していた
唯一ガナサダイ王子だけはどこか諦めたような表情をしていたが…
「先も言ったがこの国と周辺各国に残された時間はあと2年だ。あと2年で我々は2カ国を同時に相手取っても勝利できる軍事力を確保せねばならん。
その中でガナサダイと互角に渡り合えるほどの戦士をみすみす他国に引き渡すわけにはいかぬ。
ガナサダイへの忠義もありと見た以上、彼を兵団に迎え入れるのは決定事項だ」
2年…?そういえばさっきもそう言っていたがなんの期限だ?
自分だけが聞かされていない何かかと思ったが周囲の様子を見るに大臣は知らされていないらしい、それどころか──
「っ、父上!父上が期限を定め始めたあの日より既に1年が経とうとしております…!
その【あと2年】という期限はなんなのか、そろそろ教えていただきたい!」
──ガナサダイ王子も知らないようだ。王子に便乗して大臣たちも声を上げるが帰ってきたのはただ一言
【まだ知る必要は無い】
実の息子に対する無慈悲とも取れる態度に誰もそれ以上言葉を発することはできず、最後は『早く準備しろ』というガンベクセン国王陛下の催促に流される形でギュメイ達は謁見の間を後に。
その後はガナン王国と地方を守るための兵団へ式典を経て正式に入団し、晴れてガナン市民の1人となったギュメイ。
2年後、大陸全体に起こった飢饉により他国との戦争状態に突入するガナン王国は彼ギュメイと、のちに兵団に加わるゴレオンという男によって圧倒的勝利を重ねることとなるのだが…
戦争が終わったその年に、飢饉を予測したガンベクセンですら予測できなかった事件が起こる
──ガナン国王暗殺まで、残り5年──
少年ガナサダイはこれくらい強かったと思っているし、国王としての責任を背負ったガンベクセンはこれくらい無慈悲な男だったのではと思って書いている作者のルルザムートです、ハイ。
ちょっと迷いましたがゴレオンとゲルニック加入シーンは『この』過去回想では省かせていただきます
彼/彼女視点の過去回想も書くつもりなのでね…
それではまた明日…