ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

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腹黒幼女属性は作者の好みの1つ。
サブストーリー編 第30話です、お楽しみください


三百八十の骸

数える余裕なんて無かった

 

 

 

【さみだれ斬り】

 

 

 

ひたすら斬った

 

 

 

【つるぎのまい】

 

 

 

守るために

 

 

 

【隼斬り】

 

 

 

ただ力のみを求める獣の剣士では、その脅威を跳ね返すことはできなかった

 

 

 

【魔神斬り】

 

 

 

槍が刺そうと、刃に斬り裂かれようと、ギュメイには倒れられぬ理由があった

 

 

 

【────ッ!!!】

 

 

 

人の力とはなんなのかを知ること…それを知らぬまま、訳のわからないうちに殺されるなど認められない。

 

この頃、ガナサダイに対する忠義はまだそこまで無かった。だが理由はどうであれ一旦守ると決めた獣の剣士は無自覚のまま、人の力…その根源となる想いを抱え、群がる380の敵を皆殺しにしたのである。

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

「さて、迷いますね…正直ここまで強いのが紛れていると味方になっても面倒そうですが…」

 

 

 

齢8歳、正確には7歳と11ヶ月しか生きていない少女はおよそ子供とは思えない瞳で祠の前に立ち尽くす剣士を見つめる

 

合理性の化け物と名高いガンベクセンならば身分や血縁関係で送り出す戦力を出し惜しみはしない…そういった計算があって今回の事件を引き起こしたがどうやら王子以外にも手強い戦士がいたらしい

 

 

 

エルマニオン側でもここまでの戦士は見なかった…それこそアレとまともに戦えるのは神童と呼ばれていたフラッグさんくらいでしょう

 

 

 

本気で世界を取るつもりならあの力は是非とも欲しい、しかしこの場面だけを見て決めるのはいささか早計である。

 

ドミールのフラッグか、ガナンの皇族とその配下か、どちらを利用するかは今すぐには決められない。ここは様子を見て──む。

 

 

 

「…ん!?ゴレオン隊長!なんかアレ、ヤバいことになってませんか!?」

「んなもん見たら分かる!急げっ!!」

 

 

 

時間切れと言わんばかりにガナンの方角から新しい部隊が駆けつけてきた

 

 

 

数は10人程しかいませんが先頭の男は…遠目で見ても最低2メートルあるのが分かりますね、何食べたらあんな身長になるんでしょうか

 

 

 

元傭兵集団で構成されたゴレオン隊が駆けつけたことで少女…ゲルニックは踵を返し撤退。ひとまずガナサダイとギュメイの危機は去ったのだった…

 

 

 

「おわー!剣のオッサン!!ぐちゃぐちゃじゃねーか大丈夫か!?生きてるよな!?」

「………ゴホッ…やかま、しい、耳元で騒ぐな…」

 

「よっしゃ生きてる!!王子は祠の中か?よしお前ら!氷をブッ壊して王子を救え!

オレは剣のオッサンを連れて帰る!!」

 

 

 

屍人の軍勢により、王子とその側近1人が殺されかけた事件は…結果から言ってそこまで話題にならなかった

 

 

 

ガンベクセンが箝口令を敷き、他国への報復攻撃を堅く禁じたためである。

 

 

 

王子救出に派遣されたゴレオン隊や、事件を知る一部の大臣は王族が狙われたことに大きく憤りを見せていた。

 

ギュメイが斬った敵兵の死体は損壊が激しいものばかりだったがもちろん程度の差はあり、ルディアノやセントシュタインが攻撃を仕掛けてきたと誰もが思っていたからだ。

 

…だがそれでもガンベクセンは報復を許さなかった。

そもそも報復する相手が国ではなく、個人だったことに唯一気付いていた故の判断だったが王はその内情を語らなかった…

 

 

 

そして…

 

 

 

「…ギュメイ」

「!! ガナサダイ王子!ご無事でしたか!」

「お前のおかげでな…」

 

 

 

医務室。部屋に入ってきた王子を見た瞬間、すぐにベッドから起きあがろうとして止められた。

寝たままでいいと言ってはいたものの、ギュメイ自身居ても立っても居られず、半ば命令に逆らうように立って話をすることに…

 

 

 

「しかしあれは…どういった意図があったのだ…」

「分かりません。民を混乱させないためとはいえ王子が狙われたのにも関わらず箝口令を敷くなどと「それではない、あの屍人兵士を差し向けた者の目的だ」

 

っ?

 

「屍人…?私が戦った者たちは全員言葉を喋り、意志があるように見えましたが…」

「らしいな、だがあれは屍人だ。相当高度な呪術で操られていたが相手が国ならあんな半端な数を出す理由はない。

父上はそれに気付いて報復措置を禁止したのだろう。」

 

 

 

…もしそうだとするなら

 

 

 

「だとすればなぜガンベクセン王はそれを大臣や王子に話さないのですか…!いくらなんでも言葉が少なすぎる!」

「………言うよりも言わない方が良い結果になると、そう判断したからであろう」

「な…」

 

「そもそも今回の調査はギュメイ1人の予定だったのに勝手について行ったとして余が父上からお叱りを受けてしまった。自業自得だと言ってな」

「バカな…!」

 

 

 

子供が狙われたと言うのに、あの王は!本当に人間か…!?

 

 

 

「あのー…」

 

「「?」」

 

 

 

扉の向こうからふと聞こえた幼い声に2人の会話が一時止まる。

一瞬どうしたものかと悩んだ瞬間、声からは想像もつかない乱暴さで扉が開け放たれた

 

 

 

「入るぜオッサン──うげ!?ガナサダイ王子様!!これは失礼「構わん!要件はなんだ、ゴレオン隊長」

 

 

 

扉を開けたのはゴレオンだった。元は傭兵集団とは名ばかりの山賊集団だったがガンベクセンがまとめて引き入れたらしく、率直に言ってしまえば【満足いく食事を出す陣営に協力する男】である。

 

そんな男が銀髪の幼い少女を連れて医務室へと来ていた

 

 

 

「へ、へい!先ほどガンベクセン様からこのガキンチョ──じゃない、医者をギュメイのオッサンのところに連れて行くように言われまして…」

「医者…?」

 

 

 

どう大きく見積もったとしても10歳に満たないこの少女が…?

 

 

 

「お初にお目にかかりますガナサダイ王子、私はゲルニックと申します

エルシオン学院で培った医術を人々の役に立てるため放浪の旅を続けておりましたところ、貴方のお父上に是非とお声をかけられまして。

どうか私にお二人の治療をさせていただきたい」

「………」

 

 

 

なんだ、こいつは…?

子供のような見かけに合わず言葉遣いは丁寧だがこんな子供がいきなり現れて自分は医者だと…?

 

 

 

「失せろ、子供のごっこ遊びに付き合っている暇は…」

「そうか、ならば頼む」

 

 

 

!?

 

 

 

「ガナサダイ王子!そんなあっさりと──」

 

思わず掴み掛かりそうになるのを堪え、その代わりに声を上げる

だが王子の表情は父親を前にした時と同じ、あの何かを諦めた表情で…

 

「父上が是と言ったのなら信用して構わん。おそらく我らが知らぬ裏付けを手に入れたのだろう。それにゲルニックという名前はよく知っている、実際に会ったのは初めてだがこんな子供だったとはな…

もちろん抵抗があるならギュメイには別の医者を手配させるが。」

「………いえ、王子が受けると言うのであれば」

 

 

 

そうして【おかしなマネをすれば即座に叩き斬る】と数回言ったのちに2人の治療は完了した。

とはいってもホイミやキアリーによる自然治癒促進や殺菌がメインなため、完全には治りきっていないが。

 

 

 

…そしてここにいる全員、誰も預かり知らぬことではあるが後にガナンが王国から帝国へ変貌を遂げる際にこの4人がその中心となる…

 

 

 

そんなことはつゆ知らず、事件から月日が経ち、いよいよガンベクセンが定めた期限が来た。

 

 

 

【ルディアノ・セントシュタイン連合軍】対

【ガナン王国軍】の、3年に渡る戦争が幕を開けるのである




10歳にもなっていない少女が大人顔負けの欲望と野望を持っていることに弱い作者のルルザムートです、ハイ。
ちょっと、いやかなりグダっていますが次回、次々回で過去回想は〆る予定なので何卒お許しください…
それではまた明日…
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