カルバノグ編 第4話です、お楽しみください
「──話は伺っていましたが尋常では無い強さですね…カイザーPMCやゲヘナ風紀委員会が壊滅したと言うのも納得です
…重ね重ね申し訳ありません、我々が力不足なばかりに先生の手を…」
「いやこれは仕方ない、Rabbit小隊の強さも相当だった。我1人ではここまで容易には行かなかっただろう
労いはユメと…立場上まだ難しいかもしれないがワカモにもかけてやってくれ」
功労者と言うのなら狙撃と爆撃を止めに入ったユメとワカモだ。
・・・しかしユメはあの気配の無い狙撃手をどうやって止めた…?
「──やってくれたなヴァルキューレ…満足か?シャーレどころか七囚人の力まで使って私たちを叩き潰して、満足か?」
Rabbit小隊の1人、空井サキが恨めしそうにカンナとギュメイを交互に睨む
武装解除された上に手錠もかけられていてはいくら特殊学園の生徒と言えど何もできないが。
「…何を勘違いしているか知らないが我らシャーレはお前たちを止めるためにやって来たわけではない」
正直なところ早くワカモのシャーレ所属についての会談を済ませたい、SRT特殊学園閉鎖についてはこの機会に色々と知っておきたいが本来の目的を忘れては本末転倒だ。
「シャーレの先生…このキヴォトスで銃を持たず刃物1つであらゆる敵を粉砕し生徒を救って来た【大人】ですか?」
「そうだが。」
本当に救えているかどうかは自信がないが。
「………先生、私たちはあなたのような大人が1番嫌いです」
「地獄に落ちろ!」
「もう2度と会わないだろうね」
口汚く罵りながらヴァルキューレ生に連行されていくRabbit小隊。
カンナは気にすることはないと言ってくれたが自分のような人間には本来これくらいの扱いが普通だろう
──地獄ならいずれ落ちるとも
「…今ではないがな」
「ギュメイ先生?」
「なんでもない、それよりこの後はどうする?」
「そうですね…最低限の後処理を済ませてから会合の席を用意させていただきます、それまで少しお待たせしてしまいますが…」
「それも大切だがRabbit小隊についてはどうする?地域の治安維持組織が全滅しかけたのだ、局長であるカンナが早々に離脱しては後に響く。…こっちは気にしなくていい、まずはデモの後始末に集中した方がいいと思うぞ」
大切とはいえ幸か不幸かシャーレ側のやるべきことはこの会談以外に無い、緊急性のあるこちらを優先したほうがいいはずだ
「…すみません、その言葉に甘えても?」
「構わない。いくらシャーレとはいえ我は所詮外部の人間だ、できることは多く無いだろうが力になれることがあれば頼ってくれ」
「ありがとうございます、それでは…」
そうしてカンナとは一旦別れ、それと同時にワカモも戻って来た。
またしてもいつの間にか着替えを済ませており、和装束に身を包んだ彼女はどこから見てもただの一般生徒である
…うん?
「ワカモだけか?ユメはどうした」
「ユメさんはその…Rabbit小隊の取り調べを見に行くと言って生活安全局の生徒と一緒に──」
「………」
やれやれ…
「我らも行くぞ」
「は…」
▽▲▽▲▽
取調記録:977-R-4
担当者:シャーレ 梔子ユメ
容疑者:SRT特殊学園1年生 月雪ミヤコ
「こんにちは!えっと…ミヤコちゃん、だよね?私梔子ユメ!よろしくね!」
「・・・誰ですかあなたは?いきなり現れて馴れ馴れしい──いえ、誰だっていいです。相手が誰であろうと答えは変わりませんから。
ここに来たということはあなたが私の取り調べをするのですね、何か聞きたいことがあればどうぞ」
ひぃん、すごく嫌われてる…
そもそも私とミユちゃんが戦った事実自体知らないみたいだけど…
「えっと、えっとね?…ミヤコちゃんはそこでの生活に不便なこととかない?」
「いきなり変な質問ですね。
お気になさらず。仮に何かあったとしても捕虜の立場で何か言うつもりはありませんから」
「捕虜ってそんな…私はただミヤコちゃん達が心配で…」
「ああそういうことですか、環境を改善する代わりに何か情報を引き出そうという魂胆ですか
無駄ですよ、何を提案されたところで私たちのSRTへの思いは変わりませんから」
「ひぃん…じゃ、じゃあこっちを聞かせてほしいな、ミヤコちゃんはヴァルキューレが嫌いだったの?」
「……何か勘違いをされているかもしれませんが転校を拒否したのはヴァルキューレが嫌いだったからではありません」
? じゃあ…?
「嫌だったのはSRTを去ることです」
「それは…SRTにしかない、何かミヤコちゃんにとって特別なものがあったから?」
「はい、SRTにはそこにしかない【正義】があるからです」
「正義…?」
▽▲▽▲▽
「正義、か」
「あなた様…?」
部屋の中でユメに対し、正義とはなんたるかを話し始める月雪ミヤコ
取り調べ自体に特に関心を持っていなかったギュメイだったが、ユメの様子を見ようと部屋を訪れた時ちょうど聞こえて来た【正義】の2文字に、ノックしようとした手が止まる
…彼女の言っているものは正義のようであって正義ではない。唯一SRT特殊学園にあるという正義…それはただの規則だ。
組織に正義は宿らない。正義とは人間個人個人に宿るもの、そしてたとえ同じ組織、同じ志を持った仲間であろうと正義の形に同一なものはない。
正義とは、理にかなった正しい道理のことである。
…ならばその正しさは誰が証明する?
真理なんて都合のいい指標があれば誰も争いなどしない。
正義は相手と状況、立ち位置の変化でいくらでも形を変える不規則的な概念…
誰かが信じる道が、誰かにとっての悪となる。正義とはそういうものだ。
しかし月雪ミヤコという少女は普遍的な正義がそこにあると信じている。
──誠の正義などこの世のどこにも無いというのに。
だがSRT特殊学園という正義を盲信する子供にこの事実を突きつけるにはあまりに残酷な話でもある。
以前の我なら割って入ってそれを突きつけただろう。かつてホシノに突きつけたように。
敵味方問わず、正義の意味をはき違えて破滅した人間を我は何人も知っている。
その事実を【ギュメイ】は彼女には伝えるべきだと考えている。
正義の形は無数にあり、そのどれもが正しく、間違っていることを。
それがやるべき行いとしては間違っていないとギュメイは言いきれはするが子供を導く【シャーレの先生】としてその行動は大きく間違っている…我でもそれくらいのことは分かり始めていた。故に尚のこと──
「──難しいな」
パヴァーヌの時みたいな注意書きを書くかどうかひたすら迷って結局書かなかった作者のルルザムートです、ハイ。
パヴァーヌ編のモモイの時…ほど酷くはありませんがやはりギュメイに対するRabbit小隊の印象は最悪です。まぁこれに関してはブルアカ原作も似たような感じでしたのでまぁ。
…悪印象のベクトルは違いますが
それではまた明日…