戦争に駆り出された少年兵を多くみていますので…
カルバノグ編 第5話です、お楽しみください
「ギュメイ先生」
「む…カヤか、久しいな」
取り調べをしている部屋に入るタイミングを失い、一旦ヴァルキューレ事務局へと戻ったギュメイとワカモ。
その間何かできることはないかとカンナのところに行こうとして彼女…カヤに声をかけられた
カジノの一件以来か、FOX小隊はいないようだが。
「何はともあれまずは自己紹介を。キヴォトス連邦生徒会所属、防衛室長の不知火カヤです。行政委員会における安全保障周りを担当しています。」
「連邦捜査部【シャーレ】のギュメイだ。」
「………狐坂ワカモです」
「改めてよろしくお願いしますギュメイ先生。そしてワカモさん。
…ああ、やっと直接ご挨拶できました。カジノ捜査の時に挨拶ができなかったのがずっと心残りだったんです、すみません」
「いやこちらこそすまない、グレイナルや竜戦士という見えた脅威があるのだ。書面ではなく直接会いに来るべきだった」
行政委員会の一室、防衛室…読んで字の如くキヴォトスの安全を脅かす勢力から市民や生徒を守る部署、室長である彼女がそのトップであるのは知っていた
もちろんもっと早く、言ってしまえばエリドゥでのあとすぐにでも会いに行くつもりだったが何故かアウルの反対を受けて後回しになり、そのまま──情けない話だが忘れてしまっていた。
「おや、その様子ですと私の仕事についてもご存知の様子で。ふふ、貴方のような方の目に留まれたのなら私も仕事に打ち込んだ甲斐があるというものです
…とはいえ本当に大変なのは私ではなく、ここにいるカンナさんのような実働部隊の方々なのですが」
「実働部隊…そういえばFOX小隊はどこだ?一緒ではないのか?」
「ユキノ隊長らでしたら非番ですよ、というより彼女達はRabbit小隊と同じく大元となるSRT特殊学園の閉鎖により現時点で小隊としての扱いはされていませんし、今彼女らはそもそも…
カジノの時は急を要することと他に動かせる人員がいなかったので動かしましたが」
「そうか」
……?
一瞬今の受け答えの中で妙な違和感があったような…気のせいか?
「しかし動かせたのもその1回だけ、連邦生徒会長失踪の混乱は未だ解けていない現状もっと出番が回ってくると思っていましたがギュメイ先生率いるシャーレの方々のおかげで私たちの負担もさほど増えていません」
「そうなのか?アウルが仕事を突き返していると聞いたが…」
「ん?ああモモカさんが告げ口でも?いいんですよ。あの無能はどさくさに紛れて自分の仕事までシャーレに押し付けようとしていたので。むしろ適度に制裁していただいて助かりました」
良い薬になったでしょう、と小さく笑うカヤ
…制裁?アウルが何かしたのか問い詰める必要があるな…
まさか身体の一部を燃やしにかかっていたとはつゆ知らず、その場は軽く流して次の話題へ
「そもそもSRTが閉鎖になった理由はなんだ?連邦生徒会長の失踪が理由と聞いているが…
聞く限りSRTは生徒1人の失踪で立ち行かなくなるような組織には聞こえないぞ」
武力で言えば少なくともワカモを正面から相手にし、生け捕りにできるだけの力がある。それほどの組織を解体するのは少々惜しいと思うが
「いえ、その通りです。SRTはエリートの集団であり、いついかなる時や場所でも即時の対応が許されていました。
警察組織と違い、上の指示を待つことなく各小隊隊長の判断により動けますが…武力行使の自由を実現できたのは【超人】足り得る連邦生徒会長あってこそ。彼女の失踪によりその責任を持てる人間が他にいなくなってしまったのです
SRTの実績は一見輝かしいですが武力の自由は一歩間違えれば警察組織や特殊学園の信用、その根底を破壊する諸刃の剣でもある。」
「…なるほど」
そこまで説明をされ、ギュメイ自身ようやく合点がいった
武力行使の自由…かつて武力こそ正義だったガナン帝国に身を置いていたからこそ、彼はその重さを再認識した
…確かにこれでは自分から責任を取ろうとする人間など出るはずがない
警察上位組織の責任を取れる人間などほんの一握り…そしてその一握りに含まれる人間はすでに何かしらの責任を取る立場にいるはずだ
そんな時に自身と関係ない、かついつ暴発するかも分からない組織など関わりたくもないはず
ガナンの武力行使は相手を踏み潰して終わりだったが秩序を守るSRTではそうは行かないだろう
自由と秩序、双方を両立させるのは容易なことではない
…ここまで来ると連邦生徒会長という人物が気になってくる。生徒と言うからには子供だろうがその子供もまた天才の形の1つか?
「しかし閉鎖の理由はそれだけではありません、連邦生徒会長が戻ってこないと決まったわけではない。SRTは存続しておくべきだと私を含めた何人かは声をあげていました
しかし自分たちの存続が脅かされていると気付いたのでしょう。SRT所属小隊の1つが動きを見せました」
「…どこだ?」
「あなたがたは以前戦ったことがありますよ」
──まさか
「ユキノが?」
「正確に言えばユキノ隊長率いるFOX小隊がです。
先月ギュメイ先生がレッドウィンターに向かい、またそれに色彩ペロロジラの襲来が重なったことによって手薄になった連邦生徒会は彼女らに襲撃を受けました。
SRT特殊学園の閉鎖を進めようとしていたメンバーを攻撃し、逃走したのです。
結果サンクトゥムタワーの一部施設が全焼し、連邦生徒会メンバー数人が負傷、入院となった者もいます
行政官はその後もSRT特殊学園に関する話し合いをさまざまな形で広げようとしましたが──」
──やれやれ
「その矢先にこの騒ぎか。」
「ええ…FOX小隊に続きRabbit小隊まで連邦生徒会に銃口を向けました。
幸いこちらはギュメイ先生とユメさん、ワカモさんの助力により大事にはなりませんでしたが…
──皮肉なものですね。本来犯罪者と戦うエリート達が秩序を乱し、お尋ね者である七囚人の筆頭がキヴォトスのために働いているのですから」
「…わたくしは別にキヴォトスのために動いているつもりなどありませんが」
「分かっていますよ。しかし結果としてあなたはキヴォトスに貢献している…誰のためであれ、その献身を私は評価していますよ」
「……………」
仮面を隔てていてワカモの思考は読み取れないが不満げな様子…カヤに対しあまり良い感情を向けていないのは確かだな
「さて、本題に入りましょう
【Rabbit小隊】のデモは鎮圧できましたが彼女達の意思は固く、未だヴァルキューレ等の他学園転入を強く拒否しています
このままですと学籍データが抹消され、どこの学園にも所属できないまま、あてもなく彷徨うことになってしまう…
彼女達はSRT特殊学園の過酷な入学試験を通過した紛れもないエリート達です
その能力が無為に捨てられてしまうのはかなりの損失…
貴方がたがここに来た本来の目的と関係ないことだとは重々承知しています。ですので余裕があればで構いません、どうか彼女達を説得してヴァルキューレ警察学校へ編入するよう勧めていただけませんか?」
そう言ってぺこりと頭を下げるカヤ
言わんとしていることは分かる。Rabbit小隊…FOX小隊もそうだったがどちらの隊員も尋常ではない仕込まれ方をしていた。
それゆえに育成コストも相当に掛けられていたはず。キヴォトスを探しても2隊に並ぶ強部隊はミレニアムのC&Cくらいだろう。
連邦生徒会としてもFOX小隊が行方不明な今、Rabbit小隊の戦力は失えない、だが──
「特に急ぎの用事は無い、引き受けてもいいが…1つ言っておく」
「ええもちろん、謝礼は充分に「そうではない、説得はするが期待はするな、とあらかじめ言わせてくれ」
「難しいことは承知しています、しかしギュメイ先生はFOX小隊とRabbit小隊を打ち破っている。防衛室長としてこれを喜ぶべきではありませんが自分たちより強い貴方の言う事なら他の人間が説得するよりも効果があるのでは?」
「………逆だ、カヤ」
「? 逆とは?」
…どうも彼女はあまり分かっていないらしい、結果論だがこうなると分かっていればデモ鎮圧に介入すべきでは無かったか
「Rabbit小隊は秩序側だ、いくらデモをしていたとはいえ目的はテロなどではなくただのストライキ…
それを余所者のシャーレが横から介入し、なんの話し合いや交渉もせず力で叩き潰した。
…先の取り調べで少し感じたが彼女ら──少なくとも月雪ミヤコはそのような【理不尽な力】から大衆を守るためにSRTに来たのだろう
潰して従わせる、などという手法を真っ先に取った我の言葉を彼女達が聞くはずがない」
とはいえ何もしないというわけにもいかん、既にRabbit小隊は叩き潰してしまったが…いや、だからこそこのまま終わりにはできない
「…我1人には手に余る。ユメにも話をさせて欲しい」
「もちろんです、私たち【行政委員会・防衛室】はシャーレに積極的に協力します
ですのでどうか──彼女達を助けてあげてください」
「ああ…分かった」
その後、戻ってきたユメに話をしたところ二つ返事でRabbit小隊を助ける!と鼻息を荒くしており、またカヤの計らいでRabbit小隊の処分はシャーレに一任された。
少し無理を通させてしまったがカヤ曰く『未来あるエリートを思えばこれくらいなんてことない』だそうだ。
「…我もできることをやるとしよう」
じつはカヤも結構好き、な作者のルルザムートです、ハイ。
道筋は多少違いましたがRabbit小隊の件を正式にシャーレが預かることになりました
Rabbit小隊の結末は最終的にブルアカ原作のものとなりますがカルバノグ編はとある人物の参入で特に【道筋】に大きな変化があります
それではまた明日…