そしてパヴァーヌ編冒頭のような険悪ムードが少しだけ…最後には和解するから!和解するから!
…カルバノグ編 第7話です、お楽しみください
ユメに押し切られる形でRabbit小隊の子ウサギ公園キャンプを容認したギュメイ。
流石にこのままさようならという訳にもいかず翌朝、彼女達の様子を見にやってきたが…
「ひぃん、ギュメイ先生…」
「………ワカモ、ユメを頼む」
ひと足先に向かったはずのユメが落とし穴に落下して涙目になっていた
ひとまず彼女のことはワカモに任せ、刀を抜く
「・・・・・」
落とし穴を避け、踏み抜いた地雷は凍らせ、攻撃してきたドローンを破壊しながら公園の奥へ
と、この騒ぎを聞きつけたのだろう。最奥に到着するより早くサキとモエが姿を現した
「昨日の今日でまた来たのか?くそ、せっかく用意した罠の半分がパーになってるじゃないか!」
「…デモにしては物騒すぎる、いったいなにをしているんだお前達は?」
意味があるかは別として、彼女達はSRTという治安維持組織復活のために動いているのではないのか?これでは立て籠もりのテロリストとなんら変わりないぞ
「物騒なもんか、最低限の自衛手段だよ」
「そうそう!これでも全然足りないくらい!少し油断したらまたあのワンコみたいなやってくるとも分からないしね」
「…Rabbit小隊の処遇は今もシャーレ預かりだ、その周知の事実を無視してまでここに兵を向ける人間はいないと思うが。」
「それが確実な保証になる、と言えない時点で備えすぎると言うことにはなりませんよ先生」
「ミヤコ」
サキ、モエに続いてミヤコとミユもやってきた
相変わらずミヤコには全く信用されていないようで、銃口こそ下げてはいるが引き金付近に指が添えられている
キラリとこちらを見つめる目からは隠しきれない──というか隠す気の無い敵意が滲み出ていた
「何か、困り事はないか」
「なにも。夜通し仕掛けた罠の大半を誰かが台無しにしてしまったのでそれの補修があるくらいですね」
「──そうか」
まずは歩み寄ること…ユメに習って真似をしてみたがやはり先が続かない
そも前提として連邦生徒会はSRTを復活させる気などないのだ、このデモには意味がない
しかしそれを突き付けたところで彼女達、特にミヤコは納得しないだろう、どうしたものか…
ぐるるるぅ…
「今のは…」
サキの方から──「雷が近いのかもしれないな」
「・・・それは、無理があると思うが。」
「やっぱり先生もそう思うよねぇ、どうして我慢できなかったのさ」
「う、仕方ないだろ!生理現象なんだから!」
…まさかあれから何も食べてないのか?
「ミヤコ」
「改めて言いますが何も困り事は──」
そう言いかける彼女からも空腹を訴える音が聞こえてきて…
「あーもう、イライラしたら余計にお腹が空いてきた…!」
「ああそうだよ!何も食べてないんだよ!悪かったな!?」
空腹の影響か激しく怒り出すサキ達。
今は苛立ちが優っているようだが飢餓はどんな高潔な人間でも怪物に変えてしまう。
そうなる前にヴァルキューレに入ってくれればいいが普通の子供ならともかく、SRTという特別な環境で鍛えられた彼女達が自分の予想通りの動きをしてくれるかは自信がない
ミサイルより食料を持ってくるべきだった、いや教範を捨てて代わりに食料を持ってこれば良かった、などと仲間内で罵り合っている彼女らだが仮にそうしていたとしても根本的解決になっていないことには気付かないあたり、集中力が維持できない危険な状態だな
「分かった、全員支度をしろ。飲食店に連れて行く」
アル達からの話が確かならちょうど付近に柴関ラーメンの屋台が来ているはずだ
「えっ?でも私達お金ないけど」
「我が出す、シャーレの給金もそれなりにある。心配するな」
…余談ではあるがギュメイに支払われる給料は既に2回昇給している
これは彼がレッドウィンター出張中に給料明細書を見たゲルニックが連邦生徒会に殴り込んだからであるが…殆ど金銭を使わず、関心も無いギュメイはまだ気付いていないようだ
「ちなみに飲食店って?」
「柴関ラーメンというラーメン屋だ」
「ラーメン…!ま、まぁ先生がどうしてもっていうなら?」
「ラーメン…!」
…相当空腹が辛かったらしく【ラーメン】という言葉に顔を輝かせる隊員たち
うち、ミヤコも一瞬目を輝かせたがすぐに首を振った
「──いえ、ダメです。施しは受け取れません」
空腹にあってなお拒絶の意思を見せるミヤコ。
意地なのか他に理由があるのかは分からないが…やれやれ
断固として拒否する彼女に、ギュメイ自身が張り付けていた【シャーレの先生】としての仮面にヒビが入ってゆく。
「念のため質問するが…なぜだ?」
「追い詰められた環境において重要な物資を提供する素振りを見せ、その見返りとして更に大事なものを要求する……
よくある手口です、真意も分からない段階で受け取るわけにはいきません。」
「極限の飢餓を我は知らぬがそれに陥った人間がどうなるかは知っている
理屈は分かるが意地を張っている場合でも無いはずだ。見返りはいらん、支度しろ」
「私たちはSRT、Rabbit小隊です。どんな状況にも耐えられる訓練を「訓練で耐えられる飢餓など存在しない、むしろ特殊部隊として訓練を受けた身なら分かるはずだ。
先の見えない状況での空腹は肉体にも精神にも多大な負荷を与える…このまま意地を張り続ければ近いうちにRabbit小隊は解散か全滅のどちらかを辿ることになるぞ」
特殊訓練を受けたとて、こねる理屈は子供じみたもの。
彼女らはSRT再建のためにこのデモを行っているようだがデモでSRTを取り戻すには最低でもキヴォトスにとってRabbit小隊の存在がSRTより大きくなくては成立しない。
当然ヴァルキューレを始めとした他組織にとってはFOX小隊もRabbit小隊も危険因子として見られている現状、彼女らの要求を飲む利点もない
シャーレに処遇を任せられたとはいえ、どこもこの子ウサギ公園の様子を伺っているはずだ
自滅待ち、あるいは機を見計らっての制圧、そんなところだろうか?
今はこうして膠着状態だが何かを変えねばRabbit小隊に未来はない
「脅しですか」
「脅すも何もこのままではデモ以前に未来が無いと言っているのだ
お前の正義だと思い込んでいるそれはさぞ高潔なのだろうが力の伴わない正義はただのエゴと傲慢だ。今は捨てて生を拾え。」
「何も知らないくせに…!何様のつもりですかあなたは!?あなたに何が分かるというのですか!」
「………さてな、実際我は知らぬ。だから質問させてくれ月雪ミヤコ。
…お前の正義は、仲間を飢えさせてまで貫かなければならないことなのか?本当にそう思うのか?」
「それは──」
何かを言おうとしたミヤコ、しかし後が続かない。小隊長ともなれば状況判断能力も高い…
このまま続けても未来が無い、と言い切るギュメイの言葉を誰よりも早く理解し納得してしまった。
だがそれを認める事もできない、認めれば──これまでの行いが全て無駄だと諦めることになる、故の沈黙だった。
「このデモには意味がない、SRT閉校が撤回されることは絶対に無いからだ。仲間をまとめる人間としてそろそろ未来を見据えて ごすっ!! ぬご。」
擬音が文字となって浮かび上がりそうな音と共にギュメイの頭に振り落ろされた王笏。
Rabbit小隊もギュメイも、遅れてやってきたワカモとユメも目を丸くしていたものの、すぐさまその人物はそれを持ち直して言葉を紡いだ
「──ギュメイ。お前の指摘は的確だ、けれど少し厳しすぎる。…初めましてRabbit小隊の生徒たち、そしてユメとワカモは久しぶりだね。
私はガンベクセン、レッドウィンターからやってきたしがない大人だよ」
久しぶりにがっつりガンベクセンを出せて気分の良い作者のルルザムートです、ハイ。
前章ラストで少しだけ出たガンベクセンが合流しました。ここからはギュメイやユメといったシャーレ陣営とは別にガンベクセンもRabbit小隊に助力していきます
それではまた明日…