カルバノグ編 第7話です、お楽しみください
さて、シャーレに戻るには少々時間がかかる…少し散歩でもするとしよう
Rabbit小隊の入浴が終わるまで1時間ほど時間を潰そうと街を歩いていた時、パトロール中のキリノとばったり出会った
「あっ!先生!こんなところでお会いするとは奇遇ですね!」
「ああ、Rabbit小隊に用事があったが機会が悪くてな。時間を潰している。
キリノはパトロールか?」
「はい、その通りです!今日も市民の安全のために!」
「そうか」
「それにこの辺りは美味しい屋台がたくさんありまして…特にあそこのお肉屋さんのカツサンドは絶品で何かを買うと揚げたてのコロッケをオマケしてくれたり…
あっ!いえそれだけが目的というわけではありません!この辺は不良達がうろついているということもあってですね…!」
「大丈夫だ、キリノの真面目さは知っている
カンナもよく褒めていたぞ」
…射撃の腕や実直すぎる性格と不器用さを聞くにあまり現場仕事には向いていないと思うが、これを言うのは野暮か。
「局長が…?そうなんですね、えへへ…
っと、ところで先日そこの公園で騒ぎを起こしたSRTの生徒たちについて『後のことは全てシャーレに任せた』とお聞きしたのですが…
あれから大丈夫でしたか?」
「ああ。相変わらず我やワカモは受け入れられていないが…それでもRabbit小隊の様子自体は悪くはないと思う」
正直なところ今回の件で我はあまり役に立てていない、今Rabbit小隊を導いているのはガンベクセン様とユメだ。ミヤコ達の口ぶりからガンベクセン様はSRTを再建するつもりのようだがいくらあの方とはいえ、そんなことができるのか──
「………あの方ならできてしまうな」
2カ国を同時に相手取り、弱体化するどころか国を強くしながら勝利するという、何度振り返っても理解できない絶技をやってのけた為政者だ。どんな理不尽を相手にしてもあの方ならできてしまうのでは?と思ってしまう。
「それならよかったです!もしまた暴れ出したらと思ったら心配で…
私も先生みたいに剣を使ってみようかと思うんです、正直射撃は苦手なのでそれで強くなれるなら!」
「………鍛錬するのはいいが我を指標にするのはやめた方がいい」
「? なぜですか?先生はキヴォトスで1番強いですし、目標にしたいんですが…」
「強くとも問題が解決できるとは限らん、現に今Rabbit小隊を導いているのは我ではないだろう?
焦らなくていい、キリノは力よりも仲間を頼れ。きっとお前にはその方が合っている」
「仲間を…はい!分かりました!」
素直にぺこりと頭を下げるキリノ。
そのまま別れてもよかったがせっかく会ったのならもう少し寄り道をしてもいいだろう。
先の話にあった【お肉屋さん】で2人前のカツサンドを注文。おまけのコロッケも貰い、ホクホクのそれらを食べながら2人で街を歩く
「はふ…キリノ、冷めるぞ」
「へ、は、はい!いただきます!」
…なるほど、美味い。
以前は栄養食品やインスタント食品だけで済ませていたがユメと一緒に柴関ラーメンを食べたあの日から食事にも拘るようになった。
もっとも我は料理ができないので拘りは外食に限定されるが。
「もきゅ…ところで最近この辺りで変な噂があるんですよ」
「噂?」
話を聞くとどうやらここ周辺で武装した放浪者の集団が歩き回っているらしい
「銃社会のキヴォトスでは珍しいことでもないと思うが…何か問題になっているのか?」
「先日湾岸地帯に入り込んで廃材を盗んだこと以外は特に…確かに窃盗ではありますが市民への直接的な被害は確認されていません」
「そうか」
「とはいえ彼らが持つ銃火器は入手経路が不明で、かつかなり強力な兵器も所有しているようで市民達からは不安の声が上がっています
いったい目的はなんなのでしょうか…」
「…………」
Rabbit小隊のデモ鎮圧からそれなりに経ったとはいえヴァルキューレへのダメージは完全には消えていない。
その上でカンナの話ではヴァルキューレという組織自体、あまり活動資金に余裕が無いと聞いている。
ここで武装集団が行動に出てきた場合、果たして対処できるかどうか…
「…分かった。毎日とはいかないが我の方でも警戒しておくとしよう
いざという時は遠慮なく呼べ、駆けつける。」
「いいんですか?ありがとうございますギュメイ先生っ!」
職務に対する労いの言葉をかけ、キリノとはそこで別れた。
まだ30分しか経っていないが…微妙だな、どうするか…
「失礼、ギュメイ先生かね?」
「? そうだが…」
商店街から少し離れた場所で機械住民に声をかけられた
「………」
この格好…
「君に用事があるんだ。ついて来てくれるかね?」
「………ああ、いいぞ。だが──自分の足で行く」
『しんくう斬り』
しんくう斬りを放ち、吹きかけられた何かの煙を吐息返しの要領で吹き返す
まさか反撃してくるとは夢にも思ってなかったのだろう。吹き返された煙の一部を吸い込んだのか機械住民は膝をついた
麻酔か?…いや機械に麻酔が効くのか???
「ぬっ…!?ぐ、いきなり武器を抜くとはなんという…!」
「暗殺…拉致…この手の状況は散々味わった。我には効かん。
…さて、用事とやらを聞かせてもらおうか?」
▽▲▽▲▽
「ここが拠点か?」
「は、はい──ぐはぁっ!?
も、もう少し優しく…」
軽い脅迫と暴力で拠点らしき廃墟へと案内させ、床へと引きずり倒す
デカルトと名乗るこの機械住民はやはり放浪者のようで本人は【所確幸】という組織のリーダーを自称しているようだが…
「さて、我を名指ししたということは我がシャーレの人間であることも分かっているな?
なんのつもりで襲撃してきた?」
「襲撃なんてとんでもない、そもそも私たち所確幸は「聞かれたことだけに答えろ、さもなくば貴様を両断してから別の構成員に聞く」
生前関所を襲った時のように暴力を振り翳し、情報を吐かせる
…あまりこういう手段は取りたくないがこの男、こうでもしないと所確幸がどうだの、物を持たない幸せだの関係のないことばかり喋り出す。…こんな手段、ユメ達には見せられんな
「ひっ…く、それはあなたが部下を使って食べ物を強奪してるからです!」
「・・・ん?」
びし!とこっちを指差して言いのけるデカルト。だが当然心当たりなんてない
「待て、なんの話だ?」
「とぼけないでいただきたい!私の仲間達がはっきり見たのです!あなたとウサ耳の生徒達が仲良くしているのを!」
ウサ耳…Rabbit小隊のことか?
「………あれで仲が良いように見えていたというのならこんなことしてないで目の病院に連れて行くべきだと思うが。」
「バカにしているのですか!?」
「いや…」
普通に心配しているだけだが…
「大事なのはただ、あなた方が我々の求道を邪魔する、貪欲な者たちであるということ!」
「訳が分からん。そもそもお前が我を襲おうとしたのは我が食料の強奪をしたからでは無かったのか?…いや強奪などしていないのだが。」
「いいですか?私たちは時にこう呼ばれます
【穀潰し】、あるいは【社会の膿】と」
「………」
妥当では…?
というか脅迫を緩めたせいでまたデカルト自身の語りが始まりそうだ
「しかしそれはどちらも的を得ていません。私たちは何もしてないのではなく
ただ【無所有】を実践しているだけなんで
ゾンッ!!
ヒィッ!!?」
近くの窓を壁ごと叩き斬り、改めて脅迫し直すギュメイ
…あれから1時間と半、Rabbit小隊の入浴は既に終わっているだろう
これ以上時間を無駄にする理由はない上に、いい加減面倒になって来た。
「結論を言え。次関係のないことを吐けばお前の方を斬る」
「ひ…く、いいですかギュメイ先生!今後!焼肉弁当が廃墟されていたら!それは私たち所確幸に譲っていただきたい!」
「・・・・・あー」
………うむ
「──すまぬ、そこに至る過程を教えてくれ」
やはり暴力に頼るのはよくないと再認識し、謝罪を挟んだあと話を聞くことにしたギュメイ
やたら話が脱線気味だったがまとめると…
「いや…知らん…」
「実際にあのウサギ達がいきつけのコンビニから我々のための廃棄弁当を根こそぎ持って行ってるんです!」
どうやら彼らはエンジェル24…あのコンビニの廃棄弁当をアテにして生活していたらしいがある日を境に現れたRabbit小隊がその廃棄弁当を全て持って行ってしまい、それをやめさせるために我に襲撃をかけたらしい
「馬鹿…なのか?お前たちは…?」
かなり本気で脅したというのにそんなことのために真っ正面から要求できる胆力は目を見張るものがあるが、動機が動機だけに馬鹿にしか思えない
食い繋ぐため、というよりタダで焼肉弁当が食べたいというのも馬鹿に拍車をかけている気がする…
「馬鹿とはなんですか!我々持たざる者が手に入れられる焼肉弁当がどれほど価値ある物か
「ギュメイ先生っ!中務キリノ!現着しました!」
来たか
「想定より早く来てくれて助かるぞ、キリノ」
「なっ、ヴァルキューレ…!?」
拠点に押し入る少し前にキリノを呼び寄せていた。別れたばかりで呼ぶのも気が引けたが2つ返事で駆けつけてくれたキリノに再度感謝を述べる。
「えーとこの人が?」
「例の放浪者達のリーダーらしい、武器兵器だけでなくスプレー型の麻酔も持っていた。どれも根無草の彼らだけで用意できる物資とは思えない。連行後、調査を頼みたい」
「分かりました!本官にお任せください!」
「い、いつの間にかヴァルキューレを呼んでいたとは…!なんて卑怯な男ですか…!」
「卑怯と言われてもな…それに治安維持組織が現れて狼狽えている以上、やましいことをしている自覚はあったのだろう?
話は終わりだ、デカルト」
その後、意外にも逃げずに向かって来たデカルト率いる所確幸達だったがギュメイが2.3人を軽く斬っただけで部下の殆どが逃走をはじめ、丸裸になったデカルトはキリノによって捕縛。状況整理のため、デカルトを連行するキリノにギュメイもついていくこととなった。
…やれやれ、Rabbit小隊に会いに行くのは日を改める必要がありそうだ
なんかギュメイメインで書くのが久しい気がして不思議な気持ちになってる作者のルルザムートです、ハイ。
総力戦編とサブストーリー編でギュメイ以外がメインを張ったからか新鮮なんですよね…
ギュメイが主人公なのに。
それではまた明日…