カルバノグ編 第8話です、お楽しみください
「うわっ、わわっ!飛ばされちゃう!」
「手を離すな。…それにしてもひどい雨だな」
デカルト率いる所確幸を叩きのめし連行してから1週間後、予定を調整して再び子ウサギ公園に行く目処が立ったはいいが今度は凄まじい大雨が降り続いており、テレビの速報やインターネットニュースは大雨の警報で持ちきりだ
いくら特殊部隊の訓練を受けていたとはいえこの雨では野宿中のRabbit小隊はタダでは済まないはず。
あまり干渉するつもりは無かったがこの規模は流石に無視できない。
シャーレの留守はワカモに任せ、我と同じくRabbit小隊を心配するユメと共に子ウサギ公園へ向かう
するとそこには…
「ついた!…あれ?」
「っ?いない…?」
形跡はあるものの、天幕や銃座といった物質は軒並み撤去されており、Rabbit小隊の姿もない
避難したか、懸命だ。…しかしどこへ?
一応、Rabbit小隊はこの公園でデモ活動をしていることになっている。一時でもここから去ればそれが終わる可能性がある以上、ミヤコがここから動くのは無いと思っていたが。
『ギュメイ先生っ、ガンベクセンさんからお電話です!』
彼女らの行方を探ろうとしたちょうどその時、アロナから声がかかる
ガンベクセン様から…?
「繋いでくれ。…ガンベクセン様?」
『ギュメイ、そろそろ公園に来た頃かな?Rabbit小隊は既に避難しているよ、私と一緒にね。現在地を送るから来てくれないか』
「──お見通しですね、分かりました。すぐ向かいます。…ユメ、聞いたな?」
「うん!すぐに行──ひゃあぁっ!!?」
何かに引っかかったのか、いつものドジか分からないが盛大に排水路に落下するユメ。
雨具を着ているとは言え水の中に落ちては…
「ユメ、大丈夫──」
「ずび、ひぃん、ギュメイ先生ぇ…」
「──ではなさそうだな、幸いRabbit小隊の避難場所は近い。まずはそこに行くぞ」
▽▲▽▲▽
「なんでその場しのぎを繰り返してる私たちじゃなく、しっかり備えてたはずのあんたがぐしゃぐしゃになってるんだよ…?ホラ、私のコーヒー分けてやるから」あったまるぞ
「サキちゃんありがと──ひぃん、苦いよぅ…これお砂糖はないの?」
「図々しいやつだな!?そのコーヒーだって私の稼ぎで買ったんだぞ!嫌なら飲むな!」
ポカ!
「きゃう!?ひぃんごめんなさい!いただきます!」
ミヤコ達が避難している場所…元SRT管轄の屋内訓練場、その休憩室にてユメは頭をはたかれながらコーヒーをすする
替えの服などは持って来ていないが濡れた服をそのままにもできず、今のところは小隊内で最もサイズの大きいモエの服を借りている状態だ
…それでもサイズがきついと声を漏らすユメに対しRabbit小隊の面々は信じられないものを見るような目をしていたが。
「ガンベクセン様」
「驚いたかな?何でも屋としての彼女らが少しだけ認められてね、あくまで一時避難の間だけだが連邦生徒会からこの訓練場の使用許可が出たんだ。
こういう許可はもう少し先だと思っていたけどとある生徒が強く推してくれてね」
「とある生徒?」
今連邦生徒会の人間でRabbit小隊に肯定的な人物と言えば──
「…カヤ?」
「ご明察です、ギュメイ先生。」
想定通りの人物──不知火カヤが手洗い場から出て来た
「といっても威張れるようなことは何もしていません、私は私の思うがままに行動をしただけのこと。特に恩を売ったつもりも無いので気にしないでください
…ところでガンベクセン王、今日はこちらでRabbit小隊の訓練も行うというお話でしたが、そろそろ詳細をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
っ?訓練?
「──うん、そうだね」
一瞬の沈黙ののち、何故かギュメイを見るガンベクセン。
相変わらず彼の意図を図り切れていないギュメイだったが、それに応えるかのようにガンベクセンは話し始めた
「単刀直入に言おう。…ギュメイ、Rabbit小隊と戦ってくれ」
………!なるほど、苛烈な訓練だ
「お望みであればそのように。しかしRabbit小隊はそれを知っていたのですか?」
「知らないよ、今初めて言ったからね」
「…どういう、ことですか?」
「ええ…またあんなのと戦うのぉ…?」
「お前は戦ってないだろモエ…」
口々に不満を漏らすRabbit小隊だがガンベクセンも引き下がらない
「いいかい、Rabbit小隊の能力は確かに高いが致命的なものが欠如している。この訓練はそれを補うのに大きく貢献するはずだ」
「っ?足りないものなんて学校くらいだろ?」
「いいや、違う。実戦経験だよ。Rabbit小隊は訓練に訓練を積んだエリートの集まりだけど実戦を経験する前に学校が閉校したことで肝心の任務を経験していない
対処できない事象は今までなら教本を開けば解決できたかもしれないが現実はそう上手くいかないよ
戦闘、非戦闘に関係なくあらゆる理不尽と想定外に対処できた時【最強の兵士】になれるんだ
…そして、FOX小隊はそれができなかったからギュメイに敗れた」
「「「「!」」」」
それまであえて触れないようにしていた話題を唐突に出され、指先が一瞬震えた
いきなりそんなことを言っては──そもそもなぜこの方はそれを知っている?
ワカモとカヤ以外に知らないはずの情報を握っていたことに疑問を覚えるも『ガンベクセン様だから』と即座に納得してしまったギュメイ。
冷静に考えればカヤが話したのだろうがガンベクセンという存在が大きすぎたことでその場では思い浮かばなかった
勝手に結論を出したギュメイだったが憧れの先輩達の敗報を聞かされたRabbit小隊はそうはいかない
「敗れ──待ってください、今なんて…!?」
「おいギュメイ先生!お前ユキノ先輩たちに何をしたんだ!?」
「………やれやれ」
こうなると思ったから触れなかったというのに。
流石に文句の1つでも言おうとしたギュメイだがそれより早くガンベクセンの鋭い指摘が少女たちに突き刺さった
「──今この瞬間、誰か1人でもギュメイに銃を向けているかい?」
「…え?」
「今の話でギュメイが【敵かもしれない】という考えはよぎったはずだ。でも君たちは私やギュメイに詰め寄るばかりで武器を取らなかった
…もし本当に敵だったなら、どうなっていたと思う?」
「それは……」
「………」
「これから先新しいSRTを造った時、今みたいな予想外や想定外が君たちに降り注ぐだろう
そういう理不尽を相手にした時、君たちは誰に教わるでもなく自分の力でそれを解決しなければならない」
「…だからギュメイ先生と戦えと?」
「うん、彼を正面から相手にするのも理不尽の1つだ。
いいかい?これは習って克服できることじゃない。答えがあるわけでもない。重要なのは【立ち塞がる理不尽をどうするかを考える】ことだ
【考えた結果】ではなく、【考えること】が大事なんだ」
「ずずず…ひぃん、ギュメイ先生が理不尽扱いされてる…」
「気にするな、慣れている」
どの戦場でもこういうことは言われていたからな…
「──分かりました。ギュメイ先生、相手をお願いします」
「分かった」
「おいミヤコ…」
「どちらにせよ私たちは彼に一度敗けています。SRTを名乗るならいずれ超えなければならない相手…ユキノ先輩たちと何があったか聞くのはその後です」
一対一でもだいぶ理不尽ですが戦場にてゴレオンがひたすら暴れ回った後、後ろからギュメイが出てきたら理不尽どころの騒ぎではないと思っている作者のルルザムートです、ハイ。
ブルアカ本編と違い、資材含めて大雨の被害から免れたRabbit小隊ですがその代わりにギュメイと戦うことに。
ガナン過去回想で書く余裕が無かったのですが多分ギュメイは戦闘指導官みたいなこともやってたんじゃないかな…?なんて思ってます
…教えると言うより『本気で斬りにかかるから自分で学んで生き延びろ』みたいなスタンスだと思いますが。
それではまた明日…