カルバノグ編 第11話です、お楽しみください
「〜〜〜♪」
いつもの公園に向けて鼻歌混じりに歩いてゆく
ギュメイ先生もガンベクセンさんも誰かと会う用事があるみたいで今日は私1人だ。…行く前にどこかでお昼ご飯食べようかな
シャーレからの給金はそれなりに出てはいるものの、そのほとんどを借金返済にあてているためにユメの懐事情はあまりよろしくない
とはいえホシノとも【節制は身体を壊さない程度に】と何度も念押しされていたために無茶はしていない、あくまで店などに入った時『どれが1番安いかな?』と考えるようになった程度だ
「…あれ?」
テクテクトコトコ、歩けど歩けどお店が無い。いや店はあるのだが全て閉まっている。
「ひぃん、お腹すいた…」
こうなると分かっていればエンジェル24で何か買ってからくるべきだったと後悔するがもう遅い、最悪夜まで我慢しようかと思っていると──
「…?」
なんだかいい匂いが…
「美味しい美味しい【おいなりさん】はいかがですか〜?
…あ、そこの生徒さん!もしお食事がまだでしたらこちらはいかがですか?
今日のはなんと言っても会心の出来で「はいっ!3つくださいっ!」
ギュメイ先生の抜刀中のように財布を取り出し、狐耳の生徒さんからおいなりさんを購入。
「さっそく1つ……お、おいひぃ〜!あ。いただきまーす!」
会心の出来という言葉通り、甘辛い油揚げの中に詰め込まれたホクホク白米は口の中を幸せでいっぱいにしてくれた
最初の1つをあっという間に食べ切り、即座に2つ目──
「急がなくてもおいなりさんは逃げないですよ」
「ダメだよ!この…もぐ、おいなりさんつくりたてでひょ?急ふぁないと作りたてからどんどん遠くなっちゃう!」
んー!2個目もおいしー!!
「そんなに美味しそうに食べてくれると私も嬉しいですよ!
今日は全然お客さん来ないから落ち込んでたんですが…」
「こんなに美味しいのに?………そういえば今日は殆ど人がいないですね、お店も閉まってて…」
「そうですね。実はこのあたりもうすぐ再開発が始まるんですよ、多分そのせいかと」
「もぐ…再開発?」
あ、おいなりさん無くなっちゃった
「あれ?もしかしてご存知無かった感じですか?」
「うん。再開発って?」
シャーレで仕事しててもそんな話は聞かなかったけど…
「噂ですけどこの辺に新しい地下鉄を開通させる予定らしくて。周辺の商店街やら色々崩した上で地下鉄工事。そこに新しいショッピングタウンを建てるんだとか」
「…ここのお店無くなっちゃうの?」
生活安全局の元気な子から教えてもらったお肉屋さんのカツサンド、大好きなのに…
「どうでしょうか…?全てが無くなるわけじゃないと思いますがひとつ残らずショッピングタウンに入るかと聞かれたら…まぁ開発する会社次第ですね、名前は──ええとなんでしたっけ?タコさんみたいなマークだったんですが…」
「たこ…?タコ………え"!」
それってもしかして…
「ね、それってもしかしてカイザーって名前じゃ…」
「ああそれです、カイザーコンストラクションっていうカイザーグループの会社だったと思います!…どうかしたんですか?」
「………ここのお店の人たちがいなかったりするのは、カイザーの人たちが追い出してるから?」
「そうですよ。…ああ、暴力で追い出してるわけじゃないですよ?確かに良い噂はあまり聞きませんが同じグループ会社のカイザーPMCが無茶なカジノ経営のせいで崩壊したとかで慎重になってるみたいですね
ここにいない人たちはちゃんと立ち退き料を貰っているはずです」
実際に立ち退いた人から話を聞いたわけじゃ無いけど、多分貰ってないと思う…もしまた悪いことを考えてるなら…!
【やっつけよう】…と思ったはいいがカイザーが悪事を働いた証拠は無い、だがそうなってからでは遅いのも事実。頭の中でぐるぐると思考を回すが最終的に──
「──よし!ギュメイ先生に相談しよう!」
「…!」
こういう時は1人で悩まずギュメイ先生とかホシノちゃんとかアウルさんに相談した方がいいからね!
あ、そうだ。
「すみません!残ってるおいなりさんぜーんぶください!」
「へ?あ、はい!え、全部ですか?」
「はい!」
こんなに美味しいもの、私だけ食べちゃうのは勿体ないもの!他にお客さんがいたら我慢するけど…ギュメイ先生やミヤコちゃんたちに持っていってあげよう!
残った17個のおいなりさんを購入し、ホクホク顔のユメ。
【こんなにあるんだし…】ともうひとつおいなりさんをぱくり。
やっぱりおいしー!
「…ところで新生SRTの噂、知ってますか?」
「はむ?うわさ?」
「いえ、少し小耳に挟んだ程度なんですが…閉校したSRT特殊学園が名と代表を変えて全く別の学園に生まれ変わろうとしている、と」
「うん、そうだよ。ガンベクセンさんとミヤコちゃん達とみんなで力を合わせて新しい学校を作るの!」
あれ?これ言ってもいいんだっけ?でも悪いことしてるわけじゃないし良いよね!
「──そうですか」
「? どうしたの?」
「いえ、なんでもありません。お買い上げありがとうございました、ユメさん。ギュメイ先生によろしくお願いします」
「うん!またね!」
アルバイトの生徒と別れ、公園へと向かうユメ。残った16個のおいなりさんをバッグに詰めて──
──あれ?そういえば私、あの子に名前教えたっけ…?
「ま、いいか!それより…うん、あと1個だけ!あと1個だけ食べよう!」
16個もあるんだからもう1個くらいいいよね!
…えへへ、美味しい!………うん、あともう1個だけ。〜♪幸せの味がする〜
「……………も、もう1個だけ!」
今度こそあと1個だけと何度も心に決めながら次々と消えていくおいなりさん。結局公園についた時には──
▽▲▽▲▽
「お、いなり寿司じゃん、美味しそう!1個貰うね〜」
「おいモエ、お前無警戒すぎじゃないか?」
「良いって良いって、彼女誰かを陥れられるようなスキル持ってなさそうだし。っていうか騙される側でしょ
んー、うま!いらないなら私貰うよ?」
「4つしかないのに2つ食う奴があるか!私も食べる!」
「わ、私も……ふぇ…?あの、ユメさん?どうしましたか…?」
「ごめん、ごめんね?本当にごめんね…その、おいなりさんがあまりにも美味しすぎたから…だから…」
ユメの性格上、黙っていることができず、ここに来る途中で買ったいなり寿司を殆ど食べてしまったことを打ち明けてしまった
実際に美味しいいなり寿司を食べたあとにその話を聞かされたモエ達は『そういうタイプの嫌がらせか?』とユメを囲んでいたものの、ガンベクセンが戻ってきたことによりひとまず沈静化。
…余談だが後日この話をアウルにしたところ『黙っていればいいものを…』と呆れられてしまったのは言うまでもない
たくさん食べる君が好き、な作者のルルザムートです、ハイ。
ストック切れましたがまだ足掻きます。