カルバノグ編 第12話です、お楽しみください
「お前も何も聞いていないのか?」
『だからそー言ってるじゃねーか、だいたいお前やゲルニックでもガンベクセン様の考えることなんかわかんねーのにオレが分かるわけねーだろ』
チェリノかゴレオンには話してあると思っていたが…ううむ
シャーレの仕事がひと段落し、【そういえば】とゴレオンに電話を掛けてみたが彼もガンベクセン様の真意は知らないようだ
「出発したのは我らがビナーを撃退した日か…SRTを再編しようとしているのは預言者達と戦うためか…?」
『さぁな、何が目的かオレには全くわからねぇ。
…あーそうだ、もしガンベクセン様と会ったら早く帰ってきてくださいって伝えてくれねぇか?』
「? 何か用事があるのか?」
『そーじゃねーがチェリノ様が寂しがってるんだよ、SRT?の子供達を見捨てられないのはよく分かるがチェリノ様のことも忘れないでほしいんだぜ』
「分かった、伝えよう」
通話を切り、手元の端末と窓の外を交互に見る
「ガンベクセン様のためであり、我のためであり、そしてミヤコ達のためではない…」
一応一言断ってからレッドウィンターを出発してはいたようだが分かったのはそれだけだ、あと他に彼の真意が分かるものがいるとすれば──
「……………」ポチポチ
『・・・・・お掛けになった電話番号はただいま電波の届かない場所にあるか…』
…やはり繋がらない。ゲルニックもゲルニックだ、いったい今どこで何を…
「ギュメイ先生っ!緊急です!」
「ワカモ…?」
バン!と扉を破壊する勢いで飛び込んできたワカモを受け止め、事情を聞き出す
抱き寄せられた一瞬、彼女の顔が真っ赤になったが余程の緊急事態なのかすぐさま持ち直した
「何があった?」
「電話が繋がらなかったので直接こちらに…ユメさんから今すぐ子ウサギ公園に来て欲しいと…!」
…! ユメやガンベクセン様に何かあったのか…!?
「分かった、すぐに向かう!事情は道中で教えてくれ!」
「はい!」
▽▲▽▲▽
同時刻、子ウサギ公園にて…
▽▲▽▲▽
「お、おいガンベクセン!」
「静かに。誰も攻撃してはいけないよ」
明らかにヴァルキューレのものではない装備に身を包み、子ウサギ公園を包囲するヴァルキューレ事務局の生徒達。
1人1人の力はミヤコ達に遠く及ばないだろうがそれ故に数と装備の質を大きくこちらを威圧してきている。どう見ても話し合いをする雰囲気じゃない
…それでも話し合うんだけどね
「穏やかじゃないね、これはいったいどういうことなのかな?カンナ」
「それはご自分がよく分かっているのではないですか?」
「いや、全く分からない。君の口から私たちが何をしたのか教えて欲しいな
少なくとも銃を突きつけられるようなことはしていないのだけれど」
「…市民たちが使うための公園を不法占拠し、地域社会に不安をもたらしている存在がいると、そう聞いて取り締まりにきただけです」
「妙だね、ここ子ウサギ公園はRabbit小隊が来る前から利用者は殆ど居なかったと聞いたけど?
それに地域社会に不安をもたらしていると言ったがそれは誰が言ったのかな、ここのところRabbit小隊は地域住民の依頼を聞いて働いていたし、依頼された以上のことはしていない。せいぜいパトロールくらいだ。
カンナ、誰が言ったのかな?」
「告発者を晒し上げろと言うおつもりですか?」
「…告発者が誰か分かったら報復に出るような人間の集まりだと、そう言いたいのかい?
心配せずともそんなことはしないさ」
武器も魔力も出さず、それでも一歩も引かないガンベクセン。
本来部外者であるはずの彼が既にRabbit小隊の中心に立っているという異常事態ではあるがその場の誰もそれをおかしいことだと認識できていない
だからこそかつての彼は王だったのだが。
「しかし困ったね、Rabbit小隊はここを追い出されたら行く場所がない。君のことだからそれは分かってもらえていると思うんだけど」
「不法占拠だけではありません、ガンベクセンさん。あなたがRabbit小隊を中心にした新しい武装組織を作ろうとしているのは既に調べがついています」
「…調べも何も、活動のたびに事細かくシャーレ経由で連邦生徒会に報告しているんだ、知ってないと困るな」
「新生SRT…【Rabbit学園】でしたか?連邦生徒会長ならいざ知らず、外部の人間にそんなものを作らせるわけにはいきません」
「別にRabbit小隊単独で作るつもりはないよ。それに私は新生SRTの指揮を取るつもりはない」
「えっ?SRTはガンベクセンが代表になるんじゃないのか?」
「もちろん最初はそうするよ。でも生徒が立つべき場所にいつまでも居座るわけにもいかないからね」
そういえば言ってなかったとサキに謝罪を入れながらも話は続く
「話が逸れてしまったから本題に戻ろう…カンナ、君はRabbit小隊を公園から追い出したいようだけどこれについては拒否させてもらうよ。既にRabbit小隊が公園を使ってもいいと許可を貰っているからね」
「Rabbit小隊が公園を使っていいと言われた事実はありません。あくまでRabbit小隊の処分を保留にすると、そう言われただけのはずです」
「その通りだよ。故に処遇を決める権利を与えられたシャーレはその処遇の一環としてRabbit小隊を公園で生活させるという処分を【命令した】。
命令を下したのはシャーレの権限順位2位の梔子ユメだし、これを了承したのは連邦生徒会だろう?
覆したいのなら更に権限の高いギュメイをここに呼んでくれ。もしくは私をギュメイの元に呼んでくれればあとは私が話をするよ」
「………」
話し合っていてもラチがあかないと思ったのだろう。カンナの空気が変わった
…だが黙って武器を抜かせるガンベクセンではない、あくまでここでやるのは【対話】だけだ
「強硬手段に出るのはオススメしないよ、彼女達が強いというのもあるがそれ以上にミヤコ達は地域住民に受け入れられ、頼りにされ始めている。…それこそヴァルキューレよりもね
仮に勝ったとして、ヴァルキューレに非難の嵐が飛ぶのは間違いないと思うのだけど」
「………これでも私は狂犬と呼ばれています。脅しの1つや2つで怯むほど「脅しじゃないよ。私は嘘や脅しが苦手だからね。──さて話は変わるけどカンナ、今日でヴァルキューレをやめて私たちとSRTをやろう」
瞬間、ヴァルキューレもRabbit小隊も関係なくひっくり返った
…厳密には本当にひっくり返ったわけではないが、衝撃は相当なもの。何せ対立相手のリーダー格をなんの前触れも無しにスカウトに走ったのだ、当然だろう
「はぁ!?おま…ガンベクセン!何言ってるんだ!?」
「…そちらの隊員の言う通りです、冗談ですか?」
「言っただろう私は冗談は──あ、冗談のことは言ってなかったね。…うん。私は嘘と脅しの他に冗談も苦手なんだ。
…君がやりたいことはヴァルキューレにいる限り実現できないよ、きっとね」
「っ?局長のやりたいこと…?」
「あいつ何言って──「部外者のくせに知った風な口を聞くなよ…!私がどれだけ妥協をして生きているか…」
「【妥協】、うんその通りだ。人は大人に近付くほど【妥協】を余儀なくされる。本来その歳で多く抱くものではないけどね…
そして【正義】と【妥協】は反比例する。正義というものは基本的に妥協を許さない…
君の守りたい正義がどんなものかは知らないがそれを守るためには君はヴァルキューレから出なくちゃいけないよ」
「これまでの全てを放り投げて不確かな組織に身を委ねろと言うのか?」
「そうだよ。それが今の私の正義だからね。私は私の正義を通すために妥協をしない。
カンナ、私たちと一緒にSRTをやろう」
「………っ」
俯いて表情は見えないが隠し切れない葛藤が握り拳から見て取れる
本来子供が負うような責任じゃないはずだ、彼女のような子はなるべく早く負の循環から出さないといけない
「──それでも私は、ヴァルキューレです。ヴァルキューレとしてなすべき事をするだけ…!」
血が出るほど握りしめた拳が振り上げられ、戦闘の号令がかかる──
…時間切れかな、でももう大丈夫。彼が来た
──開戦を指示する信号はもう1人の大人の手によって物理的に止められた
「そこまでだ!…カンナ、ミヤコ達も…これはいったいどういう状況か説明してくれ」
「ギュメイ、先生…」
獣耳生徒には魅力的な生徒が多い…と感じている作者のルルザムートです、ハイ。
カルバノグ編の〆方は既にできているんですが道中を殆ど考えられていないのでレッドウィンター編やサブストーリー編より難航しております、今のところ毎日投稿できてますが果たしてどこまで保つか…
それではまた明日…