やっぱりガンベクセン視点は書いてて楽しいねぇ!
カルバノグ編 第15話です、お楽しみください…
「………」コンコンコン
3回のノックののち、返事を待たず中に入る
「やぁカンナ」
「・・・これだけのことをしておいてよくヴァルキューレに直接来れましたね、ガンベクセンさん」
「電話や手紙じゃ気持ちが伝わらないかと思ってね」
ヴァルキューレ公安局長室で1人項垂れているカンナ。口調には敵意が入っていそうだったがどこか安堵の色も見える気がする
「気持ち?【お前の全てを叩き壊した】という意思なら充分伝わりましたが」
「…まぁ、確かにそれもあるけど。」
窓から公安局前を見下ろしてみればクロノス報道部を始めとした報道機関や野次馬の群れで埋め尽くされており、カイザーとヴァルキューレの癒着についての真意を問いただしている
「でも壊れてよかったでしょ?
これまでヴァルキューレは間違った方向…マイナスに向かって進んでいた。
今日これでようやくゼロに戻れたんだ。これから歩んでいけば── バンッ!
真っ二つにする勢いで叩かれた机から銃声にも負けない轟音が響いた
「…【ヴァルキューレは公正であるべきだ】、確かに規則はそう。
だが世の中は多くの人間が思っているほど公正ではない!」
「カンナ」
「あなた達は知らないだろう…!
私が汚い現場で!どれだけ妥協に塗れながら公務を処理していたか!
手を汚さずに正義を掲げ続けることはできない…!
ガンベクセン、あなたがどんな平和な場所から来たのか知らないがそんな平和ボケした頭で偉そうな口を叩くな!!」
──うん。
「確かに、君の気持ちは分からない。私は妥協をしたことがなかったからね」
「っ!!…妥協を知らない人間なんかに…!」
「…【20万人】」
「に…っ?どういう…」
「およそ【9万人】、あわせて【29万人】…死後を含めればもっともっと多いかな」
「いったいなんの話だ──「私がキヴォトスに来る前に死なせた人間の、おおよその数だよ。
前者は兵士で、後者は民間人。」
「っ!!?」
当時、セントシュタインとルディアノの連合軍は総勢30万の兵で構成されていた
うち10万は食糧を餌にして寝返らせたが、有能な兵士からどんどん消えていった結果兵隊が大きく不足。強制徴兵と飢饉によって分かっているだけでも9万の民間人が死亡したらしい
その結果ガナン帝国が誕生し、火種は全世界へ──はは…思い返すと本当に酷いことをしてるなぁ、私。
それとは別方向の酷いことを、今からやろうとしてるんだけどね。
「そんな冗談で私を「私は冗談が苦手だよ。…カンナ、君は狂犬と呼ばれているけどとても優しいね。組織の長になるには不向きだと思えるくらいには。
さっき君は【私がどれだけ妥協していたか】と言ったけど、【私たち】とは言わなかった。
…他の子達が汚職警官にならないよう君が全てを担っていたんだろう?
妥協したとしても、その選択で部下の子達まで汚れてしまわないように。」
「なにを、今更…」
「私は妥協することを知らなかった。何度も取捨選択の場面に遭遇したが迷ったことは無かった。…その結果が29万人の死だよ。君の言う通り、社会はどこかで妥協しなければならないし普通はしようと思う前にどこかで妥協しているものだ。」
チェリノ達のおかげで私は人間になれた。なれたけど、結局人間の根っこは変わらないらしく、ついに妥協をすることができなかった。
「私は大人なのに妥協できなかった。子供のように理想だけを追い求め、そして最悪なことに求めた理想がどうしたら手に入るか分かってしまう。
…カンナ、私は【一般的に正義と呼ぶもの】を守るためにヴァルキューレの汚職を暴いたわけじゃない。【私の正義】を通すためにやったんだ。
この正義を通せば多くの人間…少なくともギュメイとレッドウィンターの子供達を酷く傷付けることになる。
君のように誰かを気遣うことができれば踏みとどまることもできただろう。
でもね、それでも私は止まりたくないんだよ。」
──これまで散々蔑ろにして来たのに、手が届くと分かってしまったから。
「ガンベクセンさん、あなたは…」
バァン
「いた!あ、失礼します局長!外の連中が局長を出せと…私たちだけでは対応がもう…!」
「すぐに行く!先に行け!」
「は、はいっ!」
一瞬飛び込んできたヴァルキューレ生によって会話は強引に中断された
…でも話したいことは話せた
「このまま私がここにいたら邪魔になるよね、そろそろ帰らせてもらうよ」
「待ってください。…私を新SRTへ勧誘したのも、あなたの正義を通すためだと?」
ああ、それね
「それだけじゃないよ。ミヤコ達に手を貸したのも、新SRTを立ち上げようとしたのも、その全てを防衛室長に譲ったのも、全ては私の理想を叶えるため。
…はっきり言うよ。私はSRTが閉校になろうが、ヴァルキューレとカイザーが癒着してようが、キヴォトスがどうなろうがどうでもいいんだ。
今はたまたま、ミヤコ達を助けてヴァルキューレの汚職を暴いた方が私の理想に近くなる…そう思ったからやっただけ。
みんなが思っているほど、私は良い人じゃないよ」
それだけ言って部屋を後に──
「待ってください!…なぜ、それを私に言うんですか?
もしやあなたは、止めてほしいのでは「違うよ」
むしろここまで来て止められては困る。私が打ち明けたのは…
「君がある程度私の真意を知ってくれれば、いざという時きっと私の思った通りに動いてくれると、そう思ったからだよ
…じゃあね、カンナ」
大人の中の異端な男、ガンベクセン…
彼の言う【理想】をカンナは最期まで理解できなかった
いや、誰も理解できない。人間らしさを取り戻そうと根は変わらないのだ。
ガナン王国の元国王、孤独な王様は理解者がいなかった故に、自分の理想以外を顧みない。
──もちろん、自分自身も。
ようやく折り返し地点に立てて少しだけ安心してる作者のルルザムートです、ハイ。
ええー、一章が殆ど終わりましたが作者が11月から海外渡航なのでただでさて遅い執筆ペースが更に遅くなる可能性がありまして…
なので1章が終わっても10月中はこのまま毎日投稿を気合いでやっていきます。まぁ潰れる時は潰れるかもですが…
それではまた明日…