カルバノグ編 第17話です、お楽しみください
1週間前…
ガンベクセンとカヤの口添え、更には近隣住民の応援の声もあり、Rabbit小隊への屋内訓練場の使用許可が再びおりた。
訓練場でやることと言えば当然──
「だああああーっ!!」
「【マヒャド斬り】」
接近してきたサキをマヒャド斬りの氷塊で牽制しつつ、返す刃でモエの爆弾を叩き斬る。
凍結により機能停止したそれを火炎斬りで叩き返し、機能を取り戻した爆弾を逆利用。
だがそれを読んでいたミヤコが爆炎を隠れ蓑に飛び出し、ギュメイの間合いの内側へ。
小柄な身体を更に屈め、死角からナイフが振り上げられる。
更にはミヤコの動きに呼応し、ミユの狙撃がギュメイの退路を塞ぐ。
絶対に避けきれない位置から繰り出された同時攻撃。だがRabbit小隊員達は気を緩めない。
「っ、はぁっ!」
あの時と同じ。前後同時に繰り出された斬撃が2人の攻撃を弾き飛ばす──
「──今!!」
ギュメイの真上をとったモエのドローンが自爆。至近距離にいたミヤコ諸共ギュメイに爆風を食らわせる
とはいえこの爆風自体にそこまで破壊力は無い。仲間ごと吹き飛ばす前提で調整されたドローンの火薬は通常のものよりかなり威力が抑えられていた。
ミヤコらRabbit小隊は当然それを知っていたがギュメイに無人兵器の性能を見抜く力は無い。大きく飛び退くしかなかったギュメイ目掛けてサキとミヤコの追撃が迫る──
「ここだ…!くらえっ!!」
「っ…!」
20回ほど戦って分かった。彼の放つ【マヒャド斬り】や【隼斬り】といった剣技は短いがインターバルがある。ただの斬撃と違って連続では出せない。
彼自身それを分かっているのだろう。相当に追い詰めなければ彼は剣技を繰り出さない。故に勝つためには隙の大きな剣技を吐かせた上でそれを凌ぎ切り、僅かなインターバルに攻撃を重ねなければならない。
自分1人ではとても無理だ、でもRabbit小隊なら──
「──【隼斬り】」
…っ!?
「えっ?のわぁっ!!?」
「うぐ…!?」
終わっていないはずのインターバルを無視し、隼斬りを繰り出したギュメイ。反撃が来ない前提で追撃に走ったミヤコとサキにこれを避ける術は無く、重い攻撃をモロにくらってダウン。
…32回目の訓練でも、Rabbit小隊はギュメイに敵わなかった。
どうやってインターバルを無視して…いえ、違う。そもそも最初から──
「月雪ミヤコ、空井サキ死亡…さてミヤコ、今回の反省点は?」
「・・・攻撃の隙があると決めつけ、それ前提の作戦を取って想定外への対処を怠ったことですか」
すぐさま今の敗因を簡潔に言葉へ変換。…すると【もう気付いたのか?】と言わんばかりに少しだけ彼が笑った
「その通りだ。Rabbit小隊の動きも我の動きにかなり対応してきたようだからな。
ここからはこちらも剣技の出し惜しみはしない。」
「…え?ま、待て。今まで手加減してたのか?」
「手加減と言うよりはあえて隙を見せてミヤコかサキのどちらかが突っ込んでくるのを待っていた。
誘いをかけ始めてから思った以上に時間がかかった。慎重だなミヤコ」
「結局勝てなかったんです、慰めはやめてください。…次は勝ちます。」
リベンジに燃えるミヤコだったが流石にこれ以上は生活に支障が出るとして実戦訓練は終了。
子ウサギ公園へと戻った…
▽▲▽▲▽
「お帰りなさいませ先生♡もう少しで昼食の準備が整いますわ♡」
「ああ。ありがとうワカモ」
「・・・コイツ平然と私たちの備品を使ってるよな」
「ええ、ですので不本意ながらあなた方Rabbit小隊の分も作ってあります。食べたければどうぞ?」
ほとんど関わりのないはずの野外活動用調理器具をテキパキと使いこなし、飯盒を使って人数分の白米と味噌汁を調理。また焚き木を使って肉を焼きつつ、銃から取り外した短剣を使って器用に林檎を切っていた。
後から知ることとなるのだがギュメイが滞在すると知ったワカモが一晩で猛勉強し、野外用品の使い方を習得したらしい。
それ以来このようにしてギュメイ達の食事を作っている。
最初はギュメイとワカモ自身の分しか作ろうとしなかったがギュメイの説得により今に至る。
…そして彼女の作る料理がこれまた美味い。
故に相手が七囚人と分かっていてもRabbit小隊は強く出れずにいる。
極度の空腹と、ワカモの作る料理…その2つを知ってしまっているRabbit小隊にとってワカモを追い出すという選択はどうしても──
「できました!あと先生の分にはわたくしの愛をたっぷり込めて…あ。ウサギのエサはそっちにあるので勝手に食べてください。」
「エサって──私たちの分のことか!?」
「まぁまぁ、作ってくれるだけいいじゃん。実際すごく美味しいし。」
ギュメイのために作ったものと細かな違いはあれど白米、味噌汁、サラダ(市販の小袋ドレッシング付き)、そしてこんがりと焼けた肉がパレットに乗せられており、ミヤコ達の食欲を刺激。真っ先にもしゃもしゃがっつくモエにミヤコ達も続く。
ちなみにその細かな違いは【愛】以外にも林檎の切り方などに違いがあったりする。
ギュメイのものは一口サイズへ丁寧に切られているのに対し、Rabbit小隊の分は1人1玉。そもそも切られていない。
とはいえ無駄を嫌うミヤコ達は自分で可食部を選べる分、特に文句を言う人間はいなかった。
むしろ文句が出たのは食事中だ。
「ギュメイ先生っ、どうぞ♡」
「・・・ああ。」
6当分に切られた林檎の1欠片を箸で掴み、ギュメイの元へと持っていくワカモ。
世間一般でいう【あーん♡】である。
「美味しいですか?」
「あ、ああ…そうだな…」
「それは良かったです♡次はどれにしましょうか?」
「・・・・・うむ…」
「…いやお前ら家でやれよ!ここでやる必要ないだろ!」
至極真っ当な指摘がサキから入るがそもそもギュメイ自身この一連の動作に必要性を感じていないため、拒否したいのだが…
・・・ゴレオン。
▽▲▽▲▽
『あ?ワカモちゃんのスキンシップが激しくて困ってる?
お前っ…アホか?アホかお前は!?あんなに素直で真っ直ぐに好意を伝えるなんざ相当勇気が必要なハズだぞ!
それともアレか?お前はワカモちゃんが嫌いだから困ってるってのか?』
『い、いやそういう訳ではない。ワカモには何度も助けられているしガナンの話も正面から聞いてくれた。とても感謝している。』
『!!?? おまっ、ホントにアホか!?ガナンの血みどろ話を子供相手にしてんじゃねぇよ!?』
『・・・すまん』
『つーかソレ聞いた上でまだ好意を向けてくれてんのなら聖女飛び越えて女神だろうが!
嫌ってるならともかく、満更でもないなら無下にするな!
…いいか?ワカモちゃんを裏切るようなマネをしてみろ、オレがオメーをブッ殺──したらワカモちゃんが悲しむな。よし、ボコボコにすることにする。』
『実力的にお前には無理だと思うが…』
『ケンカ売りにきたのかお前は!?…いいかギュメイ!お前はお前を大切にする子を大切にしろ!』
『いや、それは分かっているが…どうしたらワカモのスキンシップを抑えられるかをだな…』
『抑えるな!受け入れろ!じゃあな!!!』
▽▲▽▲▽
「? ギュメイ先生?どうされましたか?…もしやお口に合わなかったでしょうか…」
「そういうわけではない、そうではないのだが…」
「・・・」じー 「・・・」じー
「・・・」じー 「・・・」じー
「・・・・・うむ…」
今日もRabbit小隊からの痛い視線を浴びながら、昼食の時間は過ぎていったのだった…
普段クールなギュメイが真っ直ぐな好意にたじろぐ姿はとてもメンタルに良いと思っている作者のルルザムートです、ハイ。
ちょっと贔屓しすぎな感もありますが作者の1番推しなので開き直って沢山書きます。
それではまた明日…