カルバノグ編 第18話です、お楽しみください…
『すみませんギュメイ先生、なんとか時間を作ろうとはしているのですが…』
「いやいい、ガンベクセン様が新SRTを託したのなら仕方がない」
シャーレにて、端末を片手に外を眺めながら話を続ける。
あれから定期的にカヤと連絡を取り合ってはいるものの、ワカモの指名手配を取り消すことはできていないようだ
詳しい話を聞くとガンベクセン様自らカヤの元に訪問し、新しいSRTの指揮を依頼したことで業務量が一気に増えたのだと…
『ひとまずDU地区以内でワカモさんを捕まえようとする勢力はゼロにできましたが他地区への根回しは目処がついていません』
「分かった。何かあれば連絡をくれ。シャーレとしても支援しよう
…ところでカヤ、ガンベクセン様を見てはいないか?」
『ガンベクセンさんを?いえ、ここのところ電話のひとつも無いので…』
「………そうか」
一言礼を言い、通話を切る
あまり進展はしていないが焦っても仕方がない。新しい女神の果実でも見つかれば別だが…
「ギュメイ先生」
「すまないワカモ、まだお前の手配を取り消すことは難しいようだ」
「いえわたくしの事ならご心配ありません。…それよりガンベクセンさんが防衛室長に新生SRTを譲ったことが引っかかるのです」
「っ? 特に違和感は無いが…何故だ?」
「新しい組織が一般的なものならともかく、かつてのSRTと同格だと言うのなら最低でも連邦生徒会長に比肩する長が必要です
…しかし防衛室長にそんな能力はありません」
半ば決めつけるように言い放つワカモ。
うーむ、我もカヤの力を全て知っているわけではないが少なくとも防衛室長をやれる能力はあるはずだ。
「きっと我らには気付けない、何かしらの才能をガンベクセン様が見抜いたのだろう。」
「でしたら何故ガンベクセンさんはご自分でやられないのでしょう…?
能力があったとしても、今までRabbit小隊に寄り添っていたのはガンベクセンさんです。
彼が率いた方が小隊の指揮や、関わってきた近隣住民も納得するはず。
…わたくしは人の扇動に関してある程度の理解と才があります。ガンベクセンさんのこの行動はどうにも…」
……………確かにな
「一理ある。…かの方のお考えは基本的に我の理解の外だ。
分かっているのは悪意や害意を持っていないことだけ。しかしそれだけ分かれば充分ではないか?」
「…ギュメイ先生、ユメさんを呼び戻してください。相談して彼女にも話を聞くべきです」
「そうしたいところだが今は無理だ。」
今ユメはいない。というのも数日前からカイザーPMC残党がアビドスに集まってきているらしい。
表立った破壊活動や恐喝などはしていないためこちらから手は出せないものの、放置もできないということで久しぶりにアビドス生徒会長としてあちらに戻っている。
…場合によっては我もアビドスに向かう必要がありそうだな
「カイザーの動き次第ではアビドスに向かう必要もあるだろう。その時はできればワカモにもついてきて欲しいが無理はするな」
「…分かりました」
「ギュメイ先生ー!お待たせしました!」
こんにちはー!と元気よく入ってきたのはすっかりシャーレ勤務が板についたチアキだった。
結構な頻度でシャーレの仕事を手伝ってくれている彼女だがゲヘナで掲載中の【週刊万魔殿】を始めとした万魔殿での業務も全く滞っていないらしい…
「ありがとうチアキ。それにしても…」
「? どうしました?」
「いやなんでもない。仕事を始めよう」
シャーレにゲルニックもユメも居ないのは久しぶりだな…
▽▲▽▲▽
同時刻 SRT屋内訓練場にて…
▽▲▽▲▽
「今回の訓練はガンベクセンの指示じゃないのか?」
「みたいだね、というか彼最近まったく姿見せてなくない?」
「今回の訓練指示は連邦生徒会…防衛室からです。それに今回は私たち以外にも訓練参加者がいると聞いています」
SRT閉校後、何度目かになる屋内訓練場での訓練…
今日はギュメイ先生と打ち合っている障害物の無いあの場所ではなく、建築物内での戦闘を想定した3階建ての雑居ビルのような場所。
ここ最近はギュメイ先生との訓練が多く、こちらは使っていなかったがSRTが健在だった時の使用率はこちらの方が圧倒的に高い。
「訓練参加者ねぇ」
「ヴァルキューレ、かな…?」
「おおかた腑抜けたヴァルキューレを私たちに鍛え直して欲しいとかそんなところだろ。具体的な訓練内容は?」
「建物内に潜んだ全敵兵の制圧、もしくは敵指揮官の無力化です。
少人数なら制圧でもいいでしょうが内部の情報がないのでまずは指揮官の無力化を狙います」
素性はおろか人数や装備は不明…だがやることは変わらない。
そもそも今回はRabbit小隊から訓練場使用の申請をしたわけではなく、連邦生徒会からの指示でここに来ている。
新生SRTの設立はまだ現実的な段階では無いものの、このタイミングで防衛室から声がかかったと言うことは彼女らもRabbit小隊に注目し始めているということだろう。
「…では予定通り、突入を開始します。Rabbit2、作戦ポイントへ。」
「ブリーチング。…進入路確保!」
「Rabbit1、建物内に侵入します!」
ポイントマンのサキに続き、ミヤコも中へと突入する。
………少なくともヴァルキューレの大部隊は来ていませんね。
痕跡が少ない、というより人の通った形跡が無い。本部隊のように10人や20人来ていれば隠しきれない痕跡が残るはずだがここまで無いということは相手は少人数…
「Aサイトクリア。」
『Bサイトクリア!Cサイトへ移動する!』
…それにしてはおかしい。少人数であればトラップの1つや2つあってもおかしくない、というより定石です。
『こちらRabbit2。Rabbit1、この先にバリケードが設置されていて進めない。どうする?強行突破するか?』
「いえ、大きな音を出せばこちらの位置を感知される恐れがあります。迂回してください。」
『承知した。解放されている中央方面に──』
────うん?
「Rabbit2、応答を。Rabbit2!」
『……………』
通信が途切れた…?通信阻害…ジャマーですか。サキとも外とも分断されてしまいましたね…
こちらは訓練相手の情報を聞かされていないが向こうもそうだとは限らない。
こちらの戦力は知られていると仮定し、思考を回す。
…もし私がが敵なら孤立した先頭から順に各個撃破するでしょう。今すぐサキと合流して
「────」
「っ…!!」
背後からの気配に反射で銃弾を叩き込みながら距離を取る。
いつの間に背後を…!
銃のサイト越しに見えた敵の姿は…まるでおとぎ話に出てくる騎士のような格好をしていた。
頭のてっぺんから足先まで真っ白な鎧を身につけ、鎧には英雄のようなマントをなびかせている。
…装備はその姿に似合わないカービンライフルだったが。
『軽率だな、私が詳細不明の敵ではなく人質だったらどうするつもりだった』
「どうもしませんよ。痕跡から少人数であることは分かっていました。人質に割く人員確保は難しいはず…そしてなによりそんな格好で私がギリギリまで気付かないほど気配を消すのが上手い人間が人質なわけがない」
『…少しは成長しているようだな。シャーレの先生との鍛錬の成果か?
ならもう少し確かめさせてもらおう』
「…っ」
兜が邪魔で顔は見えませんが、この兵士は相当…
『いくぞ、構えろ月雪小隊長』
そろそろお休みしようかと思っている作者のルルザムートです、ハイ。
カルバノグ2章は本来最終章より後の話なので執筆に難儀していて速度が出ない…一応書き続けはしますが明日あたり限界が来るかもしれませんゴメンナサイ…!