…パヴァーヌ編第4話です、お楽しみください
「レッドウィンターに女神の果実が?」
『はい。連河チェリノという生徒が所持しているようですが…その情報が入って間も無く学園内のデモが激化、以降詳細が入ってきていません』
前触れもなしに連絡を寄越してきた黒服から『新しい果実を見つけた』と報告があったが明確な情報までは掴んでいないらしい
…それにレッドウィンターということは
「王…いや、ガンベクセン様は?」
『不明です。ただでさえデモやストライキの多い学園を彼はよく統治していたと思いますが…
連河チェリノが果実の所持を公表してから消息が途絶えました』
「なんてことだ…」
レッドウィンター学園…資料と黒服の話を合わせると普段からクーデターの絶えない物騒な学園だったらしい
しかしある日どこからやってきたか分からない初老の男性が学園の運営に介入。労働者の待遇改善や生徒間の貧富の差を埋めるべく活動を始め、たった1ヶ月ほどで今のゲヘナのように静かで暮らしやすい学園へと変わった
黒服自身もガンベクセン様に興味を持ち、何度か接触を図っていたようだ
特徴から聞いてもガナン王国の王、我の知るガンベクセン様で間違いない
「…よく知らせてくれた。すぐに向かう」
『黄金の果実…いえ、女神の果実はキヴォトスにあってはいけない異物、速やかな回収をお願いします』
言われるまでもない、それだけ返して電話を切る
…ユメを連れて早く行こう
キラーマジンガと直接戦ったことと、その結果エンジニア部の作業室を3割吹き飛ばしてしまったことで後始末に時間がかかり、日を跨いでしまった
(大半はエンジニア部や明星ヒマリからの質問責めだったが。)
幸いユメはユウカが派遣してくれた生徒が面倒を見てくれているらしいからすぐに連絡を取ってもらおう
「先生?電話ですか?」
「そうだ。レッドウィンターに用事ができてな
ユメの面倒を見てくれてる生徒に連絡を取ってくれ」すぐに発つ
「分かりました、少々お待ちください…
もしもしコユキ?昨日頼んだ生徒のことだけど…ええ今すぐよ。
? 反省部屋から出たばかりなんだから仕事なんて無いでしょ。すぐに連れてきて
…はぁ、分かったわ。こっちで迎えにいくから場所を教えて?
なんでって…急いでるのよ。すぐにユメさんを──もしもし?ちょっとコユキ!?
・・・あの子まさか」
切れたであろう電話を持つ手を震わせながら空いた手で頭を抱えるユウカ
「ユウカ?」
「…ごめんなさい先生、これは私の人選ミスです
その…申し上げにくいのですが…ユメさんが行方不明に…」
「なっ…!?」
「さてっ、もう廃部の危機は免れたんだし、安心してゲーム三昧できるね!
じゃあアリス、今日はレイドに行こう!準備できてる?」
「攻略法は把握しました。レイド専用装備も獲得済。【初心者歓迎/【燃える森】へ遠征/4人/ヒーラー、遠距離アタッカー募集】で告知。
あっ、【perorochan32さんが合流しました】。」
「ちょ、ちょっと気を緩めるには早くない!?」
「そうだよモモイちゃん、ユウカさんにはちゃんと報告したの?」
「もっちろん。それで今日の午後にアリスの資格審査に来るって」
「はっちゃ!!!」
ばーん!
「うわっ」
「なに!?」
「いたっ!見つけましたユメさん!」
「ふぇっ?」
突如現れた桃髪の生徒が部室の扉を蹴り開けて突入。ユメを見るや否や腕を引っ掴んで──
「いやーさがしましたよ。
さぁユウカ先輩が待ってるので来てください、さぁさぁ!」
「ひゃっ、ちょ、ちょっと待って…」
「だ、誰!?ユメさんをどこに連れてくつもり?」
「この人確かセミナーの…」
「そもそもあなたが勝手にミレニアムをうろつくから危うく(私が)フトモモギロチンの刑に処されるところだったんですよ!
しのごの言わずに来てください!」ぐいぐい
「ひぃん!?だっ、誰か助けて!」
「大変です!このままでは村人が謎の敵に連れ去られてしまいます!」
「…!アリス、あいつは悪属性化した悪い妖精【
「え、お姉ちゃん???」
「分かりました!」ぎゅ
「え?」
「『アリスは こしをひくくおとし せいけんづきのかまえ!』」
頭上に【?】マークを浮かべるコユキなど気にすることもなく黒髪の少女は村人を救うため、その右手に全力を込め…
「え、え?誰ですかこの子?新入部員?」
「!!! アリス待って──」
「『せいけん突「ユメ!ここに居、っ!!?」
オロオロするユメ、困惑する桃髪の生徒、ケラケラ笑ってるモモイと顔面蒼白のミドリ
扉の先は色々と情報量が多かったものの、
「『マヒャド斬り』!!」
考えるより先に少女の拳へマヒャド斬りを叩き込んでいた
「あっ!?」
「な、なにあれ!?」
桃髪の生徒の頭を打ち抜かんとしていた拳を凍らせ、なんとか軌道を逸らしたが…
今の打撃はなんだ…?筋力だけならゴレオンに匹敵するぞ!
「ああっ、アリスの腕が凍ってしまいました!『凍結状態』です!でも…勇者は負けません!」
狼狽えるどころか氷を無理やり割り取る少女
いったいこの生徒は…?
未だに敵意や殺意は感じないがあれだけの攻撃を仕掛けておいてそれらが無いというのはむしろ…
「ギュメイ先生!いきなりどうし──あっ、コユキ!」
「うえっ、ユウカ先輩!?に、にはは…」
「あっ!ギュメイ先生!?もしかしてユメさんを連れ戻しに…?」
「ひぃん、ギュメイ先生ぇ…」
「・・・やれやれ」
ひとまず状況を整理しよう
▽▲▽▲▽
「うわあぁぁっ!ノア先輩やめてください!
ユウカ先輩!ギュメイ先生!たっ、助け ばたん!
どこからともなく真っ黒の笑顔を貼り付けた銀髪の生徒が現れ、一瞬でコユキを引きずって消えてしまった
ユウカと同じセミナーの仲間らしいが…
「本当に、本当に申し訳ありませんでした先生…コユキには私とノアからキツく言っておきますから…」
「もういいユウカ、お前に悪気があったわけじゃないし彼女を丸一日1人にした我にも非がある
…ユメ、お前もだ。一時の感情で勝手なことをするな」
「ひぃん…」
「また現れたと思ったら相変わらず横から口出しばっかり!ユウカより酷「ところでミドリ、そっちの生徒は?昨日来た時はいなかったが」
いちいち付き合っていたらキリが無いのでモモイを無視してミドリに。
…さっきの打撃といい普通の生徒じゃない、ホシノやヒナと同じ部類か?
「え?え、あ!新しいゲーム開発部員です!
このことはユウカにも伝えたって…
そうだよねお姉ちゃん?」
「ん?ああ、伝えたよ。…資格審査はもっと後でくると思ってたけど」
「資格審査?」
「『新しい部員が入ったから存続を認めてほしい』
そういう連絡があったんです
…例の兵器でゴタゴタしていて言ってませんでしたね」
新しい部員…この黒髪少女が?
「ともかくこちらのことはユウカに任せる、帰るぞユメ」
「待って!…あとちょっとだけ、ゲーム開発部がユウカさんに認められるまで…」
「・・・分かった」
基本的に誰かに流されているユメだが一度こうだと決めればなんと言おうと動かない…
ホシノの言っていた通りだ
「…それじゃ取り調べを始めるわよ」
そして資格審査という名前の取り調べが始まった
モモイは抗議していたがあんなもの見せられたあとでは生ぬるいとさえ思ってしまう
そして…
「ちょっと怪しいところはあるけど…
ゲームが好きだってこと。それに新しい世界を冒険したり、仲間と一緒に何かをやり遂げるストーリーが好きなんだってことは十分に伝わってきた
そんなあなたがゲーム開発部の部員だというのは何も不思議なことじゃないわ
…規定人数を満たしているのでゲーム開発部を正式な部活として認定、部としての存続を承認します」
「………」
…いいのかそれで。
「やったぁ!」
「よ、良かったぁっ!」
「やった!やったー!よかったねモモイちゃん、ミドリちゃん!」
モモイとミドリに混じってぴょんぴょん跳ねて喜ぶユメ
…今回に限った話ではないが跳ね回るユメを見てると今にも転ぶのではないかと不安になる
「そ、そしたら部費も貰えるし、このまま部室を使っててもいいんだよね!?」
「ええ、もちろんよ」
瞬間『どうだ見たか!』という視線をこっちに向けるモモイ
しかしそんなことどうでもいい、早くユメを連れてレッドウィンターへ…
「『今学期までは』ね」
「ふぇ?」
「え?」
「な、な、なんで!?」
「あら知らなかったのかしら
今は部活の規定人数を満たすだけじゃなく、同時に部としての成果を証明しなくちゃいけないの
もちろん急に変わった要件だから猶予期間はあるけどその期間は今月末まで
今月中に成果を出せなければあなたたちの部は4人いても400人いても廃部になるの」
「嘘だ!ありえない!」
「ありえるの!この間、全体の部長会議でちゃんと説明した内容なんだから
あなたたちの部長、ユズは参加していなかったけど
…つまりあなたたちの責任よ」
そういえばついにゲーム開発部最後の1人は現れなかったな…
…廃部の危機に出てこない時点であまりやる気はなさそうだが
「くっ、卑怯者め!」
「『鬼』とかならまだ分かるけど規則通りに運ぶことの何が『卑怯』なのよ…」
…ユウカ、鬼呼ばわりで納得するんじゃない
「正直アリスちゃんの正体も怪しいし、本当なら今日すぐにでも退去を要請しようかと思っていたところだったけど…
正体はさておきゲームが好きっていう純粋な気持ちは本物だと思った
猶予を与えたのはその気持ちに相応しい成果がきちんと出せることを期待しているからよ
モモイ、あなた言ったわよね?ミレニアムプライスでびっくりするくらいの成果を出して見せるって」
「そ、それはそうだけど…」
分かりやすく狼狽えるモモイ
…アリスという生徒を迎えた時点で忘れていたな、あれは
「新しいメンバーも増えたことだし、前よりもちゃんと面白いゲームが作れるんでしょうね
それじゃ楽しみにしてるわよ、じゃあね〜」
喚くモモイを尻目にユウカは退出
…これで終わりだな?さっさとユメを
「だ、大丈夫!!私は見捨てないから、ね?
もう一度廃墟に行って《じーびーぶる》?を探そうよ!」
「あっ!バカ!それ言っちゃ──」
「・・・やれやれ」
元気にモモイ達を励ます彼女に、我は思わず頭を抱えるのだった
マダンテの初の実戦投入はキラーマジンガ戦だった作者のルルザムートです、ハイ。
いただいた感想を読んでたら同僚に『ニタニタしててキモい』と言われてしまった…
嬉しくなるんだから仕方ないだろ!
…本編ですがもう一度廃墟へ。今回はギュメイも同行するわけですがさてどうなるか