ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

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12時投稿にしたところ早速新しい読者の方から感想をいただきました!
やっぱり時間は多少分けた方がいいのかもしれない、次は朝とかにやってみようかな
でもしばらくは12時で行こうかと思ってます
パヴァーヌ編第7話です、お楽しみください


戦友

『鏡』奪還作戦発動の少し前…

 

 

 

「『バイシオン』…と、ではモモイさんミドリさん、そのレールガンを持ち上げて見てください」

「ええ?無理だよ、アリス以外にこれは「いいからまずはやってみてください」

 

言われるがままミドリと2人でレールガンに手を伸ばす

すると──

 

 

 

「うっ、うぐ!重い!重い、けど…!」

「!! 光の剣が、持ち上がって──」

「やっぱムリ!!」

 

取り落とした光の剣が部室の床にヒビを入れた

それを見たヴェリタスの面々が小さな悲鳴を上げているがそんなこと気にならない

アウルさんが何かを呟いたかと思ったら力がみなぎって…

 

 

 

「…ふむ、1回ならこんなものですか」

「何をしたの…?」

「『魔法』ですよ、あなた方が大好きな。

まぁそんなのはどうでもいいのです、重要なのはこれでギュメイ先生を倒す算段がついたということ」

 

割と重要なハズの情報を出し渋られている気がするけど…

 

 

 

「あなた方はどうにかしてギュメイ先生を出し抜こうとしているみたいですが…それは失敗します。彼を下して鏡を奪うには倒すしかない

 

しかし…この強化はリスクもある。あまり長時間維持したり重ね掛けしすぎたりすればその分あなたの身体にもダメージが蓄積していく…」

 

…本当にゲームみたいな説明に耳を疑うがたった今、ミドリと2人で光の剣を持ち上げられた以上信じるしかない

 

 

 

「さてどうします?ワタクシは提案をするだけ…決めるかどうかは「やる」

もう迷いは無い、可能性があるなら飛び込むだけだ!

 

「結構。迷いが無いのは良いことです

作戦にはワタクシも同行しますので潰れないようにだけ頑張ってくださいね?」

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

アウルさんの言った通り鏡は保管庫に無かった。

そしてギュメイ先生がいるであろう高台からおびき寄せるために苦し紛れの『見つけたフリ』をしたが案の定彼は降りてこなかったため、プランBとしてアリスにビルを薙ぎ倒してもらい戦闘に持ち込んだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんのぉっ!」

「っ…!」

 

 

 

峰から繰り出される氷の剣技や風の剣技を無理やり突破しながらひたすら戦い続ける

距離を取ることは考えずひたすら銃打撃を繰り返し、少しでも距離が離れれば銃撃。足の鈍ったギュメイへさらに追撃をかける

 

 

 

ズキン…

 

 

 

「ぐっ…!」

軋むような痛みが身体の内からやってくる

アウルさんの言ってた通りこれキツいかも…

 

ギュメイ先生に追いつくためのピオリム、瓦礫と攻撃を防ぐためのスクルト、力で負けないためのバイシオン…どれか1つだけでも欠ければたちまちノックダウンさせられてしまうだろう

 

 

 

ゲームでよくある補助魔法がまさか現実で使えるとは夢にも思わなかったけど、普段当たり前のように画面の向こうで使っている魔法がこんなに苦しいものだとは思わなかった

 

辛い…内側から燃えてるみたい…!

──だからってここでやめられるか!

 

 

 

「ゲーム開発部には、みんなの居場所を守るにはそれが必要なの!

だから…邪魔しないでっ!!」

「分かった」ポイッ

「え?」

 

 

 

あっさりと、それまで渡すまいと剣を振るっていたギュメイが鏡を投げた

私に、向かって──

 

 

 

「えっ、え…?なん、え…?」

困惑100%でキャッチしたはいいがまるで状況が理解できない

 

「どう、して?」

「強化魔法というのは本来、使用者が持ち得ない身体能力に魔法の力を上乗せし、無理やり自分の力として使うものだ

 

肉体が負荷に耐えられるのはせいぜい2倍まで

ピオリム、スクルトなら2回、バイキルトなら1回…

 

だが我と渡り合えているということは最低でも各強化魔法を6回以上は使っているはず

これ以上続けたら取り返しがつかなくなる、モモイ自身それは分かっていたのではないか?」

 

 

 

確かに…無我夢中だったけど冷静に振り返ると身体中の骨が軋んでるんじゃないかってくらい──

 

「だがお前は向かってきた、ただ怠惰を送るだけならここまでできん

…すまなかったモモイ、我はお前を誤解していたようだ

何を今更と思われても仕方ないが我もゲーム開発部存続のために力を尽くそう」

「ギュメイ先生…」

 

 

 

「おやおやおや、モモイさんがギュメイさんをブッ潰すところを見てみたかったんですが…」

離れていたユメさん──の姿をしたアウルさんがつまらなさそうに呟いた

 

 

 

「…ユメ!近くにいるか!?」

「は、はいっ!ここにいま──うわっ」スッテン

 

ギュメイ先生が声を上げると隠れていた本物のユメさんが転びながら出て来た

…あの人ホントによく転ぶなぁ

 

 

 

「モモイを連れて先に戻れ、我はアウルと話がある

…それと我の刀をミドリが持っている、部室に戻ったら受け取っておいてくれるか?」

「わ、わかりました…」

 

ひぃん、とおでこをさすりながらユメさんが私の手を引く

・・・この状態でこの人が転んだら私も道連れになるからあんまり手は繋ぎたくないなぁ

 

 

 

「じゃあ行こっか、モモイちゃん」

「うん、でも手は離して欲しいかな…」

「ひぃん」

 

 

 

 

 

「………行ったか」

ヨタヨタとその場を去った2人を見送り、残ったのは──

 

 

 

「ここまでだ魔法を解け、この戦いはゲーム開発部の勝利だ」

「釈然としませんねぇ。…ああ本当に、忌々しい男ですこと」

「もう分かっている。ここではっきりさせてもらうぞ…なぜキヴォトスにいる?」

 

かつての戦友にサーベルを突きつけると観念したかのように変化魔法を解く

そしてそこには、彼女がいた。

 

 

 

ガナンの時と変わらぬ呪術師のローブを纏い、梟を思わせるまん丸な頭部から髪の代わりに羽毛と翼を生やし、鉤爪のついた手足をローブの先から覗かせる、かつてガナン帝国三将軍を務めた1人。

 

名は、ゲルニック

 

 

 

「シャーレで何度か会っていますが…ふむ、敢えてこう言いましょう

お久しぶりです、ギュメイ将軍」

「死んだと思っていた戦友が生きていた…語らいたいことは多々あるが何よりも先に答えてもらうぞゲルニック

…目的はなんだ、キヴォトスで何をしている?」

 

 

 

キヴォトスに来てより出したことのない殺気と凄味を持って戦友を睨みつける

…そうだ、戦友だ。戦友だからこそ我は剣を向ける。

 

ガナン帝国軍第二将ゲルニック…その類稀なる頭脳と野望、そして躊躇の無さは『小さな国くらいなら武力を使わずに乗っ取れる』とガナサダイ陛下に言わしめるほど。

 

事実ガナン帝国…いや王国領土にたまたま居ただけの呪術師だった彼女はガナンが帝国へと名を変えたと同時に軍へ参入。

謀略、策略、賄賂、暗殺、戦果、あらゆる手段を使い、女でありながら帝国三将軍の1人にまで登り詰めた

 

 

 

いずれガナンの…ひいては世界の王になろうとするほどの野心と、それを実現しうるだけの知略を持つ女将校、それがゲルニック。

 

そんな人物があろうことかキヴォトスで生徒の姿を真似て、トリニティという学園に溶け込み、誰にも正体を知られる事なく動いている…

ギュメイにはそれが何よりも不気味だった

 

 

 

「ホッホ、答えたところでアナタは信じないでしょう?

 

アナタを殺すためだと言っても。生徒を実験体にするためと言っても。改心したと言っても。世界の王になるためと言っても。

 

どのような言葉を並べたところでアナタはワタクシを信用しない。…違いますか?」

「………」

 

 

 

怪鳥の瞳は真っ直ぐこちらを見ていながら、何一つ真意は伝わってこない

それどころかまるでこちらの内側まで見透かされているような不快な感覚。

 

戦場で感じる殺意や害意とはまた違う、理由の分からない不快感を内側に捩じ込まれるような──

 

 

 

「それでも言うことがあるとすれば…幸せに生きること、ですかね?」

「ふざけたことを…」

「大マジメですよ、今のワタクシはワタクシの未来と幸せを守るために動いている

そう、例えば──目障りな空の英雄にトドメを刺すためだったり」

 

 

 

空の英雄…?──まさか

 

 

 

「バカな、グレイナルは死んだ。お前が呼び寄せた闇竜にドミールで焼き滅ぼされたはずだ」

 

「滅んだのは我々も同じです。お互い3度も死んでおきながら尚こうしてここにいる。

ならば死んだハズのグレイナルが蘇っていても何も不思議はない

 

白い竜の目撃証言は才羽モモイの虚言だとアナタは思っているようですが…トリニティの阿慈谷ヒフミという生徒も見ているんですよ」

 

 

 

なんだと…?

 

 

 

「あれ?彼女と会ったことありましたっけ…?

…まぁとにかく十中八九グレイナルは生きている、そして彼の存在は間違いなくワタクシにとって1番の障壁となるはずです

 

そこで…どうでしょうギュメイ将軍、キヴォトスの空を飛び回る目障りな英雄を殺すまでの間だけ、ワタクシを信じて力を貸してもらえませんか?」

 

 

 

魔獣の手にも関わらず不気味なほど優しい手のひらを差し出してくるゲルニック。

だがこの手を取っていいのか?

 

黒服とは違う、彼には『女神の果実を消し去りたい』という明確な目的があった

だが目の前の彼女はそれが見えない。かつて彼女の甘美な囁きに惑わされ、敵国の要人はもちろんガナンの人間でさえ、その多くがただの踏み台として破滅の道を辿った

 

 

 

グレイナルを消したいというのは本音だろう、だが彼女は既にその先のビジョンも見ているはず

そしてなによりも

 

 

 

「その前に答えろゲルニック」

「はいなんなりと」

「──以前ブラックマーケットで手に入れた女神の果実、すり替えたのはお前か?」

 

確信はあったが敢えてギュメイは質問した

これで否定したのならゲルニックは間違いなく果実を使った企みを持っているという材料になり得る、そう考えたからだ

しかし彼女の答えは

 

 

 

「1200万の果実ですか?ええ、もちろんワタクシがすり替えましたよ」

あっさりと、そう言った。自分が犯人だと

 

「本物はどこだ」

「心配せずともティーパーティホストの桐藤ナギサが保管してますよ

彼女の信用を得るためにはこれが1番手っ取り早いと思ったのでね

ワタクシは質問に答えました、今度はアナタの答えを聞きましょうか」

 

 

 

もう質問は無しですよ、とかつてのように笑って見せるゲルニック

獣であろうと人間であろうと変わらない不気味な笑いの前に我は…

 

 

 

「………グレイナル討伐までだ」

苦渋の決断として、彼女の提案を受け入れた

 

「ま、アナタはそうするしかないでしょうねぇ。戦う意志が無くともグレイナルが学園都市でアナタやワタクシを見れば問答無用で殺しにくるハズ。

 

そしてそうなれば仮に勝ったとしても戦いの余波で周囲はメチャクチャになるでしょう

そうなれば何も知らないかわいそうな子供達は間違いなく巻き込まれ、瓦礫に潰されたり光の炎で焼き殺されたりと目を覆いたくなるような「黙れゲルニック」

 

 

 

ケタケタと嗤うゲルニックを黙らせ、大きく息を吐く

「………」

 

 

 

空の英雄グレイナル…かつて帝国は対となる闇竜バルボロスをぶつけて拮抗を図った

その戦いは人間なんかには理解することすら難しい文字通り次元の違うものであり、兵、民間人、動物、ありとあらゆる生物が竜の戦いに巻き込まれ命を落とした

 

我はガナサダイ陛下の懐刀…だが帝国軍人としての軍服は既に脱ぎ去っている

本来グレイナルと戦う理由はもう無いが…生徒を巻き込むわけにはいかない

 

 

 

「…生徒達に不安や混乱を広めるわけにはいかん、お前は当分アウルとして過ごせ

シャーレ勤務もこれまで通りやってもらう」

モシャスっと…ええもちろん、これまで通り精一杯サポートしますのでたくさん頼ってくださいね?ギュメイ()()」ホッホッホ

 

 

 

いち生徒、アウルへと戻った彼女と別れ、ゲーム開発部の元へと急ぐ

 

 

 

…未だに真意の見えない女だが本気でグレイナルと戦うつもりなら彼女1人では勝ち目は無い、もちろんそれは我も同じだ

 

世界の未来を考えればグレイナルに先を任せ、我やゲルニックは退場すべきなのだろうが…

 

 

 

「悪いな、空の英雄よ」

我にも恩人との約束があるのだ、ここは引き下がってもらうぞ

 

我の刀を持って帰って来たユメと合流し、我らはモモイ達の元へと急いだ

 

 

 

 

 

その頃…

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

ピリリリリッ…

 

むっ、モモイから通信です!

 

 

 

「こちらアリスです!」

『作戦成功!鏡は手に入れた!あと…今更感すごいけどギュメイ先生が手伝ってくれるって!』

「おお、ギュメイ先生がパーティに加わったのですね!敵だったキャラクターが仲間になると弱体化するのがお約束ですがギュメイ先生はきっと例外です!」

 

『そのとーり!むふふ、今ならネル先輩のいるC&Cにだって勝てるかもしれないなぁ?

っというわけでみんなヴェリタスの部室に集合!急いで急いで〜』

「クエストクリアですね!アリス、これより拠点に戻って──あれ?」

 

 

 

ミッションコンプリート、さぁ帰還しようといったときアリスは()()を見た

 

はたから見たら、ただの流れ星にしか見えなかった

ひたすら紫に近い黒色の流れ星。それが廃墟の方へ落ちていく…普通の生徒が見てもその程度の認識だろう

 

だがアリスは普通の生徒ではなく、本来奇妙な流れ星にしか見えないその造形をしっかりと見て取った

 

「黒い、ドラゴン…?」




いよいよ『書きたかった部分』に物語が突入して上機嫌な作者のルルザムートです、ハイ。
まずは何よりゲルニックの扱う補助呪文について。
これですがこの二次創作では『強化度合いが強いほど身体への反動も強くなる』という独自設定を追加しました
こうでもしないと補助呪文ゲーになりそうですし、補助呪文ありきの物語にはしたくないのでね…
それとナギサとゲルニックの関係ですが追放の事実は変わってません。しかしもし『信用した上での追放』だとしたら…?
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