…パヴァーヌ編第11話です、お楽しみください
「うっ、うぐ…痛いです…それに真っ暗で何も…」
っ?なんかヌメヌメして…
『…よし、アリス…生きているな?』
「へ?うわっ」
ぺいっ、とドラゴンの口から吐き出されて外に転がる
今のはバルボロスの口の中だったんですね…って
「あっ!」
こちらを心配するバルボロスはまるで薪割りのように真っ二つになったビルの隙間から顔を出してアリスを気遣っていた
片翼膜を痛々しく裂けさせ、今にも消えてしまいそうな掠れた声で名前を呼んでいる
「傷が…!それにユメさんは!?ユメさんはどこですか?」
『………すまないが…2人とも助けている余裕が無かった…だが落ちる前に、誰かがユメを助けていたのが見え…ガハッ…!』
「バルボロスっ!」
『私はいい…それよりもグレイナルは?奴は…倒したのか?』
「グレイナル?あの白い竜は…『グルルルル…』
『「!!」』
噂をすればなんとやら、とでも言うのか
全身を光の剣で焼かれ、バルボロスと同じように大地に叩きつけられたはずの白い竜が一歩ずつ歩いてくる
「そ、そんな…」
『…っ、グレイナル…いったい、なんのつもりだ…!もうガナンは消えた!殺し合う理由は無くなったはずだ!』
『グルル…』
バルボロスの訴えも聞かず、口元に光の炎を溜めながら白い竜がこっちに…
「アリス、アリスはいったいどうすれば…?」
光の剣もどこかに落としてしまい、眼前に迫るのはついこの前まで画面の中でしか見たことのなかったドラゴン
『やめろグレ…──っ?待て、これは…いったいなんだ…!?
グレイナル、キサマいったい…
絶体絶命、ゲームなら負けイベントと言うべき状況。きっと画面の中ならここでカッコよく仲間が助けに来てくれる場面なのだろうが当然都合よく行くわけがない
そう、思っていた
「『ドラゴン斬り』!」
『グギッ…!?』
自分と白い竜の間に割り込んだ影。それは──
「あ…」
なんとギュメイとゲーム開発部が助けにきた!
▽▲▽▲▽
「ぜえっ、ぜえっ、アリスっ!」
『間に合いましたか。まったく無茶しますねぇ、ギュメイさんはともかくゲーム開発部まで…【ルーラ】っと』
「あっ!アイツだ!あいつだよ私が見たの…って、いっ!?
うあああー!痛い!アウルさんこれやっぱりメッッッチャ身体が痛い!」バシバシ
「お姉ちゃん触らないで!私も今ものすごく痛いんだから!」
「 」←気絶
バルボロスとグレイナルを追うためゲルニックを急いで呼び戻し、ピオリムを重ね掛けさせたのは良かったがどこから嗅ぎつけたのかゲーム開発部も『一緒に連れて行って』と…
「アリス、ユメはどこだ?一緒じゃないのか?」
「逸れてしまいました…でも無事なはずです!」
「…そうか」
ユメのことは気になるがグレイナルを放置もできん
…まさか本当にキヴォトスに来ていたとは
「…モモイ、ミドリ、アリスとユズを連れて逃げろ
グレイナルは我が相手をする」
「ええっ!?」
アリスとユメが乗っていたにも関わらず攻撃して来たのなら生徒を巻き込む事をグレイナルは躊躇しないだろう
少々違和感はあるがどちらにせよ空の英雄との戦いは避けられそうにない
「来い、空の英雄!
300年前の雪辱を果たしてやる…!」
ギュメイ先生が白いドラゴンに向かっていく。
モモイ達は言われるがままアリスと気絶したユズを連れて逃げようとしていたが…
ピロン
「…!?ちょっとお姉ちゃん!こんな時にゲームするなんて正気!?」
「へ、いや違うよ!?電源が勝手に「詳細不明の敵生物を確認。対象を排除最優先目標と断定。」
「あ、アリス?どうしたの?」
「! お姉ちゃん、辺りの様子がおかしい!この変なロボット達は…?」
いきなり起動したモモイのゲーム機と様子のおかしいアリス、そして彼女の周りを守るように顕現する正体不明のロボット達。
疑問を投げるモモイとミドリだったがそんなことお構いなしに事態は急変していく。
「コードネーム『AL-1S』起動完了。プロトコルATRAHASISを実行。
排除対象、仮名…グレイナル」
「ヤバい…なんか分かんないけどヤバい!ギュメイ先生っ!」
「モモ──っ!アリス…!?」
瓦礫の中から光の剣を引きずり出し、感情の伺えないアリスがグレイナルと対峙した!
「アリス…!?いったいこれは「ギュメイ先生っ、逃げてっ!」
「攻撃開始。」
アリスが静かに呟くと同時に数十機のロボットがグレイナルに群がる
しかしいくら光の剣とドラゴン斬りのダメージがあるとはいえその程度では怯むことすらせず、尻尾の一振りでロボット達は破壊されていく
「対象の戦闘能力の分析、戦法を更新。
武装のリロード完了。」
それに対しアリスも淡々と新しいロボットを呼び出し、光の剣をチャージ。
ロボットの数は…数えるのがバカらしくなるほどであり、10や20壊れたところで更に次がくる
グレイナルもキリが無いと判断したのか口内にありったけの光を溜め込み、解き放つ
「アリスっ!」
王女を守ろうとロボットが壁になるも光の炎はそれらを蒸発させながらアリスに迫り、そして──グレイナルが爆炎に包まれた
『ガッ…!?』
頭上で爆発を引き起こしたロボットに妨害され、光の炎はアリスではなく周囲の建物を消し去った
だが妨害だけでは終わらない、その爆炎がどこから来たのかを考える間も無く無数のロボットがグレイナルに降り注ぎ、一つ残らず自爆していく
『グッ!?ギャオオオオッ!!?』
小さな小屋程度なら粉々に吹き飛ばしてしまえるロボットの自爆攻撃がグレイナルを襲う
そしてそれを眼前で見ながらもアリスは無慈悲で無機質に標準を合わせ
「待ってアリス!そこまでしなくても──」
「発射。」
光の剣を発射した
「うわぁっ!?」
「ぐ、グレイナルが…」
無数の爆発で動けなくなっていたグレイナルへレールガンの一撃が叩き込まれて…
「最優先排除対象の生存を確認、呼び出し可能な戦力…不足。武装のエネルギー残量…不足。」
「あ…」
「防がれた…!?」
『グギ…ギギギッ!』
名前は分からないが雷の呪文を使ってアリスの光の剣を相殺しようとしたらしくグレイナルはまだ生きている
だがかろうじてだ、あと少し攻撃を加えればグレイナルは…
「早急な排除が必要と判断、近接戦闘に移行」
「ちょ、ちょっとアリス…?」
止めようとするモモイを無視し、アリスは光の剣を振り上げたままグレイナルに近付いていき
ドギャッ
『ガッ…!?』
「………」
それを振り下ろした
いくらエネルギーが切れたとはいえ光の剣の総重量は150kgを超える。
そもそも振り回して使うこと自体想定されていない超重量の鉄塊である
それをアリスは無表情でグレイナルに何度も叩きつけていく
息の根を止めるまで何度も、何度も…
「アリスやめてっ、もう充分でしょ!そのドラゴン死んじゃうよ!?」
「! 今のアリスに近付くなっ!くそっ、モモイ!」
「対象沈黙まで残り7撃と推定、同時並行で戦力確保を続行。」
止まる気配の無いアリスにモモイがしがみつく
ぐ…!少々頼りすぎたか…!ピオリムの反動で身体が…
「い、いいからやめてって…言って「──妨害要素を排除。」
「あ。」
ぐりんと、モモイの方に向き直ったアリスが、竜の血で塗れた光の剣をモモイに向けて振りかぶり
「アリス待って!!やめ──」
ゴシャッ
グレイナルを殴殺しようとしていた時と全く同じ衝撃が真横から叩きつけられ、モモイが宙を舞う
「お姉、ちゃ…!?いやぁっ!お姉ちゃん!」
「も、モモイが、アリスに殺、され「いや待て、様子がおかしい」
泣きを飛んで発狂しかけていた2人を宥めながらモモイの状態を確認する
なんだ?まるで鋼鉄のように…
「ガタガタ騒がずともモモイさんは無事ですよ」
「アウル!」
彼女も追いついて来ていたらしい。…モモイが鉄の塊?になっているがこれをやったのはアウルなのか?
「…元に戻るのに少々時間はかかりますが生きてますよ。アストロンなんて使いづらい魔法が役に立つとは思ってませんでしたが」
これは貸しですからね、と小さく笑うアウルだがその目は全く笑っていない
アリスとグレイナル…この2つの前に下手に動けないのは彼女も同じだろう
そして
『ッ!!』バッ
死にかけだったグレイナルが空へと飛び立つ
その瞬間はただ逃げようとしているだけに見えたし、数秒経ってなおギュメイやミドリの思考は変わらない
「逃げた…?」
「それよりもアリスをなんとかしないと!」
だが。
「この魔力の集まり方は…」
「対象の危険度急上昇を確認。殲滅可能手段の演算を開始。…不能。…不能。…不能──」
本来戦いのために創られたアリスと、魔法の扱いに長けていたゲルニックだけはそれを感じ取った
「こ、これはまさか…マダンテ…!?」
「アウル?」
「く、これではいくらアストロンでも…とはいえルーラで運べるのはせいぜい2人…」
(まずい…!いくら死にかけとはいえグレイナルの魔力ならここら一帯を消し飛ばすことなど容易い。
ルーラで逃げることはできますが今のモモイさんはどうあっても運べませんしユメさんを回収する時間もない!どうすれば…!?)
『………』
防衛都市、エリドゥの上空でドラゴンは考えていた
…あのアリスという人間のような何かは危険すぎる。どうあってもここで倒しておかなくてはならない、と
残った全ての魔力を一点に集中させ、今にも弾けそうなそれを強引に圧縮、そして解き放『その必要はない』
!
あの人間の声が頭に響き、爆裂しかけていた魔力が霧散してゆく
『まだその時では無い、戻れグレイナル
今は体制を立て直せ』
『………』
特に逆らうことなく、グレイナルは踵を返して明後日の方向へと飛び立つ
…そこでようやくグレイナルはエリドゥから離脱したのだった
「っ?不発…?いや、グレイナルが止めた…?」
「アウル?」
「いえこちらの話です、今は…」
「最優先排除対象の逃亡を確認。現時点での排除は不可能と断定。殲滅対象を更新」
「ちょ、ちょっとアリス…」
「有機体の生存反応を確認、殲滅プロトコルを実行」
休む暇もなくロボットを呼び出すアリス
この暴走状態は果実の関与も疑いたくなるがなんであろうとここでアリスを止めるしかない
「もう一度だアウル、ピオリムとバイキルトを掛けろ。我が止める」
「気遣ってる余裕はありませんよ?」
「分かっている、いいからやれ」
それが人にものを頼む態度で?と言いつつも補助呪文をギュメイに掛けるアウル
どちらにせよ今のままでは止められない、反動は承知で行くしかない!
「そこまでです」
「「「!」」」
もう一戦始まろうとしていたそこに割り込んできた見知らぬ生徒、服装からしてC&Cだが記憶にある部員の誰とも一致しない
いったい何者かと聞くより早くそのメイドはアリスの背後に回り込み──
「はっ」パシッ
「………!!」パタ
慣れた手つきでアリスを気絶させ、さらに一言も発することなくアリスの呼び出したロボット達を薙ぎ払っていく
時間にして10秒弱だろうか、ロボットを一掃した生徒がこちらに向き直った
「…お前は?」
「私はC&C、コールサイン04 飛鳥馬トキ。
シャーレ顧問のギュメイ先生とゲーム開発部の部員ですね。話はリオ様から聞いています
2頭の怪物のせいで変則的になってしまいましたが…ここを知った以上は説明すべきとのことなのでまずは彼女の元に案内します」
「………ああ、頼む」
グレイナルとアリスでそれどころでは無かったが改めて辺りを見回せばそこにあるのは謎の無人都市…おかげで人を巻き込むことは無かったもののこれはどういうことか、目の前の生徒は知っているようだ
ひとまずは、ついていくか
ギュメイの強さはよく知ってますが帝国『軍』として考えるならガナン三将軍のトップたる第一将はゲルニックが相応しかったのでは、と最近思っている作者のルルザムートです、ハイ。
その場にいる誰も、なんならゲルニック自身も気付いてませんがギリギリでバッドエンド直行ルートを回避させるファインプレー。
直接戦闘が苦手な分、こんな感じで援護に回れる彼女もこの先書いていきたいな