ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

31 / 125
まずい、まずいまずいまずい!ストックが無くなる!!!
と、とりあえずパヴァーヌ編第12話です、お楽しみください


人の心

「………」

「………」

「………」

 

 

 

我もミドリもユズも、そしてアリスも何も喋らない

一応アリスは正気に戻ったようだが何をしたのかはうっすら覚えているらしく、誰とも目を合わせないように下を向いてついて来ている

 

 

 

ちなみにアウルはついてきていない

鉄化したモモイを放置できないというのもあるが、結局グレイナルを取り逃した以上いずれ必ずバルボロスの力が必要になると言って治療のため現地に残った

 

 

 

「こちらです」

トキに案内され、部屋の一つに通された先で待っていたのは…

 

「え?あっ!」

「あなたは…」

 

 

 

「初めまして先生。できればもっと落ち着いた別の形で出会いたかったけれど」

「…我以外にも教師がいたのか」

 

床に届きそうなほど長い黒髪と細く開かれた紅い瞳。特徴のないビジネススーツに身を包んだ女性がそこにいた

これまでヘイローのついた女性は子供しかいなかったが大人もしっかりいるのだな

 

 

 

「教師…?いえ、私は調月リオ。ミレニアムサイエンススクールでセミナーの会長をしている3年生よ」

「………学生なのか?」

「そうよ」

 

「あー…まぁ確かに…普通誤解するよね…」

「………」

 

 

 

後ろで『だよねー…』と呟くミドリ達の反応を見るに本当に生徒らしい

………前々から思っていたが生徒間の成長の差が激しすぎやしないだろうか

ユメとホシノや、調月リオとネ「よぉ先生、奇遇だな?」

 

と、その時となりの部屋からネルと──もう1人生徒が出てきた

…やれやれ

 

 

 

「ギュメイ先生!よかった、また会えた〜」

「………ユメ」

「なぁに先せ ごすっ! あいたっ!?」

 

にへらっ、と笑うユメの頭を拳で叩く

「1人で勝手に動くなと何度言えば分かるんだ!」

「!!」びくっ

 

 

 

ユメに限らずその場にいた生徒全員がフリーズした。まさか戦闘中でも無いのに生徒に手を上げるなんて思いもしなかったのだろう

…だが流石に我慢の限界だ

 

 

 

「…『自分が助けられた分だけ人を助けたい』と思うその心は我も尊重したい

だが何から何まで首を突っ込んで危険に身を晒すのは違う!

トキに聞いたぞ、雲とそう変わらない高さから落ちたらしいな?」

「あう…」

 

「誰かを助けたいなら、まず自分自身を助けられるだけの力を付けろ。1人で付けられないというのなら我も協力する

厳しいことを言うが力を伴わない助力は周りも、お前自身も危険に晒すだけだ」

「ひぃん…ごめん、なさい…ギュメイ先生…」

 

 

 

「………」

…涙目で俯くユメの頭を撫でる

「──ひとまず無事でよかった。怪我は無いな?」

「うん…トキちゃんが助けてくれたから…」

「そうか、ならいい。…2人にも礼を言いたい、ユメを助けてくれたことに感謝する」

 

「私はトキに指示しただけよ、それ以外何もしてないわ」

「私はリオ様の指示を受けただけなので。」

 

…変わった2人組だな

 

 

 

「………」じー…

「? アリス?」

「えっ…いえ、なんでもありません…」

 

ふとアリスから視線を感じた気がしたが…気のせいか?

 

 

 

 

 

「………」

(………ギュメイ先生は怒ってました。アリスが叱られているわけでもないのにとても怖かった…でも、なぜでしょう

どうしてか、アリスはギュメイ先生に…)

 

 

 

 

 

「…いきなり怒鳴ってすまなかった」

「まぁ無理もねぇんじゃねぇの?それよりもだ

おいリオ、いい加減この馬鹿デカい街について説明しろ。色々と聞きたいことはあるからな」

「………そうね、でも今は一刻を争うわ

先にそこの…『生徒によく似た何か』について説明させてちょうだい」

 

 

 

そう言ってリオが指し示したのは消沈中のアリス

…言い方からして嫌な予感しかしない

 

「たった今目撃したばかりのあなた達なら既に分かってはいると思うけれど…そこの生徒の外見をしたソレは生徒──いえ人間じゃないわ」

 

 

 

「いきなり何を…」

「あなた達がアリスと呼んでいるものの正体は、未知から侵略してくる『不可解な軍隊(Divi:Sion)』の指揮官であり、『名もなき神』を仰する無名の司祭が崇拝した『オーパーツ』であり、古の民が残した遺産…

その名は」

 

 

 

 

 

『名もなき神々の王女AL-1S』

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

「神々の王女…?」

名もなき神々の王女…不可解な軍隊(Divi:Sion)

話を聞いただけではおそらく我も信じなかった、だがアリスは我らの目の前で正体不明のロボットを召喚し、あのグレイナルを追い詰めた

…危険視するのもよく分かる

 

 

 

「世界を滅ぼすためだけに生まれた終末兵器。

あなた達の好きなゲームに例えるなら『魔王』…

それがアリスの正体よ」

 

「わけが…分かりません!変な設定付けはやめてください!」

「ミドリ待て。…リオ、続きを聞かせてくれ」

 

 

 

どちらにせよ避けては通れない道だ、リオがアリスのことを知っていると言うのなら聞き出す必要がある

 

 

 

「エリドゥ内に突如として発生した不可解な軍隊(Divi:Sion)

あれは本来『廃墟』から外には出てこないものだったけれど…

 

あなた達も見たでしょう?豹変した彼女が

不可解な軍隊(Divi:Sion)を呼び出し、ドラゴンを撃退したのを

加えて外敵と見做した相手に対する異常なまでの攻撃性…

 

今回は白い竜との拮抗とトキのおかげで止められたけれど、次起動すれば人も竜も関係なく、全ての有機生物を滅ぼすまで止まらないかもしれない危険な存在なの

 

まさか廃墟から呼び出すだけに留まらず、エリドゥ内へいきなり召喚するとは思わなかったけれど」

 

 

 

「──なるほど、アリスが危険なのはよく分かった」

「ギュメイ先生!アリスは「静かにしろミドリ、まだ話には続きがあるはずだ

…リオ、お前はその危険に対して立ち向かう術を持っているか?」

 

 

 

合っているかは別としてアリスの正体をそこまで断定しているのなら解決策の1つや2つあるはずだ

 

「ええもちろん、解決策は1つ。…アリス、あなたが消えること」

 

「「「「!!」」」」

 

 

 

──本気か?

 

 

 

表には出さなかったが内心ギュメイは調月リオという生徒に呆れていた

アリスを消す、という手段自体に疑問は無い。脅威を呼び寄せているという明確な証拠があり、かつアリスを消せば間違いなく防げると言うのならそれが1番早くて確実だ

だがこの調月リオという女は…

 

 

 

「この世界にあなたは存在してはならないの」

「…………」

「い、いい加減にしてくださいっ!いきなり横から入ってきてアリスを消す?

ふざけないでっ!」

 

「この場合いきなりエリドゥに現れたのはあなた達なのだけれど…それはいいわ

まだ彼女の危険性を理解していないと言うのならもう1つの事実を伝えましょう

………才羽モモイは死亡したわ」

 

 

 

「なっ…」

「っ…!やっ、ぱり…アリスが、あの時…」

「違うっ!モモイは死んではいない!ゲ──アウルの手でそう見えているだけだ!」

 

 

 

アストロンは使った対象を完全な鉄に変える魔法…確かに今のモモイから生体反応が消えててもおかしくは無いが…

 

 

 

「仮に仮死状態だとしてもここまで反応が無いのはおかしいわ。それこそ魔法でも使わなければ…

状況から見てこれは明らか。…天童アリス。才羽モモイはあなたに殺されたのよ」

 

「違います!お姉ちゃんは、アウルさんの魔法で、その…えっと…」

「ゲームと現実の区切りをつけなさい才羽ミドリ。魔法なんてものは存在しないわ」

 

 

 

ばっさりと言い切るリオと納得できないミドリ

それもそうだ、彼女達は既にゲルニックによって魔法の存在を知らされている

 

…だが彼女達でさえ実際にゲルニックが魔法を使うまでは信じなかったはず

そもそもとして前提条件と知見が我らと根本的に違うリオを説得するにはもう魔法を見せるしかないが…

 

 

 

「あ、アウルさん!アウルさんに聞けば分かる!お姉ちゃんは死んでないって!」

「あなたの言うとおり才羽モモイが生きていたとしても、()()が彼女を殺そうとした事実に変わりは無いわ

次の犠牲者が出る前に、天童アリスには消えてもらうしか無いの」

 

 

 

なるほど、確信できた。調月リオ、彼女の考え方は生前のあの方とよく似ている

王と会長という差はあるが人の上に立つ人間という共通点も相まり、我は口を挟まずにはいられなかった

 

 

 

「だめだリオ。お前は…人の心が分かっていない」

「先生、彼女は人間のように見えて人間ではないの。大人であるあなたが感情に流されて情けをかければ世界は「アリスの話ではない」

 

 

 

「…?なら誰の話なのかしら」

「アリスを想う全ての人間の話だ

リオ、お前の言う通り合理性だけを求めれば天童アリスは今すぐこの場で始末すべき危険因子だ。その点に置いて我に反対意見は無い」

「な…!」

 

「理解を得られて嬉しいわ、これならもっと早くあなたと会うべきだっ「だが合理性だけでは人はついて来ない」

 

「先生…?」

 

 

 

「天童アリスが危険因子であることは眼の背けようの無い事実、しかしもう一つの事実をお前は見落としている」

「…それは?」

 

 

 

「アリスがゲーム開発部の部員であるということだ

普通の生徒でないとお前は言ったが普通で無かろうと彼女はミレニアムの生徒であり、多数の生徒から愛されていることを我はユメから聞いて知っている

 

それを他ならぬミレニアムのトップ…会長が堂々と『消すべきだ』などという意見を押し通せば例えそれでキヴォトスが救われようと生徒達には必ず疑問と疑念が残る

『本当にこうするしか無かったのか?』と」

「………」

 

 

 

「ミレニアムは技術者の集まる学園であり、常に進化と探求を追いかける生徒が大勢いる。

仮にこの事実を広めればミレニアム中の生徒が一つの目的に向かって走り始めるはずだ

…アリスを消さなくとも済む未来を目指してな

 

その未来を他ならぬ会長が率先して潰したとあればお前も無事では済まないぞ」

 

 

 

「大切なのはミレニアム、そしてキヴォトスの未来よ。その結果私がどう思われようと関係は無いわ」

「………未来を守るためと言っておきながらその未来の中にお前はいないのか?」

「未来の掛かった選択に個人的価値観を含めるのは合理的では無いもの」

 

 

 

その言葉にガナン王国を治めたかつての王の姿が再度重なる

かの王は正しかった。誰が見ても完璧な『王』であり、王に従えば国と民は潤った

──しかしそこに心は無かった。

 

 

 

そしてその後誕生したガナン帝国の支配者、ガナサダイ皇帝陛下は『暴力と恐怖』で国を支配した。

それは人間が自分より強い力を恐れ、反逆の意思を無くすという目的の元であり、他ならぬガナサダイ皇帝陛下という人間が恐れた力で成り立っていた

 

 

 

客観的に見たガナン恐怖政治は国として成り立っていたのか少々怪しい

しかし目の前の生徒にはそれすら無い

 

彼女はアリスを恐ろしい機械だと言ったが…我から言わせればこの女こそ機械そのものだ

 

仕えるべき人間のためではない、親や子供のためでも無い、ただ漠然とした『以前と変わらない世界の維持』のためだけに自分や他人を消費させることへ微塵も怯まない、こんな人間がガンベクセン王以外にいたとは…

 

 

 

「…もし本心からそう言っているのであれば調月リオ、お前は誰よりも人の上に立ってはならん人間だ。その思考はおよそ人間ではないぞ」

 

「…共感してくれた、というわけではなかったの?」

「結果だけを追い求めるのなら、な

だが全ての人間がそれに納得できると思っているのなら間違いだと我は言う」

 

 

 

「…元々私は嫌われ者よ、理解されるとは思ってないわ」

「だから歩み寄ることを諦めるのか?

決めつけ、塞ぎ込んで、こんなことを繰り返していけばお前はこの先必ずキヴォトスの敵になるぞ」

 

「…よく、わからないわ。私がキヴォトスの敵になるわけがない」

「お前に意思が無くとも周りがそうだと決めればお前は敵になるんだ。…特に人殺しなどというのは憎しみを集めやすいからな」

 

 

 

「だから…彼女は人じゃないのよ先生

彼女は名もなき神々の「まだ分からんのか、何が事実か決めるのはお前ではない、世間だ

お前の言っていることは事実であろうがなかろうが人が認めなければただの狂言で終わる」

 

 

 

人との関わりを諦めている彼女は仮にそうなったとしてもまともに取り合わないだろう

とすればその後に残るのは『調月リオが天童アリスを殺した』という事実だけ

そうなればリオはもう戻れなくなる

 

 

 

「…先生、できればあなたと敵対したくないの

お願いだからここは引いてもらえないかしら」

「『自分の言う通りにしないのなら敵とみなす』…そう聞こえたが我の認識は間違っているか?」

 

 

 

リオとギュメイの間に駆けていた緊張が部屋全体に広がる

ミドリとユズは逃げる準備をし、トキはリオの指示を今か今かと待っており、ユメはアリスを抱きしめたまま震えている

 

 

 

「残念よ、先生────トキ、ネル」

「っ!!」

 

 

 

敵とみなした眼前の剣士を屠るため、リオの号令の元、戦いが始まった。

 

「許せ」

「は?おわっぷ!?」

 

 

 

姿を消しながら攻撃を仕掛けてくるトキには目もくれず、ネル目掛け全力のしんくう斬りを叩き込んで吹き飛ばす

 

いきなり攻撃してくるとは思ってなかったのか攻撃をまともに喰らったネルは壁を破って表通りに吹っ飛んでいった

 

 

 

すまないネル。だがこうするしか無かった

 

 

 

C&Cがリオ直下部隊だとすればネルだけは真っ先に片付けなければならない

アリスを守りながら彼女とトキを同時に相手取るのはいくら我でも無理がありすぎる

 

あの無警戒な素振りを見るにもしかするとネルはこちらの味方についてくれていたかもしれないが危うい橋は渡るべきではない

…我もリオのことを言えないな

 

 

 

「リオとC&Cは我が止める!ミドリ達はアウルと合流して都市の外を目指せ!

ユメ、アリスを頼む!」

「っ、トキ!アビ・エシェフの使用を許可!

ここから逃がさないで!」

「イエスマム」

 

どうやらまだ奥の手があるらしいがわざわざ使わせてやる理由は無い

 

 

 

「『マヒャド斬り』!」

 

 

 

呼び出したアーマーか何かを装着しようとするトキを全力で妨害。本来身体を入れるであろうスペースに氷を詰められたトキは狼狽えつつもアサルトライフルを構えながら再び姿を消す

 

ただ消えただけでは無い、足音も気配も完璧に殺したそれは紛れもない暗殺者。

実は軍人だった、と言われれば納得してしまえるほどのものだが本当に軍人だったギュメイは慌てる事なく構え直して技を打つ

 

 

 

「『火炎斬り』!」

 

 

 

狭い室内に拡散する薄い炎、そして…見つけた

「そこか」

「! まさかこんな方法で…」

「はぁっ!」

 

炎の波に浮き上がる人型の空白に峰を叩きつけ、トキが気絶したのをしっかり確認、そこでようやくギュメイも外へ

 

 

 

「アロナ、外との通信は?」

『だめです、遮断されてます!ここから出ないことには…!』

まるで監獄だな…

 

 

 

…?そういえばなぜゲルニックとは通信が取れたんだ?

「ギュメイ先生!」

と、30秒もせずユメ達に追いついた。──のはよかったが

 

「ユメ!無事で…待て、アリスはどこだ?」

ユメに連れられていたはずのアリスの姿がない!

「そ、それがアリスちゃんが…」

「──まさか」

 

 

 

…くそっ!リオといいアリスといい、どうして1人で突っ走るんだ!?




こうして振り返ると仮にリオがアリスを殺してたら彼女も指名手配犯になってたんじゃないかな、と思ってる作者のルルザムートです、ハイ。
戦闘描写に苦戦しすぎてストックの方でアバンギャルド君がまだ倒せてないのヤバい、なんとかしないと…
それととりあえず12時投稿を1週間やってみた感じですが18時投稿のままでは多分出会えなかった方もいるというのが分かったので次章入ったらまた時間を変えてみるつもりです
ひとまずパヴァーヌ編までは12時投稿で。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。