ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

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さていよいよ主役視点。タイトルはこのまま行きます
それではギュメイ視点 その壱、お楽しみください


ギュメイの一日 その壱

「ギュメイ先生っ、おかえりなさいっ!」

「ユメ、長い通院で迷惑をかけてしまったな」

 

 

 

1ヶ月の通院生活を終え、我はようやくシャーレへと帰ってきた

骨折や筋肉断裂が分かった時は半年を覚悟していたが細々と見舞いに来て回復魔法を唱えてくれたゲルニックのおかげでここまで早く完治させることができた

 

『専門外です』と言い切る割にベホイミを習得しているあたり呪術師としての彼女の才に舌を巻くばかりだ

 

 

 

「ホントですよまったく、不慣れな手まで使わせて…この借りはたっぷりと返してもらいますからね?」

「分かっている…うん?アウル、携帯を変えたのか?」

 

 

 

見れば彼女の手元にある電話の種類が変わっている。以前のも特に不便な様子は無かったが…

 

 

 

「変わりましたがそれがなにか?携帯なんてなんでもいいでしょう

こちらでできる書類作業は終わっているのであとは各学園の訪問だけです

ワタクシは別件があるのでここで失礼させていただきますよ」

 

 

 

訪問先の資料を置いてさっさと退散するアウルを見送りつつ準備。

訪問先は…ゲヘナの万魔殿とミレニアムのエンジニア部か

 

 

 

「──学園訪問に行ってくる

ユメ、留守を任せたぞ」

「あ、はーい!」

 

留守を任せると言ってもせいぜい対応するのは電話くらいだ。と、早速──

 

 

 

プルルルッ

「はいこちらシャーレの梔子ユメです!ご用件をどうぞ!」

 

 

 

「うむ」

問題は無さそうだ、もう任せてもいいだろう

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

「ギュメイ先生っ」ぎゅ

「久しぶりだな、元気だったかヒナ?」

「うん…!怪我はもう大丈夫なの?」

「ああ」

 

一応風紀委員会にも来訪の旨は伝えていたが待ちきれなくなったヒナが出迎えてくれた

我とホシノの派遣以降、よりいっそう恐れられているらしいが満面の笑顔で抱きつきながら翼をパタパタと震わせるその姿は子供そのものだ

 

 

 

「よかった…!先生が入院したって聞いて私…!」

「心配をかけてすまない。しかしそうだな…まだ本調子でないのも確か。

そこで今日一日ヒナに我の護衛を頼みたい」

 

 

 

頭の中のゲルニックが『どれだけズタボロだろうと刀が握れるアナタに護衛なんていらないでしょう…』とボヤきを入れてくるがそういう話ではない

こうでもしなければおそらくヒナは誰かに甘えることができないからだ

 

今日もゲヘナ風紀委員会に殆ど仕事が無いことはゲルニックが教えてくれた

…なぜ奴が風紀委員会の内情を知っているのかは分からんが。

 

 

 

「! 今日、1日?」

「もちろんヒナの迷惑で無ければ、だが」

「そんなことない!…私でいいの?」

「ああ、ヒナに頼みたい」

「うん…!うん分かったわ先生、私頑張る…!」

「ありがとう、ではゲヘナへ行こう」

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

「光のドラゴンに闇のドラゴン、か」

「ふざけていると思われても仕方ないが事実だ」

 

ヒナに護衛され、以前と変わらず静かなゲヘナを歩いて万魔殿のマコトの元へ

実を言えばギュメイが入院してからというもの、鬼の居ぬ間になんとやら。少しだけ治安が悪化してしまっていたのだが──

 

 

 

 

 

『みんなこっちこっち!部長を助け出してもう一度温泉開発を『うへぇ〜、ヒナちゃんを困らせてる悪い子達はここかな〜?』

 

『ひゃっ!あなたはアビドスの…』

『ギュメイ先生が守ってくれた治安をみすみす悪化させるわけにはいかない

…小鳥遊ホシノ、遠慮はいらないわ。私も遠慮しない。』

『りょーかーい』

 

 

 

 

 

最初から本気になったヒナと駆け付けたホシノによって諸共吹き飛ばされ、平和は維持された。

 

 

 

「いや信じよう、あなたが嘘をつく理由は無いしチアキから送られてきた写真にもドラゴン──バルボロスは写っている」

「………」

 

 

 

我が留守の間にチアキやサツキを送ってきた理由はそれか…

 

 

 

「色々と気になる点はあるがこれだけはハッキリさせたい

あの竜達は敵か?味方か?事実よりあなたの意見を聞かせてくれ」

 

…ふむ

 

「バルボロスは天童アリスが味方でいる限りは味方だ

グレイナルは──分からん、敵だとは思うが」

 

 

 

入院前にいちどバルボロスと話す機会があったがどうもグレイナルに見えるあれはグレイナルでは無い別の何からしい

 

光の炎にギガデインまで操るその姿はどう見てもグレイナルそのものなのだが対となる闇竜だけには何か思うところがあったのやもしれん

 

 

 

…いや確かに違和感はあったか、エリドゥで奴にドラゴン斬りを叩き込んだ時やゲルニックが合流してきた時、奴の関心は我らに無かった

元ガナン帝国軍将校が2人その場にいたにも関わらず、だ

 

 

 

「ふむ…明確な対抗手段が天童アリスとバルボロスしかないのは少々不安だな

分かった、こちらでも対策を考えておこう

ついでに所在も探しておくか」

「念の為に言っておくが見つけても手を出すな、すぐに我を呼べ

あれは人の手に余る。」

 

 

 

ユメやアリスを殺すことになんの躊躇も見せていなかったことから他の生徒に対しても同様だろう

正体は掴めないが敵対するのなら斬り伏せるだけだ、次こそは我が斬って終わらせねば…

 

 

 

「それは分かっているがな先生、私にはどうしても腑に落ちないんだ」

「? 何がだ」

「闇竜バルボロス、奴の所在は知っている

ミレニアムの会長、調月リオが作った防衛都市エリドゥの最上階…当然だ、あれだけ目立てば詳しく調べるまでもない」

 

「マコト、結論を。」

「光竜グレイナル、こいつの所在は未だ掴めないんだ。こう見えて情報戦は得意なんだがこのマコト様の技量を持ってしてもまるで手掛かりが無い

果たしてあのドラゴン自身にそんな隠密能力があるのか?

…私は悪意を持った何者かがグレイナルを匿っていると考えている」

「………」

 

 

 

どうやらマコトもゲルニックと同じ考えに至ったらしい

確かにあの図体ではヴェリタスや万魔殿の追跡を躱して隠れることなど不可能だろう

 

 

 

「グレイナルを倒してもおそらくこれは終わらない、根元を断つ必要がある」

「…そうだな」

 

 

 

事実確認とこの先の指針、今できるのはその程度だったが少なくともこの事実に到達しているのがゲルニックだけではないと分かっただけでも良しとするか

 

もう少し話をしていたかったが訪問先はまだ残っている、今日はここまでだな

 

 

 

その後はゲヘナの近況、シャーレの近況などを話し、目を輝かせて話をせがんでくるイブキをなんとか宥めながらその場を後にした

 

 

 

…チナツ達にも顔を出しておくか

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

「チナツ」

「ギュメイ先生!ああヒナ委員長も一緒だったんですね」

 

部室に入れば出迎えてくれたのはチナツとイオリ。アコは居なかったがその代わりに──

 

「お疲れ様デすヒナ委員長!そしてこんにちはギュメイ先生!今お茶をお持ち致しまスね!」

「い、いやすぐに発つから遠慮しておく」

「分かりました!」

 

 

 

風紀委員会の制服を着て、風紀委員会の腕章を付けた()温泉開発部部長のカスミが手厚く出迎えてくれた

 

「…何があったんだ?」

「彼女?ああ、以前ギュメイ先生達が袋叩きにしたのがよっぽど堪えたみたいでな

今は風紀委員会の一員だぞ」

 

「はイ!私は風紀委員会の一員としてゲヘナの風紀を守る所存であります!」

 

 

 

・・・

 

 

 

ところどころ心配になる様子だが周囲に迷惑をかけていないのなら良い、のか…?

「お前達がそれでいいならいいが…そうだ、アコはいるか?今日一日ヒナを護衛として借りたいのだが」

 

暇だと分かってはいるが組織の長を連れ出す以上、筋は通さねばなるまい

 

「アコちゃん?アコちゃんは…あれ?そういえば今日は見てないな」

「彼女なら多分部屋にいますよ、来客が来るとかで…」

「分かった」

「なーんだそうだったのか。──以前の治安なら考えられないな」

 

 

 

っていうかギュメイ先生に護衛って…というイオリの声が聞こえたが無視してアコの部屋へ

場所が分からなかったがカスミが『おまかせください!』とにこやかな笑顔で案内してくれたのですぐに辿り着いた

 

 

 

「では私はこれで!」ぺこっ

「ああ」

「アコ?」コンコン

 

「〜〜〜」

 

ヒナがノックをするが返事は無い、話し声みたいなものは聞こえた気がするが…?

 

 

 

「アコ?入るわよ」

年頃の少女の私室に入るのは少し躊躇われたがヒナに手招きされ一緒に中へ

そこに居たのは──

 

「…!?ゲ──アウル、ここで何をしている?」

シャーレで別れたばかりのアウルだった。普段アコが使っているであろう椅子に腰掛け、携帯電話を片手に机に向かっている

…誰かと電話していたのか?

 

 

 

「おや奇遇ですね、ヒナさんも…お久しぶりです」

「………トリニティから使者が来るとは聞いていないわ、ここで何をしているの?」

 

瞬間ヒナの表情が少女から委員長へと変化する、やはりトリニティ生徒に無断で深部まで入られたとあっては無視もできないだろう

 

 

 

「アコさんに招かれたんですよ。肝心の彼女がいませんが…」あ、これ紹介状です

「………なるほど、トリニティ生徒としてではなくシャーレ所属生徒として…

正式な手続きを経てここに来たのは分かったわ」

 

 

 

表情は少し和らいだが警戒は解いていないようだ

紹介状にはシャーレと風紀委員会の親睦を深めるために、という旨の内容が記されていたがアウル…いやゲルニックという女の本性を感じ取っているのだろう

 

 

 

「少ししたらアコさんも戻ってくると思いますが…どうします?待ちますか?」

「いやいい、他にも仕事はあるしな

ヒナはそれでいいか?」

「…ええ」

 

 

 

そう言いつつもこの事実をスマホでひっそりとチナツ達に流しているのは流石と言うべきか

ひとまず風紀委員会への報告を終えた我らは次にミレニアムへと向かうのだった

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

「オラオラオラオラァッ!どうした先生!こんなもんか!?」

「まだまだ…」

 

訪問先のエンジニア部…ではなくエリドゥ内にて我はネル率いるC&Cと戦っていた

もちろん対立はしていない、以前つかなかった決着をつけるためである

 

が、しかし拮抗する戦況に時間は刻一刻と過ぎていき──

 

 

 

「先生、そろそろ」

「そうか。…ここまでだネル、これ以上は時間が足りない」

「っち、あーくそ!今日は行けると思ったんだがな…」

 

 

 

消化不良ながらも銃を収めるネル

アスナ達もそれに続いて戦闘を中断した

…終始トキの姿を見なかったがリオの元にいると信じたいな

 

 

 

「さてエンジニア部はいるか?」

「おーいるぜ、兵器廠の方で連日作業し続けてる。ついでに言えばタワー最上階にゲーム開発部のチビ共が立て篭もってるぜ」

「分かった」

 

 

 

「ところで先生、リオの奴を見てないか?」

「いや、見ていない」

「…だよな、あいつマジでどこにいったんだよ

お尋ね者になってんぞ」

 

「お尋ね者?どういうことだ?」

「なんだ知らねーのか、ホラ」

 

 

 

ネルが見せてくれたスマホの画面にはセミナーが出したと思われる記事。

【セミナー会長、調月リオの消息について情報提供を。有力な情報を提供してくださった方にはセミナーから莫大な謝礼を…】

 

 

 

「………」

ユウカも相当焦っているのかネルの言う通りお尋ね者だ。これではリオも出てこれないだろうに

 

 

 

ともかくヒナと共にその場を離れて兵器廠へ。

そして…

 

 

 

「ウタハ。これは…これは何を作っている?」

「やぁギュメイ先生!これかい?これは脚部…脚だよ!」

 

兵器廠という割には巨大すぎる格納庫にて、大黒柱のようなものを作っているウタハ達。

これが脚?だとすればどれだけ巨大な兵器なのか…

 

 

 

「まあいい、要件はなんだ?」

「うん、それなんだけどね…今建造中のこの兵器を作るにあたって資金がまるで足りないんだ、そこで…」

 

「・・・言っておくがシャーレの資金を回すことはできないぞ」

「分かっているさ。私が頼みたいのは宣伝だよ」

「宣伝?」

 

 

 

肝心の兵器が完成していないのに宣伝も何も無いと思うが。

 

 

 

「そう、宣伝。シャーレのコネクションを使ってエンジニア部・ヴェリタスが共同で進めている『サジタリウスプロジェクト』に資金を提供してくれる人を募って欲しい

もちろん文面や見出しはこちらで用意させてもらう」

「ふむ…」

 

 

 

…ゲルニックに知恵を借りるか

「分かった、だがすぐには承諾できない

少し時間をくれ」

「ああ、分かったよ

…ところでアビドスの話は聞いたかい?」

 

 

 

兵器廠を出ようとしたところで興味深い話題がその足を止める

「いや、何の話だ?」

「あれ?ユメさんから聞いたと思ってたんだが…なんでも今アビドスにすごい数の人が集まっているらしい」

 

 

 

少し前に来たユメさんが教えてくれたよ、とウタハが言うがそんな話は聞いていない

だいたい留守を任せたはずのユメがどうしてここに来る?

 

何かあったのかと思いシャーレ公式アカウントに何か来ていないか確認するが何も無い

…気になるな

 

 

 

「そうか、少し調べてみよう」

「うん。宣伝の件も検討してくれ」では

 

今度こそウタハ達と別れて外へ。

ゲーム開発部にも会いに行こうかと思ったが──

 

 

 

バサッ

 

 

 

「! 先生、あれ…」

「──何をしている?」

 

 

 

タワー最上階から飛び立つバルボロスとその背に乗る4人の人影…

正直バルボロスとアリスにはあまり勝手に動いてほしく無い、目の届かない場所なら尚更だ

 

 

 

…しんくう斬りでヒナに飛んでもらえば届くかもしれんが折角ヒナをリフレッシュさせようと連れ出したのに頼み事をしては本末転倒だ

ゲーム開発部もそこまで大事は起こさないだろうしどうしたものか…

 

 

 

そこへ…

「ようギュメイ先生っ!とゲヘナ風紀委員長!」

「ネルか、どうし──よし分かった」

 

 

 

走ってきたネルの視線、指し示す方向、その2つで意図を察して刀を抜く

「届くか?」

「届くだろ、それも余裕でな」

 

 

 

タイミングを測りやすいように大きく振りかぶり、ホシノの時と同じように風の力を纏わせる

「彼女達が何をしたいかは知らんがグレイナルの脅威が去っていない以上見守り役は欲しい、悪いが頼んだぞ」

「おう!っ、せぇ…の!」

 

 

 

「『しんくう斬り』!」

 

 

 

振りかぶった刀の剣圧と風の力を推進力に空へ飛び上がるネル

バルボロスもそこそこ高い位置を飛んでいたが──

 

 

 

よし

 

 

 

「すごい、届いた…!」

「ゲーム開発部のことはネルに任せる。

我らはアビドスに向かうぞ」

「ええ、分かったわ先生」

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

 

「アビドス砂漠に地下カジノが?」

 

電車で移動中、ふとモモッターを使って情報収集していたヒナから聞いたのはそれだった

 

「うん『宿屋の地下室』という名前のカジノ。

以前ユメさんを助けに行ったカイザーPMC前線基地を改造して作られたカジノみたい」

 

 

 

あの時の…?だがカイザーPMCを潰したとはいえ土地の所有権自体はカイザーから変わっていないはず

 

「…カジノ最高責任者は?」

「オーナーは不明だけど支配人のは写真付きであったわ。…どう見ても理事長ね」

「やれやれ…」

 

 

 

敗戦の責任を取らされて追いやられたかと思っていたがこんな方法で戻ってくるとはな

 

 

 

「ますます無視できん、思惑はどうであれ生徒を含めた多数の人間が集まっているのは間違いない」

「そうね、ゲヘナ風紀委員長としても野放しにはできない

…それにしても何故今日まで話題に上がらなかったのかしら」

 

 

 

2人で様々な意見を交わして考えるがとにかく行ってみないことには分からない

丁度電車も到着したようで我らは足早に下車をし「あれ…?ギュメイ先生?」

 

 

 

・・・

 

 

 

「──ホシノ?」




ギュメイ、ヒナ、ホシノ、この3人の組み合わせは割と気に入ってる作者のルルザムートです、ハイ。
今更ですがコレを書くにあたってそれぞれ主役…誰にスポットを当てたいかを変えており、プロローグ、対策委員会編ではもちろんギュメイ。パヴァーヌ編では戦術を学び始めたユメと本格的に動き出したゲルニック…
そして今回のカジノ編では竜戦士として自覚したアリスとバルボロスにスポットを当てていきます
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