ギュメイ将軍のキヴォトス放浪記   作:ルルザムート

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ゲルニックが『鳥山アウルとして持っている銃』についていつか書こうかな、と思っています
ゲルニック視点 ③です、お楽しみください


鳥山アウルとしての1日 ③

「………」

 

スコープを覗き、息を止め、狙いすまして──

 

ダァンッ!

 

 

 

──やや逸れましたか

 

狙いはもちろん的の真ん中だが立ったままの射撃であること、また総重量3.5kgという破格の軽量化を突き詰めたせいで射程距離の減衰が激しく、せいぜいまともに当てられるのは500mが限界点…

 

 

 

「ふぅむ、中々あなたのようにはいきませんね…」

「いえ、軽量化を重視したスナイパーライフルでここまで当てられれば充分かと

腕を上げましたね」

 

 

 

そう言いながらも隣の正義実現委員会生徒…羽川ハスミは1000m超えの的へ次々ライフル弾を当ててゆく

 

 

 

「あれ?アウルさんじゃないっすか、お久しぶりっすね」

「おやイチカさん、お久しぶりです」

 

と、ここでようやく目当ての生徒が出て来た

シャーレの生徒として訪問し、ハスミさんを誘って訓練を始めて30分で出会えるとは運がいいですねぇ

 

 

 

「…アウルさんも慣れない訓練で疲れたでしょうし、少し休憩しましょうか」

「お気遣い感謝しますハスミさん、あなたの言う通り少し疲れてしまいました」

 

もちろん嘘だが仲正イチカが出て来たのならもう訓練の必要はない

 

 

 

「…休憩ついでにもしよければドーナツでもいかがです?お口に合うかは分かりませんが相当数買い込んだので他の委員の分もあります、ぜひ食べていただけたら…」

「おー、いただくっす」

「ドーナツ…!い、いえ申し訳ありませんが私は遠慮します、ダイエット中ですので…」

 

ええ、知ってますよ

 

「それでしたらカロリーを抑えたヘルシードーナツはいかがでしょう?食べ過ぎは良くありませんが1つ2つなら食べても大丈夫ですよ」

「なんとそんなドーナツが、でしたらありがたく…」

 

 

 

良い流れです、あとは休憩室に置いてきたドーナツを交えつつシャーレ内の話題を振って興味を引いて行きましょう

 

仲正イチカの広い交友関係と内に秘めたゲヘナ生徒のような爆発力は是非とも欲しい。問題はどうやって引き込むかですが…

 

 

 

ハスミ、イチカ、また移動途中で拾った正義実現委員たちも何人か連れて休憩室に。

 

「わぁ、こんなにたくさん…!?いいのですか?」

「正義実現委員会がどれだけ奔走してトリニティの治安維持に努めているのか知ってしまったらこれでも足りないくらいかと。

シャーレの業務はこちらと比べても断然楽ですし、せめて皆様のストレス解消になれば…」

 

 

 

5つの箱全てにギッチリ詰まったドーナツを見て真っ先に目を輝かせたのはハスミだった

 

あんなこと言っておいて爆食いする気ですか?まぁあなたが良ければワタクシは別に良いんですが…とと、それよりも

 

 

 

今はイチカを引き込む方法を考えねばならない

彼女はどうも新しく趣味になるものを探しているらしく、これを利用しようと思ったが難しい

 

そもそも趣味というのは自分で付けようと思って付けられるものではない、新しく作るのではなく眠っているものを掘り起こす…掘り起こしたそれを上手く利用すれば引き込めるだろうが相変わらずイチカにそれは見えない

 

 

 

「シャーレってそんな楽なんすか?なんか忙しいイメージあるんすけど…」

「アビドスやミレニアムの件を見れば確かに忙しいように感じるかもしれませんが逆に言えばあれくらいの大事件が起こらないと暇なんですよ

まぁ平和なのが1番なのですが」

 

 

 

さてどうするか?…ここはアプローチを変えてみましょうか、彼女は面倒見がいいですし

「あ、あのアウルさんっ!」

「はいなんでしょう?」

 

と、ちょうどいいところに正実の1人がドーナツを頬張りながら話しかけて来た

 

 

 

「シャーレのギュメイ先生は剣の達人だと聞いたんですがツルギ委員長とどっちが強いですか?」

「んー…難しいですね、そもそもツルギさんとギュメイ先生では武器が違うので…」

 

 

 

考えるまでもなくギュメイの圧勝だろうがあえて分からないフリをする

こういう無意味な論争は安易に結論を出すと誰かしらの地雷に引っ掛かりますからねぇ

それよりも彼女を利用してみましょう

 

 

 

「なんでしたらシャーレに来てギュメイ先生と会ってはいかがですか?

一応ワタクシもシャーレの権限を一部持ってますし、面会くらいなら取り持てますよ」

「ホントですか!?」

 

やったぁ!と無邪気に喜ぶ少女を前にアウルはさらに思考を回す

よし、あとは上手いこと彼女の同行者としてイチカさんを誘導すれば──「ハスミ、太るぞ」

 

 

 

…おっと?これはこれは

これまで可能な限り接触を避けていた生徒の声がしてゆっくりそちらを振り向く

 

午前中は戻らないと聞いていたんですが…たまたま予定が変わった、というわけでは無さそうですね

もしそうなら諜報員が探知するでしょうし、カマをかけましたか

 

 

 

「ツルギ委員長!救護騎士団との会合は…?」

「無くなった。…それよりも久しぶりだな、鳥山アウル」

「ええお久しぶりです、ツルギさん」

 

 

 

正義実現委員会委員長、剣先ツルギ…文字通り正実の長であり、トリニティ全体で見ても戦闘能力はトップクラス。…そしてなにより粗暴な外見に似合わずとにかく頭が回る。強くて賢い…一言で言ってかなり邪魔で厄介な生徒の1人。

 

 

 

「もぐ、もっ…委員長もどーですか?ドーナツ。」

「…私はいい、それよりもアウルはなぜここに?困り事なら話を聞くが。」

 

下っ端からの提案もあっさり拒否し、赤い瞳でこちらを射抜くツルギ

 

「用というものは特にありませんよ、強いて言えばライフルの扱い方をハスミさんに教えてもらいに。」

「………そうか」

 

 

 

ワタクシがティーパーティ生徒を陰で『おしおき』していたのは少し情報収集ができれば知ることのできる、言わば『公然の秘密』…

 

今更そんなことでワタクシを警戒する生徒は残ってない

だが彼女は…

 

 

 

「何かあったら私を頼れ、できることもあるだろう」

「ありがたく、ですがご迷惑になるでしょうしそうならないよう努めますね」

 

 

 

──情報封鎖は完璧で穴は無い、長く共にいたギュメイ将軍でさえワタクシの真意は知らないはずですが…

天性の勘、というヤツでしょうか?まったく厄介ですねぇ

 

先ほど彼女は粗暴だと言う結論を出したがことワタクシに対してだけは常に冷静沈着であり、話に聞く狂戦士のような一面は見たことがない

 

強い上に頭も回る、しかも外見からはまるで想像がつかないタイプ…あーホントに邪魔で仕方ありません

 

 

 

「さて、と。長居しても悪いですしそろそろお暇させていただきますよ」

ここで下手にイチカさんや正実委員に誘いをかけてもツルギさんがバッサリそれを断ち切るでしょう、無駄骨とは思いたくありませんがここまでですね

 

「もう帰ってしまわれるのですか?せめてもう少し…」

「そう言っていただけるのはありがたいのですが甘えるわけにも行きませんので。」

「………なら、私が送ろう」

 

 

 

特に拒否する理由は無い、ツルギに連れられてそのまま正実本部の外へ…

「見送り感謝します、ではこれにて」

「鳥山アウル」

 

さっさと次の場所に行こうと思ったがやけに力のこもったツルギの手に腕を掴まれる

 

「──なんでしょうか」

「…私はずっとお前を見ているからな」

「ふむ、ということはワタクシが危機に陥ったら真っ先にツルギさんが助けに来てくれると

いやはや頼もしい、その時は是非とも力を貸してください」

「……………」

 

 

 

納得いかないという顔をしつつも手を離すツルギ、それに見送られながらワタクシは正実本部を後にする

 

 

 

疑惑9、敵意1ってところでしょうか?決定的な証拠を見つけたら誇張抜きで殺しにかかってくるでしょうね彼女。

「もちろんそんなもの掴ませませんが」

 

 

 

策略、謀略の基本はとにかく長期戦…忍耐である

この程度で焦ったり、結果を急いだりしてはマヌケもいいところ。

「長く、根気強く、やっていかなくては…さて次はどこにいきましょうか」

 

 

 

ナギサさんに預けている果実を持っていくのは当然として…時間的にあともう1箇所回れそうですが…

 

「あら?こんにちはゲル──ではなく、アウルさん!」

「おや、こんにちは」

 

シスター服に身を包んだ知人に手を振られ、意識がそちらに移行する

…ふむ、シスターフッドにしましょう

 

 

 

 

 

▽▲▽▲▽

 

 

 

 

「ごめんなさいサクラコさん、手土産の1つも無くお邪魔してしまって」

「いえいえ無理言って招いたのはこちらですので!どうかお気になさらず」

 

バッタリ出会ったサクラコさんに連れられ、シスターフッド本部で小さなお茶会。

マリーさんやヒナタさんは不在のようですが彼女の場合はむしろ1対1の方がいい

 

 

 

「…ところで最近はいかがです?また誤解されたりはしてませんか?」

「それが…色々と試しているのですがどれも上手くいかず…」

 

歌住サクラコ…シスターフッドを取りまとめるリーダーであり、またキヴォトス古代文献等で使用されている古代語を読める数少ない人物…

超が付く真面目な少女であり、外部から畏怖の対象となっているのが不思議なくらい温厚な普通の生徒…

 

 

 

「落ち込まなくていいんですよ、まずは何に挑戦したのかを教えてください

1人でダメでも2人で考えればきっと改善できますよ」

「ありがとうございます、ええとそれでは1週間前のことなのですが…」

 

 

 

ただし、彼女の真意を知っているのは外部どころかシスターフッド内部の者でもごく一部…

無自覚のまま、他人を誤解させるような言動、行動を取ることが多く、結果『怖い人』としてのイメージがつきすぎている

 

よって友人と呼べる存在が殆どおらず、気兼ねなく過ごせる相手に飢えていたために彼女の友人になるのはそう難しいことではなかった

 

 

 

「少しでも仲良くなるために私の好きなスイーツ店で手に入れたケーキを振る舞おうとしたのですが…」

「ふむふむ」

 

 

 

そもそもキヴォトスに流れ着いてから一番最初に身を置いたのはシスターフッドでした

あの日サクラコさんと出会ってなければトリニティに身を置くことも無かったでしょう

 

 

 

「私はただ普通に振る舞っただけなのに…何故か皆さんが怯え始めて…

特にアレルギーがある生徒はいなかったハズでしたし何故なんでしょう…」

 

 

 

今ではフラッグを預けても良いと思えるほど友好関係を結べている。

もちろん最初は打算もあったがゲルニックにとって歌住サクラコは3度も蘇ってなお作ることのなかった『損得勘定無しで付き合える友人』であった

 

 

 

「…やはり言い回しが良くなかったのでしょうか」

「そうですね、サクラコさんは少し真面目すぎるところがあります

もちろんそれはあなたの美徳ですが…

丁寧に丁寧に言葉を考え、組み立てる必要はありません

次は事実をそのまま話してみるのはどうでしょう?」

 

「事実を?」

「はい、この場合は『たくさんの人と友達になりたくて、きっかけ作りになればとケーキを買って来た』とか

これなら誤解もされないでしょう、ほら試しにワタクシをその生徒だと思って」

 

「は、はい…ええと…

私、あなたたちと『お友達』になりたいんです

その『第一歩』としてケーキを用意しました

アレルギーなども無いことはしっかり『調べて』用意したので安心して『食べられるはず』です。ゆっくり『味わってから』…

私と『お友達』になってくれませんか…?」ニコ

 

 

 

「・・・・・」

「あ、あの…ゲルニックさん?どうでしたか…?」

 

人を誘ってケーキを分け合うだけなのになんでここまで怪しい雰囲気にできるんですか…?

 

 

 

「・・・まずは作文から初めて、次はそれをアレンジすることなく読み上げることから始めましょうか」

「うう…やはりダメなんですね…

どうして、どうして…」

 

 

 

しょぼくれるサクラコさんを宥めつつ次の手を考える

…これで悪意や欲望を秘めていれば間違いなくトリニティのトップに君臨できる逸材なんですがねぇ

 

暴力を行使しない恐怖政治というものは存在しないが彼女ならそれができてしまうのでは?と思ったことがある

…中身が純粋すぎてすぐに砕け散りましたが。

 

 

 

ピリリリリッ

 

 

 

電話が…

「出ても?」

「もちろんです、どうぞ」

 

 

 

誰ですか数少ない癒しの時間に…おや、ギュメイ将軍?

 

最近になってようやくアロナさんに頼らずとも端末を使えるようになってきたらしい彼だが自分に電話してくることは殆どない

軍師として信用されてはいるが初めて出会ってから今日までゲルニックという人物の人間性を一切信用していないからだ

 

 

 

それを押してかけてきたということは…厄介ごとですかね?

「ギュメイ先生」

『アウルか、狐坂ワカモについて聞きたい』

 

と、開口一番本題へ。こういう無駄のないところは彼のいいところですね

そしてワカモさんの話題が出たということは…アナタ今アビドスですか

 

 

 

「ふむ、具体的には?」

『七囚人の狐坂ワカモと遭遇したが敵対するわけでもなく妙に懐かれていてどうしたらいいのか分からん。彼女はお前の話に乗って我の元に来たと言っているがどういうことだ』

 

 

 

…電話口からは彼の声以外聞こえない、ということはカジノ到着前に遭遇しましたか

運がいいのか悪いのか…

 

 

 

「説明面倒なんで話の詳細はワカモさんに聞いてください。対処法は説明するのでイヤホンに切り替えてもらえます?」

『面倒の一言で片付けられては──はぁ、分かった。切り替えたぞ』

 

捻りの無いまっすぐな好意をぶつけてくるワカモさんを相手にしたことで戦闘行為よりも疲弊しているのが声で分かる

ガナサダイも居ない今、案外彼を御すにはワカモさんを利用するのが一番効果的かもしれませんねぇ

 

 

 

「では以前ヒナさんにやったようにワカモさんを抱きしめてください」

『わかった………ワカモを抱いたぞ』

 

その言い方は誤解を生むのでやめた方がいいと思いましたが面白いのでこのままにしておきましょう

 

 

 

「次に彼女の耳元で他の誰にも聞こえないように小さな声で彼女の名前を囁いてください」

『………ワカモ』

 

直後、浴室で浮かべるヒヨコのオモチャを踏み潰したような悲鳴が電話越しに聞こえた気がした

 

 

 

『………気絶したぞ、何をさせた?』

「なんでもいいでしょう、とにかくそれで運びやすくなったでしょうしそのままカジノに行ってください」

 

『…!なぜ、カジノが目的地だと?』

「ワタクシを誰だと?ともかく今こっちは楽しいお茶会中です、あとは自分でなんとかしてください」

 

 

 

『おい待て──』

ピッ

 

電話を切って素早く着信拒否。今日の仕事は終わらせましたし本当に重要ならアロナさん経由でかかってくるでしょう

 

…そろそろアビドスに向かった方が良さそうですね

 

 

 

「重ね重ねごめんなさい、せっかくサクラコさんとの時間を…」

「…ギュメイ先生からのお仕事ですか?」

 

「そんなところです。…いえ電話の内容自体は取るに足らないことなのですがそろそろ仕事をしなくてはならず…」

「そうですか…楽しい時間はあっという間ですね」

 

 

 

いずれ彼女もシャーレや自宅に招くと心に決め、ほんの少しだけ雑談をした後にシスターフッド本部を出る

 

少しのんびりしすぎました、ナギサさんの元に急ぎましょう




ゲルニックと彼女のフクロウの描写を増やそうか考え中の作者のルルザムートです、ハイ。
ユメ視点が短くなった分…というわけではありませんがゲルニック視点は4つに増えました、これが終わればいよいよカジノ編へ。
それとアンケートとかもやってみようかな…と考えています
具体的にはレッドウィンター編にてユメとゲルニック、どちらを連れて行くか?という…
残して行く人物にもストーリーを考えたいと思っているので割と悩んでおります
それではまた明日…
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