『宿屋の地下室』編 第6話です、お楽しみください
「わーい!やった!勝ったよリオさん!!」
「ユメさん、今は名前を呼ぶのはむぎゅ」
「ユメさん、私にも勝利のハグを。…むぎゅ」
「私はいいかな…また窒息したくなむぎゅ」
リオさん、トキさん、モモイちゃんの順番に勝利のハグ!特にオーナーのモモイちゃんにはとびきり強いハグを!
「ゆ、ユベさっ………!!」ジタバタ
「うんうん、私も嬉しいよ!」
「マジか、持ち運べるレールガンなんてアリかよ」
腕の中でようやく落ち着いてきたモモイちゃんを抱いていると、ふとロブさんが溢した
「………」
黙っておこうかと思ったけど、やっぱりズルだよねコレ…
「──ごめん、ロブさん。私ズルしたの」
「? ズル?」
「アリスちゃんの光の剣ね、実は緊急用の通信機がついてるんだけど…それを使ってアリスちゃんに助言したんだ『こうしたら勝てるかも』って。だから──」
「なんだそんなことか、そんなのズルの内にも入らねーよ。
アネゴが認めるような男だぞ?助言1つで勝てるわけねーだろ、助言が無くてもこうなってたさ
アネゴの男が負けて、アネゴが降参した、それだけだ。」
「ええ、その通り」
「あ。」
ロブさんの言葉を肯定しながら現れたのはさっきまであっちで戦っていた参加者の1人。
七囚人、栗浜アケミさんだった
「今回の敗因はわたくしが焦って呼吸法を使ったこと。温存し、ゴレオンさんと共に戦っていれば勝ったのはわたくし達でした
…まだまだ鍛錬が足りませんね、肉体的にも精神的にも、それに気付かせてくださったことに感謝しますわ」
『また会いましょう』と静かに笑ってその場を去る彼女達になんと声をかけていいか分からず、私も静かにその背中を見送る
七囚人も全部が全部悪い生徒ってわけ無いのかな…?
「あの、ユメさん?」
「リ──ミセス・アバンギャルドさん。なに?」
「その、モモイが…」
「え?あ…」
「 」チーン
とりあえずモモイは助かった。
▽▲▽▲▽
『ではこれより2時間の休憩を設けたのち、第2回戦となります。よろしいですか?』
「おう」「はい!」
案内役のロボットに選手の休憩室へと通され、疲れた身体をソファに沈める
1回戦からかなり消耗してしまったが幸い弾丸や爆弾の補給は向こうが用意してくれるらしい
とはいえ体力もそこそこ消耗してしまったしアリスのレールガンは調整も電力補充もここでは不可能だ、あと2戦…考えて戦わないとな
「素晴らしい」
その時、さも当然のように部屋に入ってきた生徒が2人を見据えて呟いた
「あ?誰だお前、ここは参加者しか入れないハズだが」
レッドウィンターの制服…?
『ネル様の仰る通り、ここは選手の控え室なのでスタッフと選手以外の方は…』
「まぁそう堅いことを言うな」
『しかし規則は…「うるせぇ!チェリノ様の決定にイチイチ逆らうんじゃねぇ!」
「あ!ゴレオン!」
遅れて部屋にやってきたのはついさっきアリスに吹き飛ばされたはずのゴレオン。
ボロボロで足取りもおぼつかないが…
「・・・」
最大出力のレールガンを至近距離で受けておきながらもう歩けてるのなんなんだよ?
いや待て、チェリノ?コイツが?
「呼び捨てとはいい度胸だなガキ」
「まぁゴレオン将軍、そなたは大人だろう?ここは余に免じて許してやってくれ」
「ぬ、チェリノ様がそう仰るのであれば…」
『チェリノ様』とゴレオンに仰がれている生徒は確かにレッドウィンターの制服を着ているも…
チェリノって連河チェリノだよな?
あのカッケェ髭を付けたレッドウィンターのトップ…
「どうした美甘ネル、余の顔に何か?」
「──いや」
確か記憶にあるアイツはかなり小柄だったハズ…目の前にいる生徒の身長はどう見ても170センチはあり、スタイルもカリンに引けを取らない
センスのいい付け髭が無くなってしまった代わりに、淑やかになった佇まいと細く開かれた蒼い瞳は1つの学園を取り仕切るに相応しい風格を出していてとても自分の知る『連河チェリノ』とは結びつかなかった
成長期…なワケないよな?
仮にそうだとしたら成長というより変異だ、同姓同名の人違いか?
「それよりも…美甘ネル、天童アリス、先ほどの戦い見事であった。余は今も変わらずゴレオン将軍が最強の将だと疑っていないし、彼が認めた栗浜アケミの実力も高く買っている。
だが戦いに絶対は無い、それを忘れずに立ち向かい続け勝利を掴み取ったそなたらの健闘を讃えたい」
「ありがとうございます!」
「…おう」
「そこでどうだろうか、余と共に来ないか?ゴレオンに加えてそなたら2人が加わればレッドウィンターの統治もより盤石になる。
もちろん相応の地位を用意させよう、どうかな?悪い話ではないと思うが」
統治?恐怖支配しといてよく言うぜ
さっきの司会者が言っていた通りレッドウィンターが連河チェリノによって恐怖政治による支配が横行しているのはキヴォトスにいる人間なら知っている。
普通の統治だとしても行くつもりはねぇが
「──あたしはいい」
「アリスもまだやるべきことがたくさん残っていますので遠慮します!」
「そうか…うーむ3人全員に断られてしまった…
残念だが大切なのはお前達の意思、諦めるとしよう。だが気が変わればいつでもレッドウィンターを訪れよ、歓迎するぞ
…さァゴレオン!レッドウィンターに戻るぞ!」
「ッ…ハハァ!」ババッ
ばさりとアビドスに似合わぬ真っ白なコートを纏い、高笑いしながら部屋を出ていく連河チェリノ…を名乗る不審者。ゴレオンもそれに続く
「不気味だな…」
「アリス知ってます、初対面で優しかったり気前が良かったりする人ほど、後半でボスとして立ちはだかることが多いと!」
「・・・」
アリスの無邪気な想像を『くだらねぇ』と一蹴することはできなかった
だって、なぁ?
「──まぁ今は2回戦に向けて準備だ、幸い時間もあるしお前は今のうちに休んどけ」
「ネル先輩は?」
「リオに会ってくる」
▽▲▽▲▽
カジノ【宿屋の地下室】食堂にて。
無事1回戦を突破したネル達を労うため、カジノ内で1番高級なレストラン(海鮮)に来ていたモモイ達。
最初は手持ちが無いと渋っていたモモイもリオの奢りだと知ると遠慮も無くなり、4人の中で誰よりも食べまくっていた
ピリリリッ
「この大トロサイコー…お、電話だ。もしもーし?」
『ちょっとモモイ?あなた今どこに ぷちっ
反射で電話を切って、ついでに電源も切る
やっば、ユウカのこと完全に忘れてた…
考えてみれば裏カジノにいること自体、割とアウトである。
流石にアビドスまでやってくるとは思いたくないがリオの行き先がアビドスだと知られている以上…
「早く…もぐ、終わらないかなぁ、もぐもぐ」
「おいっ、リオ!」
「うわっぷ」
いきなり現れたネルのせいで危うく大トロを喉に詰まらせるところだった
「ネル先輩!…あれアリスは?」
「控え室で休んでる、それよりも…おいリオ」
「だ、誰かしら?私はミセス・アバンギャルド。調月リオとは別人よ」
「そして私も飛鳥馬トキとは別人。ミセス・パーフェクトです」コンニチワ
怒り狂うネルを本気かギャグか微妙に分からない姿勢で出迎える2人。
ユメさんは…うっかりワサビを付けすぎてすごいことになってる
「ウルセェ!チビに聞いたぞ、お前ここに来る前エリドゥに来てたらしいな?
あたし含めたC&Cもエリドゥにいたんだが…なんで顔見せなかったんだ?」
「それはその…」
「トキ、お前もだ!急用だ、ってよくいなくなる時があったがリオの世話してたならあたし達C&Cくらいには言え
…別に無遠慮に言いふらしたりするような奴は仲間にいないんだからよ」
「………すみません、ネル先輩」
「ちょっと待ってちょうだい、今回はユメさんにこっそり会うために護衛としてトキを呼んだわ。でも今回以前で彼女を呼び付けたことはないの」電話は時々してたけど。
あ、マズい
「フザけんな、事実頻繁にウチから離脱繰り返してるのが証拠だろうが」
「? いえホントに呼び付けてないのだけれど…トキ、あなた今日私が呼ぶまで何をしてたの?」
「ええと、C&Cで…」
「そうではなくて──」
「離脱した時だよ、なにしてたんだ?」
「・・・出前の仕事を。」
「出前?なんでた?どこに?」
「それは、ですね…」
言えるわけがない、ゲーム開発部と一緒になってあの惰眠室──いや仮眠室でだらけていたなんて。
「ま、まぁまぁ!誰にだって聞かれたくない秘密はあるよ!ね、ね!?ね、トキさん!」
「ええ、そうですね。誰にでもミステリアスはあります。」
「ミステリアスの使い方合ってんのか…?」
「…とにかく、こうしてやってきたということは用があるんでしょう?
でも連れ戻すのは少しだけ待ってくれないかしら」
流石に観念したのかミセス・アバンギャルドで通すことは諦めたらしい
「連れ戻しゃしねーよ、とりあえず無事なのは分かったからな」
そんな彼女に対してネルの言葉はまだ怒りが混じっていたものの、リオの予想と反した優しいものだった
「…そうなの?…なぜ?ここで私を連れてセミナーに引き渡せばC&Cの評価は上がるだろうし、逆に見逃したことが発覚すればあなたも…」
「だー!ホントにウルセェ!イチイチ細かく考えすぎなんだよお前は!
用ってのはあれだ!お前、あのチビのレールガンの整備できるか?」
どうやらこっちが本題らしい、確かに銃や弾丸の補充はできてもレールガンの調整は知識と技術を持つ人間でなければ無理だ
本来エンジニア部以外でそれが可能な人物などいないはずだが彼女なら…
「アリスの…!ええ、できるわ。任せて」
「流石だ頼む。あと移動時間も計算すると1時間しか無いが…行けるか?
半分…いや、電力補充だけでもできれば助かるんだが」
「それだけあれば充分よ、すぐに始めましょう」
頼られたのが相当嬉しかったのか目に見えて上機嫌なリオ
『会計はこれで』とカードを置いてネル先輩と一緒にどこかへ行ってしまった
「…相変わらず凄いよあの人」
本来整備用の設備と人員が確保されてようやくできるそれをこんな場所であっさり『任せて』と言い放つリオにまたもドン引き
なんだかんだジェット機も本当に作ってたし、天才なのは間違いないんだよねー、センスは無いけど。
ネルとリオが不在になった中、私とトキさんはあの惰眠室での思い出に縋るように暴食。束の間の幸せを楽しみ、ユメさんはワサビで泣いてた。以上!
▽▲▽▲▽
「さてどう思うゲルニック?」
「どうもこうもないでしょう、正真正銘本物のガナン帝国三将の1人、ゴレオン将軍ですよアレ」
先の対戦で出てきた予想外の人物について話し合いたいと思っていたところ向こうから連絡があってVIPルームにて合流。
当然話したいことはこちらと同じようだ
「まったくあの筋肉ダルマ…いったい何が目的なんですかね?彼の思考回路は読みづらいというか読めないので面倒なんですよ」
「お前が他人の行動原理を読めないなんてあるのか?」
「ええありますよ?彼の場合馬鹿すぎて何をするかまるで分からない。
果実が狙いなら金庫を直接襲いそうだったのであえてロックを緩めて誘いを掛けましたが食い付きませんし…まったく大嫌いですホント」
「そうか?我は良い友だと思うが」
敵国どころか自国内で策略と策謀が飛び交う中、ゴレオンにはそのような裏の顔が無かった
思ったことを思った通りに発言し、そのうえ互いに三将軍という気兼ねのいらない距離…
まぁ頭の回転が悪かったのは否定しない、滅ぼした敵国の人や土地を嬉々として蹂躙したこともある。…しかし裏の顔が無いというだけで当時の我には充分救いになった
「下品でガサツなアレを友人…?脳筋同士気が合うんですね」
「我は彼ほど筋骨隆々ではないが…」
「細かく考えずチカラで決着付けるのが1番ラクだと思ってるのは同じでしょう」
なるほど、否定できん
「とにかく、ここの仕事が終わったらレッドウィンターに向かってください。この先何があろうと後回しにするのは許しません」
「分かっている。ガンベクセン様のこともあるしな」
──そろそろ第2回戦か…
今話投稿直前までチェリノの声優が変わっていたことを知らなかった作者のルルザムートです、ハイ。
というわけでチームモモイ、なんとか勝ち残りました
そしてレッドウィンター編に登場予定の2人はここで一旦退場、次章でしっかり戻ってくるのでご期待ください
それではまた明日…
レッドウィンター編でユメとアウル、どちらを連れて行くか
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ユメ
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アウル