『宿屋の地下室』編 第6話です、お楽しみください
「子レティス、こっちで合ってますか?」
『うん、こっちからお母さんと同じ気配がする』
ネル先輩が行った後、懐の子レティスが家族の気配…つまりは卵の気配を感じ取り、アリスに伝えてきた
子レティスが教えてくれたのは『上級スタッフ以外立ち入り禁止』と書かれた場所だったがどういうわけか警備がおらず、30分ほど歩いていたが特に問題なく進めている
『この向こうだよ』
「これは…!なるほど、この宝物庫の中ですね!」
砂漠の地下の裏カジノ、そのまたさらに地下にある巨大な鉄扉…おそらくここがこのカジノの宝物庫に違いない
とはいえ──
「んー…!ダメです、びくともしません」
押そうが引こうが開く気配が無い、鍵なんて持ってないので当然ではあるがこれは困った
目立つから光の剣も休憩室に置いてきてしまいましたし…そもそも扉を破壊すれば中にあるであろう卵にも被害が及ぶ
どうすれば…
『…!まずいアリス、誰か来るよ!』
「え!?あ、あわわ、どこかに隠れないと…!」
曲がり角から聞こえてくる足音に慌てつつ隠れ場所を探すもゴミ箱1つ無い
まずいです!見つかってしまいます!
『っ、ボクのチカラを使って!』
「子レティス!?でも見つかっちゃいます!」
『いいから!』
「は、はい!」
▽▲▽▲▽
「………」コツコツ
──やはりあった
アビドスに突如現れたカイザーのカジノ。シャーレ率いるゲヘナ、トリニティ連合軍により壊滅的打撃を受けたカイザー理事が最後の足掻きとしてここに資金、人、物を集中していたのは分かっていた
仮面を付けた白猫を思わせる生徒は慣れた手つきで金庫を開錠する
「ん?」
『………』チョコン
ふと視線を感じてそっちを見ると廊下の隅で黄色い小鳥が物珍しそうにこちらを見ていた
迷い込んだのかな?…ふむ
「こんな狭苦しい地下、キミには似合わないね
おっと先に自己紹介しておこう、私は慈愛の怪盗…本当の名前は清洲アキラって言うんだけどこれはナイショにしてほしいな」
『…!』ピョンピョン
その場でピョンピョンと鳥にしては変わった反応を見せるその子を肩に乗せ、金庫内に入る
「やはりあったか、カイザーコーポレーション…芸術品をただの高級な売り物としか見ていないくせに資金だけはあるから…
でも大丈夫、私が連れ出してあげよう」
『…!…!』ピーピー
「おっと」
絵画や彫像を回収しつつ金庫の奥に走ってゆく小鳥を捕まえる
「そっちに行ってもソラには出られない、おいで」
『…っ!ーっ!』ギャピギャピ!
あれ、怒ってる?うーん、何かしてしまったんだろうか?…どこか見てる?
おやあれは…
抗議するように可愛く鳴く鳥の視線の先、そこにあったのは──
…卵?
「暖かい、本物の卵だね
なぜ現金や芸術品に混じってこんなものが…」
明らかに異質だ、貴重生物の卵か何かだろうか?…芸術品ではないが親も居ないこんなところに残していけば中の子供も生きていけない、できれば連れ出したいが…
「予告には書いていないが持って行こうか?…しかしそれでは予告の意味が…うーん」
──ガタッ
「!!!」
金庫の外の物音を聞き逃す事なく飛び出し、銃を抜く
「わっ!見つかった!」
「あいつは…!?社長、あいつ七囚人だよ…!」
角の付いた生徒が2人…ゲヘナ生?カジノスタッフで無かったのは良いが騒がれるとまずい、時間をかけ過ぎてしまった
やむなく残りの芸術品を諦めることにしたアキラは閃光弾を投擲。警報が鳴り響く中、見惚れるほど素早く鮮やかに撤退。その途中──
「…!居ない…」
肩に乗せていたはずの小鳥がいなくなっていることに気がつく。
しかし今更戻ることもできないので彼(彼女?)の無事を祈りつつ、アキラは宿屋の地下室を脱出したのだった
▽▲▽▲▽
「戻ろう社長、このままだと濡れ衣を着せられる!」
「ま、待ってカヨコ!」
一瞬だけどさっき金庫内に鳥が迷い込んでるのが見えた、あのままじゃ閉じ込められてしまう
「社長!そんな時間は…」
カヨコの制止も振り切って金庫内へ
いない、どこ!?どこにいるの…ピシッ
──あら?
警報に混じって何かヒビ割れる音が…
「え、タマゴ?なんでこんなところに パキョ!
「ぴぃ!…ぴ?」
「社長!何やって──え?」
硬直するカヨコ、鳴り響く警報、そして…タマゴの中からウルウルこちらを覗く雛鳥…
「・・・・・」
「・・・・・」ウルウル
「・・・社長?」
──とりあえず連れて逃げ帰った。
▽▲▽▲▽
「そ、そんな…!」
卵を見つけた、レティスと同じ気配のする綺麗な卵。これを持って帰ればクエスト完了だった
それなのに──
『──っ…!ボクの、家族が…』
間に合わなかった、閃光弾で一瞬気を失って、気付いた時には卵が既に──
【侵入者だ!金庫を破られた!】
【セキュリティは集まれ!】
【通路を封鎖しろ!】
『っ、アリス!脱出するんだ!このままだとボクらも危ない!さぁボクのチカラを!』
「子レティス、アリスは…」
『早く!』
ごちんと魂に頭を
「! おいチビ、いったいどこ行ってたんだ?」
「唯一無二の武器を放置して行くのは合理的ではないわ。おかげで整備はできたけど…」
「…っ?お前大丈夫か?」
「………」
(ボクのことは気にしないで、それよりアリスは勝ち抜かないと。アリスはアリスの友達を助けるんだ)
辛いはずなのに子レティスはそう言ってアリスを励ましてくれます
生まれることすらできなかった雛鳥よりもっと幼いはずの子レティスが…
「──大丈夫です」
泣きそうになったけど、アリスは大丈夫です。アリスより幼い子レティスが泣いてないのならアリスも泣きません。
勝ち抜いて、今度はアリスがモモイを助けるんです!
「そうか、あんまり無理すんなよ」
「ありがとうございますネル先輩、リオも…光の剣を鍛え直してくれて感謝します!」
「力になれたのなら良かったわ。…頑張って」
次の試合が始まる。
勇者の剣を携えて、アリスはネル先輩と一緒に舞台となる市街地へ繰り出す
大丈夫、アリスは負けません!
▽▲▽▲▽
『さぁさぁやってまいりました第2回戦!
今回のカードは!あの伝説のスケバン、栗原アケミとレッドウィンターの鉞、ゴレオン将軍の怪力コンビを見事な連携で打ち破った【チームモモイ】!
2時間前に目にした閃光のような激闘は、事実上の決勝戦だったのか?
それともそれすら色褪せるほどの灼熱のバトル、その前哨戦に過ぎなかったのか!?
わたくしは勇者とメイドの覇道は始まったばかりと確信しております!
天童アリスと美甘ネルの登場だぁぁーっ!!』
「さてと、準備はいいな?」
「ええ、いつでも!」
観客の声援を受けながら市街地の中心部へ。
別にここで戦ってもいいんだがなるべく観客の安全を優先してほしいというスタッフの意見を汲み取った。
──あちらは、既に到着してるみてぇだな
かつては公園があったであろう何も無い広場に、その4人は待っていた
まだ遠くて表情は見えないが…何故だかその4人はサマになっているとネルとアリスは感じていた
『さぁ対するは!裏世界の仕事人!金さえ貰えばどんな仕事も引き受ける!
【勝利に興味はない、与えられた仕事をこなすだけ…】社長の言葉に!彼女達を雇った姿の見えないチームオーナーも勝利を確信し、今ごろカジノのどこかでほくそ笑んでいることでしょう!
【チーム便利屋68】!裏社会の大物が、バトルトーナメントに参戦だぁぁーっ!』
「へぇ便利屋68か」
「ネル先輩、知ってるんですか?」
「まぁな、直接戦ったことは無いが…ギュメイ先生が言うには中々頼れる4人らしい、つまり──」
「強い、と」
「ああ」
『では便利屋社員の紹介です!まずは平社員の伊草ハルカから…おや?少々お待ちください、便利屋社長よりコンタクトがありました、マイクを繋ぎます』
「? なんだ?」
『・・・どうぞ!』
『──聞こえるかしら?【チームモモイ】』
「「!」」
『あなた達が何を思ってここにいるのかは知らないけれど、少なくとも私たちにとってこれはただの【仕事】なの
余計な前置きは要らないわ、手早く済ませたいからさっさとかかって来なさい』
「──へぇ?」
『おおーっ!便利屋社長、ドラゴンを撃退した勇者とミレニアム最強の戦士を相手に早くも挑発だぁ!
これは戦略なのか?それとも仕事人としての絶対的自信から来ただけの言葉なのか?
女神すら飲み込まんとする悪魔の微笑みを浮かべた社長の真意はいったいどちらか!?気になる!気になって仕方がありません!
頼む社長!その答えを!今すぐ我々に見せてほしい!』
ようやく表情が分かる距離まで近づけた
…ハッ、自信たっぷりっつーいい顔しんじゃねーか
「面白ェ、その鼻叩き折ってやる
おいチビ、やるぞ!」
「はいっ!」
『勇者か!裏社会の大物か!勝負の行方はすぐそこに!
第2回戦!【チームモモイ】vs【チームアウトロー】!レディ…ファイッ!!!』
Ⅷ本編でも『白黒の世界で色の付いたタマゴを、あんな高くて目立つ場所に置いて場を離れたら人質にされても仕方ないのでは…』と思っている作者のルルザムートです、ハイ。
判明してる七囚人全員好きで怪盗にも出てもらいました、話し方とかこれで良いのかな…?
それではまた明日…
レッドウィンター編でユメとアウル、どちらを連れて行くか
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ユメ
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アウル