…相手より強くても絶対に勝てるとは限らないのです
『宿屋の地下室』編 第9話!お楽しみください
バトルトーナメント最終戦より少し前…
「ギュメイ先生!」
「! ユウカ?ここで何をしている」
医務室に担ぎ込まれた便利屋を見舞いに行ったその帰り、何故かユウカと出会った
…モモイ達を探しに来たのか?
「ギュメイ先生!モモイ達とリオ会長を見ませんでしたか!?」
「モモイ達ならバトルトーナメントに…っ?待て、なぜリオが出てくる?」
「リオ会長がユメさんと一緒にアビドスに来てるって通報があったんです!見てませんか?」
「…いや、見ていない。だが心当たりはある」
遠目だったから少し自信がないが1戦目の開始と2戦目の開始でアリスのレールガンの電力残量に差が無かったように見えた
試合の間に誰かが整備しているとするとそんなことができるのは──
「物的証拠は無いがおそらくリオはモモイと同じ場所にいる。チームオーナーがいるバトルトーナメント観戦席を探せ、そのどこかにいる可能性が高い」
「ありがとうございます!…それとバトルトーナメントって?」
なんだ知らなかったのか
「このカジノの催しの1つだ、チーム戦でどこが1番強いのか競い、優勝者には賞金と──
・・・ああ、賞金が出るらしい。モモイはネルとアリスをチームメンバーとして参加しているようだ」
「!! っはぁ、モモイはまた──重ねて感謝します。それと…もし私より早くゲーム開発部に会ったら伝えて欲しいことが」
「なんだ」
「『カジノなんかで儲けたお金を部費として使うのはダメ』…そうお伝えいただけますか」
「分かった、伝えよう」
「お願いします、では!」タッタッタ…
「………」
ユウカと別れ、モモイ達を探す。
話を聞いたところ次の対戦相手はすでに失踪しており、モモイ達の不戦勝となるはずだ
裏カジノとはいえ表彰くらいはされるだろう、その会場を黒服あたりにでも聞いてくるか…
「ギュメイさん」
「………やれやれ、今度はなんだゲルニック?」
「人がいないとはいえ外なんですからアウルと呼んで欲しいのですが…
まぁ構いません。いよいよアナタの出番ですよ」
・・・
「なに…?」
▽▲▽▲▽
「さーてと」
エキシビジョンマッチの件をギュメイさんに伝え、自分はのんびりVIPルームへ。
コンコン
おっと、いいタイミング。
ガチャ
「こんにちは、ゲヘナ給食部デリバリーです」
「おや来ましたか。はいこれお代です」
「ありがとうございます。…おや、少し多いですが」
「チップです、取っておいてください
…フウカさんによろしく」
給食部になってすっかり大人しくなった黒舘ハルナから弁当を受け取って箱をあける
デリバリーでありながらこのしっかり熱の残ったふわとろのオムレツ…中々良いではありませんか
そのふわふわを箸でつつきながら手元の資料に目をやる
【チームアウトロー】
【チーム筋肉】
【チームモモイ】
【チーム超人】
……
他にもいくつか参加している団体はあったがモモイさんかアルさん以外に果実が渡らなければそれで充分。
参加者から推測し、果実を狙っているのがどこの誰なのかも8割把握しました
決勝相手になるはずだったチームが消えたのは予想外でしたが…こんなことなら金庫の様子はスタッフに見に行かせるべきでしたね
後で録画映像を確認しておきましょう
さて、バトルトーナメント開催による見返りは最低限帰ってきました。あとはここからどこまで稼げるかです
バルボロスの登場によって観客はもちろん黒服さんを始めとした出資者の期待も最高潮、この稼ぎ時をこのまま終わらせるなんてとんでもない
…始めましょうか
▽▲▽▲▽
ガガガガッ!
ドンドンドンッ!
「ぐお、お…!くっそ、くっそォォ…!!」
「ネル先ぱ「いいから災厄の狐をどうにかしろ!」
闇の炎による目眩しは完全に読まれており、まさか開戦と同時に全員に距離を取られるとは予想外だった
クソ、雨あられと横向きに降りそそぐ鉛の嵐が激しすぎる、せめて遠距離に陣取っている狐坂ワカモをどうにかしてもらわなければ戦いにすらならない
そう考えアリスに迎撃の指示を出すものの…
「分かっていますが──うっ!?」
ギャリンッ
「行かせん」
ギュメイ先生の一刀がアリスの行手を阻む
アリス1人でギュメイ先生の守りを突破するのは天地がひっくり返ったって無理だ、バルボロスも当てる必要があるが奴が居なくなればこっちが保たない
『ネルっ!っ…闇の炎よ!』
闇の炎による援護を受けながらなんとかショットガンとマシンガンとライフルの波状攻撃を凌ぐ
いや凌ぎ切れていない、喰らいまくりながら致命的なものだけ防いでなんとか踏ん張っている
「うへぇ、さすがミレニアム最強…なかなか頑張るねぇ」
「3対1で悪いけれどあなたたちを勝たせるわけにはいかないの、大人しく倒れて」
近距離戦の小鳥遊ホシノと中距離戦の空崎ヒナ、それぞれ間合いの違う連携にどうすればいいのかまるで分からない
バルボロスの炎で分断のチャンスは何度かできている、だが手を組んでいる2人のスペックが高すぎて分断したところでようやく互角に持ち込めるだけ
さらには遠距離から執拗に狙撃してくる災厄の狐と、ホシノ達の少し後方でアリスを足止めしつつバルボロスとあたしに目を光らせながら動かないギュメイ先生…
これまでどんな難しい仕事も逃げ出さずにこなしてきたネルだったがこの時ばかりは何もかも投げ捨てて逃げ出したいとさえ思っていた
──いくらなんでもこれは理不尽すぎるだろうが!?
ショットガンの射程距離から逃れようとすればヒナの銃撃が降り注ぎ、マシンガンが撃てない懐に飛び込めばホシノが割り込んでくる
大きく退いて距離を取ればその瞬間ワカモの狙撃が…!
「ぐ、えっ…!」
ダメージが蓄積した身体がぐらりと傾く
なに、も、できねぇ!
「終わりだね」
! やべぇ、ホシノを近付けすぎた──
たたっ
ガンッ!
「「!?」」
至近距離に迫ったホシノのショットガンに手痛い1発を覚悟したネルだったがそこに割り込んできた生徒がいた
「ユメ先輩!?」
「っ、あの時、みたいだね…!えいっ」
盾でショットガンをカチ上げ、一目見ただけで誰が作ったか分かるほどダサいデザインの手榴弾を投げ付けると同時に辺りが光に包まれる
「閃光弾!?」
「みんなっ、一時退却!!」
わけが分からなかったがこのまま残ったところで勝機はない、事態を察したバルボロスに飛び乗って距離を取る
「っと!ここがエリアの端です!」
『よしここで降ろす!私は撹乱のためにこのまま飛び立つ!』
バルボロスから飛び降り、手近な廃ビルに逃げ込む
ひとまずここでいいか
「かなり距離は取ったがあいつらなら30秒もあれば追いついてくるぞ
だいたいお前はどうしてここに?」
乱入が許されてるのは武器扱いのバルボロスとギャングアニマルだけだったはずだ
「えっとね…」
▽▲▽▲▽
「………」ピッピッ
これはいったいどういうことだという意味を込めてスタッフの1人を呼び出す
『ハ、こちら闘技場スタッフ「知ってますよ、だから掛けたんです
それで?いったい誰です?彼女を乱入させたのは」
モニターにはネルさん達に混じって作戦会議か何かをしているユメさんの姿…もちろん許可なんて出していません
『? システムには参加者は3人だと記録が…1回戦目と2回戦目で出なかったのは便利屋のように切り札を隠すためでは?』
「そんなわけないでしょう。…もういいです、自分で確認するので。」ピッ
端末から参加者リストを再度呼び出し確認。すると…
【チームモモイ メンバーリスト】
・オーナー
才羽モモイ
・メンバー
美甘ネル
天童アリス
梔子ユメ
「っ?」
確かにユメが参加者に含まれている、だが1回戦目に確認した時には名前が無かった
改ざんされた?誰に?第三者に弄れるほど貧弱なセキュリティにした覚えはない、こんなことができるとすれは明星ヒマリや調月リオのようなレベルの──
「………そういえばアリスさんのレールガン、すでに最大出力を1回使っている割には…」
▽▲▽▲▽
「リオ様」
「ええ、間に合ったわ」
持ってきたノートパソコンを閉じ、モニターに目をやる
…ユメさんがネルの元に辿り着けた。私にできるのはここまでね
「リオ様違います、そこは『フッ、ヌルいセキュリティだこと…』といいながら髪をかき上げるのが正解です」
「そう………えっ?」
▽▲▽▲▽
『アビドス生徒会長にして対策委員会委員長、さらには連邦捜査部シャーレのNo.2!
チームオーナーモモイの切り札はバルボロスだけでは無かった!
だが果たして!通じるのか?相手は2人の最強と1人の至強、さらには最凶の1人が加わったモンスターチーム!
わたくし自身、彼女の戦闘能力については全くの情報が与えられておらず戦況が読めません!さぁどうなる!?チームモモイ!』
「………」
ドローンからけたたましく響く司会者の声に思考を回す
「うへぇ、まさかユメ先輩が駆けつけるとはね…」
「ギュメイ先生、どうする?」
「まずはワカモを退げる。…ワカモ」
『はい』
「ネル達が現れるまでこちらは気にせず隠れていろ、我がネルなら狙撃手であるワカモを真っ先に狙う
戦闘が再開するまで表には出てこなくていい」
『分かりました』
ゲルニックの差し金…ではないな、もしそうならシャーレに来た時点でユメを連れて出て行っていたはず
ということはいつものお人好しか。…そういえば指揮官としてのユメは今どれほどの技量を持っているのだろうか
「戦い方に変わりはない、ヒナとホシノでネルを崩せ。横槍は我が入れさせん」
ゲルニックが言うに我ら3人が揃って戦うよりもヒナとホシノだけに任せた方が彼女達の力を発揮させることができるという
理由としては我と2人の距離が近すぎると誤射の可能性をヒナ達は考慮しなければならず、結果として全力で戦えなくなるそうだ
もちろん我なら敵の弾丸も味方の弾丸も全て防ぎ切れるがその確信が持てない2人にとってはそれが大きな枷になる
ならばあえて2人に全てを任せ、我は後方でネルへの救援を阻止しつつ不測の事態に備えて中間地で待機。
ヒナ達より強い我が体力を消耗せず、次の相手として鎮座するのがネル達にとってもっとも嫌な手になる。…らしい
「このまま武力で押して勝つ。追うぞ」
「「了解」」
2人を連れて街を駆ける。街は広大とはいえ闘技場として使われているおかげか範囲自体は街の中心部からそれほど離れることなく端に着く
おそらく上空のバルボロスは囮だ、奴が飛び立って折り返してきた地点はこのあたり…あの廃ビルか?
「………ヒナ、ここからあの廃ビルを破壊できるか?」
「ええ」
「ネル達はおそらくあのビルの中だ、建物内に入れば不意打ちを食らう可能性がある
ここから吹き飛ばして誘い出す」
相手は生徒、だが油断も慢心もしない。果実や裏カジノの金銭を彼女らに渡すわけには行かないというのもあるが何より梔子ユメは一部分だとしてもゲルニックの策略を使える可能性がある
──徹底的にやる理由などそれ1つで充分だ
ヒナがマシンガンを構え、同時にバルボロスの気配が急接近してくる
「先生」
「バルボロスは我が斬る、ホシノは飛び出してきたネルからヒナを守れ」
闇の炎ならしんくう斬りで跳ね返し、ドルマ系なら火炎斬りで相殺、突っ込んでくるならドラゴン斬りで返り討ちにすればいい。
居合斬りの体勢に入ったギュメイはどれが来てもいいように神経を研ぎ澄ませる
ガガガガッ
ヒナが廃ビルの破壊を始めた。紫色の弾丸は銃弾では無い別の何かのように瞬く間にビルを解体していく
──バルボロス到達まであと6秒。
「クソっ!本当に撃ちやがったな!?」
たまらず飛び出してきたネルが繰り出した銃弾の雨と銃床打撃がヒナに迫るが割って入ったホシノが防御。一瞬動きが止まったネルに散弾を浴びせようとするも
「させないよっ」
遅れてやってきたユメが更に割り込んで妨害、近距離戦が強いショットガンとはいえ銃口より近い距離に近付かれてしまえば無力だ
いや、後ろは心配いらない。ホシノとヒナを信じろ。我はバルボロスを斬る。
闇の炎もドルマ系の気配も無い。真っ向勝負か、いいだろう
バルボロスが来る、それに合わせて刀を振り抜き──
「『ドラゴン斬り』!」
──刀が虚空を切った
っ?
見ればバルボロスはギリギリで進路を変えており、まっすぐ廃ビルに突っ込んでいく
『アリス!乗れ!』
「はいっ!」
崩れかけの廃ビルに隠れていたアリスがバルボロスに飛び乗り、そのまま
「離脱した…?」
「ハッ、逃げるわけねーだろ?…狙撃の厄介さは身に染みてよく分かったからな、マネさせてもらうぜ」
アリスとバルボロスを狙撃手に?…確かに上空からレールガンやドルモーアで狙われればこちらもタダでは済まないが…
「──ならばネル、ここでお前を討つだけだ」
『倒す』や『斬る』ではなく『討ち取る』という表現をギュメイは使いそうだなと思ってる作者のルルザムートです、ハイ。
ユメの参戦はちょっと強引だったかな…?でも相手は3日でゲヘナを静まり返らせた3人プラス災厄の狐だししかたないしかたない
そして便利屋と同じく物語中で描写できなかったのでこちらで書きますが美食研究会に関しては温泉開発部と違い、自主的に給食部に入っています
『疲れ果てるほど働いて働いて働いた後、自分のためだけに料理を作ってくれる存在』に胃袋を掴まれてしまった彼女達はもうテロリストではないのです
それではまた明日…
レッドウィンター編でユメとアウル、どちらを連れて行くか
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ユメ
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アウル