イワン・クパーラ編 第4話です、お楽しみください
ザザッ
『見ろ!圧政に立ち向かう力を持つにも関わらず権力者の垂らした甘い蜜に心を売った卑しい犬が姿を現したぞ!』
『だぁれが犬だ、このクソガキ!今日こそフン捕まえて牢獄にブチ込んでやる!』
『おいゴレオン──』
『テメーは下がってな!行くぜオラァ!』
『…外は凄いことになってますね』
「そうなの?アロナちゃん、ギュメイ先生は大丈夫?」
ギュメイ先生から預かったシッテムの箱、先生以外には使うことができないって言われてたみたいだけどそんなことは無かったらしく、メインOSのアロナちゃんとあっという間に仲良くなれた
『それに関してはまぁ…隕石が落ちるとか学園ごと爆弾で吹き飛ぶとかでもない限り大丈夫だと思いますよ?
刃物一本でホシノさんとヒナさんを同時に相手取れる人ですし…』
それもそうかと談笑しながら事務局内を歩く
チェリノさんからは反乱鎮圧まで好きに事務局を見回ってくれていいと言われ、私は軽く中を散策していた
雪を始めとしたアビドスではまず見られない景色や設備の数々に心躍らないと言えば嘘になるが目的はあくまで果実の回収…
アウルと自分を天秤に掛け、その上で自分を選んでくれたギュメイ先生に応えるためにも遊んではいられない
列車内で預かったシッテムの箱を片手に女神の果実を探して探索探索。
とはいえもちろん無策で探す私じゃないよ!
『! ユメさんありましたよ!あなたの言った通り地面より下から電波が!』
「うん、ありがとう!」
やっぱりあった…!ここに来てから建物の大きさの割に人が少ない気がしたんだ
ゴレオンさんの言葉から事務局のどこかに牢獄があるのは間違いない
そしてチェリノさんの言う『粛清』された人たちはそこにいるはず
そして牢獄にいる人間は粛清された人とは別にチェリノさんにとって都合の悪い──つまりは独裁に待ったをかけることのできる人物もきっといる
その中に、彼女が隠したい秘密…つまりは果実によって独裁者になれている事実を知っていて、ひいては果実の在処を知っている人がいるかもしれない
危険だけど、多分これが1番速い!
「アロナちゃん、壁の中…配電盤とそこから伸びるケーブルは探せる?」
『? ええ、カメラをかざしてくれれば…』
「今からカメラを回すから地下に伸びているのを見つけたら教えて」
牢獄というからには見張りもいるはず、どれだけ劣悪だとしてもその人のための電気とかはかならずある、それを辿れば…
『あっ…この1本だけ…』
「ありがとう、あとは任せて!」
5分もせずにあっさりと見つかった、あとは単純に近い部屋を探せばいい、そこに牢獄へ降りる通路があるはず!
「…やっぱりいるよね」
見つけたはいいものの扉の前に見張りが2人…札には工具倉庫と書いてあるがこの警備の厳重さはあまりに不自然だ
どうしよう?やっつける?でもあの子達が悪いことをしたわけじゃないし…
一応手元にはこっそり持ってきたボルトアクション式のスナイパーライフルがある、カジノの戦いを見たアウルさんが私のためにトリニティの銃器店に掛け合って作ってくれた銃だ
(私は密かに『ダイブ・トゥ・ホープ』と名付けた)
これと盾を使って全員やっつけようと思えばできるけど…牢獄に辿り着いて終わりじゃ無いし…うーん
よし、ここは思い切って!
「あのー」
「ん?誰だアンタ」
「お、おい!シャーレから来た書記長の客人だぞ!…た、大変失礼しました!何かご用でしょうか?」
ひぃん、こんなに怯えられたら傷付くよ…
でも今だけは都合がいい
「チェリノさんに許しを貰って事務局の中を見て回ってるんです、もしよければそちらの倉庫の中を「はいどうぞ!どうぞお入りください!ご自由に!…ですので先の失言を書記長に言いつけるのだけはどうか…!」
尋常ではない怯え方をする2人の頭を撫でつつ堂々と倉庫内へ
…こんなの普通じゃない、早くやめさせないと
倉庫の中は…特におかしなところはない、アビドスの学校の用具入れみたいに狭い場所で人がすれ違えるような幅もない
右に棚、左に棚、5歩奥へ歩けばまた棚…でも間違いなくこの倉庫のどこかに…あった!
床下に続く扉、つい最近使われた形跡がある取っ手、これだ!
見張りの生徒に気付かれないよう静かに扉を開けて階段を降りてゆく
ひぃん、寒い…
暖房で快適になっていた事務局内とは一転、外と同じかそれ以上に寒い
ダウンジャケット、上に置いてきちゃった
今更戻ることもできずひたすら奥へ、やがて話し声が…
「うう〜…いつまでこんなことが続くんだ…おいらが何をしたって言うんだ…」
「『メラ』…これで少しは暖かくなるはずだ、今は耐えなさい」
「………」
牢屋だ…見張りはここから見える限りはいない
念のため盾とライフルを構えてから牢獄の前へと飛び出す
「のわ!ま、待て!おいらもう何もしてないぞ!」
「待ちなさいチェリノ。…あの校章は確かアビドスの…?」
2人に釣られ、牢屋の奥で縮こまっていたレッドウィンター生もなんだなんだと前へ出てくる
…え、多くない?
普通の教室よりちょっと小さな牢屋の中にはパッと見えるだけでも30人以上は入れられている、しっかり数えればもっと…
それにあの初老の男性は多分──
「私は梔子ユメ、連邦捜査部シャーレに所属するアビドス生です
レッドウィンターの独裁者を止めるためにここに来ました」
果実云々の話はまだしないほうがいいだろう、ここには人が多すぎる
「シャーレから?」
「やった!おいみんな!ようやく助けが来たぞ!」
「これでマリナ委員長の独裁もおしまいだね!」
「今回ばかりはやりすぎだしな、あの人」
「…あの、失礼ですがあなたがガンベクセンさん、ですか?」
「っ? なぜ名前を?」
やっぱりこの人がギュメイ先生が言っていたガンベクセンさんみたいだ
「ギュメイ先生からあなたの事を聞いています、助けに来ました!」
「…!そうか、今まで本人かどうか確信が持てなかったが…ギュメイもここに来ているのか?」
「はい!今は別行動してますけど」
「よし…!聞きなさいレッドウィンター生!」
「!」「!」「!」
「今現在レッドウィンターに最強の戦士が来ている!ゴレオンによる武力支配を崩しうる剣士だ!ここを脱出し、チェリノの姿に化けたマリナを止める!
独裁政治はもう終わりだ、希望はすぐそこまで来ているぞ!」
瞬間、地下全体が揺れるほどの雄叫びが生徒達から響き渡る
…ガンベクセンさんってこういう人だったの?
「よ、よし!おいらもやるぞ!ユメといったか?牢屋の鍵を破壊しろ!書記長の椅子…必ず取り戻してやる!」
「わ、分かったよ!すぐに「確かに好きに見回っていいと言ったが──」
「!?」
声の方向から飛んできた氷の塊を盾でなんとか防ぐ
い、今どこから…!?
「何事も限度はある、そうは思わんか?
梔子ユメ」
「チェリノ…いえマリナ、さん?」
そういえばアビドス組って狙撃銃持ちいなかったよね、と思っている作者のルルザムートです、ハイ。
彼女の持つスナイパーライフルですがレッドウィンター編の最後、鳥山アウルのライフルと一緒に細かい設定を書こうかなって思ってます
といっても名前と作られた経緯書くだけですが…
それではまた明日…
※すみません、アウルとユメの武器をレッドウィンター編内で書き忘れてしまいました…次章で描写します