イワン・クパーラ編 第6話です、お楽しみください
「──そうか、あの時余の前に現れた若者はお前が寄越したのか」
「はい。その恩義に報いるため、私はキヴォトスに来た次第です」
「願いの力が込められた果実の回収…
途方もない話だが心当たりはある。手を貸してくれるか?」
「仰せのままに。」
ガンベクセン様、連河チェリノ、佐城トモエ、そして偽チェリノの怒りを買って投獄された事務局の生徒とミノリ率いるレジスタンス達の解放に成功した我らはひとまず旧校舎の体育館へと退避し、次の目的を定めようとしていた
…と言っても殆ど決まっているようなものだが
「ギュメイ先生、少しいいか?」
「悪いが後にしてくれ、今は…」
「余、いや私は既に王ではない、気にする必要はないとも」
「分かりました──どうした、ミノリ」
「話に割り込んですまない、だがこのストライキを成功させるにはどうしてもあなたの協力が必要になる」
「ミノリさん?何か考えが?」
「ああ。…同志達も聞け!」
工務部の仲間達と新しく仲間に加わった事務局の生徒を集めるミノリ。彼女の考えはこうだ
まず事務局には偽チェリノにとって必要最低限の生徒しか残っておらず、今の段階でも数の差は圧倒的に有利らしい
が、その数の差を単騎でひっくり返す存在がストライキの成就を猛烈に妨害していて手がつけられないとのこと
それが誰なのかは…言うまでもない
「計画自体は以前からあったんだがゴレオン将軍を倒せる奴がいなくて棚上げになっていたんだ。…頼む先生!偽チェリノの右腕、ゴレオン将軍を倒してくれ、労働者を虐げる奴の暴虐をもう許してはおけない!」
「任せよ、元よりそのつもりだ」
ゴレオンと真正面から戦って勝てる人間など我かガナサダイ陛下くらいだ、ガンベクセン様も牢屋の生活が長く疲弊している。我にしかできん
「ありがとう、先生!…聞け、同志達よ!」
握手を交わしたのち、どこから取り出したか分からないメガホンを取り出したミノリが叫んだ
「ただいまよりシャーレのギュメイ先生が同志に加わった!
彼の助力は必ずや反撃の兆しとなるだろう!
だが今は疲弊し、傷付いた者達も多い…
まずは今日1日休息を取り、明日事務局へ総攻撃をかける!
奴らも必死だ、女神の果実という資本を手放してなるものかと今まで以上に攻撃してくるだろう…
傷の深いもの、疲労の濃い者に無理強いしない、ただこれだけは覚えておいてほしい!
──ここに残ろうと、共に行こうと、私たちの心は1つだ。
明日全ての権力者と資本家を打倒、この戦いに
私たち全員で、真の平等を勝ち取るぞ!声を上げろォッ!!」
ウオオオオオオッッ!!!
「ひぃんっ、事務局から来た生徒まで…」
「子供相手に激1つでこれほどの士気を…?」
帝国軍時代、将として他国に攻め入ったことは何度かあったがここまで爆発する士気は亡国の憂き目に遭う兵隊くらいにしか見たことがない
──戦争ができるな…
建物全体が揺れるほどの雄叫び、声をあげていないのはシャーレから来た我らと元々事務局高官として動いていたであろうチェリノやトモエ、そして
「な、なんだか賑やかになってますねシグレちゃん」
「うーん、こうなると分かってたらもっとたくさん作ってたんだけどねー、1人一杯分しか無いや」
元から旧校舎に住んで(?)いた天見ノドカと間宵シグレである
どうも列車から飛び降りた時、ユメは既に2人と出会っていたようだ
「…シグレ、君が隠れて飲む分には私も目を瞑るが流石にそれはいけない」
「えー、でもガンベクセンさんは美味しい美味しいって飲んでくれたじゃん」
「私は大人だからよいのだ」
膨れっ面のシグレの頭を撫でて宥めるガンベクセン
………恐れ多いが、いい加減聞いておかなくてはならんな
「ガンベクセン様、無礼を承知でお聞きしたい
…あなたは本当にガンベクセン様なのですか?」
「はは、本当に無礼だなギュメイ」
「も、申し訳ありません!しかしその、私の知る王とは…」
「変わりすぎている、か?
無理もない、あの頃の私は人では無かった
…のぅギュメイ、少し供をしてくれぬか?
ガナンの剣士ではなく、かつてベクセリアに住んでいた民の1人として聞いてほしい事がある」
「…!は、是非…」
ユメに一言断ってからガンベクセン様と共に外へ。
…吹雪はいつの間にか止み、粉雪へと変わっていた
「さて何から話したものか…」
真っ白な髭を雪で更に白くしながら王者のマントをたなびかせるかつての王。遠景を見据えるその瞳は自分が見て、知っている機械のように無機質なものではない『人の瞳』をしていた
「…そうだな、私は努力の方向性を間違えていたのだ
息子、ガナサダイのことを妻に任せきりで、ただひたすらに為政に打ち込んだ
ガナサダイが成長し、王位を譲り渡してもよいと思える日が来るまで死に物狂いで国と民の命を守った
…それ以外のものに目をかける余裕などなかった
他国から侵攻を受ければ民間人を疎開させ、民が育った家に爆弾を仕掛けさせた
侵攻を事前に察知すれば先に仕掛けて敵の全てを挫いた
国と命を守るため、自国も他国も関係なく、国土と民の命以外の全てを踏み躙りながら玉座に座り続けた
…お前は言ったな、
『あなたには心というものがないのか』と
ああ、確かに無かったな。そんな曖昧なものを基準にせず、脅威が消えればそれでいいと私は本気で思っていた
──妻が死んだ時も、その思いは変わらなかった」
くたびれたオジサンキャラが実はメチャクチャ強いっていうのが好きな作者のルルザムートです、ハイ。
まだ中盤にも差し掛かってないですか明日投稿予定の次の話はレッドウィンター編を書くにあたって1番のお気に入りです
肝心のブルアカ要素があんまりありませんが…(←オイ)
それではまた明日…