ギュメイやゲルニックにこの空気は似合いませんが彼なら…むふふ
イワン・クパーラ編 第8話です、お楽しみください
「カジノに続いて今度はここに…というか寒くないんですかそれ」
斥候としてレッドウィンターを調査していたワカモは意外な生徒と出会っていた
一応矯正局にいた時から顔は知っていましたが…なぜここに?
「それは──…!失礼いたします!」
話の途中にも関わらず雪道をとんでもない速度で駆けていく彼女。もちろん追いかけようとするも雪が深すぎてまともに動けない
この雪の中を…どういう鍛え方してるんでしょう?
「…下手に追いかけるより報告したほうが良さそうですね」
▽▲▽▲▽
「いた…!ガンベクセンさん、いました!」
「やはりここにいたか、チェリノ」
「ぬぅ〜…誰だ?おいらの昼寝を邪魔するとは粛清だぞぉ…」
レッドウィンター図書館にて本を枕に昼寝をするチェリノを発見。
ううむ、相変わらず図太いというか危機感が無いというか…
「あ、ガンベクセンさん!よかった、チェリノ会長が真ん中に居座ってて…」
「すまぬなモミジ、チェリノがまた迷惑を掛けたようで…」
いつか埋め合わせはしよう、と彼女に断りチェリノを起こす
とにかく現会長やゴレオンに見つかる前に連れて帰らなければ
「心配したぞ、さぁ旧校舎に戻って明日に備えるんだ」
「あんな寒いところで眠れるもんか!おいらはストライキが始まるまでここにいるからな!」
「ワガママを言うでない、これまで牢屋の中で散々我慢できたではないか
あと1日だけ、辛抱してくれ」
「チェリノ会長、今もゴレオン将軍やマリナ委員長が会長を探しています。早く隠れないと…」
「うるさいうるさいうるさーい!我慢はイヤだ!おいらは動かないぞ!」
「あの…チェリノ会長、あなたが1番うるさいです、図書館では静かに…」
「すまぬモミジ、もう少しだけ待っててくれ」
本棚にしがみつくチェリノをトモエと2人がかりで引き剥がそうとするが全く動かない
この小さな身体のどこにこんな力が…?
「誰か手を貸してくれないか」
「お?いいぞ、何をすればいいんだ?」
「チェリノ会長を引き剥がすの、手伝ってください」
「おうまかせろ」ガシッ
「ぬぐぐぐ…!おいらは絶対にここで昼寝を…!」
「よっと」ヒョイ
「くわ!こ、こらガンベクセン!ゴレオンを連れてくるなんてズルいぞ!」
たまたま図書館に居合わせたゴレオンのおかげであっさりと引き離せた
彼のおかげで助かったな
「ほらよトモエ。…チェリノ様、あまりトモエやガンベクセン様を困らせたらダメですぜ?
オレはチェリノ様の命令があるからな!チェリノ様が借りてた本の返却が終わったらチェリノ様とガンベクセン様を探しに戻らねぇ、と…・・・あん?」
「・・・」「・・・」
「・・・」「・・・」
初めて図書館らしい静寂が訪れる中、それぞれ顔を見合わせる
こ、この状況は…
「あああ!!いたぞ、いたぞーっ!ゴレオン隊集まれ!反乱分子を率いる偽物を捕えろォ!!」
「あの!図書館では静かに「ですからそんな原始的な呼び方じゃ来ませんって!信号弾もらったじゃないですか!それ撃って呼んでください!」
伝令係の側近もいつの間にかゴレオンの隣にいた。
…思うのだがなぜ彼女が知らせに行かないのだろうか?
「ああ?これか!ホレ!」ぼんっ
「室内で撃ってどうするんすか!外でやって…もういいです、私が撃ちますから!」
「ぬあ、返せ!やっぱり手柄を横取りする気だな!?」
「んなもんいらねーって何度言えば…あー!信号弾、握り潰れてんじゃねーですか!」
「知るか!もっと頑丈にすればいいだろうが!」
「頼むからホントに静かにしてくれません…?」
ゴレオン、側近、モミジのコントのようなやり取りの中、私たちはチェリノを連れて図書館の外へ
「寿命が縮んだぞ…」
「早くギュメイ先生の元に戻りましょう」
「うう、おいらの昼寝スポットが…」
ゴゥン…
「! 伏せよ!」
直後図書館の入口が粉々に吹き飛び、私のよく知る鉄球が頭上を掠めた
「うをー!逃がさんぞ!」
「ギャー!?扉が!」
「アンタホントにムチャクチャやるよな!?」
伝令係と言い合いしながらドスドス歩いてくるゴレオン
アバカム、メラミ、マジックバリア…ただでさえ残り少ない魔力で3つも呪文を使ったせいで魔力残量は無い。自分ではゴレオンを止められぬ
「こらぁいい加減にしろゴレオン!雪に埋まって氷漬けになっていたのを助けたのは誰だと思ってる!」
「チェリノ様に決まっているだろう!そのチェリノ様が反乱分子を率いる偽物を倒せと仰られたんだよ!」
「よく見ろ!おいらが本物だ!だいいちそっちのおいらはヒゲも身長も違うではないか!」
「身長?・・・あ、確かに。」
「確かにって…アンタ今まで何を見てきたんだよ…?」
鉄球を手繰り寄せながらうーんうーんと唸るゴレオン
戦いの腕は確かなのだが彼は頭が少々…
「ぬー…よし!おい、チェリノ様に電話しろ!オレ様のは何故か粉々だからな!」
「はいはい…ホラ、繋がりましたよ」どーぞ
離反宣言でもするのかとその場にいた一同が彼に注目する
彼の離反はすなわち偽チェリノ…つまりマリナによる現体制の終わりを意味するからだ
「チェリノ様!今ちっこい方のチェリノ様が偽物はアンタだと言っているんだが…
ああ、身長が違うと…え?なるほど、そうですか!分かりました」
にぱー、と悩みや疑問が完全に解けた顔で電話を切るゴレオン
返ってきた答えは──
「ぶわっはっは!残念だったな偽チェリノ!オレ様を騙して従わせようとしたようだがそうはいかないぞ!」
「なにぃ!?」
「・・・ゴレオンさん?その、マリ──いえ電話の向こうのチェリノちゃんはなんと?」
「チェリノ様は身長が伸びたのは成長期だからだと仰っていた!それで目の前ちっこいのは成長期がくる前に真似をした偽物だと教えてくれたぞ!」
・・・彼の怪力と頭の悪さを甘く見ておった
「それじゃあまとめてフン捕まえて連れていくぜ!覚悟しな!!」
「2発目が来る…!トモエ、チェリノ!走れ!」
「ガンベクセンさん!」
「『バギ』!」
残り少ない魔力をかき集めて小さな竜巻をぶつける。ダメージなどないだろうがこれで手元が狂ってくれれば…
「うお…!ぬぬ、だったらこれでどうだぁ!」ヒョイ
「わっ、見ろ!ゴレオンのやつ雪上車を持ち上げてるぞ!」
「ぅおい、マジでやめろよアンタ!それ投げたらどうやって事務局に帰「オラァ!!」ブンッ
く、これは防げぬ──
「はぁっ!!」
手痛いダメージを覚悟した時、間に割って入った熊──いや生徒が飛んできた雪上車を殴り飛ばした!
ゴレオンに勝るとも劣らない体躯だ、間違いなくレッドウィンターの生徒ではない
ギュメイが連れてきた生徒か…?
「ん?あ、ああっ!アネゴ!!」
「なにぃ、お前は!?」
「お久しぶりですゴレオンさん。そしてロブさんも…元気そうで安心しましたわ」
この極寒の環境にも関わらず身につけているのは赤い腰巻きにサラシだけ
どうもゴレオンだけでなく彼の側近とも面識があるようだが…
「トモエ、熊だ!熊が出たぞ!」
「落ち着いてくださいチェリノ会長。…失礼ですがあなたは?」
「初めましてレッドウィンターの方々、栗浜家のアケミと申します
訳あって助太刀いたしますわ」
露出した肌に浮かばせた筋肉をゴキゴキと鳴らしながらゴレオンと対峙するアケミ
アケミとは確か七囚人の…なぜ彼女が私たちを助ける?
「おいおいどういうつもりだアケミ、カジノの時は協力してくれたじゃねーか、
なんで邪魔するんだ???」
「…あなたが鍛え上げたその力を暴力に変えて撒き散らし、レッドウィンターを支配しているとそちらにいるロブさんから聞きました
間違いありませんか?」
「? レッドウィンターの支配者はチェリノ様だぞ、オレ様はその右腕として武力を代行してるだけだ」
「つまり間違いないと、そういうわけですね
──分かりました」
怒りと失望が入り混じった表情、それがゴレオンに対する好意と期待が変化したものだと気付くのに時間はかからなかった
「同じ道を歩む者として、あなたの目を覚まさせます!勝負なさい、ゴレオン!!」
「何が何だかよく分からんがお前が向かってくるなら手加減できねーぞ!覚悟しやがれアケミ!!」
正統派で強い大人であるギュメイ、支配者の素質を持つ狡猾な野心家のゲルニック
真面目で張り詰めていることが多い2人とは対照的に、裏表なく良くも悪くも感情で動いて頼りになる喧しいヤツ…という方向でゴレオンを書いたことに中々満足している作者のルルザムートです、ハイ。
実を言うとカジノ編でアケミを出す予定は無く、ネル&アリスのコンビにゴレオン&偽チェリノが立ち塞がる予定でした
それによりアケミの初登場はここになる予定だったのですがそれだとあまりに唐突すぎると考え直し、カジノ編を経てレッドウィンターでアケミを出すことに。
ワカモ以上にレッドウィンターには関係のない生徒ではありますがゴレオンと彼女の絡みはどうしても書きたかったのでほぼ強行する形でこうなりました
それではまた明日…