イワン・クパーラ編 第11話です、お楽しみください
「………………」
旧校舎で一夜を明かし、いよいよ決戦の日がやってきた。
時刻はまだ6時になったばかりだが雪でいっぱいのグラウンドは所狭しと生徒達で埋め尽くされている
「聞け同志達よ!反乱軍大将、安守ミノリだ!
これよりレッドウィンター事務局へ総攻撃をかける!」
朝礼台に立つ彼女に全生徒の視線が集まっている
工務部、事務局、227号特別クラス、出版部、知識開放戦線、連邦捜査部シャーレ…数百人に膨れ上がった反乱軍を前にも安守ミノリは一切物怖しない
それどころかどこか嬉しそうに拡声器を掲げ、そして叫ぶ
「我々はこれまで幾度となく戦い、そして敗れてきた
果実の力を我が物とし、暴虐の限りを尽くすチェリノ会長とそれに従うゴレオン将軍に勝つことができなかったからだ
だが今は違う、志を共にする新たな同志が加わったからだ。──ギュメイ先生!栗浜アケミ!壇上へ!」
拡声器によって響き渡る声のまま、2人の人間が彼女の隣に並び立つ
…ギュメイ先生
「ミノリ、拡声器を。…連邦捜査部シャーレ顧問のギュメイだ、現会長の連河チェリノは詳細不明の強大な力を持っており生徒だけの力で解決するのは不可能とシャーレは判断し、部外者ではあるがこの反乱に参加させてもらう」…アケミ
「はい。…おはようございます皆様、既にご存知の方もいらっしゃるかと思われますが先に自己紹介をさせていただきますわ
わたくしは栗浜アケミ、元々レッドウィンターに来たのは舎弟の1人を助けるためではありましたが連河チェリノの片腕であるゴレオン将軍と決着を付けぬまま去るわけにも参りません
ギュメイ先生と同じく部外者ではありますが、此度はあなた方と共に戦わせていただくことをどうか許していただければ、と」
「──というわけだ、2人にはそれぞれチェリノ書記長とゴレオン将軍の相手をしてもらう
いいか、チェリノ書記長とゴレオン将軍はストライキ成功を阻む最大の障壁、それを彼らが抑えてくれるからといって我々の役目が潰えることはない!
むしろ責任重大だ、彼らが抑えている間に我々は奴の配下全てを捩じ伏せ一気に事務局を制圧、奪われた全てを取り戻すことにある
いくら権力を持っていようと資源も根城もなければ何もできはしないからな
さぁ同志達よ!闘争の心に火を付ける時が来た、これが最後の戦いだ!
これよりストライキを──いや」
クーデターを開始する!!!
………………やっぱり
『あわわ、なんだかどんどん大きなことになってます!ユメさんも…ユメさん?』
「ごめんねアロナちゃん、今はちょっと考え事させて」
『??? 分かりました…?』
間違いない、私は…今日の出来事を知っている
▽▲▽▲▽
「チェリノ会長!反乱軍どもが現れました!」
「えっ、もう!?・・・まだ7時前ではないか、非常識な奴らめ!ええい寝ている奴らを全員起こせ!こちらも部隊を展開しろ!」
熊の人形を丁寧に棚へ戻し、軽く身支度を整えてゴレオンの部屋へ
げぇ!おらん!あいつはどこに…
「あといるとすれば…ここか?ぬ!」
昨日医務室でそのまま寝たのではと思って来てみれば…!
「ぐごー、ぐごー…むへへ…なぁミカちゃん…ヒマなんだろぉ…レッドウィンターでお茶でも…」
「寝てる場合か!起きろゴレオンっ!」
「ぷぉギョッ!!?」
ヒャドで作った氷塊をゴレオンの顔面に叩き付ける
知らない奴が見ればやりすぎだと思うだろうがこれくらいしなければ眠ったゴレオンは起きないのだ
「ぐええ…クソ!誰だオレ様のデートを邪魔しやがる奴…あ、チェリノ様?」
「こんのバカ者!反乱軍が接近中だ、さっさと迎撃に出んか!」
「うわ!?スイマセン!」
転がるように駆けていくゴレオンを追い立て、自身も戦闘準備。
反乱軍…!安守ミノリ…!今日こそ全て終わらせてくれるわ!
▽▲▽▲▽
「ギュメイ先生と栗浜アケミを前に行かせろ!書記長の犬は私たちで抑え込め!2人に消耗させるな!あ、先生!?」
「『マヒャド斬り』!…流石にしっかり待ち構えられている、出し惜しみしている場合ではないぞ!」
反乱軍と共に事務局領内に攻め込んだはいいが偽チェリノ派の生徒が想定より多い…
数ではこちらが上回っているという話だったが次から次に道を阻んでくる偽チェリノ派の数はこちらと大差無いように見える
今こそユメに手伝って欲しかったが──
『ごめん先生…私、行けない』
「………」
事情は後で聞き出そう、今は果実を回収する!
「戦車が来るぞ!」
「ここは我が「下がってくださいギュメイ先生。…セイッ!!」
横を走るアケミが戦車にロケット弾を投げ付けて対処。
素手で…!?なるほど、確かに彼女ならゴレオンと渡り合えるか
「っ?ミノリ部長、奴ら退却していきます!」
「いや、これは違うぞ!」
「ああ違う、場所を空けているだけだ」
ゴゥン…
「『魔神斬り』!」
横薙ぎの鉄球を魔神斬りで斬り上げて軌道を逸らす。
…よし、周囲の生徒にも大きな被害を受けた場所は無い、ひとまず不意打ちは防いだぞ
「相変わらずだな、ゴレオン」
「ようモノマネ野郎!
だがお前を止めろとは言われてねぇ、というかお前だけ通せって言われてる!チェリノ様が直接ブッ飛ばしてくれるそうだ」
「なに…?」
「罠でしょうか?」
「権力者はここ1番で姑息なマネをしないぞ、あいつらはいつだって自分が世界の中心で最強だと思い込んでいるからな
1対1であなたに勝つ自信があるんだろう。どうする先生?」
ふ、決まっている
「大将までの道のりを素通りさせてくれるというのなら好都合だ。偽チェリノを倒して果実を奪還する
悪いがそれまでゴレオンの足止めを頼むぞ」
「ええ、もちろんです」
「話は纏まったか?そらさっさと通れ!」
素通りさせてくれるとは思わなかったがこれなら余力を残して戦える!
「行くぞ!!」
▽▲▽▲▽
「さてモノマネ野郎は行ったし…オレはオレの役割を果たさせてもらうぜ!」
「来るか…!アケミはゴレオン将軍の相手を。私は全体の指揮を取る!」
「ええ、任せてください」
再び回り始める鉄球、まるで渦のように周囲の空気を引き寄せながらゴレオンはにじり寄ってくる
「ロブ!他の生徒達も聞きなさい、これよりこの栗浜アケミがゴレオン将軍と一騎討ちをします。手出しは無用ですわ」
「アネゴ、大丈夫っすか?あいつは相当…」
「昨日とは違います、瞑想も呼吸も用意はできた…今度は負けません」
「それじゃ行くぜ──あ!やっぱり待て!ストップ、タンマ!」
ずこっ
いよいよ激戦が幕を開けようとしていた時『やっぱりナシ!』と鉄球を振り落としたゴレオンに敵も味方もずっこける
「しょ、将軍!少しはしっかりしてください!」
「仕方ねーだろ、今思い出したんだ!…おいストライキ女!お前も通れ!」
「っ!?」
「ミノリ部長も…?え、なんで?」
「あれ?チェリノ書記長、そんな命令出してたんですか?いったいなぜ?」
「知らん!チェリノ様の命令だ!」
「うーむ…」
「部長、行く必要はありません!それに部長が行ったら誰がみんなを率いるんですか?」
「──それなら私が指揮を取る」
!!
「梔子ユメ…?ストライキには参加しないと言っていたが…」
「するよ、ここは私が引き受けるからあなたはギュメイ先生のところに行って」
「待てよ!いくらシャーレ所属の生徒だからって部外者がこの人数を指揮なんて「できる。…信じて」
………
「よし、信じる!私もギュメイ先生の元へ行くぞ!残る者達は彼女の指揮で戦え!心配しなくとも戦いの指揮は私が保証する!
…同志達を頼んだぞ!」
「うん」
…ここまでは覚えてる。この先は、たしか──
ユメではなくゲルニックを連れてきたパターンのプロットを見直してちょっと反省してる作者のルルザムートです、ハイ。
31人の方に協力していただいたアンケートは接戦の末、ユメがレッドウィンター編に同行することとなりましたがもちろんゲルニックになった時のプロットも作ってはいたんです、で没になったとはいえそこで作った彼女の動向をレッドウィンター以降で使える時が来るんじゃないかとそれを見直していて思ったんですが…
いやもう、ゲルニックが主人公じゃん!!?
…となるくらい活躍させすぎた上にギュメイの活躍がスカスカになっていたので結果としてユメを同行させたのは正解でした
結局ギュメイの隣だと彼女も思い通りに動けなくなるはずなのでパートナーとしてあまり相性が良いとは言えないんですよね…それならそれで味は出るのですが。
それではまた明日…