イワン・クパーラ編 第21話です、お楽しみください
「はっ、はぁーっ…!っぐ!」
短剣を引き抜き、同時にその短剣で自身に火炎斬り。傷を焼いて強引に出血を止める
…流石に倒れそうだがそうも言っていられない
「『しんくう斬り』!」
劣勢のまま果敢に立ち向かうワカモに加勢する形で竜戦士を吹き飛ばす
「すまぬワカモ…少々遅れた…」
「っ!?ダメです!先生は休んで「我ら2人で戦わねばこの敵には勝てぬ!補佐を頼む…!」
「っ…分かりました」
「………」チラ
『グギャオオオーッ!!!』
「ぬあああーっ!アケミ急げ!」
「はーっ、はーっ…!ウリャアアッ!!」
アケミの攻撃自体は効いている、だが殴ったそばから傷が再生しているらしく決定打になっていない
やはり我が斬るしかない、どういった原理で再生しているのか未だ掴めぬがドラゴン斬りで首を落とせばあるいは──
「! ワカモ!」
「キャ…!?」
ばしん、と足払いを受けて転ぶワカモ。トドメに迫る短剣を咄嗟に斬り飛ばしながら割って入るが竜戦士を斬るまで届かない
「はっ…助かりましたあなた様…」
「っ…」
くそ、明らかに時間稼ぎをされている。アケミかゴレオンか、どちらかの体力が無くなってグレイナルが解放されれば勝つ確信があるのだろう
そしてその認識はおそらく正しい、2人が力尽きる前にグレイナルか竜戦士をなんとかせねば全滅する!
「──うん?」
ふと遠目に見えたのはグレイナルに向かって走っていく1人の生徒。
…ロブ?
▽▲▽▲▽
「はーっ…!はーっ…!く、いい加減諦めなさい…!」
もう何発殴ったか分からない、硬い竜の鱗を力任せに殴り続けたせいで両拳からは酷い出血が続いている
痛みは別にどうでもいいが体力の限界が近付いている。呼吸はとっくに切れているし瞑想する余裕などあるはずがない
『ギャギギギィッ…!』
「…………っ」
さっきまで悪態を吐きながらグレイナルを封じ込めていたゴレオンがその悪態すら言わなくなっている。彼ももう限界だ
「化物め…!本当に不死身ですか…!?」
だがやめることもできない、そうすればその瞬間さっきの雷が私かゴレオンさんに落ちる
あんな攻撃、2発と食らえない!
どうすれば──「おらぁ!これでも食らえ!」
!?
背後から聞こえたよく知る声、振り返る間も無く声の主はグレイナルに何かをかけた!
「ロブさん!?いったい何を…それにこの匂いは…?」
「かけた!…はいいがこの後どうするんだ!?なんにも変わらねーぞ!?」
「構わないから次の燃料を持ってきて!
…アケミさん、ゴレオンさん!あと少しだけ堪えて!」
そう叫ぶユメさんの方をなんとか見れば──避難したはずのレッドウィンターの生徒たちがバケツやポリタンクを手にこちらへ走ってくるのが見えた。いったい…?
「カワイイ顔して…無茶、言いやがるぜ…!だが女の頼みは断れねぇな…!あと少し、堪えてやるか、なぁアケミ!」
「! ゴレオンさん…ええ、やりましょう!」
▽▲▽▲▽
「携行缶、バケツ、ポリタンク、鍋でもヤカンでも液体が入るのならなんでもいいから持って来い!
私たち工務部は燃料を取り出すことだけに集中するんだ!」
「「「了解!!」」」
「足を止めるな!体力の無い者は複数人で運べ!マリナ隊は全員補佐に回るんだ!」
「戦車の集積は事務局員の仕事です!1つ残らずここへ集めてください!」
同時刻、グレイナルと相対する戦場から少し離れた場所にて飛び交う指示や足音。
今その場所では全レッドウィンター生徒達が1つの脅威を退けるために奔走していた。
──そしてレッドウィンターを救うため、今まさに覚悟を決めた生徒が1人…
「チェリノ会長」
「う、うるさいぞトモエ!分かっている!…うう、せっかく牢屋から出れたのに…」
とはいえ全てを出し尽くさなければあのドラゴンは倒せない。椅子は大事だが所詮は椅子、ゴレオンやみんなの方が大切だ!
「聞け、レッドウィンター生たち!あのドラゴンを退けた暁には…あ、暁には…くぅぅ…」
「チェリノちゃん!」
「分かっている!!──暁には!おいら、連河チェリノは事務局長を辞任する!次の事務局長はガンベクセンに託した!だから頑張れ!」
うおおおおお──っ!!!
瞬間、爆発する士気のまま高速で作業を進めていくレッドウィンター生徒たち
…トモエが進言した通りの展開にはなったが当のチェリノは──
「な、なにもそこまで喜ばなくたっていいじゃないか…おいらだって頑張ってたのに…」
「私はチェリノちゃんが頑張ってるのを知っていますよ。それに辞任したならまた立候補すればいいんです、ね?」
「うう、ともぇ…」
これまでのレッドウィンターを考えれば仕方なくはある。
そもそもチェリノによる暴政→クーデターにより失墜→チェリノが奪い返して再び局長へ…という流れが日常になっていたレッドウィンターにとってチェリノ本人の意思による辞任はまさに晴天の霹靂。
加えて次の事務局長は政治も人格も非のつけどころか無いガンベクセンだ
彼の為政を知る者で『なぜ大人が生徒会長に…』と疑問を投げる生徒はいない、だって彼がトップにいるだけで平和になるのだから
「全て人力で運ぶ余裕は無い!雪上車を使え!」
「出版部がソリを用意してくれた!スノーモービルに繋いで燃料を運ぶんだ!」
「次の戦車が来たぞ!道を空けろ!」
もうあの暴政に従わなくていいと喜ぶ9割と、もうここではデモもストライキもできないだろうと落胆する1割の生徒たち
──力を合わせた彼女達の行動で戦場にも変化が起き始める
「あ、あれ…?」
「っ?ノドカちゃんどうしたの?」
「ドラゴンの動きが…鈍くなってる…?」
タイトルを『総力戦』にしようかと思ったけどこの後まさにその総力戦が控えているので泣く泣く取りやめた作者のルルザムートです、ハイ。
さていよいよ決着の時が近づいてきました、少々グレイナルを強くしすぎたか…?とも思いましたが元々ガナンは人の力だけでグレイナルに対抗することはできず『目には目を』ということで同じ竜であるバルボロスをぶつけ、その上で敗れているのでこれくらいでいいかなと
それではまた明日…