でも戦いもそろそろ終わります、そしてレッドウィンター編も…
イワン・クパーラ編 第22話です、お楽しみください
「や…」
やった…!いくらドラゴンでも、いやドラゴンだからこそこれには耐えられない!
目に見えて動きが悪くなっていくグレイナルを見た瞬間、疑惑と期待が希望に変わった
これなら…!
「見ろ!ドラゴンの抵抗が弱くなってきたぞ!」
「気を緩めるな!完全に動かなくなるまでかけ続けるんだ!」
「だ、だがなんでだ?アネゴがあれだけ殴ってもピンピンしてた奴が燃料をかけただけで…」
「──そうか、そういうことか」
訳もわからぬまま勝利と希望を見出し始めた生徒たち。その中で唯一ガンベクセンだけはユメの思惑を理解した
「なんだ、オッサン何か知ってるのか?」
「気化熱だ」
「キカネツ?」
そう、その通り。普通の燃料をかけただけでは意味がないけどここはレッドウィンターだ
気温が常に氷点下を下回っているここでは普通の燃料なんてあっという間に凍って使えなくなってしまう
故に寒冷地仕様の燃料は普通の燃料と比べて圧倒的に気化しやすいんだ、氷点下でも簡単に気化する燃料なら液体から固体になってしまう心配はいらない
「お、俺馬鹿だからわからねーよオッサン!つまり燃料をかけると何がおこるんだ?」
「…液体が気体に変わる時、つまり気化する瞬間に周りの熱を奪う現象が起こる
君も覚えがないか?夏場、汗をかいたら少し体温が下がったり…打ち水をした周囲が涼しくなったり」
「…あ。」
アビドスで熱さを紛らわせるためにしていた打ち水のおかげで思いつけた作戦だ。外気で気化するかは賭けだったけど…
「光竜グレイナル…確かに手のつけようのない怪物だが生き物である以上体温が必要だ。炎を吐くことも考えれば普通の生き物より必要な体温は高いだろう
それに対し気化した端から次の燃料をひっきりなしにかけていれば例え不死身であろうと関係ない。アレの体温を奪う気化熱と氷点下を下回るレッドウィンターの環境があれば…!」
▽▲▽▲▽
「く…!?そういうことか!」
目に見えて弱り始めたグレイナルに竜戦士もここでようやく動揺を見せた
生徒達が何をしたのかは知らんがこの機を逃すわけにはいかん!
「妨害戦に切り替える!向こうの決着がつくまで我ら2人でこいつをここに留めるぞ!」
「! はいっ!」
離脱しようとする竜戦士を今度はこちらが猛烈に妨害。我の剣技とワカモの銃撃の波状攻撃でなんとしても足止めをする
「……!」グラッ
揺れる足元を強引に強張らせ、剣を振り続ける
あと、少し!
「あと少しだ…!」
▽▲▽▲▽
「────!」
肺に亀裂が入り、筋肉が切れ始めた。呼吸なんてとっくに切れている。
…だが彼女の正拳に衰えは無い
「…………っ!」
彼も同様だ、既に限界を超えた身体を酷使してグレイナルを抑え込んでいる
互いに認め合う相手の期待を裏切りたくない、2人を立ち上がらせてるのはただそれだけ。
だが現状は──
▽▲▽▲▽
「う、まだ動いてる…!早く次の燃料を持ってきて!」
「さっきのでもう出し尽くしました!今他にないか探してますが事務局員が誰も知らないとなると…」
もうグレイナルはかなり弱ってる、あとほんの一押しあれば止められそうなのにここまで来て…!
「ユメ」
「待ってガンベクセンさん、私がなんとかするから…なんとか、するから…」
「分かっている。要すればあのドラゴンを冷やせばいいのだろう」
「っ?」
牢獄の時と同じ気配…何か魔法を?
「トモエ、外気温は?」
「…氷点下18度です」
「充分だ、これなら暴風雨はすぐさま吹雪に変わるだろう。…あの2人には悪いがまとめてぶつけるぞ」
杖を片手に何かを呟くガンベクセン、そして
「残った魔力と気力を全てこの一撃に注ぎ込む、意識を保っている余裕は無いからそうなれば…悪いが後を頼む」
『ハリケーン』!!!
▽▲▽▲▽
『………!!!』
なんなんだ、こいつらは?
元よりある竜の力に加え、あの力による無限の再生能力。子供とはいえ竜戦士は特殊学園で訓練を積んだ戦士がここにいる。それに対しなぜここまで戦える?
ギュメイ将軍やゴレオン将軍はまだ理解できる、戦場で散々殺しに手を染めてきた彼らなら。
だがそんな経験の無い、訓練もしていないような子供如きがなぜ──
気化熱による体温低下、さらに全方位から叩きつけられる猛吹雪が竜の芯から凍り付かせていく
飛べない。炎も吐けない。末端部分から凍っていく身体をそれでもなんとかしようとドラゴンが身を捩って起き上がった先に──あの2人が立っていた
「あーくそ、いきなりひっでえ吹雪だ…アケミ、無事か?」
「正直、少し休みたいですわね。トレーニングも当分は延期になりそうです」
「ああ、流石のオレ様も今回ばかりは疲れた。だから最後にコイツをフッ飛ばして、昼寝でもしようと思ってな…付き合うか?」
「ええ、是非。──では」
最初に殴り付けたのはアケミだった、上顎と下顎を真横から叩き割るようなフックでグレイナルがよろめく
もちろんそれで終わらない、今度は反対側からゴレオンの裏拳が顔面を捉えた
示し合わせる時間は無かった、カジノでの共闘があったとはいえあの時は個別に戦っていたのだ。さして連携のレベルは高くない
…高くないはずだったが、自然と2人の呼吸はよく合った
「まだだ!まだ殴り足りねぇぞ!!」
「同意見です…!」
顎から首へ、首から胴へ、雪崩のような『ただのパンチ』をひたすら撃ち続ける2人。
ガンベクセンのハリケーンで猛吹雪となっていた戦場にも関わらず、2人の身体からは蒸発した汗が蒸気になって消えていく
「ブオオオオ…!!」「はああああ…!!」
それでも攻撃は一切緩まない。痛みも寒さも呼吸も忘れ、力の限り打ち続けた果てにグレイナルの身体が浮き上がり──
──ッ【爆烈拳】!!
──っ【爆烈拳】!!
鏡合わせのように揃った2人最後の一撃がグレイナルを吹き飛ばした
衝撃波が発生するほどのそれらを受けた竜の巨体は何もできずにきりもみ落下して──
「「────あ。」」
………飛ばしたのはオレ達だがフツーそこに落ちるかよ…
「アネゴ!ゴレオンさん!」
おっと良いところに。
「ようロブ、悪いがチェリノ様に2つ伝えてくれるか?ムセンキがカミナリでイカれて使えなくてな」
「? 1つはドラゴンのことだとして…もう1つは?」
「・・・『うっかり事務局ツブしちまいました』
…そうゴレオンが言ってたって伝えてくれ」
ゴレオンとアケミの連携描写はもう少し頑張りたかった作者のルルザムートです、ハイ。
やっぱり戦闘シーンって難しいね…文字だけで臨場感を出すのが苦手なワタクシ…
それはそれとしてレッドウィンター編もいよいよ書き切れそうです。
…あと今更ですが今章のテーマは『果実の引き起こした事件の解決』『ゴレオンとアケミの共闘』『竜戦士の存在』の3つです
なんだかんだ果実による事件はまだ起こってませんでしたからね…
それではまた明日…