イワン・クパーラ編 第24話です、お楽しみください
レッドウィンター旧校舎…特別クラスに割り当てられた生徒以外殆ど人の往来が無かった場所だが、今は仮事務局と呼ばれひっきりなしに生徒達が行き交っている
そして急遽新設された局長室では──
「事務局の復興は後回しで構わない、使える資材は全て旧校舎の増設と修繕に使いなさい」
「はっ!」
チェリノから任命される形でレッドウィンター事務局長の座についていたガンベクセン。だが椅子に座ってのんびりする余裕は無かった
バギムーチョにより壊滅したおひげ広場にグレイナルの墜落により完全崩壊した事務局、さらには竜戦士とグレイナルの処遇…
…いずれ生徒の誰かにこの席を返すつもりだが少なくとも今ではない、この復興の指揮は子供には少々重いだろう
「ガンベクセンさん、ギュメイ先生とゴレオンさんが竜戦士の尋問をするため牢を開けて欲しいと…」
「許可しない、部屋に戻らせるんだ
決定に納得が行かないなら私の元に来いと伝えなさい」
「はっ…」
ユメと同じく竜戦士の尋問に消極的だった彼ではあるがその思想はかけ離れていた
先に言ってしまえばガンベクセンはあの竜戦士に対して同情はしているが容赦はしていない。それでも尋問を取りやめさせた理由は…
………ただの生徒がグレイナルを操れるはずがない、今は大人しく捕まっているが彼女にはまだ見せていない力があるはず
武装解除はしているが…果実の力を得たマリナがヒャド系統の呪文を使えていたのなら竜戦士が魔法を使えたとしても不思議ではない
尋問するなら魔法防御の使える私だ、仮に彼らが牢屋を開けた瞬間ザキやメガンテを唱えられでもしたら最悪だ
「局長!工務部から追加の資材請求が来ています!」
「もうここに余裕はない。事務局から使える資材を回収させろ、完全に解体しても構わないと伝えるんだ」
…今はとにかく人が落ち着ける環境を整備することだ
竜戦士が単独で攻撃を仕掛けてきたとは到底思えない、必ず指示した『誰か』がいるはず
そしてその『誰か』にとってグレイナルは代えの効かない兵器だ。それが捕まっていると分かれば次に何をする?
──答えは
「が、ガンベクセンさん!緊急事態です!」
入れ替わりで入ってきた生徒の1人が顔を真っ青にして告げる
…来たか
「グレイナルが…!グレイナルが動き出しました!」
▽▲▽▲▽
「おいどうなってる!封じ込めたんじゃなかったのか!?」
「知らん!とにかく斬りに行く!行くぞゴレオン!」
捕虜尋問をなぜか拒否され、部屋に戻ろうとしていた我らの元へ駆け込んできた生徒から聞いた信じられない事実。
…相当数の生徒が監視と維持に当たっていたはずだ、今は1人でも多く救わねば──
とその時廊下に取り付けられたスピーカーの1つからよく知る声が。
『…館内放送。こちら事務局長のガンベクセンだ』
「ガンベクセン様も知ったみてーだな?」
「総攻撃の指示だろう、気にせず外に──」
『監視に当たっていた生徒は全員旧校舎まで下がりなさい、またグレイナルに対し一切の攻撃を禁じる。追撃も追跡も不要だ』
・・・
「──はぁ!?」
「………!?」
ガンベクセン様…?
▽▲▽▲▽
「どういうことですか局長!なぜ追わないんです!」
「いいんだ、放っておけ」
ちょうど事務局が見える部屋に移動、遠目だが見えるそこでは…さっきまで凍りついていたグレイナルが動き出している
「今一度徹底を、誰もあの場所に近付くな」
「で、ですからそれは何故なのかと…」
「………」
──見えないがやはりあそこに何かいる
グレイナルと竜戦士に攻撃を指示した者、あるいはそれに従う暗部のような者たちが。
目的はグレイナルの回収か、邪魔するものには容赦しないだろう。
グレイナルと竜戦士の敗北を知ってここに来た以上、精鋭が来ているはず。
どんな相手だろうとギュメイとゴレオンが負けるとは思えないがそれは彼らが万全ならの話だ。
…これ以上ここで戦うべきではない
「あっ!ゴレオンさんが突撃していきます!」
「止めろ!指示を聞かないようなら撃って構わん!あそこに近付けさせるな!」
今追いついたところでグレイナルを殺しきることはできん、方法はまるで浮かばないが…それはあちらに聞くとしよう
その後、駆けつけたギュメイによりゴレオンを静止。飛び去るグレイナルに踵を返したガンベクセンは予定を繰り上げて地下牢へと向かった
無論、尋問するためだ。敢えて緩くしていたグレイナル側の警護と違い、竜戦士を閉じ込めた地下牢の警備には一切手を抜いていない
誰も私が魔法で施錠した牢の鍵を開けることはできない、開ける方法はあの難解な鍵開けの呪文だけ。最後の鍵ですら通用しないだろう
ここまでは予想した通りの展開だった、想定より早く回収が来たとはいえ竜戦士の身柄はこちらにある。
グレイナルを逃したとしても竜戦士とその鎧を抑えていることには情報以外の益がある、そう思い危険を冒さずドラゴンを逃した…そのつもりだったが
「──バカな」
地下牢に降り立ったガンベクセンが見たのは鍵の開いた鉄格子、そして──もぬけの空となった牢獄だった
後少しのチキンレースに耐えれば休めることに安堵している作者のルルザムートです、ハイ。
やっぱりね、計画性はね、必要だよねってことで…
レッドウィンターでのグレイナルの描写はこれで終わりですが牢の中の竜戦士についてはまだ書くことがあるので出てきますよぉ
それではまた明日…