といってもレッドウィンター編のラストで書いた通りギュメイは殆ど出ません。
今章は彼とユメがレッドウィンターに行っている間、シャーレに残った鳥山アウルことゲルニックが何をしていたかの話になります
それでは総力戦編 第1話、お楽しみください!
・・・これ、アウルの視点から始めた方が良かったかな…
神鳥の雛
『おしごと!おしごと!いらいいらい!』
朝6時。甲高い声と羽音を事務所に響かせながら帰ってきた彼女を総出で出迎える
「でかしたわラーミア!…それで依頼は?」
『てがみ!てがみ!よんで、あるちゃんしゃちょー!』
ここのところ偏った依頼しか来ていないから今度こそは…そう思い、彼女が持ってきた手紙を読んでみる
「……………」
「社長、依頼は?」
「………粗大ゴミ廃棄のためにアニの力を借りたい、って書いてあるわね」
『ワフッ?』
今度こそとは思っていたがまたしてもアニ頼りの依頼だ、確かにカジノであれだけ派手に暴れれば彼の注目度も増すのは分かっていたが…
「…カヨコ、カジノの後で来た依頼はいくつ?」
「…これが9個目だね」
「そのうちアニが名指しで指名されてた仕事は?」
「・・・9個だね」
「「「「・・・」」」」
社員一同、嫌な沈黙が流れる
仕事が来ている事自体はいいのだが…
『くぅん…』
何か悪い事しちゃった?としょぼくれるアニを4人がかりで撫でまくって落ち着かせる
この子は何も悪くない、というか今のところ便利屋社員で誰よりも功績を上げている
むしろ謝らなくてはいけないのは社長である自分の方だ
「…このままここにいても仕方ないわね
ひとまずこの依頼を受けましょう、アニは大丈夫?」
『ウォンッ!』
家具を壊さないよう控えめに尻尾を振るアニ
…もっと広い事務所が必要ね
「ひとまずって…そのあとどうするつもり?」
「待っていてもこれ以上依頼は来ない、ならこっちから探しに行くまでよ」
いや正確に言えば来るだろうがこれ以上新人であるアニにおんぶに抱っこではアウトローどころではない、社長としていい加減に何かしなければ!
『おしごと?おしごといく?』
「ええ行くわ、この手紙を出してくれた人のところに案内してくれる?」
『おっけーなのよ!まかせて、まかせて!』
ピュピュイと自慢げに鳴くラーミアを肩に乗せ、社員たちを率い、アニの頭を撫でて仕事に向かう
まずは目の前の仕事に取り掛かりましょう!
▽▲▽▲▽
「つ、つかれた…」
トリニティの外れにあるゴミ集積場を背にそれぞれ伸びをしながら凝った身体をほぐす
…アニのパワーなら粗大ゴミの代車を片付けるなど容易い。
だが彼が働いているところをただ見ているだけなんてできるわけもなく、アニが往復して済ませるはずだったもう1台の代車を4人がかりで移動させた
本来重機が必要な重量だ、アニは運び終わっ後も涼しい顔をしていたが彼女たちはそうはいかない
『あるちゃんしゃちょーのおばかさん、アニにぜんぶまかせればつかれなかったのに。』
「今アル様に馬鹿って言いました…?」がしっ
『ギャピッ!?ぎゅえー!どーぶつぎゃくたい!ぎゃくたいよぉー!あるちゃんなんとかしてー!』
「やめなさいハルカ、ここだけを見ればラーミアの言うことも正しいわ」
虚ろな目で怒るハルカからラーミアを救出、一応フォローを入れておく
『ケピ…ウンウン、でしょでしょ?』
「でもね、結果が全てじゃないの。確かにこの依頼1つで考えればそれで良かったかもしれないけど…いえ、やっぱりダメ。アニ1人にやらせるなんてダメよ」
『エ?なんで?ねーなんでダメなの?』
「なんででもよ、アウトローじゃないわ」
『いーじゃんべつに、そもそもあるちゃんしゃちょーってアウトローにむいてな むんず
困るアルに対し、懲りずに喋り続けるラーミア
とうとう業を煮やした社員1人が喚き続ける小鳥をフン捕まえて──
「──そろそろ黙らないと焼き鳥にするよ」
『ピエ、かよこ…!?それにむつきも、おこってる?』
「ん?別に怒ってないよ?ただ…無性に焼き鳥が食べたくなってきただけだしー?」
『キョ…!?』
ハルカやカヨコに続き、ムツキまでラーミアに詰め寄っている。
この甲高い声で喋り続ける彼女が苦手らしいのだがどうもそれだけが理由ではないような…
『がう…!?ぎゃうぎゃう!』
「何よアニ──って!2人ともやめなさい!?」
それまでなんだかんだ未遂で終わっていたからか舐め切った態度をしていたラーミアへ(何故か)バーナーを持ってにじり寄っていくムツキを慌てて制止。
『1回焼き鳥にすれば素直になるんじゃない?』と真顔で言い放つカヨコとムツキ、そしてそれに乗り気なハルカをなんとか宥めて一旦別れることに。
無論、ラーミアを守るためである
▽▲▽▲▽
『うう、みんなヒドい…』
「確かに燃やそうとするのはやり過ぎだけど…」
でもあの子たちだって理由なくここまでやるわけがない、さっきは最後まで聞き取れなかったけど何か気に触る事をラーミアが言ったのかしら…?
「──あ。」
肩でさめざめ泣くラーミアを撫でながらふと気付いた
ここってトリニティの中枢じゃない!み、道を間違えたのだわ!?
幸い表通りに出る10秒前に気付いたから良かったものの、今も割と道ゆく生徒たちに見られている!
「あ、あわわ…」
『しゃちょーおちついて、トリニティってオカネしかないバカばっかだからどーどーとしてればわからないよ、バカばっかだから。』
「こ、こら!そんな汚い言葉どこで覚えてきたのよ!禁止!禁止よ!」ごすっ
『ぷえっ』
「ヒソヒソ…ねぇあれってゲヘナ生よね…?」
「ヒソヒソ…しかも鳥と喋ってるわ…」
「・・・あの小鳥本当に喋ってない?」
ま、まずい…ものすごく目立っちゃってる!早く自治区の外に──
「どこだそのゲヘナ生徒は?」
「こっちです委員長!」
のてのて走るトリニティの治安維持組織、正義実現委員会の生徒。その後ろから走ってくるもう1人の生徒を見た1人と1羽は──絶句した
分かる、分かるわ。会った事ないけど…でも多分あの人はゲヘナ風紀委員長と同じ──
あれと戦うのだけはダメだ、というか見た目からしてヒナ委員長より恐ろしい!
『わ、わ!あるちゃん、にげよう!ワタシまだたべられたくない!』
「に、逃げなさい…アナタ飛べるでしょ!?アナタだけでも…」
『しゃちょーおいてったらワタシがかよこたちにころされる!』
「そんな殺すなんて大袈裟な…」
しどろもどろしているうちにその『空崎ヒナに似た恐ろしさの生徒』が目の前に来て──
「確かにゲヘナ生だな。しかしこの顔どこかで…?
まあいい、特に問題を起こしているという話は来てないが流石にこうも堂々とトリニティ自治区を歩かれてはこちらも見過ごせん
事情聴取くらいはさせてもらうぞ」
血走った目に落ち着いた口調というアンバランスさを前に理解できない恐怖が頭を包む、更には…
『ああ…!きっとワタシたちをたべる気よ!
ワタシたちそろってヤキトリにする気よ…!』
無駄に恐怖を煽ってくるラーミアのせいで目の前の生徒が自分を焼き鳥にするという謎の脅迫概念が思考停止に拍車をかけてしまう
あわや連行され始めたその時、救いの手は差し伸べられた
…
「おや、出迎えご苦労様です」
「『ふぇ?』」
!! あの人ってたしかアビドスにいた…
「鳥山アウル」
「睨まないでくださいツルギさん、彼女はワタクシが呼びました」
「…? そんな依頼知らな バシン! いったぁ!?こらラーミ『しゃちょーだまって!』
あの小さな羽のどこにそんなパワーがあるのか問いただしたくなるほど強烈に側頭部を引っ叩かれた
ラーミア、アナタ意外と力持ちよね…?
「………私たち正義実現委員会は何も聞いていないぞ」
「それはそうでしょう?言ってないですし。
そもワタクシはナギサ様の部下です、アナタに報告する義務は無い。」
・・・気のせいかしら?あの怖い人、アウルさんが来てからもっと怖くなったような…
「アウルさん、彼女が例のゲヘナ生と…?」
「はい。便利屋68…その社長です。ゲヘナ生ではありますが敵にはなり得ません」
「…根拠は?」
「お忘れですかナギサ様、便利屋はゲヘナからも追われる身ですよ。
それに彼女が靡くのは人ではなく金なので。」
「なるほど」
それからアウルさんが2人に一言二言話したかと思うと、あの怖い生徒がナギサと呼ばれた生徒を連れ、足早に立ち去っていった
その時まるで蜘蛛の子を散らすようにトリニティ生達が散っていったのを見るにやはり怖い人なのだろう
「さてと、アルさん。そして──」
『ピョ?』
? ラーミアを見てる…?
「──ま、ここで話すことではないですね。ひとまず自治区の外へ出ましょうか」
自分が神鳥の雛だと知らず、善悪の区別を知らずに育ったらどうなるのかと考えた結果こんなクソガキ神鳥の雛が出来上がってしまったことに自分でも動揺している作者のルルザムートです、ハイ。
大変お待たせしましたが今回はしっかり書き切って更新再開したので足取りは軽いです
そして今章は…パヴァーヌ編ラストからちょくちょく存在感を出していた例の兵器を起動させますのでお楽しみに…