オグリの幼馴染が記憶を無くしてチョコレートの怪物になって化け物と戦ってた話 作:かな餅
現在、最も警戒されているグラニュートの一種が”ハイエナ型”である。
この個体は、俊敏な動きと鋭利な爪を武器とし、短時間での接近・撹乱・切り裂きを得意とする戦闘スタイルを持つ。
被害報告では、すでに人間界での負傷・死亡者数は90名を超えており、対グラニュート戦闘に長けたはずの“グラニュートハンター”でさえも、交戦によって5名が命を落としている。
特筆すべきは、酸賀研造を一時的に戦線から退かせるに至ったという点だ。
これは、ハンター側がその危険性を認め、後退を余儀なくされた極めて稀なケースであり、本個体の戦闘力が従来のグラニュートとは一線を画すことを示している。
現状、本部からの指示は明確である。
[発見時、交戦は禁止。即座に離脱し、出現場所を本部に通達すること]
その場の正義感や判断での単独行動は、死を招く。
ハイエナ型は、"狩る者を狩る"危険種として、現時点での最重要警戒対象とされている。
資料通り、俊敏性に特化したタイプ……。
だが、狭い路地に追い込んだのは正解だった。
あのグラニュートは過去に同期を5人殺してる。
直接の犠牲者数では、現存する個体の中でも最悪だ。
酸賀ですら、不調だったとはいえ一時的に戦線を退かされている。
それだけ、この個体が持つスペックは異常。
その分今ここで仕留められれば、奴らの人攫い計画に大打撃を与えられる。
中核級のグラニュートを落とせれば、敵の“狩りの流れ”を断てる。
……問題は、それが“できれば”の話だ。
〖勝てるかどうかは、まず考えない〗
本来なら、あのグラニュートに対処するのは酸賀、自治区の責任者が相手するはずだった。
確かに、俺もここ2年で数多くのグラニュートを討伐してきた。
だが、酸賀に並ぶ実力なんて持っていない。
そしてその酸賀ですら一時退かされた相手。
つまり今、俺が対峙しているのは、自分よりも確実に格上の“猛者”だ。
本来なら、姿を見かけた時点で即座に撤退すべき相手だ。
無理に相手をする意味はない。
〖
チョコゾウの反応が示す通り、グラニュートの目的はあくまで”人攫い”。
長期戦は本来の任務の妨げになるため、基本的には自ら戦闘を引き延ばすことはしない。
こちらがしぶとく粘れば、例え仕留め損ねたとしても問題はないはずだ。
奴は“無理に一人を捕らえるよりも”、失敗を避けて引く可能性が高い。
……もちろん、それが通じるのは、相手が“賢ければ”の話だが。
『お前に構ってる暇はない……あと1人、あと1人で俺はッ俺は……ただ。』
〖動きが鈍った……!〗
その一瞬を、見逃す理由がない。
踏み込みと同時に、肩から突っ込むようにグラニュートの身体を壁際へと弾き飛ばした。
鈍った動きのまま奴は反応しきれず、濡れた壁面に背中をぶつけて軋むような音を上げる。
何で動きが鈍ったのかは知らんが、好機でしかない。
全身を押しつけるようにして体重を、馬力に差があっても絶対に逃がさない。
膂力で劣るのは分かっている、それでも“止まっている間”だけなら勝機はある。
『ッ……あと、1人だけ……1人だけで良いんだよッ!!!』〖……黙れ〗
引き金を絞る、淡々とやれ、迷いなく撃て。
一発ごとに命を削るつもりで、何度も、何度も撃ち続けろ。
こいつは人の形に化ける化け物、ただの化け物……。
善意を喰らい、仲間を殺して、酸賀をも血で染めた存在。
何も躊躇――。
『弟が、家族が待ってるッ』〖……嘘を、つくな。〗
一瞬、呼吸が、遅れた。
喉の奥がひゅっと締まって、指にかけた力が僅かに緩んだ。
何故か、その“言葉”だけが、頭の奥に引っかかって離れない。
だが――動きが硬直した瞬間に押しのけられた。人の言葉を騙る化け物の癖に……。
まだ奴の足がもたついてる、だったら……今ここで終わらせる。
――今出せる最大出力――
――高出力、高密度、高威力――
〔チョワッ!!!〕〖ここでくたばれッ……〗
――CHOCO-DON!!――
〔ちょろぉ……〕〖……お疲れ、チョコゾウ』
チョコゾウが力を振り絞って生成したのは、両腕で抱えれないほどの巨大なチョコの球体。
力任せに、それをグラニュートの背へと叩きつける。
ただそれだけの、単純で荒々しい一撃。
見た目こそ滑稽だが、直撃すれば確実に一体を仕留められる威力がある。
あれだけ至近距離で喰らったのなら、さすがの奴でも無事では済まないはずだ……。
本当なら、今すぐ追撃に移りたい。
だが、あの一発でチョコゾウは完全に力を使い果たしてしまった。
……いや、正確には、全滅に近い。
となれば、今できる最善は、一度戻ってゴチゾウの再生成に移ることだ。
その前に、確認すべきことがある。
『……お前、まだ居たのか。足でも悪いのか?』「いや……大丈夫。その……ありがとう」
『……帰る前に一回うちに寄れ、色々と話すことがある』「門限が……」
『じゃあ最初から帰っておけよ……』
オグリを連れて店に戻った。
近くにまだグラニュート潜んでいたら助けた意味もないから仕方ない。
それに…… 目撃してしまったんだからな。
「……その、何を話すんだ?」『……お前の今後に関わる重要なことだ』
「わ、私は灰色の怪物とか言われてるが人は襲わないぞ……?!」『何言ってんだ……』
グラニュートの情報は、ごく一部の人間しか知らない。
……というか、そもそもほとんどの人間がその存在すら知らない。
軍も政府も、それを“噂”としか扱っていない。
理由は単純……この戦いは、"十年以上前に終わったもの"だとされているからだ。
だが実際には、奴らは今奴等はのさばっている
そして、最近になって再び人間を攫いはじめた。
闇市で流通する“闇菓子”……あれのスパイスにされるために。
仮に、グラニュートの存在が公になれば――。
当然、世界は対策に乗り出す。軍備が動き、政治が動く。
だがそれは同時に、グラニュートとの全面戦争の火種にもなる。
だからこそ、そうなる前に片をつける必要がある。
そう考えたひとりの男が、裏で組織を立ち上げた。
政府公認ではない。立場としては、秘密結社に近い。
正義でもなく、ただ“未然に戦争を防ぐ”ことだけを目的とした組織だ。
『と言うのがお偉いさん向けに語る決まり文句だ』「決まり文句」
『実際は酸賀の趣味が世の中の役に立つからやってるだけで自警団と何ら変わらん』
決まり文句ではあるが本音でもある、酸賀の償いでもあるらしい。
俺は俺で、酸賀について行ってるだけで他に理由なんて無い。
「……何故それを私に教えるんだ?」『色々あるが1番は俺への執着を辞めさせるためだ』
化け物に襲われても逃げなかったのは少し焦った。
理由としてはこいつの過去にあるんだろうがまた同じ事があったら良くないからな。
『見てた通り俺は普通の人間じゃ無い、それで俺自身がただの人間でも無い』
「……君も
ゴチゾウは俺の……眷属……うーん、まあ。
『俺の……おれぇの……?、まあ……俺を経由して生まれるお菓子の妖精……?、だ。』
「自分でもよくわかってないのか……」『うるせえ』
とにかくそれを生み出せる俺は無論ただの人間ではなく……。
『半分人間、半分グラニュートの存在……つまり、俺はお前とは全くの他人ってことだ』
「……そうか……そうか?……いや。」『何で納得しねえんだよ』
「いや、君と話せば話すほど……こう、何だろうか……そうだ、左耳の裏にホクロはあるか?」
『……何でホクロ?、見た事ねえし……』「いや、めくると……うん、ある」
『……嘘だな』「嘘じゃ無い」『いーや、こじつけだ。』「なら鏡で見てみれば良いじゃないか」
『まったく……んな訳、あるわ。』「ほら言った通りだろう」
いや嘘だろこいつ。
「他にもまだあるぞ……あの子はよく夏でもお腹に腹巻きをしてヘソには湿布が貼ってあった。」
『いる訳ねぇだろそんな奴(貼ってる)』
面倒な事になったな……こいつ、本当に過去に会ったことあるのか。
「……あの日からもう会えないと思ってた、もう……君には。」
『もう帰れよ、外暗いだろ。』「……また来ても、良いかな?」
『次は仕事持って来い』
……ゴチゾウについて行かせれば危険は避けられるだろ。
「ちょっとちょっとぉ……絆斗君だめじゃなーい……女の子1人で帰らせるなんてさぁ?」
『用心棒の仕事は受けてない』「もう……そんな事だろうと思って彼女には迎えを用意したよ。」
酸賀はこういうところがある。
「それで?、オグリちゃんとはどうだった?。幼馴染……だったんじゃなかったっけ?」
『何も分からん。あいつの虚言だとも思ったけど、そうじゃなさそうだし……何がなんだか』
チョコをほう張ってゴチゾウは……出ない、これで5枚目か。
「まだ調子は戻ってないみたいだね、手はどうしたの?」
『へました』「具体的に」『いつものやつをやった』
俺はいつも、わざとグラニュートに捕まる。
至近距離で叩き込むための、危険な癖だ。
討伐が前提の任務じゃ、悠長に構えていれば逃げられる。
だからこそ、自分なりに編み出した“最も確実な方法”だった。
「そ、相手は?」『最近優先度が上がった奴だよ、酸賀がへまして負けた奴な』
「ああ~……あいつねぇ、絆斗君が負ける……?、もしかしてオグリちゃん庇っちゃった?」
『庇ったというか、助けられそうになったというか?、まあ、巻き込めなかったから仕方なく』
「……まずは、手当しよっか。」
酸賀と出会ったのは、俺が10歳の時だった。
……いや、”出会った”という表現が正しいのかも分からない。
当時の俺には、それ以前の記憶が一切なかった。
名前も、言葉も、歩き方すらも。まるで“人間の形をした空っぽの器”だった。
酸賀に保護された時、俺は誰のことも思い出せなかったし、自分のことすら説明できなかった。
その時点での判断では、“事故”か“遺棄”どちらにせよ、捨てられた存在だったんだろう。
酸賀は、そんな俺を”拾った”、”調べた”、”育てた”。
義務感か、好奇心か、それとも償いか……理由は本人すら明かさない。
はっきりしているのは、当時は俺が"使い道のある存在だったから"生かされた、ということだ。
酸賀曰く、俺は吸収力だけは異常に高かった。
文字も、会話も、知識も、与えられたものは全て覚えた。
でも、俺にはそれを”どう使えばいいか”が分からなかった。
誰かと関わる意味も、感情の揺れも、喜びも悲しみも、何も分からなかった。
酸賀の手を借りて、人間らしい”ふるまい”ができるようになるまでに、3年かかった。
3年経っても、人を“人”だと見れるようになっただけだった。
だから酸賀は、今でも俺のことを”育った”とは言わない。
ただ、”機能するようになった”と言う、今となってはただの冗談だが。
それが、俺の全部だ。
10歳までの俺は“いない”。
そして、10歳以降の俺も“誰か”ではなかった。
俺は、オグリが言ってる”俺”を知らない。
誰なのか分からないし、興味を持とうとしても持てない。
「絆斗君、もし自分を何もかも知れるチャンスがあるって言われたらどうする?」
『それは……あれか?、ゴチゾウが出ない理由とかに関係してるのか?』
「ゴチゾウが出ないのは恐らく君の精神的な面によるものであり、そしてやり方も問題である。」
……別に興味ないことを調べても仕方ないし、知って役に立つならそりゃいいけど……。
「正直、これ以上危ない真似はして欲しくないって思ってるよ。利用してきてなんだけど、親代わりやってきた身としてはこう見えて焦ったりもするんだよ?、帰ってきたら手がもげてたりとか」
『……やりたいって言った時、鍛えたのは酸賀だし、肯定もしただろ』
「だからって、自分の子が傷つくのは肯定できないし。俺もそろそろ前線に戻らないとだからさ」
『……?』
「君がゴチゾウを出せる条件、最近分かってきたんだ」
グラニュートと人間のハーフは例がなくてデータを持ってるのはこの世に酸賀だけ。
普通に育てる分には飯を食わせて寝床を用意する、そこはつまり人間と変わらない。
俺達が悩んでいるのは人間にはない未知の特性、それがゴチゾウの出し方。
「君が感情がないと思いきや?、怒ったり悲しんだり驚いたりはしてその反面、嬉しい・面白いといったポジティブな感情が表に出にくい。ただ感情を”受け取る”ことに関しては……一味違う?」
いつもはチョコを食べまくってチョコゾウを量産するのがいつものやり方だった。
日によってばらつきはあるけど30枚食えばとりあえず……大体5体は出てくる。
このやり方は恐らく強引な方法というのは自分でもうすうすわかってる。
「例えば……ほらこのチョコ食べてみて」
渡されたのは、小さな星の形をしたチョコレートだった。
指先にほんのりと温もりが移るくらいにはあったかくて、優しい体温を感じる。
歯を立てると#ポリッ#と軽やかな音を立てて砕け、中からふわりとミルクの香りが広がった。
舌の上にのせてゆっくり転がすと、溶けていくたびにじんわりとした甘さが染み込んでくる。
甘すぎないのに、確かに甘い。どこか懐かしくて、ぬくもりのある味。
甘さを感じにくいはずの俺ですら、思わず”美味い”と感じてしまうほどだった。
美味い……?、そっか、お菓子は……当たり前だけどおいしく食べる物だ。
胃に詰め込むものじゃなくて……味わうものだから、美味しいって思うのは当たり前。
だけどどこのチョコだこれは……高いやつでもお店で売ってる市販品でも――。
「それは俺が作ったチョコ。どう?、絆斗君が美味しく食べられるように作ったんだ」
〔ちょわ~っ〕〔ちょわわ?!〕〔ちょうわ!〕『……安もん』「ゴチゾウ出てるよ」
【仮面ライダーヴァレン(酸賀絆斗):チョコドンフォーム】
グラニュート討伐のために前線へと駆り出される、いわばグラニュートハンター。
その中でも”チョコ系統”として運用される兵器は総称して“ヴァレンシステム”と呼ばれている。
このシステムの根幹にいるのが、酸賀絆斗であり彼が生み出す“チョコ系のゴチゾウ”。
擬似的な生命体であり、仮面ライダーの力の源ともなる存在からエネルギーを抽出し、変身する。
戦闘スペックは、かつて確認された他の仮面ライダーたちと比べれば、決して高いとは言えない。
むしろ“最弱”と評されることもあるが、それでも対グラニュート戦闘において最低限の性能を保持しており、持ち主の適性によって能力が変動するため、一定の実用性は認められている。
本来であれば、このヴァレンシステムを量産し、仮面ライダーの数を増やすことが理想とされているが、肝心の“ゴチゾウ”そのものの人工生成には多くの技術的課題が残されており、現在もなお酸賀絆斗個人の創出能力に依存しているのが実情である。
肝心の担い手が足りない、現状ではヴァレンシステム最大の課題である。
酸賀絆斗はこのシステムとの適合率が高く、倍以上のスペックでを引き出せることが確認された。
――スペック
身長:185.4cm
体重:74.5kg
パンチ力:1.2t
キック力:1.8t
ジャンプ力:6.0m(一跳び)
走力 6.0秒(100m)