オグリの幼馴染が記憶を無くしてチョコレートの怪物になって化け物と戦ってた話 作:かな餅
シュワシュワのソーダ味グミから生まれた、拳のゴチゾウ。
小さい身体に見合わぬ腕っぷし。ムニムニなのに破壊力はピカイチ。
正面からぶつかっていくタイプで、頭より先に手が出る。
お菓子棚を破壊して怒られた記録あり。
”ダートグミ先輩のように走れなくても、自分の道は自分で切り開く”がモットー。
ホッピングミとは同期でよく一緒に跳ねている。
たまにテンションが上がりすぎて天井に穴を開けたことがある。
口癖は”パンチは言葉よりわかりやすい”。
身体はムニムニ、拳はカチカチ。くっついて寝ると腕だけ硬くて少し痛い。
ソーダ味の他にも、オレンジ味の変異種が確認されており、そっちはキックが得意らしい。
……電車に揺られて数時間。1人で電車に乗るなんて、いったい何年ぶりだろうか。
たしか、あれはまだ小学校の頃だった。冒険がしたくて、理由もなく家を飛び出して。
電車に乗った。小さなリュックにお菓子と水筒だけ詰めて。当然のように家では大騒ぎ。
駅員に保護されていた俺のところに、母さんが全速力で駆けつけてきた。
息を切らせて、顔ぐしゃぐしゃにして、それでも抱きしめてくれた。
そのあと人生で一番叱られた。叩かれたわけじゃない。
ただ、母さんの声が震えていたのを覚えている。
その夜、僕は母さんと泣き疲れて眠った。布団の中、母さんの手を握ったまま、何も考えずに。
……思い出せなかったことが、少しずつ戻ってきてる。
駅を降りてすぐのタバコ屋。寄り道すると、いつも小さなお菓子をくれた。
もらったお菓子を持って、あの穏やかなウマ娘のお姉さんと並んで食べて――。
そういえば、オグリの頬を触るのが日課だった。
ぷにっとしてて、気持ちよくて、毎日の楽しみだった。
この町には、あの頃の暮らしが詰まってる。歩くたびに、記憶が足元から湧き上がるようだ。
そして、そんな毎日の始まりと終わりはいつも――この場所だった。家に。
「ただいま、母さん。僕さ……何年ぶりだろう……8年?いや、もうそんなに経つんだっけ」
本当はずっと帰りたかった。
けど……生きてるって知られたらいけないから、帰れなかった。ただそれだけ。
誰にも知られずに生きろって、父さんがそう言ったんだ。だから、ずっと……ずっと隠れてた。
自分が誰だったかも、何者だったかも、全部嘘で塗りつぶして。
人間になろうとして、誰にも迷惑かけないで消えてやろうとして……。
「ねぇ、お母さん。どうして僕を産んだの?……どうして、こんなに苦しい人生を選んだの?」
家が燃えて、黒くなった壁も、崩れた屋根もそのままだ。
この広すぎる家も、誰もいないのに残ってる。
――こーら、寝坊助さん?おきなさーい……オグリちゃん来てるわよ?――
ほんの些細な、何でもない朝だったはずなのに。
僕は、あの日から“普通の幸せ”に触れることすら、許されなくなった。
「……ごめん、母さんっ……ごめん……ごめんなさい」
――もう~……雨の日に散歩だなんて……尻尾が濡れちゃうわ……――
その優しい声も、もう二度と届かない。雨の日は、いつも母さんが心配してくれていたのに。
「……
――なあ、翔馬……実はさ。1人……息子を迎え入れようって嫁と話してるんだ――
何も出来ないくせに、攫われた子を助けようと……いうことを何も聞かずに――。
バケモノを追いかけて、そのせいで拾ってくれた恩人まで、僕を守って死んでしまった。
「僕なんかと会わなかったら……が、あいつを追いかけなかったら……母さんの傍で死んでいればッ……」
――記者なりたいんだっけ?ウマ娘を取材する……うちに使ってないカメラとかあるから……――
前の日、ふたりで“家族”の話をしたばかりだったのに。
将来について、僕の夢を聞いてくれたばかりだったのに。
どうして僕だけが、こうして生きているんだろう。誰も傷つけたくなかった。
ただ、そばにいたかっただけなのに――。
何度も頭の中で叫びがこだまする。そのたび、目の前の黒く焦げた壁を拳で叩きつける。
何も感じなくなるまで、皮膚が破れて、拳から血がにじんでも、やめられなかった。
「……ッーーはあ……はあ……あの日死んでおけば……存在しなければッ……!」
ごつごつとした瓦礫の感触。血が流れても骨が軋んでも、ただ何度も何度も殴るしかなかった。
悔しさと怒りと後悔がごちゃごちゃになって、どこにもぶつけようのない自分を壊したかった。
僕が生きているだけで、何人もの人が消えた。
僕が復讐に捕らわれたせいで、守れたはずの日常も、母さんも、親父さんも……もう戻らない。
「……ああッ、うぅ……ごめん――ごめんなさい……」
壊れた壁の向こうに、過去の自分が見える気がした。泣きじゃくる子供の頃の僕。
どれだけ殴っても、どれだけ血が流れても、後悔だけは消えてくれなかった。
それでも、殴るしかなかった。拳が痛いのか、心が痛いのかも、もうわからない。
「もう、ころしてくれよ……
拳の感触がなくなって次は自分のため立てられた小さな墓石を殴る。
何度も、何度も、なんども、なんども、なんども。なんども。なんども。なんども。
拳が握れなくなったら、次は頭を打ち付ける、墓石と頭が割れて血が流れる。
「――ね……はやく――早くしね……さっさと死んじま――ぇ……?」
「……もう、やめて。」
白い髪……葦毛……?誰だっけ――おぐり……じゃない。
「……しょうま、君。だよね?……えっと、おかえりって言ったらいいのかな?」
……オグリの、母親?……なんでここに?――なんで僕のことが分かるの?……。
「……あの頃の面影が残ったまま、こんなに大きくなったのねぇ……」「……」
「こんな雨の中……傘も持たずに来たの?」「……はい。」「うーん、風ひいちゃうだろうし……」
――オグリの実家
「ごめんね、狭い場所で。えっと……そうだ、ロールケーキ食べる?好きだったよね?」
「覚えててくれてたんですね……その、頂きます」
オグリの母親。
名前までは知らないが、墓を定期的に手入れしてくれていたのは、この人だったらしい。
言われてみれば、いつも花が新しくて、線香の香りもほんのり残っていた。
今は血で汚れた墓があれほどまでに綺麗に保たれていたのも、きっとこの人のおかげだ。
出されたロールケーキ……好物、だったかな?あんまり覚えてないや。
スプーンですくって一口、口に運ぶ、ふわふわとした食感。生クリームの舌触りも確かにある。
でも……味がしない。甘いはずのはずのものが、まるで水か何かのように喉を通っていった。
懐かしさも、嬉しさも、何も湧いてこない。
ただ、空っぽの何かが通り過ぎていくような――そんな感覚。
「……ありがとうございます。おいしいです。」「……」
ロールケーキをスプーンですくい、何も感じないまま口に運ぶ。
ふわふわとした生地、生クリームのなめらかさ。
けれど、やはり味はしない。ただ冷たくて、どこか湿った塊が喉を通り抜けていくだけ。
おいしいですと形だけの言葉を口にしながら、一口、もう一口と、手を止めずに食べ続けた。
ただ、空っぽの胃をスポンジで埋めようとしている感じ、無理やり口に運び続ける。
やがて、ケーキの重さが胃に溜まっていく感覚だけがはっきりとした。
どんどん食べ進めるうちに、喉の奥が詰まって息苦しくなり、吐き気がこみ上げてくる。
胸の奥がむかつく。胃が膨れて、中から押し返すような感触。
残りを口に含んだ瞬間、生暖かい何かが一気に込み上げてきて、危うく吐きそうになった。
咄嗟に口を押さえて耐える。胃からせりあがった生温い何かが舌に残って気持ち悪い。
「む……無理しないでね?美味しくなかった――ううん、もしかして……味がしないの?」「いえ……」
あのベルトのせいで人間の食べ物が口に合わなくなった?ただのストレス……?
味がしなくなったのは別に大した問題じゃないけど……栄養が取れなくなるのは……まずい。
「……ゼリーは水は飲めるか。」〔……ちょわ?ちょーわ?〕「あ……お前ついてきてたのか。」
「あらそれ、オグリが最近気に入っているって言うゴチゾウ?おもちゃ……?なの?」
〔ちょわぁ?ちょわちょわ?ちょこ!(離しての意)〕「ちょっとかわいいかも……?(伝わってないオグリ母の意)」〔ちょろぉ……〕
「……オグリは、元気ですか?僕は……会ってないので」「ええ、今は中央に――あら?」
外を見ると……また別のゴチゾウ?見たことない飴から生まれた奴か?
〔らい~!らいらい~!〕『こんな雨の日にどうした……お前も僕のお目付け役か?』〔らい!〕
「……最近のおもちゃはすごいハイテク……あっ!手当しなきゃ!」「え?いや……」
「こんなに血が出てるのに……お喋りしてる場合じゃなかったね、ほら座って」「いえ……もう――」
その場から立ち去ろうと、腰を浮かせた瞬間だった。
背中に柔らかな手が伸びてきて、そっと僕の頭を包み込むように抱き寄せられる。
不意を突かれて、体が固まった。逃げようとした足が止まる。
雨で湿った髪に、温かい掌が静かに添えられる。
「きっと、傷付いている君には理由がある……でもね……」
耳元で、穏やかで決して強くない声が落ちてくる。
――
「
顔が上がらない。胸の奥に、鈍い何かが沈む。
体が強張ったまま、子供のようにただその手のぬくもりに包まれる。
この人の優しさが、まるで母さんの優しさのようで痛い。
痛いまま。何も言い返せず、まるで子供の頃のように、身を委ねてしまうしかなかった。
「お母さんは?」「……居ない。」「……お父さんも?」「みんな、いなくなった。」「そっか……」
「……僕のせいなんだよ、全部……ぼくなんか、生まれて――むぐっ」「……絶対に、違うよ。だって、あなたは。」
――ただ、愛されて生まれてきただけなんだから――
「ずっと、辛かったんだよねぇ……こんなになるまで頑張ったんだよね。」
……何で絆斗は僕を生かしたの?友達の大切な場所を荒らして、人を傷つけたのに。
――ただのうのうと生きる――
本当にそんな復讐でなるのか?生きてるだけであいつへの報いを受けさせられるのか?
――十分だろ……だってお前は今ここにいる、俺とお前はあの日生き残った、家族に護られて――
『今も生きてる。美味しいお菓子が食べられる世界で』
――大事な家族だから……この子も、あの子もッ!私の子なんだから……!――
『家族なんて記憶にないけど、おれ、お前と喧嘩したかったんだよな。ずっと兄弟が欲しかった』
「僕も、欲しかったんだ。自分と同じっていうか……似てるような。気持ちを分かちあえる存在」
『俺らの場合はどっちが兄だ?』「僕でしょ?」『絶対にない後から生まれた身体だ』「はぁ?そっちは精神年齢10歳もないだろ?」
『無知が生きた年数で語るもんじゃない』「母ちゃんが生きてたらどうきめるんだろうな?」『状況によって変わるんじゃないか?』
「いや、絶対にやるわ」『父ちゃんは?』「あの人は難しいこと考えて決められないと思う」
『……仲直りできそうか?』「わかんない、でも……絆斗と育ってたらこんな感じなんだろうな。」
『オグリには会わないのか?』「会えねぇだろ……」『会えよ』「無理だって……」
『せめてこんな夢の中でくらい嘘でも言えよ』「わかったよ……お前にごめんって言えたら会うよ」
『俺に言ってもしょうがないからな』「分かってる、分かってるけどさ……」『……なんだよ?』
「……ごめんな、絆斗」『……いいよ、翔馬』
……目を開けても、目の前が暗い。でも柔らかくて……なんか良い匂いがする――あれ?
「……やっべ、オグの母ちゃんに抱き着いて寝てた。
なんかまた夢でも見た気がするけど、何みったけな……心無しか気分がすっきりしてる。
……ラジオ、なんかニュースでも聞けるのかな?……動かし方は分からないけど……。
[臨時ニュースです。岐阜県羽島郡笠松町で、正体不明の怪物が目撃されたとの情報が――]
「パウル博士……いやッ……まさかニエルブの奴か?絆斗は何をやってる……」
行かないと……電車で何時間かか――バイク?……誰のだ?
〔らい!イートRIDE!イートRIDE!〕「使えってことか?悪いな。」
いやな予感がする、何もなければそれでいいけど……ニエルブが何を仕出かすか……。
「しょ、ショウマ君?!どこに行くの?ば、バイク何て持ってたの?!」
「ちょっと、急用を思いだして……」「もう……そんな怪我で――」「……い、色々終わったら戻ります!」
「あっちょっと……行っちゃった……」〔ちょわぁ……〕
――笠松:笠松みなと公園
「……ニエルブ、お前は何してんだよ」「やっと会えた、怖気づいて逃げたのかと思ったよ」
此処に来るまで人も車もまったく見なかった、恐らく笠松周辺が閉鎖されてる。
〔ちょこ!〕〔イートチョコ!イートチョコ!〕〔ちょうわっ!〕「君について面白いことが分かってさ――詳細は……」
「僕はもうお前とは組まない。世話になったが……これ以上は誰も巻き込むつもりはないからな」
「……せ~っかく、面白くなってきたのになぁ……バイト君?やっちゃって」
「てめっ?!」『はい……ニエルブ様ッ!!!』「さあ、新しい実験を始めようか?」
道すがら目にした崩れた建物――やっぱり、グラニュートとハンターがぶつかった痕跡か。
この事態の主な元凶は……ニエルブで、しかも独断だろう。
ここまでやるってことは、きっと僕で試したい実験か、何か思惑があるんだ。
約束も守らず、この町を好き勝手に壊して……あげくに人を川に投げ込むなんて。
『人間よぉ……お前をぶっ倒せば闇菓子がたんまりもらえるんだッ!さっさと立てよッ!』
「……頭割れてんだよ、こっちは。」〔ちょわ?!ちょわちょわ!〕「ああ……力を貸せ。」
「君は僕が必要……復讐がしたいんでしょ?僕なら君をもっと強くできる」「黙れ」
―― CHOCO ERROR ――
「……は?」〔ちょわ?〕「おいおい……まじか、このタイミングで……?!」
――CHOCO ERROR CHOCO ERROR CHOCO ERROR ――
血清の効果が……切れた。残りはあの爺さんに渡しちまったし……素のままで戦うしかねぇ。
「やっぱり。グラニュートの器官を持ってなかったんだねぇ?そこも後でじっくり聞かないと」
視界がぐにゃりと歪む。頭が割れて、血がこめかみを伝い、左目の端がぼやけている。
今になって血を流しすぎたツケが回ってきた……やばい。
呼吸が浅くなる。トリガーに指をかけた手も、重くて言うことをきかない。
「くそ……」『おいおい?……なんだぁ?!動かない的にすら当てられないのかぁ?!』
次の瞬間、腕ごとバスターを叩き落とされる。思わず膝をつき、地面に血がにじんだ。
立ち上がろうとする間もなく、グラニュートの足があっさり俺の腹を蹴り上げる。
「ヴッ?!……」『どうした?その程度でグラニュートハンターの真似事かぁ?』
息が詰まり、目の前の景色が白く跳ねた。
力が入らない。バスターはすぐ傍にあるはずなのに、もう二度と届かない場所に見えた。
「最後に会った時は元気だったのに……全く、僕と一緒に来るなら笠松から手を――」
「――断るッ……」「……君さ、もう引き返せないんだよ?君が……最初に此処を選んだんだよ?」
そうだ。絆斗を追い詰めるために、あえてこの場所を選んだ――すべてを終わらせるために。
「……違う、そうじゃない。」
……そうだ、僕は――この場所から、もう一度人生をやり直したかったんだ。
地方で活躍するウマ娘たちを取材して、隠れたの才能を世界に広めていく記者になりたかった。
初めて……ここで、人間として、普通に生きていきたいと心から願った――。
「これ以上は話すだけ無駄かな?バイト君……もうきぜ――っ?!」「子供に何してんじゃごらぁッ?!」
ピンクのキッチンカーがニエルブを轢いた?……あの車……絆斗が逃げる時に使ってた――。
『ニエルブ様ッ?!なんだあの乗り物は――いだぁッ?!』「絆斗から離れろッ!いや、ショウマか?」
――CHOCO――
――SET CHOCO SET CHOCO ――
「なんで……」「あっ!ウマショー!ウマショーいた!」「……ミニー?」
……ヴァレンも現れた、いや絆斗は?……あいつは、今どこに居るんだ?
「……おっちゃんからこれ」「……ベルト、なんで俺に。」「はい、電話」「え?」
〈おぉ~!聞こえとるか~!〉「……博士、なんでをベルトを俺に?」「話は逃げながら。」
〈さて……お前さんの手元にあるベルトは人間でも変身できるように細工はしてる……じゃが。〉
「質問に答えろよ……なんで、僕なんだ?」〈グラニュートは生まれつき強い力を持っておる〉
〈そして強者は生まれつき、力に敬意を払わん。そこでお前さんに聞こう〉「……なんだ」
――お前さんは生まれてから強者を知り、敗北を知り、一度は強者となった――
〈しかし力を捨て、自らを弱者とした。それはなぜじゃ?〉「もう、何も考えたくなかったからだ」
感情が制御できなくて、それでも誰かにぶつけるのは嫌で。
気づけば、ずっと自分自身に怒りを向けていた。
おかしなものだよな。誰も傷つけたくなくて、結果として一番自分を痛めつけていた。
いつの間にか、それが当たり前になって、痛みも苦しみも麻痺していった。
突き詰めれば。
「……自分が傷つきたくなかっただけなんだ。たった、それだけの理由だ」
〈……そうじゃな、わしと似ている。〉「……でも、結局力を求めた。」
絆斗、お前がここに居たら僕になんて言う?僕は心の奥ではまだ復讐がしたい。
きっと憎しみも抱く、この先も自分を傷つけ続ける。もしかしたらまたお前の敵になるかも。
――僕はどうする?――
――このベルトの力、復讐のために使い続けるか――
――それとも、あいつらの野望を止めるために扱い始めるか――
「……答えはもう、決まってる」〔イートグミ!イートグミ!〕「え?そのケガで――」
〈行かしてやっとくれ、きっと答えを見つけたんじゃ。〉「……出血死してもしらない。」
「……いたた……人間の癖に――あのベルトは……いや、ガヴ……?!」
〖おい!無茶すん――そのベルト……ガヴ?!〗『お前……グラニュートだったのか?!』
……ベルトの使い方わかんねぇ。ガヴってことは……腹に直接巻いたらいいのか?
〔イートグミ!イートグミ!〕「……
―― GUMI・THE・STARTING ――
〔〔〔イートグミ!イートグミ!〕〕〕「……レバーかそれ?」〔〔〔グミッ!〕〕〕
……レバー、無くね?
「……何か足りないと思ったらレバーだ。」〖あのベルト。レバーなくね?〗『……?』
―― EAT GUMI EAT GUMI EAT GUMI EAT GUMI EAT GUMI ――
――ふふ……変わった子ねぇ?お母さんもその味のグミ好きよ――
下顎を支え上からそっと上顎を押さえる。指先に伝わる感触はひんやりと冷たい。
手を離せば、また口が開く。そのたびに顎を合わせて、何度も噛ませる動作を繰り返した。
ベルトが咀嚼するたび、腰のあたりからじわりと冷たいものが染み込んでくる。
最初はただの金属の味かと思った。でも違う。
噛むたび、どこからともなく甘酸っぱい風味が広がっていく。
これは、ホワイトサワー。母さんがいつも買ってきてくれた、あの白いグミの味だ。
舌に乗った瞬間、懐かしい清涼感がふわりと鼻へ抜ける。
幼い頃、母さんの膝に抱かれて食べた記憶が、味とともにじわりじわりと胸に満ちていく。
噛むたび、ベルトから広がるのはただの味だけじゃない。
今は遠いあの日の記憶や、小さな幸せの断片、そんなものがひとつずつ自分の中によみがえる。
気づけば、口いっぱいに懐かしいホワイトサワーの甘さがあふれていた。
「……変身〗〔やぁぁぁぁぁッ!!!〕
―― DIRT GU MI !!!
〖……〗『ど、同族にこんな奴がいるなんて聞いてねえぞ……?!』〖だろうな、生まれたたてだ〗
体が――いや、風そのものになったみたいだ。視界の端が伸びて、音が遠くで途切れる。
一歩、踏み出した瞬間には、もう敵の背中が目の前にある……いや足の回転が恐ろしく速い。
反射的に足を振り上げて、敵の腰に蹴りを叩き込んだ。
ドンッという手応えと同時に、敵の体が宙を舞う。
頭の中の動きと実際の動きは一致はしてる……ただ、理解が追い付かない。
蹴り飛ばした相手が着地する前に、気づけばもう、次の位置へ回り込んでいた。
〖ウマ娘になったみたいだ……それより速いかもな〗『――ッ⁈』
宙を舞った敵の腹へ、今度は真上へ蹴り上げる。
ぐしゃり、と鈍い音。敵の体が更に高く跳ね上がった。
「一瞬見えた超前傾姿勢の高速移動……赤ガウほどじゃないけど……あれじゃまるで……」
〖最近の若い奴って……すげえな……!」「あの姿勢……どうやってあの姿勢を維持してる?」
身体……全身が柔い……柔らかすぎる、グミそのものになったみたいだ。
「全身が柔らかいから?……肩、腰……いや、膝だ……!膝の柔らかさがあんな走りを……?!」
『……こんなッ――こんな奴にやられてたまるかッ!!!』〖町に逃げられる前に――?〗
〔しゅわぁ!しゅわしゅわ!〕〖使えって?分かった〗〔しゅわぁぁぁッ!!!〕
―― PANTING GU MI !!! ――
―― CHARGE ME CHARGE ME ――
『闇菓子どうこう言ってる場合じゃねえッ!!!』「やべっ?!逃げた!」〖……逃がすか〗
全身がバネみたいにしなって、地面を蹴った。
足の裏から爆発的な反発が伝わる。景色が一気に流れて、世界の重力が僕を追い越す。
宙に逃げたグラニュートの背中が、まるでスローモーションみたいに近づいてくる。
驚いて振り返る敵の目に、僕の姿が映った。全身に満ちていく……いける。
拳を握る。パンチンググミの力が掌に集まり、指先がしびれるほどしゅわしゅわと泡立つ。
振りかぶる腕からグミのエネルギーが跳ね、自身もソーダの泡のように軽くなった。
―― PANTING GU MI PUNCH ――
全身の力をひとつに集め、敵めがけて拳を突き出す。ソーダの泡が弾けるみたいな衝撃。
拳が敵の胸板に炸裂した瞬間、空中で“パァンッ”と乾いた音が響いた。
衝撃波に包まれて、グラニュートの身体が空を切り裂きながら吹き飛ぶ。
『くるんじゃ―ーなかった……!こんな、世界ッ――』
自分の腕を通じて伝わる手応えは、まるで炭酸の泡――しゅわっと弾けて静かに広がった。
着地と同時に、呼吸が静かに整っていく。空にはまだソーダの泡が残っている気がした。
〖ああ……絆斗……これだったら文句ないよな……」〔しあわしぇ……〕
「……ふふ、彼はしばらく手放しの方が良いかも知れないね。ならしばらくは……酸賀さん坊やで」〔ヂュッ……〕
ふっと、力が抜ける――いや、足の感覚がもうほとんどなかった。
さっきまで体じゅうにみなぎっていた“泡”の感覚も、しゅわしゅわと消えていく。
空気の重みが急に増して、重力が身体を引きずり下ろす。
ああ、手が震えてる。膝も、勝手に笑ってるみたいに力が入らない。
パンチを打った時、気づいてはいた。自分でも信じられないくらいの力で――。
どこか遠くから殴ってるような感覚だった。
けど今は、殴った腕も、脚も、まるで他人のものみたいだ。
視界がぼやける。遠くで誰かが声を上げている気がする――けど、もう耳までうまく働かない。
ほんの少し呼吸を整えようとしただけで、世界がぐらりと揺れて、地面が急に近づいてくる。
ああ、立っていられない――胸の奥が熱くて、でも手足は氷みたいに冷たい。
がくん、と膝が崩れた。そのままゆっくりと倒れ込む。地面の冷たさが鮮明に伝わってくる。
視界の端に、薄い白がふっと浮かぶ。そのまま、何もかもが遠ざかっていった。
【仮面ライダーガウ(高橋翔馬):ダートグミフォーム】
ダートグミフォームは、高橋翔馬が“ダートグミ”を用いて変身する、白ガウの基本形態である。
このフォームは機動性に特化しており、変身直後から時速80km以上で走行可能。
観測された仮面ライダーの中でも異例の加速性能を誇る。
初速からして圧倒的であり、戦闘開始の一瞬で相手との間合いを詰めることができる。
身体構造も他のフォームとは一線を画しており、特に柔軟性に優れる点が特徴的である。
中でも膝の柔軟性が非常に高く、走行時には異様とも言えるほどの超前傾姿勢。
低い姿勢で地面を這うように疾走する。
姿はまるで獣の突進のようであり、”白き野獣”と称されることもある。
軽量で柔軟なグミ装甲は打撃の衝撃を吸収・分散させる効果。
被弾してもダメージを最小限に抑える設計となっている。
一方で、防御力そのものは低いためか攻撃を受けた装甲は直ぐに砕ける。
そのためヒット・アンド・アウェイや高速機動による回避行動を主軸とした運用が前提となる。
全体的に、”動き続けること”が最大の防御であり武器となるフォーム。
翔馬自身の反射神経と持久力、そしてリズム感がその性能を最大限に引き出す鍵となっている。
――スペック
身長:190cm
体重:75kg
パンチ力:3.5t
キック力:6.5t
ジャンプ力:8.0m(一跳び)
走力 4.5秒(100m)
1話~12話:仮面ライダーヴァレン(酸賀絆斗)人気投票
-
基本的な形態チョコドンフォーム
-
粒子を振りまく災害ブシュエルフォーム
-
ポテチの剣豪ザクザクチップスフォーム
-
自由の象徴マジックザストーン フォーム
-
重装甲近接特化ロルアックスフォーム