オグリの幼馴染が記憶を無くしてチョコレートの怪物になって化け物と戦ってた話 作:かな餅
楽器の練習をしながらエクレアをかじった時に生まれたゴチゾウ。
少し細い身体はふかふかの生地みたいで、背中にはチョコレート色の線が五本。
よく見ると、その線は五線譜のようにゆらゆらと揺れている。
しっぽの先はト音記号の形をしていて、ふると小さな音符が“ぽろん”とこぼれる。
その音符に触れると、胸の奥で眠っていたリズム感が少しだけ良くなるらしい。
歩くたびに“タン、タン、タン…”と小さなメトロノームみたいな音を刻み、
周りのゴチゾウたちの動きを、自然とそろえてしまう不思議な力を持つ。
踊ったり奏でる時はエクレフの拍に合わせて動くと、不思議とミスが少なくなるらしい。
中身のクリームがたっぷりな個体ほど、豊かな音色を響かせるとか。
たまに、誰もいない部屋から小さな合奏が聞こえる時――
そこではエクレフたちが、こっそり夜の練習をしているのかもしれない。
――旧黒山トンネル:樹海
〔……キバ、もう遅いけど、攻撃してよかったのか?〕〖まあ、見知らない力もってるし敵じゃなくても顔くらいは見ようかなって〗
さっきから数十分撃ち合ってるがこいつ見た目より装甲が硬いな……特に右腕全体。
無からでも水を生み出せるのか滑るように移動して動きも捕らえ辛い……どうするか。
〖そういや……
―― CHOCO ――
〔キバ!上から来るぜッ!〕〖ううん、僕らを狙ってるわけじゃない……トラップかな?〗
地面にぶちまけたチョコの上に足をつけると――データ通り、重心を前にするだけで進める。
あいつみたいに縦横無尽に動けはしないが、幸いチョコゾウ共は沢山いる。
―― CHOCO ――
―― CHOCO ――
―― CHOCO ――
〖あいつ、バッシャーと同じ動きができるみたいだね?キバット〗〔早いとこ決めるか!キバ〕
〔バッシャーバイトッ!〕
―― バッシャー・アクアトルネード ――
今度はデカい弾丸の追尾弾か……しかも軌道は速い、逃げながらあいつと撃ち合う。
論外だな、まずはこれを相殺することから始めよう――出来れば利用もしたい。
〔ヂュッヂュッ!〕〖そこまでできるのか?分かった、そうしよう〗
―― CHOCO SECOND DECORATION PAKIPAKI ――
―― CHOCO THIRD DECORATION PAKIPAKI ――
―― CHOCO ――
追尾してくる大玉と弾丸を何とか避けながら、チョコをぶっかけた木を駆け上がる。
幹に張り付いたチョコが、まるでレールみたいにブーツの裏を滑らせる。
枯れ木がミシミシと悲鳴を上げ、すぐ後ろで水の大玉が幹ごとえぐり取っていく。
木片が背中をかすめる。追尾してくる水の塊がまるで生き物みたいに軌道を修正してくる。
枝を踏み台に更に加速して駆け上がる。チョコでぬるついた樹皮が、逆に勢いを殺させない。
枯れ木の先端で一気に足を蹴り出し俺は空へ放り出された。
視界がくるりと回転して、夜の樹海とトンネルの入口が逆さになる。
足裏をさっきまで走っていた木から追尾してきた大玉がかすめた。
―― CHOCO PAKIPAKI ROYCE AROMATIC ――
空中にいる間だ無防備だから当然、攻撃は受ける……だが。
水の大玉とチョコの塊が正面から噛み合ったんだ、視界に茶色と透明が混じった雨が広がる。
〖キバット!あいつの姿見える?!〗〔だめだッ!水にチョコが混ざって濁った雨が降ってる!〕
チョコは水を糖分と脂肪分を含んでいるおかげで水を弾く、そんでもって汚れは落ちにくい。
拭えば拭う程しかレンズ越しの視界は汚れて見えずらくなる……これで形勢は変わった。
〖ヴァレンは
〔不味いッ……キバ構えろ!――キバ?〕〖うえぇ……最悪、おろしてたての服なのに……」
「……あいつ、消えちゃったみたいだよキバット」〔そうなのか?周りがちょっと見えなくて……〕
これ以上あいつとやり合うのはごめんだ、他に何を隠し持ってるのかわからん。
それにチョコルドは使いすぎると理性に影響が出る……あんまり使いたくねぇ。
〖……家に帰ってゴチゾウを回収するか、その後はどっかのホテルに身を潜めよう〗〔ヂュッ〕
――旧黒山トンネル
様子を見に来たのは良いが、やっぱりあの蛙野郎には逃げられてるか。
家に戻りたいがあいつがヴァイオリンに執着するなら荒らされてるかもな……だる。
『……早いとこ、逃げるか。ライドキャン、バイク出せ』〔らいらい!……らい?〕
『どうした?……なんかいるのか?』「……ん?お前は……■■■?」
全体的にもやしで弱そうなやつが出てきたな……誰だこいつ、古いカメラ……。
『誰だ』「……いや、他人の空似か丁度いい、此処は一体ど――」『知るか』
変な奴には必要以上に関わらないのが一番だ、無視だ無視。
「……不愛想な奴だ、まるで別世界の――まあいい。さてこの世界で何をすればいいんだ?」
――紅邸
『……荒らされてないな、そこまで野蛮じゃなかったのか』〔ちょうわ?ちょう〕
『ああ……とりあえず、この家を出る。ただ何匹かはここに残っとけ、一応な』〔ちょわっ!〕
残ってる金は大体5995万とかか。持ち歩くには多すぎるな……半分は棚に残すか。
『よし……ここともおさらば――』〔どこに行くつもりだ?〕『色違いもいたのか?』
〔……貴様、歩ではないな?まあいい……貴様に仕事をくれてやる〕『ああ?』
こいつ……あのキバットとか言うのと、仲間じゃないのか?なんでここに居る?
てか、なんで俺が歩じゃないって認識できるんだ?そこも気になるんだよな。
『残念ながら俺は忙しいんだ、他を当たれ。』〔元の世界に帰るためにか?〕『……』
〔探しているのだろう?自分の役目を、この世界で何をすべきなのか〕『……お前。』
〔貴様がこの世界で果たすべき役目、それは"古き王の抹殺"だ〕『……ファイガイアか?』
〔飲み込みが良いな、それを果たせば貴様の役目は終わる……悪い話ではない筈だ〕
こいつは俺が紅歩でないと言った、何をみて判断したのかは分からん。
ただ俺の目的を明確に把握していた、この世界に来てからずっと違和感を感じている。
俺がこの世界で言う紅歩になった訳じゃなく、紅歩に似た俺がここに置かれているような――。
〔それでどうする?〕『……まずは話を聞いてからだ、名前は?』〔……ふん、キバットニ世〕
『じゃああの黄色いのもそんな感じか』〔俺の息子の三世だ……それで、お前は?〕『あっ?』
〔貴様が紅歩でないことは知っている。だが余所者のお前にも名前くらいはあるだろう〕
『……酸賀絆斗、通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておく程じゃない、忘れろ』
――【音階の湯:野村銭湯】
負けた、キバになってから2回目。あのカカオマン強かったなぁ……戦い慣れてる感じだった。
「キバット、湯加減は?」〔おう!いーいゆだぜ〜……翔は入らないのか?〕「僕はまだ」
どれだけ撃っても怯まなかったし、着弾点を腕で正確に防いでた。
なんで僕を倒さず逃げたんだろう、完全に見失ってたし。技も直撃させられた。
そういうタイプじゃないってだけだったのかな、あれがイクサになったら嫌だけど。
そもそもあれは何だったんだろう、世界の破壊者にしてはポップな感じだったし。
〔なあ、翔。本当に世界の破壊者ってのを信じてるのか?〕「ん~?」
昨日変なおじさんが現れてある助言をしてくれた、助言というか、虚言にも思えたけど。
内容はこう、近いうちに世界の破壊者がこの世界を訪れる――見かけたら倒せ。
そう言い残してその人は忽然と消えた、てか僕がキバってことを何故か知ってたし。
「まあ、真に受けてないよ。でも最近不穏な事は確かだしさ?実際あのカカオマンに会ったし」
何科キバットは鼻を鳴らして不服そう、まあ無理もないかな……。
最近ファンガイアには不穏な動きがあるみたいだし、人を襲うファンガイアも活発だし。
「ふう、お風呂掃除はここまで。おいでキバット汚れたチョコを落としてあげる」〔お?悪いなぁ〕
明日は歩さんのとこに行って情勢の話でも聞こうかな、色々しってるし。
――紅邸
大量に菓子くって寝れば、朝には全快した。頭も痛くない、腕もしっかり動く。
よし、まだ眠い事を省けば問題はないな……
〔起きたか〕『どこ行きゃ良いんだぁ?』〔その前にお前の仕事仲間を紹介しよう〕『あ?』
「随分と豪勢な屋敷だな?……門矢士、俺も抹殺アルバイトに参加しに――お前。」
『……ああ、昨日の浮浪者か。何勝手に家入ってんだよ』〔貴様の家でもないだろう〕
「浮浪者?……全く、働き口を探していただけでそんな言われようか」『じゃあニートか』
「フリーターと呼べ。」〔交流はすんだか?……〕『……こいつ何処で拾ってきた?』
門矢士……ファンガイアが狩場にしていたトンネルに現れた働いていない男。
素性は一切不明、キバットが何故選んだのかも明確には分からない。
ただこいつも何かしらの力は持っているんだろう……抹殺に加わるくらいだしな。
人間と違いファンガイアは直ぐに殺せない、毒殺に窒息色々あるかもしれないが――。
基本的に怪人相手には弱らせて大技を当てるのが常套手段だ……どうしたもんか。
ファンガイアを束ねる王ならそれなりに強いはずだ、キバットから聞いた話じゃ――。
『いや、帰るためとはいえなんで俺がこんなことしなきゃいけねえんだ』〔……何かあるのか?〕
『まず王を抹殺したとして他のファンガイアはどうする?王位継承争いでもさせるのか?』
〔既に後継ぎはいる。ただ今の王には問題があってな――本来なら紅歩がやるはずだった〕
『わざわざ抹殺をする理由は?金か?』〔あったとして、それは貴様に関係があるのか?〕
〔貴様は俺を疑っているわけじゃない、この世界に情を抱いている〕『……』
〔王が死んだあとファンガイアの行く末は?何が犠牲になる?――人間への影響は?〕
〔何をそんなに気に掛ける必要がある〕『……んなんじゃねえよ』
〔貴様は見かけに寄らず甘いらしい、歩とは似ても似つかん……時間をやる。考えておけ〕
……キバットは飛び去って行った。何とも煮え切らない……だめだ――だりぃ。
「おいどこ行く?」『金が欲しいなら棚から持って行け、抹殺なんて馬鹿げた事やれるか。』
――東松競馬場
……すっからかんな競馬場、レースは非開催だったが無料で入ることはできるらしい。
ただ人は居ないけどな、そりゃそうだ。朝っぱらからこんなとこ来る奴なんてそうそう居ない。
「……ん?お前俺のムトゥコか?」『……だる、人違いだ』「いいや?俺が見間違えるわけが――」
「と、言いたいところだが……外見こそ同じだがお前は俺のムトゥコじゃないな?誰だ?」
『じゃあ他人の空似だろ』「ならなんで
「責めているわけじゃない、ただ自分の息子がどこに居るのか俺は知りたいんだ」『知らん。』
『なんで俺があそこにいたのか、お前の息子が何処に行ったのか。俺は知らないんだ、悪いな』
「……ふぅん、嘘を言っているわけでもなさそうだが。一度目は偶然、二度は奇跡」『……』
「折角だ、俺はお前と話すことにするよ。悩みをもっているのか?聞いてやる」『ああ?』
紅音也、プロのヴァイオリニストらしい。紅歩の育て親ではあるが血は繋がっていない。
こいつの耳は特殊でどうやら人の中に流れる音楽というものを聴き取れるらしい。
俺が人から貰った食べ物の中に籠った感情を味わえるのとかなり似たものだ。
「俺は見かけで人を判断しない、見るんじゃなく聴くんだ。俺は人の中で流れる音楽を聴く」
俺の場合は味覚でその人間がその時に込めた気持ちを味わえる。
こいつの場合は音楽としてその人間が持つ本質を聴くことができる。
俺が紅歩でないと分かっても敵意を感じないのは俺の人間性が御眼鏡適ったんだろう。
「しかし、お前の音楽は勿体ないな……」『あ?』「最高の楽器に最高の楽師」
「なのに音色が迷い続けている、まるで親を失った雛鳥のようだ……」『……それで?』
「……自分を見失っているな、それとも指揮者が居なきゃ音楽は奏でられないのか?」
『……いいや、俺はどんな音楽だって奏でられる。ただ弾けるジャンルが多すぎてな。』
「一体に何を迷う必要があるんだ?自分の望むがままに奏でればいいじゃないか」
『そうやって
何故はっきりと決めきれないのかが分かった、酸賀が居ないからだ。
酸賀は俺がどんな選択をしようと俺自ら選んだものならいつだって喜んでくれた。
だから、何でもできた。何があってもすぐに決断できたし自分のやりたいようにもやった。
でも酸賀が居ない世界でそうやって、意味を見出すことができないんだ。
前の世界でも酸賀が居たから、はっきりと選択できた。でもこの世界で――。
「……踊るか」『……』「こんな時は頭を空っぽにして小躍りでもするのが一番さ」
『……あくまで今の俺が紅歩だったら俺は何をするべきだと思う?』「そうだな?」
「歩はいつも自分が作るヴァイオリンの為なら何でもやっていた、化け物と戦うことでもな」
『……ファンガイアハンターだったのか?』「なんだ知ってたのか?」
通りでヴァイオリン職人が王の抹殺なんかやろうとするわけだ……。
てか、ヴァイオリンの為?ファンガイアを狩ることとヴァイオリンに何の関連が?
「もしあくまで紅歩がお前だというのなら――”人の中に流れる音楽を守れ”そう伝えるさ」
『……あくまで俺が紅歩ならそうするか?』「どうだろうな?でも、その言葉を伝えた次の日」
――ヴァイオリンと人の中に流れる音楽の為に戦い始めた――
「俺のムトゥコはそんな奴だ、もしかしたら――今もどこかで戦って……ん?どこだ?かくれんぼか?」
――紅邸
〔答えは決まったか?〕『ああ、ただ王を殺すかどうかは俺が決める。』〔ほう?良いだろう〕
今の王を俺は知らん……ただ紅歩が人を守るために王の抹殺を選んだとしたらそれは――。
ファンガイアが人を襲わない世界、あとを継ぐ王がその思想をもっている可能性。
王が変われば束ねられる者たちのルールも変わる、今のルールは知らん。
だが、あの
どの道、実際に手をかけるその時までは何も分からないが、やるしかない。
「戻ってきたか」『なんだお前、まだ居たのか』「まだ契約書にすらサインしてないからな」
〔今からお前たちには王が根城にしている建物に向かってもらう、住所はこの紙に〕
『作戦は?』〔行けば分かる〕『……』「どう思う?」
『この手の言葉は流れに身を任せろってことだ……だるいが、難しい事は考えなくていい』
クローゼットの中にあるタキシードや仮面は潜伏のための衣装、仮面舞踏会か?
ご丁寧にチケットが何枚か……計画は複数人で行う予定だったのか?
〔その内の一枚は俺のだ、ファンガイアに他種族を招いた舞踏会だからな〕
『なら後一枚は?』〔ああ……まあ、それは予備だ。念のために持って置くと良い〕
――満月堂
「……ねえ、キバット。今日お父さんが開催した舞踏会に誘われたんだけど……行くべきかな?」
〔舞踏会?〕「うん、正確には……父さんが王になった日を記念して祝う感じ」
〔え?!それってつまり……王も顔を出すってこと?〕「らしいよ?人間以外の種族もくるみたい」
……王が出てくるのかぁ、いかにも歩さんが食いつきそうな情報だけど今は透がどうするか。
「……辞めておこうかな、踊ってくれる人も居ないし」〔そっか!じゃあそのチケット、貰っていいか?〕
「?良いけど……相手いるの?」〔失礼なっ!俺は気高きキバット家の……まあいい!貰った!〕
これで舞踏会へのチケットは手に入った、今日が終わればやっと僕は落ち着ける。
王を死守する、それできっと全てが丸く収まるんだ――人間とファンガイアの共存のために。
それが良いんだよね、それで良いんだよね……キバット。
――キャッスルドラゴンズビル:仮面舞踏会場5F
「……こいつらみんなファイガイアなのか?」『表向きは多種族の交流会ただ実際は違う』
それ以前ファイガイア以外に残っている種族といえばキバット族かファンガイアか……人間。
2世によれば残った子孫を根絶やしにするために開いたものでもあるらしいが如何だろうな。
誰も彼も純粋にここを楽しんでいる感じだ、多分ここに居るのは人間に紛れて生活する奴ら。
下流階級と言ったところか、仕事をこなすにはもっと上の階に行く必要があるな。
今持ってるチケットで行けるのは中流階級、上流階級に行くには品を無くすしかない。
『よし、士――士?どこ行ったあいつ……あっ?』「……はは、よ、よく働くなぁ。」
王の抹殺を請け負ったはずの士は何故か知らん男の靴磨きを精一杯やり始めた。
そのせいでかなり目立ってる……本当に何やってんだこいつ?
『何やってんだ。』「割のいいバイトを見つけたんだ……靴1個磨くだけで5,000円……!」
『……ここに来た理由分かってるよな?』「当たり前だ!俺はバイトをしに来たんだ」
こいつはもうここで捨てよう、役に立たない。あの蝙蝠擬きも見る目がなかった。
「おお……上手じゃないか――冗談だったんだがなぁ。」『……行くか。』
――キャッスルドラゴンズビル:仮面舞踏会場7F
ここの雰囲気は下と違ってヒリついているような感じ……互いを牽制し合ってるのか。
殺伐としているわけでもない、そうだな……ここにはプライドの高い奴らが集まってる。
つまり権力者らへんが多いんだろう……皆酒を持っているのにまだ誰も口をつけてない。
『……はっ、腕の見せ所だな――退屈ですか?お嬢さん』「……あら?何の用かしら」
仮面越しでもよく分かる飛び切りにつまらなさそうな顔をした若い女、嫌々来たって感じだ。
『お酒を嗜もうと思ったんですが……どうにも一人では味気なく思いまして』「ふぅん。」
「なら下の階に行けばいいじゃない、みんな楽しそうよ」『静かな場所が好みなので』
「……当ててあげる、貴方上に階に行くチケットが欲しいんでしょ?」『おや?どうして?』
「私に話しかける人は私に惚れたか、私が持っている物が欲しい人のどっちか」『……』
「貴方の目は素敵だけど、私を全く見ていないじゃない?」『ええ、見なくても良いんです』
『私は見かけで人を判断しません、見るんじゃなく。私は貴女の中に流れる音楽を聴いている』
少し逸れて居た相手の視線がこっちを向いて、グラスの中身が少し減ったみたいだ。
リミットは相手のグラスが空になるまで――十分だ、おかわりは要らない。
『しかし、貴方の音楽は勿体ない。音色が少し急ぎすぎている……どこか緊張していますか?』
「……飲み過ぎて酔いが回ったの。」『お酒が苦手なんですね、実は私もなんです』
そっとグラスを回して匂いを渡す、俺はまだ20歳じゃないからな仕方ない。
ここに居る奴らが持っている酒を見るに……一種類しか配られてないのか。
下はビュッフェもあって飲み物も豊富、ここに比べれば随分とにぎやかだ。
「それは下の階から?」『ええ、美味しいピッツァから和菓子まで豊富にありますよ』
「そ、下に行けるチケットはないから関係ないけど」『丁度余りが一枚ありますが……』
「上流階級行きと下流階級行きを交換してほしいってこと?」『いいえ、一緒の時間でもと』
あきれたように仮面の下が笑い口も付けてないジンジャーエールを盗られてしまった。
「そんな時間ないんでしょ、良いわ。交換してあげる。でも他に何をくれるの?鴉の仮面?」
『……私の水曜日の夕方を貴方に差し上げるというのは?』「……変な取引、それは今日から?」
『今日は……そうですね、貴方がそれを飲み終わる前に戻ってこれたらお付き合いします』
上流階級への片道切符は手に入った、キバットも上の階にいるだろう……居なきゃ帰る。
てか士は今も靴磨いてんのか?……まあいいや、つまみ出されてくれる方が好都合――。
「……君はディケイドと行動を共にしているな」『……私に話しかけていますか?』
「ああ、奴には気を付けろ……世界の破壊者だ。命が欲しければ元の世界へ帰るか奴を倒せ」
『すみません、何の事か――消えやがった……誰だあのおっさん、ディケイド?』
……キバとかいうやつが言ってたな、しかし行動を共にしてるってなんのことだ?
まさか士がそうか?……分からんが、あまり気にしてもしょうがないか。
――キャッスルドラゴンズビル:仮面舞踏会場8F
……人間に化けたファンガイアばかりらしいけど、ぱっと見じゃわかんないなぁ。
キバットは違和感なく溶け込んでるけど僕はどうしよう、一応マーマン族のていだけど。
なんか昔ファンガイアに駆逐されかけたんじゃなかったっけ?まいっか。
流石にキバットに招待されたお客さんだし、すぐに手荒な真似はしないでしょ……。
「皆さんこの度は舞踏会に参加頂きありがとうございます――」「……あれかな、王様って」
外見は特に威厳もない一般人……でもみんなの空気は明らかに変わった。
影武者って可能性もあるけど……キバットの様子じゃ間違いないかも。
「ファンガイアの皆さん、そして他種族の皆さんも――私には思う事があります」
――かつてファンガイアは、他の種族を“狩る側”として君臨していました――
「ですが――その結果、何が残ったでしょう?憎しみと、恐怖と、終わりの見えない報復の連鎖」
笑顔は浮かべて言葉は淡々と。演説というより、事実の羅列みたいに。
「例外ではない。互いに牙を向け合い続ければ、最後に残るのは“何もない世界”だけでしょう」
ざわ、と周囲の空気だけが揺れた。誰も返事はしない。グラスだけが小さく触れ合う音。
「だから私は、ここに宣言します。ファンガイアは――“狩る側”から“共に在る側”へ」
ファンガイアたちの様子がおかしい……今初めて聞いたのかな?
王様がライフエネルギーに変わるものを開発してるって話は周知されてるはず。
「……王よ、我々ファンガイアがライフエナジーを必須としていることは御分かりのはずです」
「ええ、ですがご存知の通り……私の方でライフエナジーに変わるものを開発しています」
「それは承知ですが……貴方の発言ではまるで我々と人間が――」「何かおかしいことでも?」
「すぐに受け入れてくれるとは思っていません。牙を仕舞えない者もいるでしょう。」
――しかし我々は人間社会に紛れ、共に働き、共に生きる道を選ぶべきだ――
――”狩るか、狩られるか”だけの時代は、終わらせなければならない――
「現在はこの国の政府と契約を交わし税金のように生命に支障のないライフエネルギーを――」
……なんか、変だ。変な感じがする。心無しかみんなぼーっとして――催眠?
「……ッ?!王よ何をしているのです!何故我々にこんなッ――」「掟その4」
「我の許可なくして人間を襲ってはならない……お前は掟を破った粛清対象の1人だ」
「わ、私はライフエナジーが必要です!そのために忠義を尽くした!なのにあなたはッ――」
「……では皆さん!彼はご覧ください。掟を破った粛清対象のファンガイアです」
やば……寝てた?何だっけ……そうだった。ライフエナジーに変わる新しい――。
「ですが彼は罪を償いたいと望んでいます……皆さんの明日を生きる糧となることで。」
〔……なあ、翔。〕「……あ、きばっと?だめだよ、ばれちゃうよ?」
〔もう、王は大丈夫だろうから……帰ろう〕「どうして?王様のお話だよ……聞かなくちゃ」
〔……ガブッ……!!!〕「いっ?!――な、なに?!突然……!」〔いいからは!早くはなれよう!〕
「では、ご覧ください。彼が新しく生まれ変わる姿を……入れ」「はい、仰せのままに」
「……何やってんの?あれ」〔翔だから早く……〕「黙ってキバット」
何あの緑に濁った液体……人が入るには十分なガラスの容器で満たされてる。
王様は、あのファンガイアに入れって言った?なんで?お風呂じゃあるま――え?
無言で入って、何の音もなく消えた。色が濃いからとかそういう話じゃない。
入ってから一向に出てこないし……溶けた。とか?――まさか、あれでも。
キバットは何故か帰ろうって言った、王様を守らないといけないのに。
これを知ってたから、僕を帰そうとした?……なんで見せたくなかった?
「彼はこうして罪を償った、ただ……残された家族も彼の後に続き罪を――」
いやッ!?子供はだめだって!――洗脳しておいて罪を償わせる?
「キバット!ここに居るみんな多分あの王様に洗脳されてる!止めないと!」
〔……翔〕「何やってんのキバット?!早くしないと子供が――」
「……ああ、なるほど。君が来たのか翔?」「バレてるし……!早くキバット!」「待ってくれ」
「話がしたい、昔からずっと、ずっと君と話がしたかった……」「……キバット?」
〔……翔、話をきいてやってくれ――ああ、いや……”ワタル”。〕「……え?」
【ゴチゾウ図鑑:パンナカタゴチゾウ】
ちょっと硬いなと思いながらも、噛みしめていたパンナコッタから生まれたゴチゾウ。
身体はミルク色で少し半透明、角ばったゼリーみたいにぷるぷるしている。
触ると意外なくらいしっかりとした弾力がある。
どっぷりんゴチゾウやぷるゼリーゴチゾウのと同じ形で俺には使えない。
柔らかな見た目に反して性格は無口で、あまりしゃべらない。
その代わり、一度決めたことからはびくとも動かない頑固さを持っている。
衝撃を吸い込むたびに、身体の奥で小さく”きゅっ”と音が鳴る。
その音を聞くと、なぜかみんな少しだけ落ち着くらしい。
長く一緒にいるほど、パンナカタの表面は少しだけやわらかく、甘い香りも強くなる。
13話~27話:仮面ライダーヴァレン(酸賀絆斗)人気投票+α(他キャラフォーム)
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超反応クランチガルムフォーム
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超大幹ロシュアガルドフォーム
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モフモフボディドーマルフォーム
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ビターなギフデットチョコルド
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気怠いどっぷりんフォーム
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新兵器プライマルクッキーフォーム
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思い出の味ダートグミフォーム
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漲る怪力ストロングカスタム