オグリの幼馴染が記憶を無くしてチョコレートの怪物になって化け物と戦ってた話 作:かな餅
移動式の駄菓子屋《ハピパレ》は、甘根幸果って人間が主に切り盛りしている。
駄菓子屋とは言いつつ並んでるのは妙な形のお菓子、どこかゴチゾウに似てるやつが多い。
たぶん、心がこもってるからか、ゴチゾウに似てるからかとにかく全部うまい。例外なく。
手伝ってるのは”ラキアン”って呼ばれてる無愛想な男で、こっちは仕事がとにかく雑。
注文のたびにだるって言ってくるのが口癖で、パーティーセット頼むときも毎回。
パーティーセットはとても優秀、バケツ一杯分くらいの容量にお菓子がぎっしり詰められてる。
チョコもポテチも入ってて、ゴチゾウがよく生まれる。困ったときはとりあえずハピパレ。
20――年6月5日。東京レース場、芝1600m。天候:晴れ、馬場状態:良。
残りおよそ500メートル。勝負は、いよいよ最終局面に入った。
レース中団から飛び出したのは、ひときわ目立つ葦毛のウマ娘。
400メートル標を通過した瞬間、一気にスパートをかける。
ヤエダゲンセキ、ミスローアンバーを立て続けに抜き去り、加速はさらに増していく。
まさに末脚の怪物。
シッチも必死に食い下がり、前を走っていた2人も脚を止めず懸命に粘る。だが、それでも。
“走っている”、その意志は伝わる。だが、追いつけるかどうかは……もう別の話だ。
『……素質の差が大きすぎる、クロックチップと比較しようにもしずらいな』
残り300メートルを過ぎたあたりで、葦毛がシッチをかわし、シンボリリンドウと並ぶ。
そこからだった。1馬身、2馬身……さらに差は開いていく。4馬身、6馬身……。
あいつだけ別のレースか?
「……良いところを見せたい。」『それ以上加速しても意味ねえだろ……』
10馬身差でゴール……マジかあいつ、そのポテンシャルは有馬か天皇賞で出すべきだろ。
「オグリの奴、幼馴染がいるからって気合入れ過ぎだ……故障したら元も子もないだろうに……」
『……六平、あいつG1ならどれくらい早い?』「ああ?……まあ、断定は出来んが、”かなり”だ」
……加速力で語るなら、クロックチップの走りほど不可解なものはない。
マイルでも、中距離でも、長距離でも
常に最後尾からスタートし、レース終盤にかけて一気に順位を巻き上げる。
高等部に上がってからは1着こそないにしろ……尊敬すれば良いのか気味が悪るべきなのか。
どのレースでも必ず2着に食い込むという異様な安定感を見せている。
仮に、あいつがこのレースに出ていたとしたら……。
オグリが500を通過するあたりでスパートをかける。
だがその直後、チップは最後尾から大外を突っ切ってくるだろう。
たとえ10馬身の差があったとしても、一気に詰めてくる。
その葦毛が、果たして逃げ切れるかどうか。
「……お前、随分とレースを気に入ったようだな?最初会った時は興味ない顔をしてた癖に」
『……まあ、幼馴染がやってたら興味沸くだろ』「幼馴染だった記憶ねえんだろお前。」
実際に初めて見るレースがG3だったのは勿体なかったのかもしれないな……。
特に……このレースであいつに気合を入れ過ぎた気もしなくはない。
「いやぁ、ウマ娘ってすごいねぇ……絆斗君もあれくらい走れるかなぁ」『いや、無理だろ。』
“走り切る”のと“走り負けない”のじゃ訳が違う。
特に、走ることに特化した“競技用の身体”を持つ連中相手じゃ、変身したところで分が悪い。
それよりも、次のレースは高松だっけか?……運が良けりゃ、クロックチップも出るな。
「……そうだ、酸賀こいつ借りてもいいか?」「どうぞ、何するんです?」
「いや、何……ちょっとな。」『……仕事か?』
連れてこられたのは……カフェ、全部奢ってくれるらしい。
「さて、単調直入に言うが酸賀が居ない間は俺が少し面倒を見ることになってる」『ほうか』
「オグリかお前は、まあといっても自立しているとは聞いてるから少し放置気味になるだろうな」
まあ、酸賀がいない間の保護者といったところだろう。特に異論はないが……。
「ただ、なんだ?。オグリの幼馴染がかえってきたってんであいつも最近調子がいい、そこで」
『……仕事か?、何をすればいい?、食料調達か?』「助かるがまあ違う」
「お前、うちで俺の補佐としてオグリのキャップを見てみないか?良い体験にはなると思うぞ」
『一番はオグリのコンディションか?』「そりゃな、まあ……気合が入りすぎるのも困るが」
『傍に置いてコンディションの上り幅を落ち着かせようと?』「そういう事だな。」
実は同じような提案を斎藤にされたことがある、言われたことはほぼ一緒だが……。
『……もう1件、クロックチップのリハビリも検討中なんだよな。』
「なるほどなぁ……その二択だったら確かに悩む、まあ無理にとは言わねえからよ。」
明確には、どちらもお金が出る正式な依頼というわけじゃない。
ただ
あの二人と関わることで、”新しいゴチゾウ”が生まれる可能性は十分にある。
悩ましいのは、まだブシュエルの反動が身体に残っていて、派手な動きができないことだ。
なら、リハビリ目的でチップと過ごすのが現実的かもしれない。
……性格が面倒くさいのが難点だが。いや、どっちを選んでも面倒くさいのは確かだ。
オグリといると俺まで体を動かしたくなるし、今のコンディションじゃ逆効果か……。
そうなると、消去法で……チップ、か?。
休むにしても、じっとしていられる性分じゃない。
あいつらと過ごす中で、俺にとっても、奴らにとっても何が“良い選択”なんだろうな。
『いや、やめとくよ。仕事じゃないならお駄賃もでないしな?』「気づきやがったか……」
『ただ依頼があったらいつでも言え、暇してるからな』「そうか、ならこれを頼めるか?」
お使いメモか……まあこれくらいなら。
「それを、オグリと行って来い。自由に菓子は買って良いぞ」『結局か』
内容は……たぶん、オグリに必要な何かだろう。まあ、ちゃちゃっと買って終わるはずだ。
ただちょっと怠いのは、今日に限ってちょっと暑いってことだ。
熱中症になるほどじゃないが、この時期にコートは場違いすぎる。
完全に“仕事モード”の格好で来たのが裏目に出たな……。
『……おっ?、来たのかオグ――お前どうしたのその格好、誰かと飯でも行くのか?』
「ま、間違ってはない……?、ただその、この服のは私の意思じゃないというか……その。」
なんかその向こう側には苦い顔をした六平と……小柄なウマ娘、六平の顔を見る限り。
『デートの前準備ってとこか、だったらさっさと終わらせてお前の――』「……似合ってる?」
『俺に聞くのか?、そういうのはデートの相手に聞くもんだろ……あー……』
オグリが着ていたのは、白を基調としたシンプルなワンピース。
全体のシルエットは控えめに広がるAラインで、裾にはほんのわずかなレースの飾り。
地味すぎず、派手すぎず"いつもの制服やジャージとはまるで違う"柔らかい印象。
素材はリネンだろうか、涼しげで春先の陽気にちょうど良い。
ウエスト部分には淡いブルーのリボンがひとつ、結ばれている。
たぶん、本人は気にしていないんだろうが。
それがさりげなく、芦毛の髪色と瞳の色を引き立てているようにも感じた。
『似合ってる、それ以外は……わからん。』「うん、その言葉で十分だ……!」
有名人になったとかでオグリは眼鏡とキャップをかぶって変装をしている。
俺もよくやる古典的な奴だが意外とわからんもんだな。
まず買うべきものは――あっ?。
『あっ』「あれぇ?、ハンティと……あっ!」
「幸果?、もしかして、そっちもデ――」「いやいや!無いない!、うちらは商品の材料を――」
……面倒なやつにあったな、さっさと行こう。
『オグリ、デートが始まる前に使い終わらせるんだろ?行くぞ』「別に……ゆっくりでも良い」
「あ〜……そういう感じかぁ」『幸果、休日とは言えこんな人混みに長くいるのはごめんだ』
まず買うものは……オグリのシャンプーか。
「絆斗はどんなシャンプーを使ってるんだ?私の髪質はあちこち引っかかるから……参考に――」
『牛乳石鹸』「ボディソープは――」『牛乳石鹸』「こ、こんでぃしょなーは……?」『クエン酸リンス』
「そ、そうか……?、だからいつも甘い匂いがするのか?」『それはチョコ食ってるからだ』
「ああ〜……うちらも実は買いにく予定だから良かったらどう?、ほら何かの縁って感じで!」
『いや、聞いてないぞそん――』「じゃラキアンは荷物もち〜」『だるっ……』
連れて来られたのは……ドラッグストアだな、菓子が安い。
「さて、オグリちゃん似合いそうなのは、うち的にはこれだけどハンティはどれが良いと思う?」
『……匂い以外で何が違う?』「髪質に合う合わないとか?、私は匂いで選んでるけど」
オグリを呼び寄せて、そっとこのうどんみてぇな髪に触れてみる。
指先に感じるのは、思った以上の張りとコシなるほど、これじゃあ絡みやすいわけだ。
『だとすればここら辺の……おっ、これでどうだ?』「はちみつの匂い?」
『で……リンスは、こんなもん俺と一緒でいいだろ。』「!……お揃いか!」
なんか喜んでるな、よし。
『……あと石鹸でいいか』「あ〜うちはここらへんの使ってるかなぁ?」
『全部一緒――チョコの匂いか……これ良いんじゃねえか知らねえけど。』
「使ってみたら絆斗がそばにいるように感じるだろうか?」『そんなにチョコの匂いすんのか?』
「……いやぁ、ビターチョコが欲しいね。」『この石鹸ってのは石か?……牛乳石鹸。』
「牛乳で作られた石じゃないから、石鹸だから。食べられないから。」
『ああ、食えたんもじゃない』「食べたことあるのか?」『そうか……ん?お前食ったのか?』
『……昔牛乳石鹸をキャンディと間違えてな、覚えてないが泣きながら吐いたらしい。』
さてドラッグストアの次は――。
〔ザク、ザク!……〕『……悪いなオグリ、ちょっと外す』「……どこに行くんだ?」
『すぐに戻る』「……うん、待ってる」『幸果戻らなかったら買って置いてくれ』「え!?」
ノリスケが何か見つけたみたいだが……恐らく、グラニュートか。
「……えーと、仕事かなぁほらハンティ仕事熱心だしー……」『……幸果俺も少し外す』「ええ?!」
〔ザク!ザクザク!〕『ああ、あとチョコゾウはしばらくいないからお前を使う』〔ザクゥッ!?〕
……まだ人プレスにはされてないか。今なら隠れて変身するしかないな。
――SNACK――
『……来たかぁ。』「ふふっ……」
―― SET SNACK SET SNACK ――
〔WAO‼WAOWAO!!!〕『あ〜言うか?』〔ザクッ……WAOWAO!!!〕
『じゃあ……変身〗
―― ZAKUZAKU CHIPS ZAKU ZAKU ――
〖さて……一応聞くか、どうする?〗
――2度と人間に関わらないか――
――それとも俺に倒されるか――
『二つの問いに対して答えは二つ』
――お前を倒す――
――人も攫う――
『両方やらなきゃいけないってのが下っ端バイトの辛いところだあ……なぁ、相棒?』
「そうだなぁ、兄弟?』〖統一しとけよ〗『お前の事は事前に調べ上げた、その姿は知らんが……』
またタコかよ……で、もう一体は――キノコ?、まじか、キノコとか本当にいるんだな。
まあ、それは今どうでもいい。
2体1。状況としては、正直エージェント2体よりもこいつらの方が厄介だ。
タフとタフの組み合わせ。倒すには時間がかかるだろう。
持久戦になれば、どちらかを逃がすことになる……それは避けたいが、どちらを優先するか。
今後残しておくと面倒なのは……間違いなく、タコだな。
『俺の方に向かッ――』〔ザーグザクザク!!!〕
地面を這うように、黒い触手が幾本も蠢きながら伸びてくる。
そのうちの一本を踏みつけ、振り下ろしたザクっと一閃。
ぶちん、と重たい手応えと共に、べたっと生々しい音で地面に落ちた。
すぐさま別の触手が横から襲いかかってくるが、それも切先を滑らせてザクっと一太刀。
こっちは散々触手に捕まったり叩かれたりしてるんだ。詰めて切り落とせば大したことはない。
断面から粘液が飛び散る……こいつもしかしてすぐには再生できないタイプか?。
『待ってろ相棒!』〖……胞子撒いてんな〗
〖やっぱり怠い事になってたな〗
ヌメヌメして気持ち悪いあいつ……胞子なら粒子には良い思い出がない……避けるべきか。
『さぁ~?俺の胞子は――ギャッ?!』〖?〗『何やってんだ相棒?!』
……なんだ何もしてないのに――いや、違う。“何かがいる”、しかもそいつが――攻撃した。
目に見えないはずの空間が、敵の動きに合わせてわずかに“揺れた”気がした。
敵が叫ぶ。理不尽な打撃に対する反応。透明な“何か”が、確かにそこにいて、敵を狙っている。
――JELLY OVER――
〖……ストマック社はもう存在しない、という事は後釜か、それとも残党か。〗
〖……登録に無いグラニュートハンター、いや、ニエルブの作品か。〗〖だる。〗
――CUP LADY――
また姿を消したか……面倒な奴だ。地面を撃って、煙を上げれば……よし、姿を現したな。
〖……?、おい、何して――ッ〗〖そのベルトはグラニュート用か?、ついでに貰ってやる。〗
〖クソッダルいことしやがって……俺は敵じゃない!〗〖それは仮面の下を見て決める〗
……新手のグラニュートハンターか。だが、酸賀からはそんな話は一切聞いていない。
味方の可能性もあるが……ベルトに装填されてるのがゴチゾウなら、俺はこれを知らん。
つまり……これは、俺や酸賀の手によらない“別の誰か”が生み出したゴチゾウってことか。
〖そのベルトに付いたゴチゾウはなんだ、誰が作った?〗
『仲間割れ。もしかして、俺達の味方……!?』『いや攻撃されただろ!んなわけない!』
――JELLY OVER――
〖そう……んなわけな――ッやめろってッ!!!〗〖なら質問に答えろ〗
『とりあえず引くぞ!2体同時に相手できるほど奢っちゃいない!』『ま、待てよぉッ!』
逃げたか……ならこいつだけでも仕留める。
「やっぱ気になって追いかけてきたけど……えぇ?!、ライダー同士で喧嘩ッ?!」
〖?……なんで幸果がここ――〗「こらこらこらっ!、ハンティ!これ味方ッ!仮面ライダー!」
……なんでだ?どうして幸果は、この姿が“俺”だと分かったんだ?。
組織と繋がってる……?、だからあんなにゴチゾウに似た菓子を扱ってたのか?。
……考えれば考えるほど、分からなくなる。
〖……本当に酸賀から何も聞いてないんだな……あいつ、だるい状況にしやがって〗
〖組織の人間か?、そのシステムもゴチゾウも見たことがない……何者なんだ?』
〖……ラキア・アマルガ、グラニュートでかつてストマック社と戦った仮面ライダーヴラムだ』
【仮面ライダーヴァレン(酸賀絆斗):ザクザクチップスフォーム】
ザクザクチップスフォームは“ザクザクチップスゴチゾウ”で変身する、ヴァレンシステムの派生形態。
全身を覆う”ザクザクチップスラング”は耐熱・耐摩耗・耐腐食に優れており肩部や頭部にも同様の素材が用いられている。
加えて、一部には“チョコのかかったポテチ”を思わせる意匠もあり、独特な外観を持つ。
装甲そのものは衝撃に対してやや脆く、割れやすい性質。
それを補うための工夫が施されていて、装甲は運動エネルギーを分散・逸らすよう特殊な湾曲形状で設計され、さらに重層構造とチョコレートコーティングによって、耐衝撃性能を大幅に強化。
これにより、基本形態であるチョコルドフォームと比べ、一定の防御性能を確保している。
変身後、武装としてヴァレンバスターから銃剣状に“ポテトチップスの剣”が生成される。
この武器は非常に脆く、正しい角度で当てなければすぐに砕けてしまうという大きな欠点を持つ。
しかし、これもまたチョコでコーティングすることで耐久性をある程度補える構造となっている。
もっとも、チョコを加えることで切れ味は落ちてしまうため、”耐久か、鋭さか”の選択を常に迫られる、クセの強い武器だ。
軽快な見た目とは裏腹に、装甲・武装ともにバランス型の設計であり、使用者の判断力が大きく問われるフォーム。
何かものを切る時にはいつもスパッっとではなくザクッっという風に感じるらしい。
――スペック
身長:187.4cm
体重:73.5kg
パンチ力:0.8t
キック力:1.2t
ジャンプ力:4.3m(一跳び)
走力 7.0秒(100m)