東方氷焔録   作:ゆーきあいのそんさん

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5章 -剣の道を歩むということ- 後編─雀螺side

 

 

ししょーに勝った日、その夜はなかなか眠れなかった

手に汗握る攻防、日々変わり続ける互いの剣戟、その末に見出した一瞬の隙を突いて繰り出したカウンター

自分でも驚くほどあの瞬間は冴えていた

 

 

「やったんだなぁ、ボクは」

 

思えば、本当に長い道のりだった

ここに突然放り出されて、出会うや否や突然刀を突きつけられて、とりあえず事情を説明したらここに住めるようになって…

 

 

たっくさん努力して、勉強もして、やっとこのレベルに辿り着いたんだ

 

「へへへ…頑張ったよね、ボク」

 

胸の高鳴りが、あの時から治まらない

 

氷雨クンといくらか話したりもしたけど、それでも変わらなかった

それくらい嬉しくて嬉しくてしょうがなかった

 

 

 

落ち着かなくて、ずっとずっと色々考えたり思い出したり

長いことそうしていたら、いつの間にか意識は遠のいて、ボクは深い眠りに落ちていた

 

 

 

その翌朝は、しっかり寝たおかげでとっても気持ちよく起きることが出来た

 

出来たのだけど。

 

「……これは何?氷雨クン」

 

「えーとまぁ、これには色々と事情があるらしくって…」

 

目覚めたボクを待っていたのは、謎の領域が展開された庭と、その中心で待つししょー

それから、その領域を囲むように集まった、幻想郷の住人達だった

 

 

 

「ボクは今とっても気持ちよく起きてきて、天気も良くて体調も万全で、体力も満タンで少しお腹が空いているんだけど、そんなボクを待ち構えていたこの状況はなんなんだい??」

 

「あの、これはですね……」

 

早口で捲し立てると、申し訳なさそうに氷雨クンは説明を始めた

 

 

ボクがししょーに勝ったことが、すぐさま新聞にされて広められたこと

それを知ったししょーが案の定すごーく抗議したこと

それで、再戦の場を設けるついでに紫サマの新発明の試験運用もすること

新発明の名前が〔決闘舞台(デュエルリング)〕であること

あとはその仕様も、簡潔にまとめてくれた

 

「なるほどね。話はわかった。面白そうだから受けて立とう!」

 

「これは勝者の余裕。けど、今度はスペルとかもあるから分からないぞ」

「大丈夫!!ボクなら勝てるよ!!!!」

 

食い気味に言い放つ

ししょーにも聞こえるように

 

 

紫「それで、今回使うデッキなのだけど」

 

「あ、ボクが自分で組んでもいいですか?」

 

紫「勿論。説明は要る?」

 

「大丈夫です!!勘で!!!!」

 

氷「どっから来るんだその自信は」

 

 

そうして渡された無数のカード、ざっくりと説明が書いてあるそれを、30枚選ぶ

ししょーと戦う想定だから、直接攻撃よりはカウンターみたいなものの方が効くと思った

 

どうやらスキルはししょーのと同じものが幾つかあるみたいだ

あとはボク特有のもいくつか、流石に数は少ないけどちゃんと有った

 

 

「これでーーーーーヨシ!いけるよ紫サマ!!」

 

紫「そう?じゃあ舞台に入ってちょうだい」

 

氷「気を付けてな」

 

「ボクに任せてよ!!!!!」

 

一筋縄じゃいかないだろうことはわかってる

けどボクだって成長したんだ、上手くやれるはずだ

 

 

[決闘舞台]に入って、ししょーと向き合う

 

妖「昨日のようにはいかないからね」

「とーぜん、それじゃ拍子抜けだからね!」

 

明らかにむっとするししょー

煽りに弱いのは知ってるから、こうしておくのがきっと布石になる

大丈夫だ。ここまでは想像通り

 

紫「さあ、決闘開始の合図をなさい!藍!!」

 

藍「えぇ……………で、決闘(デュエル)開始!!!!!」

 

いつの間にか紫サマの隣に控えていた謎の狐のスーパー美人、八雲 藍(ヤクモ ラン)さんが半ばヤケっぽく合図をした

 

合図と共にししょーが突っ込んでくる

切れるカードはまだ無いから────

 

跳んで、上から攻める!

 

妖「っ!?」

 

霊珠は5つ、ボクでも自由に行使できる

だから空を蹴る事だって出来るんだ

 

下段を空振るししょーの背後に降りて攻撃を仕掛ける

当然ガードされるけれど、攻撃を続ければ霊珠を削ることが出来る

つまり、攻め続ければ勝機が見出せる

 

ハズだった

 

                                      [折伏無間]───

「う、そ…ッ」

 

攻撃と攻撃の隙間を狙った、投げのスキルカード

人間離れした腕力がスキルカードによって補強されて、ボクを軽々と、しかし強かに地面に叩きつける

 

予想に反して痛みは薄いけど、肺から空気が押し出されて体勢を立て直すのに時間がかかった

 

                                        [伊吹瓢]───

 

こっちが隙を見せている間に、向こうはカードを補充するアイテムカードを起動してる

不味い、スペルを使わせちゃいけないんだ

 

───[孤月斬]

「させない!」

 

出始めに無敵時間があるらしいスキルを無理やり差し込む

 

                                        [炯眼剣]───

 

けど、通じない

「読まれ、てる!?」

 

短刀を構えるカウンター技、ボクも組み込んでるけど引くのは向こうが早かった

 

スキルを受け止められ、大きく弾かれた上で強烈な斬撃で吹き飛ばされる

痛みは薄い、けど、明らかに体力が削られている

 

「くそ、まだまだ!」

妖「乱れている。それではまだ…」

 

被弾でカードが増えている。だから

 

───[心抄斬]

足元を切り払いながら長い距離を突進するスキル

これをどうするかによって、次の手を決める

 

妖「………」

守りの構えをとるししょー

それなら!

 

───[白楼剣]

あらゆる攻撃をキャンセルするアイテムカードを差し込んで、眼前で攻撃を止める

そして

 

───[折伏無間]

ガードしてるなら、投げに行く!

 

妖「…やっぱり、まだまだだね、雀螺」

ししょーは自信に満ちた笑みを浮かべる

 

                                        [白楼剣・真]───

 

ガードの構えから瞬時にバックステップするししょー

 

───オリジナルは応用が利くなんて聞いてない!

 

「ずるい!!!!!」

妖「残念でした。」

空を切る私の手と、ししょーの悪戯な笑み

そしてししょーはもう一枚のカードを切った

 

                                 人鬼[未来永劫斬]───

 

 

ししょーが視界から消える

直後、打ち上げられた

 

身体が浮いて、目に見えない程の速度で斬撃を打ち込まれる

痛みは薄い、薄いけど、痛いものは痛い

痛みが蓄積するにつれて、身体が重くなって、どんどんと、体力が奪われていく

 

 

痛い、重い、苦しい

 

 

最後の一撃の為に高く高く飛び上がるししょー

その刃の冥い煌めきに、ボクは生まれて初めて

 

妖「これで…!」

「…ひッ」

恐怖というものを、知った

 

 

 

 

藍「決着!!勝者、魂魄妖夢!!!」

妖「ありがとうございました。」

 

観客達に一礼するししょー

対してボクは、地に伏して痛みに呻いていた

体力が削り切られて、仰向けになることすらできずに

 

 

妖「…雀螺」

 

歩み寄ってきたししょーが、手を差し伸べる

 

「ゴメン、動けないや」

 

力なく、掠れた声をなんとか絞り出す

 

本当に身動ぎ一つ出来ない

 

もうホントに空っぽだ

 

妖「雀螺、私はこれまで、あくまで武術の一つとして剣を教えてきました。けれど」

 

ししょーは言い聞かせるように、語る

 

妖「忘れないで。剣は、武器は、あくまで命を傷付けるもの。それを握る事の重さを、それを振るう事の意味を、絶対に忘れてはダメ。」

 

「……はい。」

 

確かに、忘れていたかもしれない

ししょーとの鍛錬では、突き付ける事はあっても斬り合う事まではしなかったから

 

妖「…でも、雀螺の真っ直ぐさは、何にも勝る雀螺だけの武器だと思う。だから、今までを否定するんじゃなく、全部受け止めて、受け容れてほしい。それがきっと、貴女の剣の道になるから。」

 

「…はい、師匠」

 

ぼろぼろの身体に、深く優しく染み渡るような、暖かくて落ち着いた声

 

 

あぁ、やっぱりまだまだ、敵わないな

 

悔しいけど、完敗です、師匠

 

 

声には出せなかったけれど、伝わっているといいなと思った

 

満足したような、踏ん切りがついたような、一つの答えに辿り着いたような気がして、ふと気が抜けてしまって、ボクはそのまま意識を手放してしまったのだった

 

 

 




前話から初対面のはずの紫の描写が抜けていることに気付いたので、加筆修正してあります
どんな表現をしたのか気になる方がいれば、読み返してみてください

自分で気付ければいいのですが、そうもいかないことが多いため、気になった点があればお気軽にコメントしていただけると助かります
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