「し〜〜しょ〜〜〜ししょ〜〜〜〜しょ〜〜〜〜〜しししょ〜〜〜〜〜〜〜〜」
「もう!なに!!!」
掃除をする師匠にだる絡みをする縁側の虫はだーーれだ
そう、ボクです
というのも、最近は修行も一段落して比較的緩やかな日々が続いているのだ
伸び代がなくなった、ってワケじゃないはずなんだけど、ライバルが居ることって大事だったんだなぁなんて思っているのだった
「そんなにつまらないなら、今日は少し遠出しようか?」
「ほんと!!!???どこ行くの!?!??!!!??」
ボクは飛び起きた
なんなら跳ね上がってその場で立ち上がった
「そうだなー、香霖堂なんかどうかな?」
「うぇ、あのオニーサンのとこ〜?」
「霖之助さん、苦手だったっけ?」
「苦手というか、ナントイイマスカ……」
香霖堂には、前に一度だけ行ったことがある
よく分かんないモノが沢山あって、あんまり楽しくなかった
それにあのヒト、こーりんは悪い人じゃないのは分かるんだけど、なーーーーーんかすごい訳知り顔で話しかけてくるから苦手だった
「嫌ならいいけど、雀螺って自分の武器のこと何も知らないんじゃない?」
「───あ、確かに。」
言われてみればそうだ。
ボクの四枚のスペルカード、四本の武器
それらの性能どころか、名前すらボクはまだ知らなかった
でも、こーりんの<道具の名前と用途が判る程度の能力>ならそれがぜーんぶ解決する
たまになら頼ってあげてもいいかな、なんて思った
そんなこんなで、幽々子サマの許可を得てボクと師匠は下界へ向かったのだった
道中何度かザコに絡まれたりしたけれど、ボクらの敵じゃない
というか、師匠がすごい勢いで片付けてしまった
つまんないの
「たのもーー!!!!!!!!!!」
妖「こんにちはー」
霖「おや、珍しいお客さんだね。いらっしゃい。今日はどんな用で?」
笑顔で出迎えてくれたのはこーりんだった
いつも変わらない、誰にでも向ける同じ笑顔
やっぱり、つまんない
妖「はい。今日は雀螺の武器を視てもらいたくて」
「はいはーいボクの用事でーす」
霖「なるほどね。わかったよ、視せてくれるかい?」
「はーーーい」
ボクは〔ポケット武器蔵〕から四つの得物を取り出してこーりんの前に並べた
霖「これはこれは…いやはや、流石紫様の道具だね」
「もう全部わかったの?」
霖「まあ、ある程度は。解説していくね」
妖「よろしくお願いします」
そこからの話はウンチク?とかも混じって長ったらしかったのでボクが要約して、ついでにスペルごとメモしておくことにした
秘刀[ツルギマイ・一閃](イッセン)
居合の構えで突進攻撃をするスペル
使用武器:霊刀/夜鷹(ヨダカ)
特性:連撃が続くほどランクが上がる
光を吸い込むような漆黒の直刀
秘刃[ツルギマイ・二葉の撃](ニヨウノゲキ)
素早く連撃を加えるスペル
使用武器:霊剣/刃二重(ハブタエ)
特性:攻撃時の刃の速度がランクに比例する
根から分かれる短剣/双剣
秘槍[ツルギマイ・朧三段](オボロサンダン)
目にも留まらぬ三段突き、気分によって増えたり減ったり
使用武器:霊槍/御神の標(ミカミノシルベ)
特性:対面が格上の相手であるほどランクが上がる
身長ほどの長さの柄と、その半ばまでを覆う刃の特異な薙刀
秘剣[ツルギマイ・四峰圧壊](シホウアッカイ)
武器の性能を活かした超重量攻撃
使用武器:魔剣/月蝕(ツキハミ)
特性:対面の弾幕を根こそぎ吸収してランクを上げる
身の丈を超える大きさ、白銀のモノリスを彷彿とさせる大剣
霖「圧巻だね。いや、こんな得物ばかり喚び寄せる雀螺ちゃんも相当だとは思うけれど」
「いやーーーーーーーまぁ、それほどでもあるかも?」
妖「改めて見ると中々、こう…えげつないですね」
褒められてる?のかな
きっと多分褒められてるんだと思う、ことにした
これからは名前を呼べることだし、よしとしよう
霖「現状これらは特に制約もなく使える武器だけれど、"月蝕"にだけは気を付けた方がいいかもしれないね。その子だけは制御が怪しく、また一度振るってしまえばそれを止めることも困難だ。多用しないことをオススメするよ」
「りょーかいです」
一通り確認して"蔵"に収納する
なんだかんだで、頼ったのは正解だったのかな
妖「使いこなせば強いモノばかりだね。そのうち本当に負かされちゃいそう」
「イヤイヤ…師匠はもっとエゲツナイでしょ」
妖「?」
それはそれとして、"刃二重"が短剣にもなることには気付かなかった
手に取って合わせてみると、互いが吸い付くようにひとつになったのでだいぶ驚いた
鞘を作ってあげれば常に携帯できそうだから、少し考えてもいいかもしれない
普段は"夜鷹"を差しておくのもいいな、とは思った
刀だから師匠とお揃いだし、残りふたつは携帯するには大き過ぎるし。
妖「じゃあ、とりあえず用は終わりかな。また来ますね」
霖「うん。次は買い物に来てくれたら嬉しいな」
「買いたいようなものを並べてくれたら考えてあげよう」
霖「…それはごもっとも、だ。またおいで」
「はーーい」
そうして帰路につくボクたち
外に出るともう夕暮れ時で、早くしないと道がわからなくなってしまう頃だった
「そうだ雀螺。氷雨くんは妖力を扱っていたようだけど、雀螺だって霊力は使えるんだよ」
「えっ!!!!!!」
驚き過ぎてめちゃくちゃ大きい声を出してしまった
師匠は隣で耳を塞いでた
「…ヒトは基本的に、誰でも力を有してるものなの。それにあれだけの得物を扱うには、それに負けないチカラが要る。けれど雀螺はもう、あの得物たちをある程度使えてるでしょ?」
「もしかしてボクってかなり強かったりするの?」
「すっっっごく今更。私と闘えるくらいだからね、幻想郷の有名人相手でも程々には渡り合えるはずだよ」
「おぉ………」
ちょっと感動する
でも、なぁ
「氷雨クンは、もっとずっと強いんだよね」
「そうだね。ヒトは死線を越えると強くなる、なんて言うけど、彼は正にそれを体現してると思う」
「ボクも頑張らないとなぁ。センパイだもんね、負けたくないや」
「うん。それじゃあ、帰ったら霊力を使う練習を始めようか」
「やる気出てきた!!がんばるぞー!!!!」
帰り道を歩きながら、これからの事を考える
やることは沢山、目標は高く、それでいて辿るべき道は見えている
こんなに楽しいことはない
氷雨クン、ボクはもっとずーーっと強くなるよ
サボってたら置いてっちゃうから、キミも頑張ってよね
彼女は愉しげに、足取りも軽く、白玉楼へと帰っていく
その身に薄く纏う霊力は、微かに、しかし確かに主に応えようとしていた
その色に気付く者は、まだ誰もいない