ほんのりとアイツ─氷雨の妖力を感じるパルスィを、結界に封じて搬送する
チカラの融合を難無くこなしてみせた、新参の外来人
その勘に感心しながら、同じくらい末恐ろしさも覚える
───本来、ヒトは一つのチカラしか持ち得ない
仮に親の関係で先天的に属性の違うチカラを持ってしまうことがあっても、それは成長と共にどちらかへ偏り、消えてしまう
仮に何らかの事由で後天的に属性の違うチカラを得てしまったとしても、必ずどこかで異常を来たして失ってしまうものだ
だというのに、アイツは生まれ持つ霊力と、後天的に得たであろう妖力を両方操ってみせた
それどころか、二つを練り合わせて使ってみせたのだ
私の見識が正しければ、アレは常人の域をとっくに超えている
「"シンキ"…か。」
──神氣
現存する神々の扱う神力とは違う、更に旧く強い神のチカラ
相対する複数の力を、高い次元で融合させた時のみ顕れるとされるそれは、私達の理解を超える莫大な力を持つという
名と言い伝えだけが残り、使役できる存在は既に居ないとされていた。はずだった
アイツが特異なのか、それとも…
……いや、それよりも問題なのは
「この私が、気圧された…なんて」
「ん、あれ…」
「起きた?おはよう。」
考えていると、結界の中のパルスィが目を覚ました
ゆっくりと頭を振っている
状況がわかっていないようだったので、軽く説明をしてあげた
「そ、か…また私、迷惑かけて…」
「気にしなくていいわ。あんた一人の暴走だったら私も怒ってたけど、そういうことではなかったみたいだし」
「……うん」
ひとまず考えるのはやめた
さっさと送り届けて帰ることにしよう
勇「おや、霊夢じゃないか。こんな夜更けに…ッてオイ、何があった。」
私の後ろに追従する結界、その内の弱りきったパルスィを見て、勇儀は顔色を変える
「まあ話を聞きなさい」
萃「パルスィは私が運んどくから、後で聞かせてね」
「それは勇儀から、ね」
徐に湧いて出た萃香へパルスィを任せ、向き直る
事情を説明すると、勇儀は困ったように頭を搔いた
「そりゃあ難儀な、というか難解な話だね。結局誰の仕業かは分かってないんだろう?」
「えぇ。そもそもあの札に記された陣は初めて見るものだったし、効果を失ったあとに、作用していたはずのチカラの残滓すら残っていないのも異常よ」
ふたりでうんうん唸りながら考えてみるけど、答えは一向に見つからず
「うーん…ひとまず、事情は分かった。館の連中には黙っておくよ。一鬼辺りを使えば誤魔化せるだろうし、無為に混乱を呼ぶのも悪いだろ」
「宜しく頼むわ。あとは、例の氷雨と萃香の手合せの件だけれど。」
「…あぁ、悪いけどそれは予定通りに進めてもらえないかい?萃香のヤツも楽しみにしてるし、何より」
「そっか。例の催しもあるんだったわね」
「そうなんだよ。だから済まないけど、氷雨の方の調整を頼めるかい?」
「──────え゙、私が?」
「他に頼めそうなやつが居ないんだよ。萃香は論外、私も一鬼も暫く忙しくてさ」
「そう…………ね…………………」
深く、大きく、ため息をついた
事情は分かる。分かるが故に、逃げ道が無いことも解ってしまった
首を突っ込んだことを後悔する
こんな事になるなら放っておけばよかった
とはいえ、こうなっては仕方がない
「私に任せるって言うんなら、当日アイツがどう育ってても文句は言わせないわよ」
「大丈夫さ。博麗の巫女サマの指導なら間違いないだろ」
へらへらと笑う勇儀
引っ叩いてやろうかと思うくらいの笑顔で、むしろ毒気を抜かれる
「わかった、わかったわ。じゃあパルスィの事は宜しくね」
「任された。元よりウチの子だからね、うまいことやってみせるよ」
ひらひらと手を振って、帰路につく
考える事が、沢山ある
沢山ありすぎて気が滅入る
面倒になったら魔理沙に押し付けようかな、なんて思った
とはいえ、博麗の巫女として無視出来ないのも事実だ
あの、今ではまあまあ強いはずのパルスィが暴走させられたのだから
誰の仕業で、何を狙っていたのか
それはどの程度の影響を及ぼすのか
他の誰かにあれが起きる可能性はあるのか、否か
「……異変、か。いつぶりかしらねー、こういうのは」
どこか楽しげに彼女は呟いた
来たる戦いの日に思いを馳せて
──────────────?side
「ンンー、どうして水橋ちゃんの制御が解けちゃったんだろ。再接続も出来ないし、もしかしてあの子のチカラが原因かな?」
暗がりで呟く人影が、ひとつ
軽薄な言葉とは裏腹に、その声音は低く重い
「強くなりそうだから早めに潰しときたかったけど、まぁ負けちゃったならしゃーない。成長の幅を読み違えたワタシのミスだし」
影は思わぬハプニングにうんざりしながら、同時に愉しげな声で言う
「いやはや、想定外ってのは困るけど、今回ばかりはどうしようもないか。相手が相手だし、バックも堅いと来てる」
「…んでも、ワタシにゃ関係無い。なんともならなくなったら"前"と同じくどうにかしてやりゃいいし。くっくっ」
不敵に笑うその様子からは、相当な自信と余裕が感じられる
「さァてさて、次はどの"コマ"を使おうかな。今度はじっくり時間をかけて、少しずつ詰めていくことにしようか。」
ゲームの作戦でも考えるように、それは軽々しく言葉を転がす
暫く悩んだ後に、その口角が吊り上がり
「ヨシ、決めた。楽しみにしててね
それはまるで、愛しい人の名のように
────カ ン ナ ギ ヒ サ メ く ん ♡」
彼の名を口にするのだった