東方氷焔録   作:ゆーきあいのそんさん

29 / 36
11章 -第六回旧都花火大会- 中編

 

 

「折角の祭りだ!派手にいくよ!!!」

「望むところ…!!」

 

                                     祭符[乱れ大玉大盤振舞]───

 

全く聞いた事のない術が起動される

萃香さんが突き上げた手には虹色に耀くスペルカード

 

眩い閃光と、空間を圧倒する爆音

眼前で爆弾でも炸裂したのかと錯覚するほどの衝撃

 

それらを経てようやく両の眼が、彼方のソラを覆わんとするほどに展開された弾幕を捉えた

 

「うッッッそ、だろ……」

 

【おーーーッと萃香さん、初手からガン攻めです!!何段も飛ばして大盤振舞から発動してきました!!!!!】

 

「オイオイ、氷雨のやつ固まってねぇか?」

「あー…そういやアイツには言ってなかったわ」

 

魔理沙と霊夢は、遠巻きでそんな会話をしている

霊夢は今回の対戦相手が萃香である事を知っていて、大まかなスペルのラインナップを氷雨に教えていた

しかしこの花火大会において、カタキ役は本来の自身のスペルを禁じられていた

 

代わりに、見た目も火力も派手な[祭符]という系統のスペルを各々で開発して使用することになっていたのだった

 

「にしても、萃香のやつは開幕からトバし過ぎじゃないか?」

「そうでもないわよ。というか、あの子にとってはあれもそんなに強いスペルじゃないはずだし。」

「マジか…鬼ってのはやっぱすごいんだぜ」

 

 

 

圧倒され硬直する俺とは逆に、怒号のような歓声がその場を支配していた

大規模でド派手なスペルを開幕から切ってくるセンス

流石、としか言えない

けど

 

「…俺たちなら、勝てるよな」

「無論です。信じて。」

 

静かに、傍らの相棒と言葉を交わす

 

俺たちだって、鍛錬を積んできた

その成果を見せる時が来たんだ

 

───[壱式・劫火]

 

[焔]の刀身を包む超高密度の妖力が脈打ち、紅ではなく蒼色に燃え上がる

 

燃焼の勢いは以前には及ばず、寧ろ静か過ぎるほどだった

けれど、これこそが正しい姿であると、俺と焔は認識している

 

まるで陽炎のように揺らめく刃は、それそのものが炎のようにも見えた

 

「そォら!!なんとかしてみせなァ!!!!!!」

 

萃香さんは手を振り降ろす

同時に、彼方から無数の弾幕が迫ってくる

 

対する俺は、蒼く揺らめく刃をただ前へと突き出した

 

【これは氷雨さんッ、勝負を投げ──いや、そんなことは無い!!飛来した弾幕が消えていくぞ!?!!?!?】

 

 

「おい霊夢、アイツの妖力ってあんなのだったか?」

「……いいえ。少なくとも、パルスィと戦う前までは他の妖怪連中と同質の妖力だったわ」

「…だよな。」

 

地上から眺める2人の目には、氷雨が操る異質な妖力の渦が映っていた

 

 

[焔]を覆い隠すそれは光を捻じ曲げる程の密度であり、最早障壁と呼んでも差し支えない程のものだ

 

そして、彼に向けて降り注ぐ弾幕の流星群は、ひとつの例外も無く着弾する前に蒸発する

 

会場に満ちていた歓声は、既に消え失せていて

 

人々はただ、困惑していた

 

 

「そんなものですか?萃香さん」

 

「…言うじゃないか。なら、手加減はナシだからね」

 

「そうこなくっちゃ」

 

無意識に、口角が上がる

ノってきた、というやつだろうか

 

                                        祭符[大江山悉く-MATSURI-騒ぎ]───

 

スペルの起動と共に、彼女は空を裏拳で叩く

すると、宙が、割れる

 

カシャン、と

 

薄氷が砕けたような音

 

崩れ落ちる昏い宙

 

そして現れた涅(クロ)いキャンバスは、徐々に、隙間無く、極彩色の光弾で満たされる

 

【ここで萃香さん自慢の大技!!!! 大江山悉く-MATSURI-騒ぎだァァァア!!!!!!】

 

\\\\\ウオオオオオオオオオォォォォォ!!!!!!!!!!/////

 

これが祭りだ、そして私が主役だと、そう言わんばかりの超大規模なスペルだった

 

観客達も湧いている。

その声は最早、歓声より絶叫に寄ったものに聴こえた

 

でも

 

「さァいくよ!!!アンタの力を見せてみな!!!!!」

 

「応!!!!!」

 

負ける気は、少しもしていない

 

やがて光弾は、美しく規則的な軌道で降ってくる

いつか見せてもらった幽々子さんのそれより、もっと隙間無く

いつか見せてもらった霊夢さんのそれより、更に美しく壮大で

 

だからこそ、これからそれを壊すのだと考えると、言いようのない興奮を覚えた

 

「こっちこそ、これからが本番だ。そうだろ?」

「えぇ。その通りです」

 

相棒と息を合わせて、新たなスペルを起動する

 

───[伍式

 

ここから先は、声を乗せる

 

「「焔牙(エンガ)───

 

刃を下げ、脈打つ妖力の波を感じ取り

 

ドクンッ

 

その、最も大きな波を捉えて振り上げ

 

────天ッッッッッ焦ォォオ(テンショウ)!!!!」」

 

膨れ上がった莫大な妖力の炎を、斬撃に乗せて射出する

 

燃え盛る半月状の刃は、触れる弾幕全てを消し飛ばしながら前進していく

 

高密度で格子状の弾幕も、幾何学的で精細な弾幕も、大玉も小玉も関係無い

 

相対するあらゆるモノを灼き尽くす

これが、俺達の新たなスペル

[伍式・焔牙天焦]だ

 

【対する氷雨さん!!負けじと新スペル、焔牙天焦だァーー!!!!えげつない火力を見せつけていくゥ!!!!!!】

 

「やるねェ…けど、軌道が見え見えだよ!!」

 

宙から降る弾幕を総て灼き尽くしてなお進む[焔牙天焦]は、しかしその弾速を大きく落としていた

 

故に命中には至らない

そう。これがこのスペルの唯一の弱点だ

 

でも今はこれでいい

 

「でもこれでアンタのスペルもお終いだ!!次に行こうぜ!!!!」

 

「いい度胸だ!!!じゃあ次で最後にしようじゃないか!!!!!」

 

【ラストスペルの宣言です!!!まだラインナップはあったはずですが、萃香さんをここまでノせた相手は初めてですよォ!!!!この先は我々も知りません!!!!!どんなスペルを披露してくれるのでしょうかッッ!!!!!!!】

 

\\\\\\\\\\ウオオオオオオオアアアアアアア‼️‼️‼️‼️//////////

 

啖呵の切り合いに観客も盛り上がる

 

それに伴って、萃香さんの発する妖力も徐々に勢いを増していく

 

空に蹲り、力を溜めて、溜めて、これでもかというほど溜めて

 

彼女の姿が自身の妖力の渦に呑まれて歪み始めた頃に、ようやくそれは起動された

 

 

 

 

«LastWord»

───祭符[凡ゆる命と萃夢想]

 

 

途端に、視界が闇に鎖される

 

数秒の後に、微かな火が灯る

 

 

それはゆっくりと、しかし確実にその数を増し、まるで命の巡りのように流れ、はたと消えてはまた灯り、繰り返す度に強く輝く星となる

 

 

 

妖力を見た

 

霊力が滲み出すのも見た

 

魔力が吹き出すのも、見た

 

未だ見たことの無い色をした力が、この空間を満たしていくのを見た

 

 

 

やがて星は形を為した

 

人の形を   鬼の形を   動物たちの形を

形容し難い数多のいきもののカタチを

 

いつか、彼女は言っていた

 

『鬼である私たちを信じきれないのは分かるけどさ』

 

そして、スペルの名前

あらゆる命と、萃まる 夢を 想う

 

 

 

きっとこれは、彼女の全てを詰め込んだスペルなのだ

だからこそ壮大で美しく、故にこそ何よりも力強い

 

恐ろしくはある

なにせこの場に命を保護する機能は無い

凌ぎ切らなければ最悪死に至るかもしれない

 

 

 

けれど、それよりも嬉しかった

 

俺の力を認め、受け入れ、その上でこれほどのスペル(想い)を向けてくれたことが

 

彼女はきっと信じている

俺が生き残ると

 

 

 

だから応えなければならないんだ

そうだろ、焔

 

─えぇ。ですから、我らの生命を、僅かばかり焚べましょう─

 

「これが私の全部だ!!!!!受け取りなァ!!!!!!!!」

 

響き渡る怒号のような叫びと、光を取り戻す視界

揺れ動き、俺を捉える夥しい数のいきものたち

 

微かに滲む手汗と共に、俺は”焔”の柄を強く握り直す

 

この胸の火を、刃へと流し込むように

 

 

 

───神位[

 

 

呼吸を合わせる

燃え滾る炎の脈動を捉える

 

蒼く燃える妖力は、色を喪い─

 

 

 

大きく、息を、吸った

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。