東方氷焔録   作:ゆーきあいのそんさん

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11章 -第六回旧都花火大会- 後編

 

 

 

「なぁ、霊夢。アレは大丈夫なのか…?」

「どうかしら。祭符とはいえあの出力だし、被弾したらタダじゃ済まないでしょう。アンタの全力マスパでもキツイんじゃない?」

 

湧き上がる観客達とは反対に、冷静な分析を続ける二人

その視線は、萃香の展開した弾幕から、氷雨の放つ尋常ではない妖力へと向けられる

 

 

「それにアイツのチカラ…聞いたことだけはあるけど、もしかしてもしかするのか?」

 

「…私が教えたんじゃないわ。天然で、しかも無自覚。でも紫と、あれの相棒は何か知っていそうね」

 

 

パルスィの時と同じだ、と霊夢は考えていた

自らの意思で神氣を練り出し、それを臆せずスペルに転用する

 

常識外れで、故に末恐ろしい

霊夢はそう思いながら、無意識に自身の霊力を励起させていた

 

きっと大事にはならない。何か起きそうになれば紫が間に入るはずだ

そう考えはしても、身体は経験則から準備を整え始める

 

…直感は、直ぐに確信へと変わることになった

 

 

 

───神位[伍式・焔呀裂天衝]

 

美しく壮大で、最早それ自体が生命の創造とすら呼べる、萃香のスペル

 

対する氷雨は

 

 

「「さぁ、これで幕を引こう」」

 

”焔”から、白く眩く煮え滾る、超長大な刃を形作っていた

 

[焔牙天焦]を、放たず手に握り続けるそのスペルは

 

刀と呼ぶにはあまりに大きく

 

炎と呼ぶにはあまりにも無機質で

 

派手さだとか、力強さだとか、そういう次元のモノでは無かった

 

 

それはただ、そこに有るだけで、その場に居る全ての”いのち”に本能的な危機感を抱かせるような存在

 

 

修行の際、霊夢さんは言っていた

 

『アンタさ、その生命力を込めるってやつ。当然だけど多用すれば命に関わるわよ。それでも使うなら止めないけど、自覚だけはしておきなさい』

 

とかなんとか

 

それはそうだ。

知っていて、俺はこの力を使っている

 

生き延びる為に、想いに応える為に、そして

 

ただ、勝つ為に

 

 

 

【………!!…………………………!!!!!!】

 

文さんがなにかを言っている

けれど、よく聞こえない

 

構わない。

 

 

 

眼前に迫る無数の"いきものたち"へ向けて

力の限り、咆哮を上げた

 

 

刃を一振りする度に、幾百の灯が白光に呑まれて消えていく

 

妖も霊も、魔なる者も、神なる者でさえ

 

白い焱に触れては等しくそのカタチを失っていく

 

夥しい数の”いきものたち”を、斬り伏せ、焼き尽くし、薙ぎ払い

 

無限に等しい物量で圧されても、迸る様々なチカラの奔流に呑まれても、脚は止めずに立ち向かう

 

軋む身体を、怯む心を、揺さぶられた感情を

 

支えるように、奮い立たせるように、強く堅い意思で以て

ただただ、その手の刃を振るい続ける

 

ゆっくりと、しかし確実に白い焱はその勢いを落としていく

 

だけど構うものか

 

しばらくして、数多の星々は、その全てが灰塵へと帰した

 

息は切れている

体力も尽きかけている

満身創痍、という言葉が似合うだろう

 

けれど、俺は、立っている

 

 

 

 

「───大したもんだ。これで残るは私だけ、か。………構えなよ。」

 

促されて、迎え撃つ為に、”焔”を後ろ手に構える

 

白い焱は既に、刀身に薄く纏う程度まで弱まっている

強く握り締め続けた柄には、赤黒いものが滲んでいた

 

でも、あと一度だけ

 

 

                                        祭終奥義[ユメの終わり]───

 

 

宙に霧散した彼女の妖力が、その拳に集束する

 

それはまるで、夜空を廻す北極星のように、今日一番の輝きを放っていて

 

冗談キツイ、と乾いた笑いが出た

 

でも、あと一振りだけ

 

 

『えぇ。貴方となら、二人なら』

「あぁ。お前と二人なら…」

 

ぐっ、と”焔”を握り締める

 

そっと、白い指が添えられる

 

 

 

前を、向いた

 

 

 

咆哮を聞いた

 

 

応えるように、咆哮を上げた

 

 

 

 

 

次の瞬間、閃光と共に、二つの流星がすれ違い

 

そして、その日最も大きな光の華が咲いた

 

 

 

 

 

 

 

 

【決着!!決着です!!!!立っているのは誰だァーーーー!!?!??!!??!??!?】

 

華が消え、煙だけが残り、その煙も少しづつ晴れていく

 

 

 

「────完敗だ。アンタの勝ちだよ」

一「大丈夫か…?」

 

先に現れたのは、一鬼さんに支えられた萃香さんだった

 

霊「バカね。こんなんじゃ勝敗の付けようが無いじゃない」

「…申し訳ない……」

 

次に現れたのは、霊夢さんに支えられた、俺の姿

 

結果は、相討ちだった

 

 

 

 

【なァーーーーーんとォ!!!本大会始まって初の引き分け!!!!!引き分けです!!!!!!!!素晴らしい戦いを見せてくれたお二人に拍手を!!!!!!!!!!!】

 

大興奮の大音量

そして、響き渡る歓声と割れるような拍手

 

ぼろぼろの身体には、キツい

 

けど、とても快い

 

 

全力を出し切った

それで、引き分けた

 

今の天井は、そこってことだ

祭符とはいえ萃香さんのラストワードと、対等に渡り合える程度の戦力

 

よくやった、と思う

 

 

たぶん。きっと。

 

 

【キミの実力は私が認めてあげるよ。皆も、新たな仲間へ、もう一度拍手を!!!!!】

 

いつの間にか、文さんのマイクは萃香さんへ渡っていた

 

彼女の言葉で、今度は、今度こそ、俺への歓声と拍手が上がる

 

 

霊夢「ほら、応えてやんなさい」

「……はい」

 

文「氷雨さんも、どうぞ!」

 

マイクを回される

 

 

考えがまとまらない。けど、なんか言わなくちゃ

 

【あー…えっと、今回はありがとうございました。これからも何やかんやあると思うけど、改めて宜しくお願いします…!】

 

残りの体力を振り絞って、声を張る

 

\\\\\\\\ワァァアアアアアアア////////

 

開戦前の冷ややかな声ではない

 

暖かな賞賛の声が、聞こえた

 

思わず笑みが溢れる

 

『ええ。貴方はよく頑張りました』

─うん。ありがとう─

 

 

 

...あれ、でも、なんでこれで引き分けなんだっけ...?

 

 

ぼうっと考えながら、霊夢さんの手を借りて着陸する

 

このあとすぐに花火を打ち上げ始めるとかで、俺たちは人気のない旧都の一角へ退散した

 

 

後で知った事だが、引き分けになったのは文さんのアドリブだったそうだ

なんでも、初見の大技にテンションが上がってしまい、勢いで勝敗をそのスペルに託してしまったのだとか

 

...引き分けで済んでよかった

もし力及ばず敗れていたら、その前に突破したスペルの分はノーカンにされていただろう

 

 

その後はというと、軽い治療を霊夢さんに施されて俺は解放された

というか放棄された。

ある程度の実力があると見なされると扱いが雑になるらしい

 

それはそれで複雑だけど、まぁ嬉しくはある

間違いなく力はついてきてるってことだしな

 

 

 

ちなみに、最初の懸念通り花火の打ち上げでは少々ケガ人が出たそうだ

けどこの花火大会においてはそれは勲章のようなものらしく、この先半年の運が良くなると当のケガ人は笑っていたとか何とか

 

たしかに、あれだけのヒトの群れから数人しかケガ人が出ないならそういう逸話に繋がっても不思議ではなさそうだ

 

 

花火は、とても綺麗だった

疲労困憊だったのもあるかもしれないけど、今まで見た中ではいちばんだったと思う

 

光、音、衝撃波、歓声、それから掛け声

ありきたりな表現だけど、最ッッッ高だった

 

これもきっと、とてもいい思い出になるだろう

 

 

 

【それではこれにて!!!第六回旧都花火大会を終了とさせていただきます!!!!!皆様、帰路お気を付けて!!!!!!!】

 

 

そうして、興奮冷めやらぬ勢いのまま各所で荒事が起こったりしながらも、花火大会は無事?終了したのだった

 

 

 

「霊夢さん、ありがとうございました」

 

全てが終わり一息ついて、人混みの中からようやく見つけ出した彼女に駆け寄り礼を言う

 

「気にしないで。思ってたよりはずっと大人しい結末だったし、よくやったわよ、アンタ」

 

ばしばしと背中を叩かれた

でもそれは優しくて、激励されてるようで、頬が緩む

 

 

「でも、無理し過ぎ。ガワはまだ人間なんだから、気を付けなさいよ」

緩んだ頬を抓られて、苦笑で返した

 

 

 

そんなこんなで祭りもひと段落

少しして、人も疎らになり落ち着いた頃

 

遠くからドタバタと騒音が聞こえた

 

 

 

というか近付いてくる

なんとなく嫌な予感がして、音の方に振り向くと

 

 

「「「打ッち上ッげだァ〜〜〜〜!!!!!!!!」」」

 

「「うわああああ!?!??!?」」

 

 

 

俺たちは為す術なく担ぎ上げられ、すごい勢いの勇儀さん達に、館へと連行されていくのだった

 

 

 

 

 

 

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