東方氷焔録   作:ゆーきあいのそんさん

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13.5章 -空振り-

 

 

 

 

─雀螺side─

 

ボクは、ヤツの住処に来た。

ちょっと驚かせてやるつもりで、勢いよく戸を開き

 

「たーーーのもーーーーーー!!!!!!!!!」

そう叫んだ

けれど

 

「えっと…どちら様ですか…?」

「誰ェ!?!!!!!!?」

 

そこに居たのは、小さなネコ娘だった

 

 

 

旧都の端、数日前まで氷雨が滞在していた家

雀螺がそこで出会ったのは、清掃のために来ていた妖怪

名を橙(チェン)という、八雲の家に連なる猫又の少女だ

 

「つまり、ボクは遅かったワケだね」

「そういうことです。なのでお引き取りください」

「そうしたいところなんだけど、宿のアテがここにしかなくてさァ…」

 

「うーん…そういうことなら、ひとまず勇儀さんに話をしてみては?」

「あ、聞いた聞いた。ココのこわ〜い女鬼さんでしょ?イヤなんだよねーボクそういうひと。話通じなさそうでさ」

「………そう、らしいですよ?勇儀さん」

 

「ェ゛ 」

 

なんだか、重たいものを背後から感じたボクは、ゆっくりと視線を下に向ける

居る。背後に。大きい影が。

 

勇「おやおや。お嬢ちゃん、ヒトを種族で括るのは良くないねェ??」

 

「そ…そ〜うデスよね〜〜ぇへへへ」

 

強ばる表情筋をなんとか歪めながら、声の主の方へ恐る恐る振り返る

 

あれ?なんだか思ったより背丈があるわけでもない

 

というか、思ったよりもゴリラっぽくないぞ?

 

と、いう、か。

 

「凄い美人さんじゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「はァ!?!?!!???!?!!?!??!?」

 

目を輝かせる雀螺と、狼狽える勇儀

形勢は見事に逆転していた

 

ちなみに橙は我関せずと掃除に戻っている

 

「すごいすごい!!顎のラインが滑らかだし目もくりっくりなのに力強いし鼻は高いし角はめちゃくちゃカッコイイ!!!!」

「ちょ、いや、待ちな、アンタ!こら!!!」

 

浴びせ掛けられる賛辞の雨霰に、勇儀はたじたじだった

鬼は嘘を嫌う。それは裏を返せば、真の言葉ならダイレクトに突き刺さるということでもある

 

 

最悪かに思えた2人のファーストコンタクトは、終わってみれば最高のものであった

 

そうして雀螺もまた、旧地獄での修行を始めることとなる

 

のだが、それはまた、別のお話───

 

 

─??side─

 

時は遡り、氷雨達が旧地獄を発つことが決まった頃

 

「あーぁ、クソ。八雲紫め、やっぱりオレの動きを読んでるのか?」

 

暗がりで、男が毒づく

 

「あの大会からしばらく張ってるってのに、アイツら微塵も動きやしねぇ。オレのチカラも有限だっつの」

 

男は深呼吸、もとい大きな大きなため息をついて、ギラりと視線を虚空に向けた

 

「まぁでも、損失は最小限で済んだワケだしそろそろ諦めるか。つーわけでヤマメ、お前は帰りな」

「…………うん」

 

傍らに控えさせていた土蜘蛛を見送って、男は大穴に背を向ける

 

土蜘蛛に張らせた毒の網は、やがて間を置かず霧散するだろう

願わくばその残滓が、少しでもアイツらを苦しめますように

でなきゃオレの地道な努力が報われねぇ

 

「直接手を下すにはまだ早い…かといってチカラを付けられ過ぎてもめんどくせェんだよな。はーーぁ、どーすっか…」

 

憤りを隠さず、男はガリガリと頭を搔く

 

「いてッ。まだ治んねーのかよ、不便だな全く」

 

指の先には、大きなカサブタがひとつ

それが割れて出血している

自らの行いの結果だが、そこから伝わる鈍い痛みは、男の苛立ちを加速させた

 

「こっちでもさっさと寿命延ばしとくか。んーでも過程が中々めんどくせェし、どっから攻略し直すのがいいかな…」

 

悩む男は、やがてその身を夜闇に秘す

 

その足音は誰にも聞かれることは無く

 

しかし確かに、幻想郷に響くのだった

 

 

 

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