東方氷焔録   作:ゆーきあいのそんさん

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3章 -その男、博識- 後編

 

 

魔「それよりさ、霖之助。コイツの刀の話だよ」

 

霖「あぁそうだった、幻想郷でもまあまあ珍しい白鞘の刀だね。ちょっと貸してくれるかい?」

 

「はい、どうぞ」

 

 

帯から刀を抜いて、霖之助さんに手渡す

すると受け取った瞬間、彼の表情が一変した

 

霖「氷雨君、これを、どこで手に入れたの?」

 

「手にいれたというか、森で目覚めた時に側にあったので持ってる感じです」

 

魔「なんだなんだ、凄いのか?」

 

霖「凄い、なんてものじゃないよ。これは異常だ」

 

「どこがどう異常なんですかね…?」

 

 

霖「…通常、チカラを込められた物質というのは、ただそこにあるだけでそのチカラを、触れたものや大気中にも少しずつ放出しているものなんだ。だから時間が経てばそのチカラは衰えるし、最後には消えてしまう」

 

魔「あぁ、常識だな。それで?」

 

 

彼の視線は、話す間もずっと手元の白鞘に注がれている

微かに瞳孔が開いているようにも見え、コレがどれほど異常なモノなのかを物語っていた

 

霖「だが、この刀はそうじゃない。触れただけで熱を持っていると錯覚する程の、非常に濃く複雑に練られた膨大な妖力を、全く放出すること無く纏っている。道理で、触れるまでその事に気付かなかったわけだ」

 

「…なる……ほど……。」

 

霖「妖刀という物は実在しているし、僕も何度も見た事がある。けど、こんなのは初めてだ。やりようによっては力の減衰をある程度抑えることも出来るが、それでも完全にとはいかないものなんだよ。しかも恐らく、これは本当の姿じゃない」

 

魔「本当の姿ァ…?」

 

霖「そうだ。強力なモノには、必ず名が付いている。それは性能や、成した業、作者の名に関する場合が多い。そして名が付けられたモノは、基本的に無知な者が持ってもその力を発揮出来ないんだ。その名を呼び、従える事が出来ないと真の力は解放できない」

 

「ふむ………」

 

魔「でも、氷雨はそいつを抜いたって言ってたぜ?それで木の妖怪をぶった斬ったってな」

 

霖「それは本当かい?僕にはこれは抜けそうにないが…」

 

「本当です。試してみますか?」

 

霖「そうしてみてくれ。僕も興味がある」

 

刀を返してもらい、俺はあの時のように呼びかける

「頼む、力を貸してくれ」

 

言い終わると同時にその白鞘が1度脈打ち、微かに空いた柄と鞘の隙間から熱風が噴き出す

引っ掛かりは感じない

俺はそれをゆっくりと抜き─

 

霖「待ってくれ。そこまででいい」

 

霖之助さんの静止を受けた

数センチ程姿を覗かせた刀身は、煌々と白金に輝いている

 

霖「…ありがとう。もう大丈夫だ、納めてくれるかな」

 

「了解です」

 

言う通りに俺は納刀する

しかし放たれる熱は収まらない

俺は咄嗟に「休んでくれ」と声をかけた

するとその熱は徐々に引き、やがて完全に収まった

 

霖「うん、確信したよ。」

 

魔「お前一人だけ納得されても困るんだぜ」

 

「なにかわかったんですか?」

 

 霖「真の力を、という話はしたね?けれど、その方法は様々なんだ。服従させる必要がある場合や、逆に乗っ取られてしまう場合、特別な道具や能力が必要な場合、いろいろあるが、その中でもこれは一際珍しい。」

 

魔「お前にそこまで言わせるのは相当だな…そんで、なんなんだよ」

 

 

 

霖「あぁ。これは、『力を貸してくれる』妖刀だ」

 

「と、いいますと?」

 

霖「君が選ばれた理由は分からないが、つまりは自ら力を貸してくれる得物なんだ。特別な道具や能力も主従の確立も必要無く、求めれば応えてくれる。相手がかなり絞られるものの、選ばれさえすれば無条件でその力を最大限使役できるんだ」

 

魔「え、それじゃあつまり、氷雨はコイツをそのまま自在に操れるってのか…?」

 

霖「あぁ、間違いない。僕でも依然この刀の名や用途は見えてこないが、しかしこの刀の妖力は確かに氷雨くんに繋がっているようだ」

 

「繋がっている、とは?」

 

霖「言葉通りの意味さ。この刀の妖力は、既に君の内に根付いている。魔理沙のマスタースパークの被害を受けなかったのもそのためだろうね、その膨大な妖力がそのまま盾の役割を果たしたんだ。とはいえこのクラスの妖力は通常人間に耐えられるものではないから、適応するために身体そのものを造り替えているかもしれないね」

 

魔「……あ、そうか。わかったぞ」

 

「唐突にどうしたのさ」

 

魔「お前の妖力の話だよ。成程道理で、ガワが人間なのにアホみたいな妖力を持ってると思ったんだ」

 

霖「うん。僕から見ても氷雨君は人間だ。となれば体の内側、恐らく臓器や血液の一部が変質して、自身に宿した妖力に耐えられるようにしてあるのだろう」

 

「…つまり見た目は人間中身は妖怪、みたいな」

 

魔「大体そうなんだぜ」

 

 

「複雑だなぁ…半妖か…」

 

霖「こればかりは仕方が無い、かな。そうしなければ恐らく、生きていることすらままならないだろうからね」

 

魔「そうなっちまったもんはしょうがないんだぜ。それはそれとして、ちょっと仕入れてほしい物があるんだよ──

 

 

 

そう言って魔理沙は霖之助さんを店の奥へ連れて行った

半妖と化した…なかなかの衝撃だったけど、確かに仕方ないんだろうな

郷に入っては郷に従え、なんてよく言ったものだ

 

しばらくして、2人は戻ってきた

霖之助さんは手帳を片手に、その隣の魔理沙は何故かむすっとしている

 

「おかえり。その顔はどうしたの?」

 

魔「半分くらいしか引き受けてもらえなかったんだぜ…」

 

霖「むしろこれだけ面倒な品の調達を半分も引き受けたんだ。感謝されこそすれ、非難される覚えはないね」

 

「あんま無理言っちゃダメだよ、魔理沙」

 

魔「はぁ…そうだなー、あとは自分で頑張るか」

 

「今日は長々とありがとうございました、霖之助さん」

 

うなだれる魔理沙を横目に、霖之助さんに頭を下げる

 

霖「いや、僕も珍しい物を見られてなかなか楽しかったよ。そのうちまた来てくれると嬉しいな」

 

「ええ勿論。またそのうち」

 

魔「あぁ、とりあえずありがとうな。いつも助かるぜ」

 

霖「魔理沙はもうちょっと慎み深くなってほしいけどね…あぁそういえば、もし妖怪の山に行く事があったらその前にここに寄ってほしいんだ。届けたい物があってね」

 

魔「いちいち頼む必要があるのか?」

 

霖「意味があるらしいよ。お願いできるかい?氷雨くん」

 

「了解です。では次はその時に」

 

霖「うん。これから大変だろうけど、頑張ってね」

 

魔「そんじゃまたなー霖之助~」

 

 

笑顔の霖之助さんに見送られて店の外へ

そして来た時と同様に、魔理沙の箒に乗る

 

魔「よーし、じゃあ次は白玉楼だぜ」

 

「あぁ。今度こそは安全運───

 

───魔符[スターダストレヴァリエ]

 

そして俺たちは香霖堂を後にした

 

 

 

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