機動戦士ガンダムSEED DESTINY 運命の破壊者 作:くまたいよう
「訓練と似たパターンだった?」
目を丸くしたタリアは呆れるべきなのかどうか判断に窮した。シンが何故か聞こえた声を除いた報告は、付き合いが長いレイが参加する訓練からの既視感任せな成果。しかし、他からしたらそれだけでミラージュコロイドを使った艦をコンピューター任せなMSの長距離射撃で支障を与えるダメージを与えた等と常識から逸脱し過ぎている。
シンの異常な成果については後にして、大量の戦利品からステラの【もしも】の時に使えそうな器材やデータが大量に発見されたのは僥倖と司令部から通達が来た。もしもだが、アーモリー1内にステラ以外のエクステンデットが潜入していたとしたら発見から特定に使える。何やら話が上手すぎるとしたタリアの考えは間違ってはいなかった。当の黒幕とすべき存在からすれば単に真っ先にシンが片付けてくれた程度な誤差しか無いのだ。
【着実に研がれゆく剣に困る理由は無い】
この事態が広まる前に、シンにとって切っても切れない縁のある場にて既に自分達が蒔いた火種が広がっていた。
【オーブ】
地球の南太平洋にある島国群の国家。前大戦で中立を唱えながら焼かれた国の復興を進めていたセイラン家の親子は最近【また】苛立ちを募らせているとしている国家元首への重要報告で首相官邸に赴いていた。容姿はそれなりだがお坊ちゃん気質な軽薄さが抜けないユウナと、その父にしては有り得ないレベルな頭髪の心配があるウナト。だが、ウナトの気苦労の産物と見るか否かだけで行き着く先が決まるとは支持派ですら夢にも思わなかった。そして、待ち構えていたと言わんばかりの顔と対面した。
【カガリ・ユラ・アスハ】
張り詰めた表情をした短い金髪の少女は前大戦で命を落とした父の意思を継いだ存在、面会を求めた親子は簡潔に用件だけ述べた。
「プラントからの返答が来た!?」
「はい、此方です。我々もまだ目を通してはいません」
カガリは返答が入ったディスクを乱暴に受け取って開示した。最近は前大戦でプラントに移民したオーブの民が軍事関連に関わり、オーブの技術を用いているとの事で波面を呼んでいる事に関して、プラントにはそのような事を止めるよう要求した。ハッキリ言えば早まったとした通達の返答は予想外に早く来た。簡単にまとめると?
【オーブからの移民の幾らかを軍関連の仕事に就かせているのは事実だが、受け入れた時にそのような事はしないようにとの取り決めは無かった】
【前回の戦いで受け入れた同胞達は職業相談の末に自分の意思で軍の関連に入った】
【プラントの民となるからには、就労してもらう必要はある。我々は移民を受け入れたが無償の保護を頼まれたワケではない】
【ユニウス条約に基づいた条件での最低限の軍備を整えている程度でオーブの技術や民を使うなと要求するのはどう言う理由なのか返答を求む】
「ほう・・・・淡々とプラント側の事実と疑問だけを述べた内容と言ったところですな」
言葉に詰まっているのは【一応は幼馴染みで家同士が決めた許嫁】のユウナでなくてもわかる。カガリ淡々と語られ、理知的に返答を求められる場合にも弱い、建前を語る以外は威厳を見せ付ける・・・・悪く言えば喧嘩腰の討論以外のやり方は不得手なのだと気付いているからマイペースに危惧された可能性を指摘した。
「カガリ。まさか、文句を言いに乗り込んでやるなんて行動は取らないよね?」
「だ、だが・・・・なっ?」
「だが、何だと?この場合、時間を掛けて返答をどうするか検討が宜しいかと思われます・・・・流石に、何故このような事を求めたのか知られてはオーブの威信に関わります」
【何故】
それを言われてはカガリは成す術は無い、大西洋連邦とそれ以外の地球側から指摘され、オーブ内でも波面を広げている事で国の内外で開戦のキッカケになる騒ぎになるのを恐れているのだ。流石に一度国を焼かれたのを無視する程ではないし、ウナトが言う威信に無頓着な程ではないと言えば聞こえは良いが、要は内外からの圧力に耐えかねている。オーブの獅子の娘として、それで良いのかと思わないでもないが暴発されるよりはマシだ。
【前大戦で父の顔見知りのいる場だけでやった事でカガリの本質を平和主義者と見なす者はいない】
俯くしかないカガリを後に親子は退室し、別室で語り合っていた。
「父さん、どう思う?」
「まあ、我慢しきれずに行ってしまうのが有り得るが・・・・私としては妙に思うのだ。ギルバード・デュランダルとはな、詰まるところ【クライン派寄りな立ち位置】と判断されたから、議長に選出された男なのだが、まあキリがない話題は置いといて、そのクライン派寄りな男が、3隻同盟関係者が世話になってると噂されている国の代表・・・・しかも、やらかした事で知られる相手にあんな対応を取ると思うか?」
「思わない・・・・」
「それからだな、我々に最初に届くよう送ったのは【解答】を提示したのかもしれんぞ?」
「解答・・・・つまり、淡々と事実だけ述べてカガリ自身の言葉を待つ・・・・それに何の意味が?」
「まあ、先ずは敢えてやってみよう。それ次第かもしれん」
そう言ったウナトは、ユウナ以上にカガリの悪い癖は見抜いていた。オーブの獅子の娘と言う肩書きが皮肉になる程に亡きウズミの模倣を悪い意味でしたがる娘だと見抜いていたのだ。だが、これは自分だけが指摘してどうにかなる問題ではないのだ・・・・何故なら、カガリは賛否あれど?
【勝ってしまった】
そして、何よりも?
【帰って来てしまった】
実はカガリを憎からず思っているユウナがどれだけその辺りを理解しているかが肝だが、先ずはギルバード・デュランダルが早まったのか冷静なのかを見定める必要が出来た。ウナトはその夜、不安を消す為の酒では無く疲労回復の為の苦い薬膳茶を飲んで気分を落ち着けた。
そして、プラントの近くにおいて、ミラージュ・コロイドを搭載した戦艦がプラント側のミラージュ・コロイド・ディテクターで発見されて逃亡後に撃沈されたと言う情報がオーブにも伝わって益々厄介だと感じた。ウナトは後始末をやらされた側にしても決してカガリを追い落としたいだけな立場ではない。それにオーブはある意味で【剣】を失っている。その理由がある方向を複雑な目で見ていた。
――――――。
「キラ・・・・」
自室の窓、マジックミラーにしている為に外からは見えない状況で、最近は海を虚ろな目で見ているばかりの存在にピンクの髪をした少女が漸く身体の骨と内臓がマトモな機能を取り戻せるかもしれない程度になった少年の車椅子を押していた。
【キラ・ヤマト】
前大戦において、経緯は複雑でも最強とされた存在ではあるが、最終決戦においてこれまでのに加えて拭えぬ傷を更に深める事があり、身体以上に精神が壊れ掛けていたのだ。
欺瞞に満ちた関係で、知る事が出来なかったが、お互いにやり直しを願っていくれていた少女である【フレイ・アルスター】を救えなかった。
そして、フレイを殺した存在。
自分の兄弟に極めて近い存在だったかもしれない戦乱の元凶の一角【ラウ・ル・クルーゼ】を倒したが、その経緯が問題であった。
自分を殺すべく・・・・武装はともかく、本体が急拵えだった為に、乗機であるフリーダムや兄弟機ジャスティスに比べて劣っていた為に、密かに、念入りに調整を行って当初よりはマシにした機体【プロヴィデンス】には、キラのフリーダムですら敗北寸前まで追い詰められてしまった。今のキラの状態は、それも一因である。精神もそうだが、身体の怪我だけで並のコーディネーターなら死んでいた程の怪我を負い、未だに癒えてはいない。
そして、機体も自分の身体もボロボロにされて敗北を覚悟した時、あの悲劇が起きた。
【ムウ・ラ・フラガ】
ムウが密かに改修させたメビウス・ゼロの有線兵器ガンバレルで自機もろともプロヴィデンスをがんじがらめにしたところをキラに撃たせた。フリーダムはバラエーナ一門しか残っていないし、本体のダメージも限界の状況だったので、何度考えてもああしなければ自分やムウどころか、後ろにいるラクス達ですら殺されていただろう。
それにより、キラの中で大切なものが崩壊した。
フレイを救えなかった事もそうだが、最初にガンダムに乗り始めた頃から理解者に数えられる存在を殺した事に耐えられなかった。和解した親友達がいなければ完全な廃人となっていた程の事だ。
クルーゼに関しても、出自の事を含めて自分の存在意義を散々に破壊されていたのだ。ただ殺しただけで拭えるものではない。
【結局キラはクルーゼを殺した事で生き死にの戦いには勝ったが、突き付けられた事からの勝負には負けていた】
周りは、特にムウと心を通わせたマリューですら、キラを責めずにただ休ませてあげていたが、キラ本人ですらこの状況が周りに与える影響を理解してはいなかった。唯一人、キラの世話をする【ラクス】を除き。
(キラ、貴方にフリーダムを託した【報い】を受けていない身として、わたくしは敢えて手を汚します・・・・最悪の場合ですが、貴方より今の情勢に相応しい剣をわたくしの元に、恨んで頂いて構いませんわ・・・・!)
新たな流れを画策するラクスではあるが、既にラクスの考える流れすら更なる濁流に飲み込まれつつあったと知る術が無かった。
本編から数年後基準なのだからキラは高山漫画みたいな流れで再起不能手前から何とか抜け出せた状態。だからオーブが危機感煽られた?な回。