機動戦士ガンダムSEED DESTINY 運命の破壊者 作:くまたいよう
ルナマリア・ホークは説明されたにしても唐突な状況で戦っていた。赤く塗った乗機であるガナー・ザク・ウォリアーのコックピット内で緊張しつつデブリだらけな宙域で索敵を続け、ついに本命とすべき敵の接近が確認されたので状況を受け入れた戦いを始める決意をして側面から接近した。
『ミネルバ、聞こえるか?今すぐに後退しろ!邪魔をするな・・・・らっ』
通信を送って来たインパルスに向けて通常のビームライフルを突撃しながら連射するが、当たり前に回避されてしまうのが密かにシンの上達に苛立ちを覚えていたルナマリアの神経を煽っていた。
「シン、このおっ!裏切りものがあっ!」
『その言い方、甘んじて受けてやるさ!』
「何なのよっ!?いつの間にか偉そうになって知らない内に裏切って!」
「偉そうにって・・・・そっちが、俺が普通にやろうとすれば【レイみたいな事を言わないでよ、調子狂うわ】とか言いながら皮肉る奴なままなだけだろ!」
「煩い!ここで墜ちなさい!」
旧知の相手に向ける皮肉と毒舌の合戦、状況が状況なので口喧嘩を続けてはいられない。
『裏切り者』
そうなった経緯は後回しにしつつ、自分とミネルバからの攻撃を回避しながらプラントの方向に迫るフォース・インパルスに向けて、ルナマリアもガナー・ウィザードの長距離砲撃を最大出力で放った。
【だが?】
戦後、シン・アスカはこの時の戦いについてこう語った。
「あ、ありのまま起きたことを話すぜ・・・・俺はルナマリアの攻撃を回避したと思ったら、奴の砲撃はミネルバに直撃した・・・・な、何を言っているかわからないと思うが、俺も何が起きたかわからなかった。流れ弾とか同士討ちとかそんなチャチなもんじゃねえ・・・・もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ」
―――――――。
「・・・・って・・・・何よこれはああああっ!!」
「内容が内容なだけに、それは此方のセリフです」
あんまりな結末となったシミュレーションを終えて怒鳴るルナマリアにミネルバに新たに配属されたアビー・ウィンザーの呆れた声が向けられた。
例のエクステンデット絡みの戦利品を解析した際に、何かしら擬似的なシチュエーションを作って訓練出来るシステムがせいさくされ、ルナマリアがそれを試運転した。
可能性が出す未来の戦い、シンがプラントに敵対する理由が何故出たか知らない・・・・だが、ルナマリアにとっては忌まわしい記憶が甦る事になった。
「そりゃ、シミュレーションでは乱戦中を想定した訓練どころか開始早々に間違ってなパターンでも、シンのインパルスに後ろから直撃弾を見舞って、ガンダムを戦闘開始からの経過時間が最速に撃墜した女呼ばわりされてたわよ!だからと言って、アレはないでしょが!噂に聞い【あのアーク・エンジェル】の動きを封じるのに成功したトラップをフレンドリー・ファイアーで破壊して友軍が逆転負け食らうキッカケ作っちゃった【迂闊で残念な狙撃手】よりヒドいじゃない!」
一部漏れた事で真偽不明な噂・・・・知っている者達からしたら後に共闘したので、もしもアレが無ければ歴史が変わったかもとされているから苦笑いだろう、当事者は場合によっては、自分の趣味で自信がある【炒飯を】振る舞う商売でもして何処かで暮らそうかと考えるくらいになった一因であるので今はルナマリアを落ち着かせているアビーに感謝するべきだった。
一方でルナマリアのシミュレーションとは違う形に理解できない光景があった。
「あ、あの・・・・アスカさん?この状況は一体何事なのです?」
「わかりません・・・・」
「よね、私達はホーム・ドラマの役者になりに来たワケでは無いわ」
「うぇ~い?」
面会が実現してステラ・ルーシェはセツコ・オハラに抱き着いて小動物のようになってしまっている。余程に心地好いのか半ば寝てるようだ・・・・元来、軍人より保母さんのように気弱だが世話好きなお姉さんが就く職業向けなセツコも戸惑いながらまんざらでなく、ステラを甘えさせるのが実にしっくり来ていた。呆気に取られたところを受信機からハイネからシンに一旦監視室に戻るようにと力が抜けたような声が聞こえたので向かったが、同じく声同様に力を向けたハイネが待っていた。
「なあ、シンよ・・・・俺達はリーカが言うようなホーム・ドラマ撮影班じゃねえぞ?」
「はい、ごもっともです」
「まあ、軍人が荒事に縁が無いのは良い事だがなあ・・・・【何故にステラが戦艦の壁何枚か越しにセツコの存在を感知したのか】調べるのが本題なハズ、聞き出したくても迂闊に刺激したら何があるかわからないから・・・・」
「同室にでもしますか、勿論。部屋は監視付きで・・・・な、何です目を丸くして?」
「いや、融通効かせ過ぎなような・・・・まあ、良いや。お・・・・いや、綺麗なお嬢ちゃん二人保護した戦艦ってのもオツかもしれん・・・・議長にそれ掛け合うわ」
「あ、ありがとうございます!」
手を振りながら【良いよ良いよ】と意図を伝えて飄々と退室するハイネは、シンの変化に気付いた。彼は監視付きとか自分から言い出すような性格ではない、仮に自分の考えが正しいとしたらシンは議長の想像以上に有益になる。
(でも、俺は立ち位置的に悪いお兄さんじゃねえか?・・・・まあ、良いや少なくともシンが落ち着いてくれるならな)
ハイネの思うように、シンのような存在が落ち着いてくれるのは悪い事ではない・・・・だが、そのシンにとって性急な事態が動き出していたのだ。先程ハイネが【お姫様】と言うのを踏み留まった理由が絡む場で真逆な動きがあった。
【オーブ】
嘗てシンを始めとした多数のコーディネーターが住んでいた地で、まるで裁判のような流れが起きていた。
【トダカ一佐】
現オーブ軍の中で良心とされている精悍な顔立ちの軍人は首長官邸に呼び出されて自分が二年前にしてしまった事を問い詰められていた。
カガリは俯くばかりで、セイランを始めとした首脳陣は早く切り出すようカガリに促していたのだ。まるで黙秘を貫く被告人、自分と室内にガードマンとして控える【アレックス・ディノ】も同じで成す術は無い。
前回の戦いで保護した民間人をプラントに行かせた・・・・それは人道的には間違いではないのだが、それだけで済む問題ではなくしてしまった。例えば、可能ならば火星にでも行かせたのならば良かったと考えた・・・・しかし、ここで【アメノミハシラ】と考えないのがトダカの立ち位置を示している。
「代表、早く本題を」
ユウナはカガリが自分から切り出すまで待つのみ・・・・これがユウナ達のカガリ対策、後で責任転嫁をされるのを避ける形で自分から動き出してもらう方が良い。他を頼り始める事を学んでもらうのも一計、何より大事なのは。
【耐える事】
カガリが前大戦でオーブから脱出した後に自分達が味わっていた苦難を少しでも味合わってもらいたい意図もある。
そして、トダカには自分から言い出して欲しいと思っていた。形式等はどうでも良いとしてや他を含め?
【自分がシン・アスカに会いに行く】
そう言い出して欲しい側はまだ知らない・・・・デュランダルの新たな意図も既に動き出していた。しかも自分達が、今オーブ内で隠居するラクス・クラインを頼っても手に負えない・・・・否、ラクスやそれに頼るのを考えてしまう者達だからこそ手に負えない事が。
そして、シンに対して巡る思惑でやはり有利なのは近くにいる側だった。セツコとステラの件で頃合いが早まった故に。
【アイリーン・カナーバ】
亜麻色のややウェーブが掛かった女性はプラントにとっては【失態を犯した暫定議長】として追われたが如くな存在だが、その理由は後回しでな会談をシンは持ち掛けられていた。
暫定的でも前議長であり、現議長のデュランダルを推薦した人物なのでハイネは勿論、シンもそれなりに緊張していた。そして、シンに対して【デュランダル自ら】カナーバに協力を申し込んだ計画絡みの話題が切り出されたのだ。
「が・・・・【外宇宙進出計画】・・・・で、ありますか、カナーバ・・・・前議長?」
「そう、ある程度進んでいる火星の先の木星や更に先、又はそれとは別の水星に金星の方面が目的、まだ橋頭堡の確保から航路の特定をな段階ですがね・・・・その前に何を驚いている?我々コーディネーターは、本来そういった方向の事をやる為に生み出されのだ。ジョージ・グレンの台詞を単純にまとめれば宇宙開発から未知の存在との調停をする為に」
ここで、具体的な事から現状を全て言うのは避けた。カナーバとしても口にしたくはないから、先ずは誘いとキッカケをやる事からだ。そもそも今の言い方は別に虚偽では無い。
「そ、そうです・・・・が」
「まあ、それ以前にだ。何故コーディネーターは地球圏で暮らしたりしてるのでしょうね?」
「え・・・・?」
「即答出来ないのが答えだよ、話題に出したジョージ・グレンの事は、少しは知ってるだろ?最早、忘れられていると言った方がマシかもしれないが」
「はい」
唐突極まる発表で自分の秘密を明かしてコーディネーターと呼ばれる者達の現状・・・・いや、苦境の原因を作った存在だが、確かに忘れられてるとするカナーバの言い方が正しい。
「意図は知りようがないが少なくとも一旦は停戦したのだ・・・・地球側と再戦したいのならともかくコーディネーターは地球圏で暮らす必要はあるのか?」
「それは・・・・無い・・・・かもです」
「戦いたがる者などおらん・・・・平和に、穏やかに、幸せに暮らしたい・・・・我等の望みはそれだけだったハズです・・・・これは誰の台詞だと思います?」
「・・・・わかりません、普通に暮らしている人の望みでしかないと思います」
「パトリック・ザラの台詞さ」
【パトリック・ザラ】
前大戦で暴走したプラントの議長の台詞としてはシンは直ぐに信じられなかった。地球にジェネシスを撃ち込んでナチュラル殲滅を図ろうと・・・・そこまで考えた辺りでシンは自分の思考に待ったを掛けた。その理由はカナーバも察している・・・・シンにとっては【義理の両親】であると言える者達の不可侵な域に不用意に踏み込みかねないからだ。
「まあ、彼のやった事より、台詞からの論をしようかな。では、どこで暮らす?」
「プラント・・・・じゃないんですか?」
「そこだよ・・・・では、コーディネーターがプラントで暮らしているのは何故か?」
そう、元々地球で暮らしていたコーディネーターが何故プラントに移ったのか?
そもそも、プラントとは何だ?
プラントの建造者ではなく【持ち主】は?
シンは、説明を聞く度に自分の勉強不足を身に染みさせられ、考えれば考える程に滅入ってしまった。
プラントに来た理由は奨められたからであるだけだと思い知らされた・・・・【便宜を図ってくれた軍人】には感謝しているのだが。
「ふむ、上手くまとめられない・・・・移民してからアカデミーを出るまでの苦難でいっぱいでしたな顔だな、正直でよろしい・・・・なら、君個人としてはプラントで一生を終えたい理由はあるか?」
「無い・・・・です」
「だろう、良くわからないのなら・・・・遠くにでも行くのが選択肢とする考えも有るハズ・・・・まあ、自分で考えてみて欲しいのだが?」
カナーバからの問いは簡略にまとめると地球圏にいる云々より、元々あるべき形にする事だし、シンはそもそも守る為の力を欲した・・・・では?
【何から守るのか?】
先程からの話で推測される限りで出る対象。
【近くにいたら来るに決まっている敵】
論外だ!とシンは即決した。幾ら何でも?
【乗っ取りと踏み倒しの阻止を一因に攻め込んでくる相手】
こんなのは、相手がブルーコスモスとかに先導されているからにしても筋が通るかどうかなのだ。ならば?
「俺・・・・地球圏には、その・・・・まあ、身内絡みしか考える事はありません・・・・それに、地球に帰りたいとも、今のプラントに永住したいとは思いません・・・・けど?」
「けど?」
「プラントで世話になった人と・・・・自分がミネルバに連れ込んじゃった人達・・・・それだけが気掛かりで」
「【ロミナ・アマルフィ】だな、彼女には次に寄港した時に会いに行けば良い、それから・・・・ミネルバに連れ帰ってしまった娘達には都合が良いのでは無いか?言いにくいが、新天地に向かう方が幸せだろう。今の地球圏の情勢は彼女達に都合悪いしな」
セツコとステラに関しては、確かにそうだ。
【身元不明な存在と、知られたら火種になる存在】
ステラがああなった理由を考えたら、寧ろと考えた結論は?
「はい・・・・俺は、その・・・・ロミナさんに許可をもらったら?」
「うむ、ロミナは恐らく君の選択を了承するだろう・・・・次の問題は君の連れ帰った娘達だな、君から話をしてみたら良い、政府に関わった者として打算的な事を含めて君に任せるのが都合が良い」
シンは、一気に道が開けた気分だった。
例えば火星に行く途中の何か、航宇中に予想すべきアクシデント等に対処しながらセツコとステラを守る為にMSパイロットとして存在する自分をイメージしたが、それが正に【自分の望んだ力】に一番近いのではないかとした。
それに、地球圏から距離を追いて例えばブルーコスモスが攻め込みたくても攻め込めない状況の下地を作る・・・・正直、プラントの初期の闇を後回しにするのと地球にいるだろうステラと同じ存在に関しては気が引けるが【見切りをつけるべき時】として、出した結論は?
そして、歯車が回る。
「あ、あの・・・・【シン君】?」
名前を君付けで呼ぶセツコ、年上に【アスカさん】は変と言ったらそうなったのだが、何故か声を震わせていた。
「ステラ・・・・行ってみたい、セツコは?」
「わ、私は・・・・その?」
「?」
セツコとステラはシンからこう言われた。
【俺と新天地探しに行きませんか?】
監視室で聞いていたハイネとリーカは大笑いした。
いきなり三人でそうしようと誘う発言の意味考えないのか?と笑った。
一歩譲って、二人に安全な場所へ行くのを誘い掛けたにしてもストレート過ぎるのだ・・・・まあ良いと。仲良く他を含めた三人で開拓者への道を歩んでしまえば良いとした。ステラはわかりやすいが、セツコもシンみたいなタイプには弱いのだろう・・・・頼りになるようで手の掛かるツンデレな年下は気弱なお姉さんにとってはツボかもしれないと、まるでウッカリ二股を疑われた青春ドラマな学生のようなやり取りだ。了承を貰った後に報告に来たシンに暖かい目を向けて掛ける言葉は決めた。
「両手に花おめでとよ♪♪」
「ハイネ、あまり茶化さないであげようよ。まあ二人はシンが守ってあげるのよ♪♪」
名前呼びで良いとしたやり取り、これから集まるメンバーと一緒に外宇宙へ行く計画に参加を了承してくれたセツコとステラに関しては事情が複雑だからにせよ、発言の意味を気付かされたシンは赤面するしかなかった。
だが?
「わかりました。カガリ様、私の責任でありますので【シン・アスカを始めとした元オーブ市民】に、会いに行きます」
「頼む・・・・」
意図はどうあれ、誘いを掛けられて決断をしたシンには逆の方向からの誘いが動き出してしまった。
シンをプラントに行かせた・・・・否、【行かせてしまった】と認識したトダガは仕えるべき存在の為に、最悪の形でシンに会いに行く事を決めてしまったのだ。
そして?
「アス・・・・いや、アレックス。トダカの補佐を頼む!」
サングラスを掛けた青髪の青年は自分にもやれる事を探すアレックスと言われた男、本来なら足を運ぶべきではないプラントへの同行を申し出てしまい、カガリは許可を出してしまったのだ。
セイラン親子からしたら、最悪だが最良な人選をするカガリの姿に想像以上の成果だと見られてるのを知られずに準備が進められていた。
シン・アスカにとっては、どれも自分にとって最良と信じられるハズな意図からの動きが祝いのように連続で送られ出したのだ。
さあ、どれがシンの一番のプレゼントになる?な回(愉悦)